勇敢_第10話後編2

Last-modified: 2007-11-19 (月) 13:42:14

機動六課隊舎

 

カナードの否定の言葉を聴いたアッシュは弄っていた人形を握りつぶし、不快感を露にする。
「愚かだな・・・・お前はもう死に体だ。まだ反撃でいるというならやってみろ。負けるのは目に見えてるがな」
ライフルを構え、収束砲のチャージを開始するアッシュ。だが、カナードは俯いたまま、不適に笑う。
「ああ・・・・そのつもりだ。俺も・・・ハイペリオンも・・まだ戦える!!」
力なく垂れ下がった右腕の代わりに、最後のロムテクニカを左手で逆手に持ち、真っ直ぐにアッシュを睨みつける。
「生きてる内は・・・・・負けじゃない!!!」
アッシュ目掛けて駆け出すカナード
「ふっ・・・・・死ね!」
放たれた収束砲を、当たる瞬間に横に飛び回避、着地と同時に地面を蹴り上げ、アッシュに突撃する。
「テスタメントを忘れるなよぉ!」
突撃してくるカナードに、アッシュはテスタメントを振り下ろすが
「アルミューレ・リュミエール展開!!」
最後に残った魔力でアルミューレ・リュミエールを展開、テスタメントの攻撃を防ぐ。だが
「展開するのがやっとだった様だな・・・・・直に砕けるぞ」
アッシュが言った通り、アルミューレ・リュミエールにヒビが入る。そして、ガラスが割れるような音と共に、砕け散った。
「これで終わりだぁ!!」
再びテスタメントを振り被る。だが、カナードは既にアッシュ懐に入り、距離をゼロにしていた。
「接近戦での攻撃を一瞬でも防げればよかった・・・・・これで終わりだ!」
カナードは逆手に持ったロムテクニカをアッシュのこめかみに突き刺す。そして
「カートリッジ・ロード!」『Burst』
ロムテクニカのカートリッジがロードされ、爆発。アッシュの頭を吹き飛ばした。
爆風により吹き飛ばされるカナード。背中を打ちつけ、肺から息を絞り出す。
首から上を失ったアッシュは、重力に従うように、後ろに倒れた。
しばらく沈黙が続いた後、カナードはゆっくりと立ち上がる。
「どうやら・・・・再生はしない様だな・・・・やはりデバイスは頭に装着していたか・・・・」

 

『フォルファントリー・フルパワー』を放った後、右腕と胸から下が消失したアッシュが、笑いながらカナードを見つめていた時、
毒つきながらも、頭の中では冷静に状況を整理していた。
「(やはりな・・・・奴は頭への攻撃は防いでいる。この異常なまでの回復が『リジェネイド』というデバイスの効果なら、
それを破壊すればいい。奴の体を粗方攻撃したが、頭だけはガードしている・・・デバイスがどんな物かは知らんが・・・そこだろうな)」
自分の考えを信じ、カナードは実行に移した。

 

アッシュに背を向け、避難しているであろうシャマル達と合流するため、歩き出す。だが

 

            「いやいや・・・・さすがに効いたぞ」

 

聞こえるはずの無い・・・聞こえてはいけない声が聞こえる。カナードは声に反応し、後ろを向くと

 

                ドスッ

 

先ず聞こえたのは、何かが刺さる音だった。そして、何か生暖かい物が胸を通過する感触がカナードを襲った。
「な・・・・・ん・・・・・・」
自分の胸を見下ろすと、魔力刃が突き刺さっており、首を動かすと、口の部分だけの再生が完了したアッシュが
右肩のアーマーを腕に装着し、そこから出た魔力刃でカナードの胸を突き刺していた。
状況を理解した瞬間、強烈な痛みがカナードを襲い、口から血を吐き出す。

 

その光景を会議室のモニターから見ていたはやては
「いや・・・・・・いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
感情を爆発させ、喉が裂けるほどの勢いで叫んだ。

 

カナードが刺された瞬間、反応したように久遠は目覚め、シャマルの手から離れる。
「久遠ちゃん!駄目よ!!」
シャマルの声を聞かずに、久遠はシャマル達とは逆の方に走り出した。
どうにか久遠を捕まえようとするが、炎と、天井から落ちてきた瓦礫に阻まれ、道をふさがれてしまう。
『カナードの所へ行く』とシャマルに念話で伝えた久遠は炎と瓦礫を避け、走り出した。
突然襲ってきた言い様の無い不安を抱えながら、久遠は走る速度を上げる。

 

ダメージで苦しむカナードとは反対にアッシュは再生を完了、ニヤつきながらカナードを見据える。
「確かに、どんなに優秀な魔道師だろうが、プログラムで形成された騎士だろうが、戦闘機人だろうが、頭を破壊されれば終る。
だが、残念ながら俺には通用しない」
カナードの瞳は徐々に虚ろになっていく。左腕の力が抜け、カートリッジを失ったロムテクニカの柄が落ちる。
「俺のデバイスが頭にあると思ったのだろう。残念だったな。頭をガードしていたのはなぁ・・・ただの気まぐれだ。
まぁ、お前のデバイスを破壊するという考えは間違ってはいない。だが、リジェネイドは俺の体と一体化している。つまりなぁ・・・」
もったいぶる様に間を空けるアッシュ。数秒後心底嬉しそうに話し出す。
「俺を完全に消滅させない限り、リジェネイドは破壊されない。まぁ、つまり俺を塵一つ残さず消滅させれば俺は倒せる。どうだぁ、言い事を聞いただろう。ん?」
全く言葉を発しないカナードを見据えるアッシュ
「・・・・・死んだ?いや、気絶しただけか?・・・詰らない奴だ」
アッシュは無造作に魔力刃を振るう。その勢いで魔力刃がカナードから抜け、同時に地面に叩きつけられた。
地面に叩き付けられた後、血を流しながら微動だにしないカナードにアッシュはニヤつきながらライフルを向け、放つ。
だが、放たれた魔力弾はカナードの足元の瓦礫を吹き飛ばす。爆風に煽られ、地面を転がるカナード。
続けて今度は転がり終えたカナードから一メートル先の地面に魔力弾を放つ。先ほどと同じ様に、今度は後ろに転がる。
転がるたびに血を撒き散らし、地面を赤く染める。

 

「あの男・・・・・遊んでいる・・・・・・」
カリムは顔面蒼白のはやてを抱きしめ、背中を優しく撫でながらも、画面に映し出される光景を見て、苦々しく呟いた。

 

「どうやら・・・・ここまでのようだな」
アッシュは詰まらなそうに呟きながらライフルを仕舞う。そしてテスタメントを空に掲げ、数秒間、プラズマの様な物を発生させた。
「俺は失礼しよう。テスタメントの損傷が思った以上に酷いのでな。だからプレゼントを残しておこう」
言葉を言い終えると同時に、オットーが停止させた筈のガジェットが動き出す。
本来なら黄色の筈のカメラアイが真っ赤に染まり、瞬く間にカナードを取り囲んだ。
「残りの処理はガジェットに任せよう。避難している連中の方にも向かわせた。
満身創痍のプログラム風情が非戦闘員を守りながら戦う・・・・・・ククククク、いつまで持つかなぁ」
アッシュの足元に転移魔法陣が展開、転移時に発生する光の粒子に包まれながら、自分達の戦闘を移していたガジェットに目線を向ける
「それではギャラリーの皆さん。引き続きのショーをお楽しみください・・・・・・はははははははははは!!!」
笑い声を上げながら恭しく頭を下げ、アッシュはその場を後にした。

 
 

首都上空

 

二人のソキウスを相手に、リミッターが掛かっているにもかかわらず互角の勝負をするリインフォース。
だが、ソキウス達は積極的にリインフォースに攻撃を仕掛けようとはせず、ヒット&アウェイの戦法を取るシックスティーン・ソキウスと
離れた距離から正確な砲撃を行なうナイン・ソキウスの前に、長期戦を強いられていた。
「(やはり時間稼ぎが目的か)」
内心で呟きながらも、甲冑を排除し、スピードを増したシックスティーン・ソキウスの正確な斬撃をかわす。
その隙にリインフォースはこめかみに周り蹴りを放ち、吹き飛ばした。だが、直に態勢を立て直し
「戦闘続行可能」
表情を変えず、機械的に呟きながら再び斬りかかろうとする。だが、シックスティーン・ソキウスは途中で止まり、武器を仕舞う。
「何の真似だ?」
突然の戦闘放棄に警戒をするリインフォース。
「任務完了・・・・・撤退」
リンフォースの言葉を無視し、二人のソキウスは転移魔法陣を展開、その場から姿を消した。

 

アッシュが去った後、飴に群がる蟻の様に、倒れているカナードに近づくがジェット。
「もう・・・・もう・・・やめて・・・・」
涙を流しながら、無駄だと分かっていても懇願するはやて。誰もがガジェットの群れに蹂躙されるカナードを想像した。その時
ガジェットの群れの隙間をすり抜けるように久遠が現れ、カナードの下に駆け寄る。
「カナード・・・・?」
人型に変身し、倒れているカナードの体を揺する。だがカナードは返事をせず、その変わり久遠の手には血がべっとりとついていた。
「カナー・・・・・ド・・・・・カナード!カナード!!」
涙を流しながらカナードに抱きつく久遠。いつも通り、苦笑いしながらも優しく頭を撫でてくれると信じる。
だが、カナードは久遠の声には答えず、バリアジャケットの能力も兼ね備えてる久遠の服を血で真っ赤に染めるだけだった。
その様子を伺うように停止していたガジェットⅠ型の数機が、レーザーで二人を攻撃し始める。

 

久遠は咄嗟に障壁を展開するが、先ほどの戦闘のせいか、上手く展開できず久遠を吹き飛ばした。
「きゃん!」
地面に叩きつけられながらも、どうにか起き上がり、カナードに近づくがジェットを睨みつける。

 

            カナードを傷つけたのは誰だ

 

久遠にもガジェットが近づき、殺傷設定のレーザーを発射する。だが

 

            私の居場所を壊したのは誰だ

 

発射されたレーザーは直撃する前に、久遠の体から発せられる強力な雷によってかき消された。

 

     ユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイユルサナイ

 

久遠の体は放電を続け足元のアスファルトを削り取る。
本来ガジェットには感情という物が無い。プログラミングされた命令を実行するだけの機会である。
アッシュがウィルスを使い、操ったとしても、そのような機能が備わる事は無い。だが、ガジェット達はカナードを攻撃するのを止め、久遠に狙いを定める。
アッシュは、『ここにいる』ガジェットにはカナードを殺すようにウィルスでプログラムを書き換えていた。久遠が途中で割り込んでも
ガジェット全てが目標をカナードから久遠に変更する事は本来ならありえない。
だが悲しみ、憎しみ、殺意、それらを混合した破壊衝動を出す久遠を恐れるかのように、ガジェットはレーザーやミサイルを発射する。
だが、俯いた久遠から発せられた強力な雷がレーザーをかき消し、飛んでくるミサイルを破壊。そして

 

『ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ』

 

顔をあげ、狂ったように空に叫び声を上げた久遠が光に包まれた。
光に包まれた久遠の体は急激に成長し、少女の姿からシグナム位の大人の女性に変身。巫女服を模したバリアジャケットも体格にあわせ、変化する。
光が晴れ現れたのは、大人の姿になり、ガジェットを憎しみを込めた瞳で睨みつける久遠だった。
ガジェットは久遠に対してレーザーやミサイルでの攻撃を先ほど以上に集中して行なうが、
それらは全て、久遠の周りを取り囲むように発生している放電現象によりかき消されてしまう。
ならばと、ガジェットはアームケーブルやアームベルトでの接近戦を試みるが、久遠は手を掲げ
「消えろ」
呟きながら腕を振り下ろす。その瞬間、久遠に接近しようとしたガジェットに雷が落ち、直撃を受けたガジェットは黒焦げになり、崩れ去る。
その光景を普段の久遠からは信じられないような冷たい目で見つめた後、久遠はその場から消えた。
ガジェットが消えた(性格には凄まじい速度で移動した)久遠を探すために捜索を開始する。だが、直に見つけることが出来た。
久遠は倒れているカナードの前でしゃがんでおり、仰向けに倒れているカナードの胸に手を置いていた。
「良かった・・・・生きている」
先ほどとは違い、優しく、温かみのある瞳でカナードを見据え、心から安心する久遠。
だが、隙と見たのか、近くにいた4機のⅠ型がアームケーブルを出し、背中を向けている久遠に接近戦を仕掛ける。

 

その瞬間、久遠の瞳は先ほどの冷たい瞳になり、背中を向けたままゆっくりと立ち上がり
「近づくな」
振り向き様に手の爪を刃物のように伸ばし瞬く間にガジェットを切り裂いた。
接近戦では不利と理解したガジェットは砲撃による集中砲火を選択、瞬く間に久遠とカナードを囲み、全機での集中砲火を試みる。
久遠はその光景を見ても表情を全く変えずに、先ずはカナードに防御結界を張る。
続けて高速儀式魔法を発動、それにより発生した雨雲から強力な雷が久遠に向かって落ちる。その雷を体内に溜め凝縮。そして
「がああああああああ!!!!!!」
溜め込み、凝縮し、自身の魔力も加えた雷を体から一気に放出した。
雷と同時に放たれたレーザーやミサイルをかき消し、雷は取り囲んでいたガジェットに次々と直撃しスクラップに変える。
同時に、戦闘を撮影していたガジェットも破壊され、会議室や端末などに映し出されていた映像が砂嵐に変わった。
そして、一分も経たずに周囲のガジェットは破壊され、瓦礫が辺りを埋め尽くした。
「・・・こ・・・・れ・・・・で・・・・」
敵がいなくなった事を確認した久遠は倒れ、子狐形態になり意識を失う。
そこにはもう、動く物は何一つ無かった。

 
 

一分後

 

「遅かった・・・・・・」
フードを目深に被った人物は機動六課隊舎に到着。カナードと久遠の姿を見て悔しそうに呟く。
「でも・・・生きている・・・・・回復を」
その人物は、倒れているカナードと久遠に手のひらを翳す、すると直にその人物の足元に魔法陣が展開された。
「ラウンドガーター・エクステンド」
カナードと久遠の付近の地面が緑色に光り、その直後、二人を囲うようにドームが形成された。
「回復と防御を兼ね備えてるこれなら。・・・・・やっぱり、ユーノ君のようにはいかないな」
魔法の発動を確認しながら、この魔法を教えてもらった人物の名前を呟き、苦笑いをする。
「他の皆さんは・・・・・回りこむしかないか・・・」
その人物はカナード達に背を向け、その場を後にした。

 
 

機動六課隊舎南出口

 

久遠のことを気にしつつも、シャマルとザフィーラはここを脱出するために皆が避難している場所に向かった。
途中、グリフィスとルキノに肩を借りながら避難所に向かうヴァイス達と合流し、ガジェットの妨害も無く避難場所にたどり着いた。
だが、そこでシャマル達が見たのは、待機部隊員や非戦闘員の手当てをしているアルト、シャーリーの姿だった。
「ごめんなさい・・・・・・ヴィヴィオが・・・・ヴィヴィオが・・・」
シャーリーから事情を聞く5人。突然女の子と人型の虫のような生き物が現れ、自分達を襲い、ヴィヴィオをさらっていった事を話す。
「あの子か・・・・・畜生!!」
ヴァイスは壁を叩き、悔しそうに顔を顰める。

 

涙を流しながら謝り続けるシャーリーをシャマルは優しく抱きしめた。
「シャーリーのせいなんかじゃないわ。勿論、ヴァイス陸曹のせいでもない。とにかく、今はここから離れましょう」
幸い襲撃者は手加減をしたのか、全員怪我をしているものの、全員が一人で歩ける事ができた。
ザフィーラが先頭に立ち、機動六課隊舎から脱出するシャマル達。南口の出口が見え、外に出た瞬間
「下がれ!!」
ザフィーラは吼え、防御魔法を展開、その直後レーザーやミサイルがシャマル達に降り注いだ。
防御魔法のおかげでシャマル達にはダメージは無かったが、
「シャマル・・・・・逃げろ・・・・」
全ての攻撃を防いだザフィーラは倒れてしまう。だが、そんなザフィーラを無視し、ガジェットからミサイルとレーザーが再び放たれた。
「クラールヴィント!防いで!!」「ja!!」
シャマルは防御壁を展開し、待機部隊員も防御壁を張る。その直後ガジェットの攻撃が直撃、爆発。辺りを爆煙が包んだ。
ガジェットがカメラアイで状況を確認する。爆煙が晴れ、見えてきたのは
「はぁ・・・・・はぁ・・・」
意識があるのは、四つんばいになり苦しそうに息をするシャマルだけであり、残りは全員昏倒しているという光景だった。
今置かれている状況に絶望するシャマル。だが、ガジェットの群れはそんな彼女を無視し、逃げないようにと前方を取り囲む。
「これまで・・・・かしら・・・・・」
ヴォルケンリッターとして、仲間と共に幾多の戦場を駆け抜けてきたシャマル。そんな彼女も今置かれている状況には覚悟を決めるしかなかった。
「みんな・・・・・ごめんなさい」
ガジェット達が止めを刺すために攻撃を仕掛けようとしたその時、
「やらせない!!」
叫び声と共に上空から連続して魔力弾が放たれた。それらは性格にガジェットを打ち抜き、次々と破壊した。
突然の声と攻撃に驚きながらも魔力弾が放たれた上空を見るシャマル。するとそこには、
武装局員が着るバリアジャケットに酷似した物を着ており、それに取り付いているフードを目深にかぶっているため顔を見ることは出来ないが、外見からして子供。
右手には先ほどの攻撃を行なったと思われるライフルを持っており、背中には小さいドラム缶のような物を4つ装着した少年と思われる人物が
ゆっくりとシャマルの前に降り立った。
「あなたは・・・・・」
ふらつきながらもどうにか立ち上がり、その人物を見据えるシャマル。
数秒の間を置き、少年はフードを取り、顔を見せた。
「そん・・・・な・・・・・・あなたは・・・・・」
シャマルはその人物を知っていた。だが、驚くしかなかった。なぜなら
「プレア・・・君・・・・」
本来なら、この世にはいるはずの無い人物だからだ。
目を見開き、驚くシャマルを見据え、やわらかく微笑むプレア。そして、急に顔を引き締め、ガジェットの方を向く。
「ガンバレル展開!」
声と共に背中に装着していた四つのドラム缶の様な物『ガンバレル』がプレアの背中から離れ、プレアの左右に浮遊する。
「敵は・・・・・・・・心を持たない機械・・・・・・・いけ!」
合図を受けたガンバレルは四方に飛び、前面の白い蓋のような物が開き、砲身が飛び出す。

 

そこから魔力弾を連続で放ち、ガジェットを次々と破壊していく。ガジェットも、ガンバレルを破壊しようと攻撃を行なうが
プレアが操るガンバレルは一つの意思があるかのように、攻撃を次々と避け反撃をする。
ガンバレルを操作しながらもプレアは飛行を開始、上空のガジェットⅡ型に攻撃を開始する。
放たれるレーザーを全て避け、狙いを定めライフルで打ち抜き、すれ違い様に魔力刃で形成されたサーベルで切り裂く。
プレアとガンバレルへの攻撃を止め、シャマル達に攻撃を仕掛けようとしたガジェット。だが
直にガンバレルの集中砲火にあい、レーザーを一発も放てずに一瞬でスクラップとなった。
「これで・・・・最後!」
最後に残ったガジェットⅢ型にサーベルを突刺し離脱、直後にガンバレルの砲撃が襲い爆散。最後のガジェットがスクラップとなった。
ガジェットの殲滅を確認したプレアはガンバレルを戻し、シャマルに近づく。
「プレア君なの・・・・・本当に・・・・・」
シャマルが確認するように尋ねると
「はい・・・・お久しぶりです」
プレアはシャマルを見据え、微笑みながら答えた。
「そんな・・・・だって・・・・・・あなたは・・・・」
シャマルは目の前の現実が信じられないのか、色々と尋ねようとするが、ダメージと疲労がそれを許さず、バランスを崩し倒れそうになる。
プレアは慌てて駆け寄り、シャマルを抱きとめ、ゆっくりと地面に寝かせた。
そして、カナード達に行なった様にラウンドガーター・エクステンドでシャマル達を緑色のドームで包みこむ。
「もうすぐリインフォースさんやフェイトちゃん、聖王教会の方々も来ます。このままじっとしていてください」
「まだ・・・・カナードと久遠ちゃんが・・・・」
「安心してください、二人にも同じ処置を施しました。久遠ちゃんは、子狐ですよね?」
そう言い、背を向け、去ろうとするプレアをシャマルは呼び止める。
「どこに行くの!?なぜかは知らないけれど、貴方が生きてる事を知ったらみんな喜ぶわ!ヴィータちゃんだって・・・・貴方の事・・・」
プレアは間を置き、呟くように答える。
「今は・・・・皆さんには会えません。それより、お願いがあります。僕の事は・・・皆さんには黙っていてください・・・・・お願いします」
シャマルは何かを言おうとしたが、それを無視しプレアは飛行を開始、その場から去った。

 
 

地上本部地下通路

 

捕獲したギンガを一足先に戦闘装置でアジトまで送ったノーヴェとウェンディは、セイン達の到着を待っていた。
「チンク姉・・・大丈夫っスかね・・・・ヴェイアとも連絡がつかないし・・・・」
浮遊させているライディングボードの上で胡坐を書きながらノーヴェに尋ねるウェンディ。その表情からはいつもの明るさは感じられなかった。
「大丈夫だ・・・・チンク姉ぇは強いし・・・・ヴェイアもヘマをするような奴じゃない・・・・・」
壁に背を預け、腕を組みながら答えるノーヴェ。だが、ヴェンディ同様、その表情からはいつもの明るさは感じられなかった。その時
「セインさん戻りましたぁ!!」
天上から、チンクをおんぶし、ヴェイアに肩をかしたセインが明るい声と共に現れた。
「チンク姉ぇ!」
セインから降りたチンクに駆け寄るノーヴェ。その表情からは嬉しさがにじみ出ていた。
「心配かけたな。姉なら大丈夫だ、ボロボロだがな・・・・・・ヴェイアとセインのおかげで助かった」
心配するノーヴェを安心さあせるように微笑みながら答えるチンク。
「だけど無事で良かった良かった~。ヴェイアも大丈夫っスか?」
先ほどと変わらない態勢でセインの所に近づき、ヴィエアに尋ねるヴェンディ。だが
「・・・・・・・・」
ヴェイアは俯き、黙ったままであった。
「・・・・・・ヴェイア・・・・・どうしたんだ・・・・・・ねぇ・・・・・・」
ヴェイアの様子がおかしい事に気づいたセインは、肩を軽く叩く。その時

 

             ゴブッ

 

突如、ヴェイアは口から血を吐き出し、床に赤い染みを作った。
「えっ・・・・・」
突然の事態に目を見開き、ただ唖然とすることしか出来ないセイン。だが無意識にヴェイアが倒れないように体を支える。
「ヴェイア・・・・・・おい!!しっかりしろ!!」
ノーヴェはヴェイアに近づくが、どうして良いか分からず、ただオロオロするだけであった。
「落ち着けノーヴェ!セインはヴェイアをライディングボードに乗せろ!
ノーヴェはバイタルのチェックを、ウェンディはクアットロと連絡を取ってくれ。応急処置だけでも出来るかもしれない」
そんな慌てる妹達に指示を出すチンク。だが、セイン達はパニックに陥っているため、中々動こうとはしなかった。
「何をしている!!急げ!!!」
一喝し、妹達を奮い立たせる。妹達が行動を開始した事を確認した後、拳を壁に思い切り叩きつけた
「・・・・私の・・・・・・せいだ・・・・・すまない・・・ヴェイア」
チンクの呟きは、誰の耳にも入る事無く、妹達の声にかき消されていった。