リリカルクロスSEED_第06話

Last-modified: 2007-12-27 (木) 16:30:18

「ん?」
アルフの魔力波をかすかに感じたキラは窓の外を見たが、ここから海鳴の様子は分からない。
キラは嫌な予感がした、すぐにでも海鳴に飛んでいきたい。二人の元へ行きたい。
しかし、彼にはここから抜け出せることは出来ない。
「今の僕には何も出来ない・・・・力が・・・ない」
あの時もそうだった。
フレイの父親を守ることも脱出艇を守ることもトールを守ることも・・・・・・。
すると、ここまで伝わってくるほどのジュエルシードの魔力を感じた。
「!?なのはちゃん!フェイトちゃん!」
窓からそれが見えるわけでもないのにキラは外を見ていた。
 
その後、フェイトがアルフに抱かれて帰ってきた。
「フェイトちゃん!」
「大丈夫だよ、キラ君」
フェイトはかすかに笑いながらキラに答えた。
その後、フェイトの手の治療を終え、戻ってきたアルフにキラは聞いた。
「何があったの?」
アルフは先ほどまでにあった、なのはとフェイトが戦闘し、封印をしようとしたこと。
その時、二人のデバイスがジュエルシードと重なり、ジュエルシードの力が増大したこと。
それの所為で二つのデバイスにヒビが入ってしまったこと
フェイトはジュエルシードを素手で封印して魔力を大きく持っていかれ、そして傷を負ったという話を聞いた。
「何で話し合いで解決しないの?」
「私たちの目的はジュエルシードを集めるのが最優先だ、それに優しい世界で暮らしていたやつに教える必要はないんだよ。あんたにもね」
「優しい世界で・・・・・か」
キラはその言葉を聞くと少し悲しい顔をした。
「アルフ、少し・・・・僕の話を聞いてくれないかな?僕が体験したことを」
キラはアルフに自分が別の世界の人間で自分の世界では未だに戦争が続いていること。
そして自分たちも戦争に巻き込まれ、自分は力が合ったから戦ったこと。
敵が親友だったこと、話し合うことも出来なかったこと。
そして、自分は親友の仲間を殺し、親友は自分の友達を殺したこと。
それの所為で、親友と憎み合い・・・・・殺し合いをしてしまったこと。
キラはその全てを包み隠さずにアルフに話した。
「目が覚めて、そして自分がやったことをひどく後悔したよ、今もだけど・・・・」
「・・・・・・・・・」
アルフはキラの話を聞いて何も言えないでいた。キラの真剣な目からこの話が嘘でないことは分かった。
「僕はフェイトちゃんに同じ思いをして欲しくないんだ・・・・・だから!」
「それでも・・・・・・」
アルフは辛そうに声を絞り出して言った。
「・・・・・話せないよ」
「・・・・・・分かった・・・・それじゃあ、話してくれるまで待つよ」
キラはアルフに微笑むと自分の部屋へと戻っていった。
「ごめんね・・・・・キラ」
一人になったアルフは小さく呟いていた。
 
「お母さんのところ?」
「はい、一度家に帰って今までのことを報告しないといけないから」
「そっか」
「毎度のことながら留守は頼んだよ」
「うん、っていうか僕は監禁されてるんじゃなかったっけ?」
「あれ?そうだったっけ?」
「もう、アルフさん忘れないでくださいよ。というか何で僕が言わないといけないんですか」
「あはは~、ごめんごめん」
呆れるキラと笑いながら答えるアルフ、フェイトも母親に会えるのが嬉しいのか笑っているように見える。
「それじゃあ、いってきます」
「うん、いってらっしゃい」
 
二人が出て、日も落ち始めた頃。
「どうにか、教えてもらえないかな」
キラは昨日の会話を思い出しながら呟いた。
しかし、自分がその話を聞いてどうにか出来るかなんて分からなかった。
「でも、話さないと分からないことだってある」
すると、玄関が開く音が聞こえた。
「あ、おか・・・・・フェイトちゃん!?」
全身傷だらけのフェイトとアルフはそれに寄り添うような形で部屋に入ってきた。
フェイトの傷の治療を終え、下に下りたキラはアルフに詰め寄った。
「報告に行くって、母親に会いに行っただけじゃなかったの?」
「あぁ、それだけだよ」
「じゃあ、何で!」
「あの子の母親さ」
「え?」
「あの子の母親がやったんだ」
「そんな・・・・」
アルフは怒りで冷静になれなかったためキラにさっきまであったことを話していた。
「あの子はあんなに頑張っているのに!」
「・・・・・・・・」
アルフは膝を抱え、肩を震わせながら俯いてしまった。
キラはそんなアルフの頭を撫でながらあることを決意した。
「アルフさん・・・・・僕にストライクを返して」
「え?何を言ってるんだい。そんなこと」
「違うんだ、僕にも二人の手伝いをさせて」
「・・・・・・・」
「誰かが傷つくのを見るのは・・・・・もう・・・・嫌なんだ」
キラは目に涙を溜め、拳を握り締めた。
そんなキラを見ながら冷静にアルフは言った。
「あのなのはってこと戦うことになってもかい?」
「っ!?それは・・・・・」
「一緒に戦ってくれるのはありがたいけど、そんなことすれば十中八九あの子と当たるよ?」
「・・・・・・・・・」
「一応、キラのデバイスは返しておく。覚悟が出来たらでいいから」
アルフはキラの手の平にストライクを渡すとフェイトのところへ行ってしまった。
キラはそれを握り締めながら窓の外を見た、もうすぐ夕暮れ時だ。
フェイトとアルフはジュエルシードを見つけたため外に出ていた。
キラはストライクを見ながら考えをまとめていた。
 
ジュエルシードはユーノが見つけたもの。
それをなのはは今では皆に被害が出ないように頑張って集めている。
フェイトは母親のためにそれを集めている。
しかし、その母はその頑張りすら認めず、ひどいことをする。
だが、フェイトはそんな母を信じてボロボロになりながらも頑張っている。
 
「僕は・・・・・・・」
キラはストライクを握り締めると前を向いた。
マンションを出る、どうやらアルフは障壁を張らないで出て行ってくれたらしい。
「ストライク、また一緒に頑張ってくれるかな?」
『Yes. sir.』
「それじゃあ、行くぞ!エールモード!」
『System all green. Aile mode. Set up.』
キラはバリアジャケットに身を包むと赤い翼を出現させ飛び立った。
 
「見えた!」
微かだがフェイトとなのはが対峙しているのが見える。
「!?くそっ!やめろーーー!」
スピードを上げるが二人はデバイスを構え、ぶつかり合いそうになった時だった。
二人は突然現れたもう一人の少年に止められていた。
それに安堵しながらキラは一時、空中に止まり様子を見る。
「ここでの戦闘行動は危険すぎる。時空管理局執務官クロノ・ハラオウンだ。詳しい事情を聞かせてもらおうか」
三人が空中から下に降りる。
「ますは二人とも武器を引くんだ。このまま戦闘行為を続けるなら・・・・・!?」
その瞬間クロノに炎の魔法の矢が飛んできていた。
クロノはそれを障壁で防ぎきる。
「フェイト、撤退するよ。離れて!」
アルフの魔法の矢が連続でクロノたちを狙い、地面に当たり爆風を上げる。
フェイトは上に飛ぶとジュエルシードに手を伸ばす。
「いけない!」
キラはすぐにフェイトのところへ向かう。
爆風の中から青い魔法の矢がフェイトに命中し、フェイトは下に落ちる。
「フェイト!」
「フェイトちゃん!」
アルフとなのはが悲鳴を上げる。
地面にぶつかる瞬間に一陣の風が吹いた。
フェイトを抱きとめ、地面に着地した少年の姿になのはは驚いていた。
「キラくん?」
キラはその言葉に顔を少し向けたが、降りてきたアルフにフェイトを預ける。
「キラ?」
「アルフはフェイトちゃんを安全なところへ」
「でも・・・・・」
「大丈夫、僕を信じて」
キラはアルフの瞳をじっと見る。
「分かった、キラも早く来るんだよ」
そういうとアルフはフェイトを背に乗せ走り去ろうとする。
そこにクロノの魔法の矢が放たれるが、キラはライフルを構え連射。全てを相殺する。
「なに!?」
キラの行動に驚いたクロノだが、すぐにアルフたちにもう一度魔法の矢を放つ。
「やらせない」
キラの中で何かが弾ける。キラの目から光がなくなった。
サーベルを抜き放つと横一線、クロノの魔法が消し飛んだ。
「魔力が・・・・・飛躍的に上がった!?だけど!!」
クロノがさらにキラに魔法を放とうとした、キラもサーベルを構える。
「だめーーーー!!」
そんなクロノの前になのはが割って入る。
キラはその隙に空に飛び立つ。
その時なのははキラが「ごめん」と言っているのが聞こえた。
次の瞬間にはキラは高速で空を飛び去っていた。
「キラくん・・・・・なんで・・・・」
そんな彼を見えなくなってもなのははずっと見送っていた。
 
「フェイトちゃん、大丈夫?」
「うん、大丈夫だから・・・・・痛っ!」
フェイトの手当てをアルフとキラの二人で行っていた。
「無理しないで」
「うん。キラ君、さっきは守ってくれてありがとう」
「そうだね。ありがとね、キラ」
「ううん、どういたしまして。僕は守りたいものを守っただけだよ」
キラは二人にそう微笑んでいた。
「でも、時空管理局まで出てきたらどうにもならないよ。フェイト、逃げようよ」
「それは・・・・・ダメだよ」
「だって、雑魚クラスならともかく、あいつ一流の魔導師だ。本気で捜査されたらここだっていつまでばれずにいられるか」
アルフは悲痛な表情で訴えている。
「あの鬼婆、あんたの母さんだって訳分かんない事ばっか言うし、フェイトにひどいことばっかするし!」
「母さんのこと悪く言わないで」
「言うよ!だって私、フェイトのことが心配だ」
アルフの目に涙が溜まる。
「フェイトが悲しんでると私の胸も千切れそうに痛いんだ」
キラは何も言わず席を外すことにした。
「フェイトが泣いてると私も目と鼻の奥がツンとしてどうしようもなくなるんだ」
アルフの目から涙が零れる。
「フェイトが泣くのも悲しむのも私、嫌なんだよ」
そんなアルフを見ながらフェイトの瞳が揺れる。
「私とアルフは少しだけど精神リンクしてるからね。ごめんね、アルフが痛いなら私もう悲しまないし、泣かないよ」
それを聞いたアルフは泣き崩れてしまう。
「私はフェイトに笑って幸せになって欲しいだけなんだ。何で、何で分かってくれないんだよぅ」
「ありがとう、アルフ。でもね、私、母さんの願いを叶えてあげたいの。母さんのためだけじゃない。きっと自分のため」
フェイトはアルフの頭を撫でながら言った。
「だから、あともう少し、最後までもう少しだから・・・私と一緒に頑張ってくれる?」
その言葉にアルフは顔を上げる。
「約束して、あの人の言いなりじゃなくて、フェイトはフェイトのために、自分のためだけに頑張るって」
アルフは目が潤んでいるが、泣いてはいなかった。
「そしたら、私は必ずフェイトを守るから」
「うん」
フェイトは嬉しそうに微笑んでいた。
 
それを部屋の外から聞いていたキラはストライクに話しかける。
「ストライク」
『Yes, my master.』
「僕の取る道は間違っているかもしれない。でも二人を守りたいんだ。力を貸してくれるかい?」
『Yes, sir.』
「ありがとう」
キラはストライクを握り締めると空を見上げた。