起動魔導士ガンダムR短編4

Last-modified: 2011-08-13 (土) 22:39:30

ある昼下がりの日、フェイトは仕事で家を留守にしているリンディ達に頼まれて、夕飯の買い物に出ていた。
「あれも買ったし、これも買ったし…そろそろ帰ろ。」
フェイトは買い物かご片手に家路についていた。
(そういえば…今日家には私とアルフと…シンしかいないんだよね…。3人だけって久しぶりだな…。)
と、そこに、ゲートボール帰りのヴィータが前方からやってくる。
「よう、フェイトじゃねえか。」
「あ…ヴィータ、今日はザフィーラは一緒じゃないの?」
「うん、今日の散歩当番はスウェンとノワールなんだ。」
「ふーん。」
ヴィータはフェイトと並んで歩きながらフェイトと他愛のない会話をする。
「ねえヴィータ、私前からヴィータに聞きたいことがあったんだけど…。」
「ん?なんだよ?」
「ヴィータってさ…シンのこと好きなの?」

 

ズザーーーーーーーー!!!!

 

その瞬間、ヴィータは前方に思いっきりヘッドスライディングする。
「ななななななななななななな何言ってんだテメエ!!!!アタシがアイツのこと好きなわけねえじゃん!!!//////」
ヴィータは顔を真っ赤にして否定する。
「でも…この前のバレンタインの時、チョコ渡したそうじゃない。」
「あれは義理だ義理!!本気じゃねえよ!!///」
「ふーん……。」
フェイトは半信半疑ながらも、ヴィータの言葉を一応信じることにした。
「まったく…アタシがあいつを好きになるわけ…。」
ヴィータは必死に否定したが、頭の中にはシンの笑顔がチラついていた。
「んがー!!アタシの頭から出てけー!」

 

ガサガサッ!

 

「「ん?」」
フェイトとヴィータはふと、近くの草むらで何か動いたことに気付く。
「なんだろ…?」
フェイトは不思議に思い、その草むらを覗いてみる。
「(・ω・)キュ~。」
そこには白い体毛に身を包み、おびえたような表情でフェイトを見る子ウサギの姿があった。
「うわぁ…!子ウサギだ…!」
「なにぃ!?」
ヴィータはフェイトを押しのけ、その子ウサギを抱き上げた。
「どーしたんだおまえー?迷子かー?」
「キュー…。」
「どうしたんだろ、この子泥だらけだね…、野良犬かなにかに追いかけまわされたのかな?」
フェイトは心配そうにその子ウサギの頭を撫でた。
「こいつ元気ないなー、お腹すいてんのかなー?」
「たしか家にニンジンの余りがあったはずだよ、このままじゃかわいそうだし、連れてってあげよう。」
「そうだな…へへへっ、本物のウサギが抱けるなんてうれしいなー♪」
ヴィータはうれしそうにウサギを抱きしめた。

 

ハラオウン家についたフェイトとヴィータは、アルフ用のエサ皿に千切りにしたニンジンを入れて子ウサギに差し出す。だが子ウサギはプイっとそっぽを向いてしまった。
「なんだー?ちゃんと食べないと元気でないぞー?」
「そういえばこの子泥だらけだね、お湯沸いてるしお風呂場で洗ってあげようか。」
「あ、じゃあアタシも入っていい?コイツ抱いてたら腕が泥だらけなんだよー。」
「いいよ、ついでだから私も入るかな。」
「(゚ω゚) Σキュ!!?」
その時、子ウサギはその場から逃げようとする。が、ヴィータに尻尾をつかまれ、そのまま抱きあげられてしまった。
「(>ω<)キューキュー!(ジタバタ)」
「こらっ!お前泥だらけなんだから洗わなきゃだめだぞ!!」
「君…恥ずかしがっているの?まさかね…。」
そして二人と一匹はバスルームへと向かっていった…。

 

「へー、ヴィータってかわいいぱんつはいてるんだね、ウサギ柄だ。」
「んな!?はずかしいから見んな!!///」
フェイトとヴィータは服を脱ぎながら他愛のない会話をしていた。
「おまえ…なんか胸大きくなってねえか?」
「え?そうかな…?自分じゃわからないけど…。リンディさんはそろそろスポーツブラがいるって言ってたな…。」
「いいよなー、アタシもシグナムみたいなボンキュッボンになってみてえなー。」
「そうかな?戦うとき邪魔になると思うけど…。」
「へっ!持ってる奴に持たない奴の気持ちなんて解るかよ!」
ヴィータは脱いだ服を軽く叩きつけるように脱衣籠に入れた。
「キュキュ。」
「おいで、きれいにしてあげるからね。」
フェイトは脱衣籠に入っていた子ウサギを抱き抱えてヴィータと共に浴室に入って行った。

 

「ほーれ、ゴシゴシ~♪」
「キュ///」
子ウサギはヴィータに洗われて真っ白な泡まみれになっていた。
「フフフッ、これじゃあウサギじゃなくて羊だね。」
浴槽の中でフェイトは子ウサギがヴィータに洗われているのを見ていた。
「そーれ、流すぞー。」
ヴィータは子ウサギの上からお湯をかけて泡を洗い流す。子ウサギは濡れた体をブルブルと震わせ、水しぶきをあたりに撒き散らす。
「うわっ!こらっ!」
「はははっ、君やんちゃだねー。じゃあ入れてあげようか。」
フェイトはヴィータから子ウサギを受取り、湯船に入れてあげる。続いてヴィータも、子ウサギをフェイトと挟むように浴槽に入った。
「えへへ、かわいいねー。」
「おまえばっかりずるいぞ!アタシにも触らせろ!」
フェイトとヴィータは取り合うように子ウサギに体を密着させる。
「キュ…キュ…。」
一方子ウサギは二人に挟まれて体を真っ赤にしていた。
「なでなでー♪」
「耳ふにふにだなお前ー。」
「キュ…キューーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!」
その時、子ウサギの体が光りだし、浴室が強い光に包まれる。
「きゃっ!?」
「なんだ!?」
あまりの光の量に、フェイトとヴィータは目を覆う。
そして暫くして目を開けると、そこに子ウサギの姿はなかった。
「あれ?一体どこへ…ん?」
二人はふと、湯船からぶくぶくと泡が立っていることに気付く、そして、
「ぶっはあーーーーーー!!!!!」
その場所から私服姿のままのシンが勢いよく浮かび上がってきた。」
「「!!!!!?」」
「ぶはっ!がはっ!…や、やった!もとに…人間にもどれてるー!!」
シンは天に両腕を高らかに上げて喜んだ。

 

さて、読者のみなさんは何故シンが突然湯船の中から出てきたのか、解らない人もいれば大体察している人もいるでしょう。そこで時間をフェイトとヴィータが会った時間よりも前に戻して、真相を確かめてみましょう。題して

 

「ウサギと狼のグ○メレース 解」

 

ある昼下がりのこと、このSSの主人公の一人、シン・アスカは一人公園である魔法の練習をしていた。
「ぬ~ん、はっ!」
「いいいいよいしょー!」
「ぐぐぐぐ…ぱー!!」
『何意味不明な事してんですか主?』
シンの行動に相棒であるデバイス、デスティニーがすかさずツッコミを入れる。
「ああこれ?変身魔法の練習!」
『変身魔法?なんでまた…。』
「いやさ、もうすぐ俺コズミックイラに帰っちゃうじゃん、それでマユに何かお土産になるようなものはないかなーって、それでユーノの変身魔法見てさ、俺もカワイイ動物になってマユを喜ばせたいって思ったんだ。」
『なるほど。』
「ふっふっふっ、もしこれをマスターできれば…!」

 

シンの妄想の中、そこにはかわいい動物になったシンを抱きかかえるマユ(4さい)がいた。
『おにいたんすご~い!マユちゅーしてあげゆ~。』
ちゅーしてあげゆ~。
あげゆ~
ゆ~
…………
↑エコー

 

妄想終了

 

「いやまいったねコレ!」
シンは一人ニヤニヤしながら悶えていた。
『ダメだこいつ、早くなんとかしないと…。』
デスティニーはシンの将来にとてつもない不安を感じていた。
「中々うまくいかないよなー、なにか呪文が必要かな?でもアルフやユーノは何も言わないで変身してるし…。」
そう言いながらシンは再び構えた。
(イメージするんだ…俺はウサギ、ウサギになるんだ…。うさぎぴょこぴょこみぴょこぴょこ…。)
シンはこれでもかというぐらい集中力を高める、すると突然、彼の体が光りだした。
『おっ…!?』
そして光が晴れると、そこには絵文字で表現するとしたら(・ω・)な子ウサギがチョコンと座っていた。
「キュ」
『おお~!なんだかんだで出来てるじゃないですか。』
「キュー。」
『いや、キューじゃなくて…ん?』
そのときデスティニーは子ウサギ形態のシン、略してシンウサギの様子がおかしいことに気付く。
『もしかして…念話が使えないんですか?』
「キュキュ。(コクリ)」
『も~なにやってんですか、とにかく元に戻りましょうよ。』
「キュ~キュ。」
『え?元に戻る方法が解らない?』
「キュ。」
『…………どーしましょ。』
そんな困り果ててる二人の元に、偶然散歩していたアルフ(こいぬフォーム)がやってくる。
「あれ?こんなところでなにやってんだいデスティニー?シンは?……!」
『アルフさんちょうどよかった!実は…。』
だがアルフはデスティニーの言葉を聞かず、ウサギになったシンのほうをジッと見ていた。
「子ウサギじゃないか~!なんでこんなところに…。」
『それ実は…。』
「そういえばここ最近、ウサギの肉食べてないねえ…。」
「『!!!?』」
アルフの眼は完全に野生に戻っていた。
『た…食べちゃだめですよ!!』
「わかってるよ~、でも一口ぐらいいいだろ?」
『人の話聞いてます!?』
「キュー!!」
命の危険を感じたのか、シンはその場から脱兎した。
「あ!こらまて!!」
アルフはすぐさまシンを追いかけて行った。

 

『……あれ?もしかして私、おいてけぼりですか?』

 

シンはアルフから逃げるため、町中を駆けまわっていた。
「キュ~!」
「こらまてー!!アタシのリゾット!!」
その時二匹の進路方向に、出前のざる蕎麦五人前を片腕で担ぎながら自転車に乗る蕎麦屋の店員が現れた。
「う。うわわわわ!!?なんだぁ!?」
店員はすごいスピードで通り過ぎた二匹に驚き、豪快にすっころんでしまう。
「ば、バカヤロー!気をつけやがれー!!」
店員は頭にそばをかぶりながら二匹に罵声を浴びせた。

 

次に二匹の進路方向に、リンゴがたくさん入った段ボールを持った八百屋のおじさんが歩いてきた。
「のわわわわっ!!!」
おじさんは足元を高速で駆け抜ける二匹に驚き、足がもつれて転んでしまった。そして彼が持っていた段ボールは地面に落ち、リンゴが辺りにぶちまけられてしまった。
「うおわ!!」
「きゃー!!」
そこをOLやら自転車に乗った警官やら走り込みしていた野球部部員やらがたまたま通りかかり、全員がリンゴで足を滑らせすっ転んでしまう。
「ば、バカヤロー!気をつけやがれー!!」
おじさんはぶつけた腰を摩りながら、遠ざかる二匹に罵声をあびせた。

 

とあるオープンカフェに、二十歳前半程と思われる男女がテーブルに座り何かを話し合っていた。
「なあ愛奈…俺達付き合って大分たつよな…そろそろ俺達、次の段階に進むべきだと思うんだ。」
「四郎…?」
男はポケットの中から恐らく給料の3か月分はある指輪を取り出した。
「愛奈、お、俺と、け、けけけけ、結こn「キュ~!!!」
男が最後まで言う前に、彼の顔にシンの生暖かいふわふわウサギボディが直撃する。
「もっは!?」
男はそのまま地面に転がる。そしてシンは後方を確認し、さっさと駈け出して行った。
「い…一体なn「待て~い!!」ほえ!?」
今度はアルフが男の頭を踏みつけ、シンを追いかけて行った。
「い、いいかげんn「ごるぁ!!暴れるんじゃないよ!」ぎゃん!!」
次にメイド服を着たがっしりした体形の店員が、アルフを追いかようとして男を踏みつけて行った。
「し、四郎!大丈夫!?」
女は慌てて虫の息の男に駆け寄った。
「あ、愛奈…俺は君と…添い遂げ…(カクン)」
「し…四郎――――――――!!!!」
辺りにその女の人の絶叫が響いていた…。

 

その後、女子高生のスカートの下をかいくぐったり、壁にペンキを塗っていた人が乗っていた脚立にぶつかり作業員の持っていたペンキが近くを歩いていた高級そうなコートを着ていたおばちゃんに被さったり、女湯に突入したり、ラーメン大好き子居毛さんのカップラーメンをひっくり返すなど、二匹の追いかけっこは街にベッタベタなトラブルをまき散らしていた。

 

「はあはあはあ…追いついたよ!!」
シンを人気のない路地裏に追いやったアルフは、、息を切らしながら彼に一歩一歩にじり寄っていた。そして…。
「キュ!」
「捕まえた!」
シンはアルフに組み敷かれてしまった。
「うえっへっへっへっ!ウサギ肉はやっぱり生にかぎる!」
組み敷いているアルフのよだれが、シンの顔にかかる。
「キュ、キュー!」
「大丈夫、痛みは一瞬だか…らあ!!」
アルフの牙がシンの顔に突き立てられようとしたその時、シンは横に古ぼけたテニスボールが落ちているのを見つけ、それを拾いアルフの口に突っ込んだ。
「ほがっ!?」
驚いたアルフはボールを取ろうとするが、牙が食い込んでなかなかとれなかった。
そのスキにシンは、近くにあった草むらに身を隠した。そして数分後、このSSの序盤の場面に繋がるのであった…。

 

時間を風呂場でシンが人間に戻れたところまで戻します。
「いやーよかった、一生ウサギのままかと思ったよ、魔力が切れたんだなきっと。」
そう言いながら、シンは濡れた上着を絞り水気を抜く。ふと、彼は背後から凄まじい殺気を感じ取り、恐る恐る後ろを振り向く、そこには一糸纏わぬ姿でワナワナと体を震わせるフェイトとヴィータの姿があった。
「てめえ…舐めたマネしてくれるじゃねえか…!!」
「言ってくれればこんな回りくどいことしなくてもいくらでも見せてあげるのに//////」
「………。」
シンは何も言わず、二人の方を向きながら固まっていた。
「アタシの裸見て…ただですむと思うなよー!!」
ヴィータの手に魔力が収束し、シンに向けて放たれようとしたその時だった。

 

ブーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!

 

「「えっ!!!?」」
突然シンは大量の鼻血を吹きだして倒れてしまった。
「シン!」
「お、おい!どうしたんだよ!?」
二人は慌ててシンのもとに駆け寄る。と、その時、
「フェイトいるか?なにか大きな声がしたんだが…。」
「おう、これはこれは…たまにはツルペッタンもいいッスね~。」
浴室に何故かこのSSのもう一人の主人公スウェンと、相棒の体長30センチのユニゾンデバイス、ノワールがやってきた。
「スウェン!?なんでお前ここに…!?」
「いや、さっき公園でデスティニーを見つけて届けようとしたら、テニスボールを口につっこんだアルフとばったり会って…。」

 

そんな彼等の後ろでは、アルフ(こいぬフォーム)の口の中のテニスボールを取ろうと、ザフィーラ(こいぬフォーム)が奮闘していた。
「ふぎー!!」
「ぬー!とれんー!」
ザフィーラはボールを必死に引っ張ったが、アルフの体が床でつるつるすべり踏ん張れず、なかなか取れなかった。

 

「そ、そうか…って。」
フェイトとヴィータはスウェン達に自分の裸が見られていることに気付いた。
「「見んなあああ!!!!!」」
二人の放った魔力法は螺旋を描いて混ざり合い、スウェンとノワールに襲いかかった。
「はっ!」
スウェンはとっさに横っとびでそれをかわした。
「にょおおおおおぉぉぉぉぉ………!!!」
逃げ遅れたノワールはその光にのまれていった…。

 

ポンッ!
「うおっ!よし抜けた!!」
「あがが…助かったよザフィーラ~。」

 

「いや~エライ目にあった…ホントゴメン。」
数十分後、目を覚ましたシンは鼻にティッシュを突っ込みながら頭をポリポリ掻きながらフェイト達に謝罪した。
「まったくだよ、危うくアンタを食べちゃうとこだったじゃないか。」
「おかげでとんだとばっちりッス…眼福でしたけど…。」
アルフ(人型)は痛むあごをさすり、ノワールはテーブルの上で包帯で全身ぐるぐる巻きで横たわっていた。
「うん、ごめんな…それにしても何かすごいショック受けたのか、家に連れてこられてからの記憶がないんだよ、なんかすっげえの見た気がするんだけど…。」
「ああ、それはな…。」
スウェンがシンに説明しようとしたその時、彼の首筋にバルディッシュザンバーの刃が当たる。
「黙っててくださいね。」
「はい。」
「う~ん…抱きしめてくれたときのヴィータの顔がめちゃくちゃかわいかったのは覚えてんだけどな…。」
「んな!?」
ヴィータは恥ずかしさの余り、横にあった刺身用の皿数枚をシンの顔に投げつける。

 

スココココ!!

 

「オンドゥル!!」
全弾命中した皿を縦に顔にめり込ませたシンは、そのままひっくり返ってしまった。
「忘れろ!今すぐ忘れろ!」
「大丈夫かシン…ハッ!これはもしや!」
シンに駆け寄ったスウェンは、彼の顔を見てあることに気付く。
「シンが世界の破壊者に!」
『すべてを破壊し、すべてを繋ぐんですねわかります。』

 

「うう…変身魔法はもうこりごりだ!」
顔に皿をめり込ませながら、シンはもううんざりといった顔をしていた。
その後、シンが変身魔法を使うことはしばらくなかったという…。