起動魔導士ガンダムR短編5

Last-modified: 2011-08-13 (土) 22:40:29

クリスマスに降り積もった雪も解け始め、バレンタインというイベントも終わり世間は受験やら進級やらで賑わっていた2月末のある日の事……。

 

「へーーーーーくしっっっ!!!」

 

八神家に豪快なくしゃみが鳴り響いた。
「なはは、でっかいくしゃみやなあスウェン。」
「ズビッ……すまない……。」
はやてはベッドで体を起こしながら鼻水をすするスウェンを見て思わず苦笑する。
「やっぱり夜中に天体観測ばっかりしとるから体が冷えてもうたんかな?とにかく今日は安静にしているんやで。」
「わかった……。」
スウェンは真っ赤な顔で頷きながら布団に潜り込む、それを見届けたはやてはふふっとほほ笑んでそのまま車いすを動かして部屋から出て行った。
するとタイミングを見計らったかのように部屋に置いてあったバスケットからノワールがヒョコッと顔を出した。
「いやー、まさかアニキが風邪をひくとは……珍しい事もあるんですねえ。」
「ああ、一瞬の気の緩みでこの様だ……まだまだ俺も鍛錬が足りないな、というかノワール、ここに居ると俺の風邪がうつるぞ?」
「大丈夫ッス!オイラユニデバ(ユニゾンデバイスの略)なんで風邪ひきません!」
「そうなのか……?ちょっと羨ましいな……。」

 

そんな風にスウェンがノワールと会話していた頃、はやてはヴォルケンズが集まっている居間で溜息をついていた。
「はあ……まさかスウェンが風邪をひくとはなあ……。」
「最近はなんとかって風邪が流行っていますからね、多分スウェンもそれに掛かっちゃったと思いますよ。」
「へへへっ、アイツも軟弱だなー、鍛えてないからそうなるんだよ。」
「確かに……スウェンはお前と違って頭がいいからな。」
「シグナムてめえ!それってアタシがバカだって言いたいのか!!?」
「お前等……病人がいるのだぞ?少し静かにしないか。」
喧嘩を始めようとするシグナムとヴィータ、それをザフィーラが冷静に止めた。
「う~ん、みんなスウェンが心配なのか……ちょっとピリピリしていますね。」
「これはいけませんね……主、この空気をどうにかしないと。」
「そうやなあ……あ!そうだ!」
リインフォースの進言ではやては何かを思いついたのか、手をポンと叩き頭上に電球マークを浮かばせた。
「思いついたって……何がですか?はやてちゃん。」
「みんな……よく聞いてな、私らはスウェン達に命を救ってもらった、今こうして皆と過ごせるのも、去年のクリスマスの日にスウェン達が体を張って私らを守ろうとしてくれたおかげや。」
「はやて……。」
「…………。」
はやての言葉にヴォルケンリッターの面々は途端に口を噤んだ。
「だからな……今日はスウェンの風邪が早く治るように皆で看病してあげよう!それが私らに出来るスウェンへの恩返しや!」

 

それから数十分後……スウェンは体から発せられる熱が原因で流れる大量の汗を不快に思いながら、何度も何度も寝返りをうった。
「だめだ……全然眠れない。」
「まあ普段は眠る時間じゃないッスからねー、何かマンガでも持ってきましょうか?」
「ああ、よろしく頼む、次いでに水も持って来てくれれば……。」
その時、スウェンが寝ている部屋のドアが開け放たれ、はやてがどかどかと部屋に入ってきた。
「スウェーン!お腹すいたやろ?おかゆ作ってきたでー。」
「はやて……?」
突然のはやての来訪に、スウェンは目を丸くして彼女の顔を見る、ちなみに彼女の車いすはヴィータが押している。
「そういえばもう昼ごはんの時間か……時間の感覚が全くなくなってきているな。」
「そりゃえらいこっちゃなー、まあなるべく食べて力つけんと治るものもなおらへん、それじゃヴィータ、スウェンの体を起こしたってーな。」
「おう!それじゃちょっと失礼するぜ。」
そう言ってヴィータははやての指示に従い、ベッドで横になっていたスウェンの体を起してあげた。
「お前……意外と軽いんだな。」
「まあな……ありがとうヴィータ。それじゃ……。」
スウェンはヴィータに一言お礼を言うと、おかゆを食べるためあたりをきょろきょろと見回す。
「はやて……スプーンは?」
「ああ、私が持っているで。」
そう言ってはやてはお盆の影からスウェン用のスプーンを出した。
「ありがとう、それじゃそれを渡してくれ……。」
「何言うとんねん!スウェンは病人や!私に任せとき!」
「は?」
スウェンははやてが何を言っているか判らず、首を45度傾げる。一方のはやてはスプーンでおかゆを一口分掬い、スウェンの口元にそれを差し出した。
「はいスウェン、あーん。」
「は……はやて!?」
自分が予想していなかったはやての行動に、スウェンは思わず目を丸くする。
「ひゅーひゅー、羨ましいですねアニキー。」
「茶化すんじゃないノワール……はやて、さすがにそれはちょっと恥ずかしい……。」
「何言うとん!病人は大人しく看病されとき!。」
はやてはぐずる子供をしかるお母さんのような目でスウェンを見ながらスプーンを差し出す。対してスウェンは観念したのか、顔を少し赤らめながらスプーンを口の中に入れる。
「どう?おいしい?」
「……ああ。」
上目使いで質問してくるはやてに、スウェンはただただ口の中のおかゆを噛みしめながら頷いて答えた。
「そっか!よかった!それじゃもう一口……今度はふーふーしてあげるで!」
「…………。」

 

それから数十分後、何だかんだでおかゆを食べきったスウェンは疲れ切った顔で天井を仰ぎながらベッドに横たわっていた。
「何でだ……何でおかゆを食べるだけでこんなに疲れるんだ……?」
そんなスウェンの様子を、ノワールはニヤニヤしながら見守っていた。
(多分照れから来ているッスね……言わないけど。)
するとその時、スウェンの着替えを持ったはやてが部屋に入ってきた。
「スウェーン、そろそろパジャマとか着替えた方がええんじゃない?汗でベタベタやろ?」
「ん?ああ……。」
そう言ってスウェンは自分でパジャマのボタンをはずそうとするが。
「ああん、具合悪いんだから大人しくしとき、おーい、シグナム、シャマル、リインフォース。」
はやての合図によって入ってきたシグナム達によって中断される。
「は、はやて?何を?」
「決まっているやろ~?皆、お願いな?」
「了解しました。」
「ハ~イ。」
シグナム達ははやての合図と共に、三人がかりでスウェンの汗でびちゃびちゃなパジャマを脱がし始める。
「よ……よせ!自分でやれる!」
「まあまあ、そう遠慮するな……お前は病人なのだから。」
「美青年の服を脱がすなんて……シャマルちょっとドキドキしてきちゃった。」
「主、パンツも濡れているみたいですが?」
「脱がしたってーな。」
「!!!!よ……よせええええええ…………!!!」
「ううう……可愛そうなアニキ!代ってあげられるものなら代ってあげたい!是非!」

 

その数分後、ベッドの上で皆に下着とパジャマを新品に取り換えられたスウェンがさめざめと泣いていたそうな……。

 

その日の夜、はやてはスウェンの様子を見に彼が寝ている部屋の前にやってきた。
「いやあ、今日のスウェンはちょっと可愛かったなあ……あんな顔もするんや……。」
そんな先程の出来事を思い出して思わず思い出し笑いをしながら、音をたてないように扉を開いた。
「スウェンは……おー、良く寝とる。」
スウェンは毛布を被りながらすうすうと寝息をたてて眠っていた。はやてはそんな彼に近付き額に自分の手を当て熱を測る。
「熱は……うん!もう大分下がっているみたいやな。」
そう言いながらはやては眠っているスウェンの顔を見る。
「ふふふ、いつもの無愛想な顔と違って寝顔はかわいいんやなぁ…………。」
その時、はやての心の中にある欲望が生まれる。
「……今スウェンは眠っているんやな、なら……いやいや!」
はやては心の中で葛藤しながら頭をブンブンと横に振る。
「流石にそれはちょっとアカンやろ!いやでも……ちょっとだけなら……ええよな?」
そしてはやては何かを決意したのか、一度深呼吸してスウェンに掛かっている毛布をめくり……。

 

次の日の朝、ヴィータ達ヴォルケンリッターはちょっとした混乱状態に陥っていた。
「ね、ねえ!はやてちゃんの姿が見えないんだけど!?」
「ヴィータ!貴様一緒に寝ていたんじゃないのか!?」
「わかんねえよ!朝起きたら隣に居なかったんだ!一体どこへ……!?」
ヴィータ達ヴォルケンリッターの面々は突如姿を消したはやてを心配してうろたえていた。
「一応家中は探した、あと探していないのは……。」
一同は一斉にスウェンとノワールの居る部屋を見る。
「とにかく……スウェン達を起こして主がどこに行ったか聞いてみよう。」
「わかった。」
ヴォルケンリッター達はコクンと頷くと、スウェン達の居る部屋の扉をノックした。
「スウェン、ちょっといいか?」
シグナムが代表して声を掛けるが、返事はなかった。
「まだ眠っているのかしら?」
「ったく、こんな一大事に何してんだアイツは……!」
「無茶をいうなヴィータ、スウェンだって病み上がりなのだから……スウェン、入るぞ。」
ザフィーラ(人型)はヴィータを叱ると、代表してドアノブに手を掛け部屋に入った。
部屋にはベッドの中で毛布に包まっているスウェンがいた、しかしシグナム達は、そのスウェンが眠っているベッドに違和感を覚える。
「……?もう一人だれか寝ている」
するとそのヴィータの声に気付いたのか、スウェンが眠い目を擦って体を起こした。
「ん……?みんな、どうしたんだ?」
「起こしてすまんなスウェン、実は主が……。」
その時、スウェンの体に掛かっていた毛布がずるりと床に落ちる。その瞬間部屋にいた全員が、その毛布の下にいた人物に目を見開いた。

 

「う~ん、むにゃむにゃ……。」

 

そこにはパジャマ姿のまま幸せそうに寝息を立てて猫のように丸まって眠っているはやての姿があった。
「ん……?ほぇあ!!?」
スウェンは隣にいたはやてに気付くやいなや一度も出したことのない声を出して驚いた。
「は……はやて!?お前なんでこんな所で寝ているんだ!?」
「うへへー……スウェンったらええにおい……。」

 

一方シグナム達ヴォルケンリッターの頭の中ではある方程式が成り立っていた。

 

はやてがスウェンのベッドの中に居る+二人とも微妙に服がはだけている=昨夜はお楽しみでしたね=13歳&9歳なので児童ポ○ノ法に違反=友○=その後、彼等の姿を見た者はいなかった……。

 

「スウェン……ちょっとお話しようか。」E:レヴァンティン
「おいちょっと待てお前等何を勘違いしている、というかシグナムそれはなのはの台詞だ。」
「スウェン、○愛は怖いのよ?この前もうっかり口を滑らせたアナウンサーが病気という名の友○を受けて番組を降板したんだから。」E:クラールヴィント
「お・ま・え・は!なんの話をしている!!?」
「とりあえずスウェンをボコればいいのかー?」E:グラーフアイゼン
「うん。」チェンジビーストモード!
「だから人の話を聞けお願いしますからああああああ!!!!!」

 

一方リインフォースは皆と少し距離を置いてノワールから事情を聞いていた。
「つまり……我が主はちょっとした好奇心でスウェンのベッドにもぐりこみ、そのままそこで眠ってしまったというわけか。」
「服がはだけているのも一つのベッドの中で2人で密着して熱くなっていたからッス。まあみんなはいきなりの事で混乱しているから正しい判断なんて出来る訳ないけど……。」
「ていうか止めろよ。」
「ええー?だって面白そうなんスもん、アニキのあんな顔中々拝めないッスよ~。」

 

ボキッッッッッ!!!!

 

「「あ、もげた。」」

 

~後日談~

 

「いーっきし!!あかん、私も風邪ひいてもうた……。」
はやてはすっかりスウェンの風邪をうつされてしまい、自分の部屋で鼻水をすすりながらベッドに横たわっていた。その様子を見てシャマルはやれやれといった感じではやての額に濡れタオルを置きながら溜息をついた。
「まったく……風邪を引いている子のベッドの中に一晩潜り込んだりするから……。」
「だってぇ……もう治ったと思ったんやもん……。」
その時、はやて達のいる部屋に彼女の着替えを持ったスウェンとノワールが入ってきた。
「はやてー、着替えの時間だぞー。」
「オイラ達が体を隅々まで拭いてあげるッス!」
「え!?ちょ!?おまっ!?」
スウェン達のいきなりの提案に、はやては思わずベッドから転げ落ちそうになった。
「え……ええって!シャマルにやってもらうから!」
「そう遠慮するな、この前の“お礼”をさせて欲しいから……。」
そう言ってにっこり笑うスウェンはじりじりとはやてとの距離を詰めていた。
「スウェン!?もしかしてこの前の事根に持ってる!!?」
「もってへんもってへん。」
「「「関西弁!!!?」」」
いつもと違う様子のスウェンに、周りに居た人間は思わず恐怖を感じていた。
「さーはやて、風邪が悪化するといけないからさっさと済ませような、ノワール、支えておいてくれ。」
「合点ッス。」
「あわわわわ!!堪忍やでスウェン!私はあんさんの事を想って!ひっ……ひえええええええ!!!!!」

 

後に現場に居合わせたシャマルはこう語る。
「無表情な子がニコニコ笑っうと逆に怖いもんなんですね……長い間生きて来て初めてしりましたよ。」