魔動戦記ガンダムRF_最終話

Last-modified: 2011-08-13 (土) 23:14:32

ユニウスセブンの落下から数分後、地上にフォーチュンガンダムの存在を確認した
アークエンジェルらコズミックイラ艦隊はミッドチルダへの降下を試みていた、しかし……。
「降下できない……!?一体どうして!?」
「そ、それが所属不明のMS隊とデスティニーが降下した辺りに強力な結界が張られいまして……!」
『艦長!俺だけでも……MS隊だけでも降下させてくれ!』
『シンだけ戦わせるわけにいかなねえだろ!』
スウェンやアウル達からの提案に、リンディは首を横に振る。
「無理ね……戦艦で通れないのならMSだって無理よ……それにアナタ達のMSに大気圏突入能力があるの?」
『くっ……!』
「とにかくこちらでも降下する方法を探します、なので皆さんはその場で待機していてください!」
マリューの一言に、MSに待機していたスウェン達は黙り込んでしまった。

 

(シン……!フェイト……!すまない……!)
スウェンもまた、何も出来ない自分の無力さに怒りを感じ、レバーを握る手の力を強める。
そんな彼の様子に気付いたノワールは気持ちを落ち着かせようと話しかけてくる。
「アニキ……落ちついてください、シンさんなら大丈夫ッスよ、デスティニーもいるし……。」
「何を言っているんだ……!いかにシンといえどあんな数のMS相手に出来る訳……!」
「大丈夫ッス……デスティニーにはとっておきの切札があるッス、フェイトさんとバルディッシュもいるし……だから今はオイラ達に出来る事をしようッス。」
「……?」
スウェンはノワールのその自信満々の理由が解らず、ただただ首を傾げた。

 

一方その頃、先に地上に降下していたデスティニーガンダムに乗ったシンは、ゲイザー率いるMS隊の猛攻を必死に回避していた。
『あっはっはっは!どうしたの!?逃げてばっかりじゃつまらないよ!』
「くっ……!」
シンは必死になってセンチュリオ・フォーチュンのビーム攻撃を回避しながら反撃を試みるが、すべて謎のフィールドで打ち消されてしまう。
「あんなシールド反則だろ!こっちはあんまり動き回れないっていうのに……!」
そう思いながらシンは隣のフェイトを見る、フェイトはデスティニーガンダムが動く衝撃で骨折した足に痛みが伝わって苦悶の表情を浮かべていた。
「し、シン……私の事は構わないで……!」
「バカ!そんな事出来る訳ないだろ!!?」
『シン・アスカ!前です!』
その時シンはバルディッシュに言われて視線を正面のモニターに向ける、すると目の前からフォーチュンガンダムからのびてきた触手に殴られ、そのまま無人島まで吹き飛ばされてしまう。
「うわああああ!」
「うっ……!」
コックピットに落下の衝撃が伝わり、フェイトはシンが座っているシートに必死にしがみつく、そしてデスティニーガンダムの機体の色がEN切れにより灰色に変わってしまった。
「マズイ!エネルギーが……!」
「このままじゃ……!」

 

その時、倒れているデスティニーガンダムの周りにセンチュリオの部隊と巨大なフォーチュンガンダムが降り立ってくる。
『さて……邪魔者はこれで君達だけになった、これまで散々邪魔をしてくれた礼だ……
苦しまないよう一瞬でカタをつけてあげるよ。』
「くそ!どうしてお前達はこうまでしてこの世界を破壊したいんだ!?理由を言え!」
「君もやっぱり……お父さんと同じで……?」
するとゲイザーはコックピットの中で狂ったような笑い声をあげた。
『あっはははははははははは!!!!僕をあんな甘ちゃんと同じ目で見ないでくれないか!?
僕はただ許せないだけさ……!折角クソみたいなCEの世界の歴史を変えようとしたっていうのに!
あの豚共が欲望を丸出しにして総てを台無しにしてしまったんだ!』
「何……!?あなた何を言っているの!?」
『この際ついでだから教えてやるよ……!僕やそこにいるデスティニー!
それにノワールやフリーダムは……平行世界からやって来たMSをユニゾンデバイスとして改造されたんだ!
つまりそこのユニゾンデバイスは……元々はガンダムの姿をしていたんだ!』
「平行……世界……!?」
シンはゲイザーの言っている事が理解できず、隣にいたユニゾンデバイスのデスティニーを見る。
するとデスティニーはぽつりぽつりと真実を打ち明け始める。
「……あの子が言っている事は本当です、私達はかつてこのガンダムそのものでした、けどかつていた私達の世界は……キラさんやラクスさん達が世界を統治したせいで滅んでしまったのです。」
『本当はユニウスセブンは……ザラ派のテロリストによってCEの地球に落ちる筈だった……僕達の世界ではそうなったんだ、その結果連合とザフトは再び戦争を始めて、両者血みどろになるまで戦った……でもそれだけならどれだけよかったか……!』
「何……!?どういう事なの!?」
フェイトもまた、シンと同じように話がいまいち理解できずに動揺していた。そんな彼女に構うことなくゲイザーは話を進める。
『戦争に……ラクス・クライン率いるアークエンジェルが介入してきたんだ、デュランダルに命を狙われたとかで……彼女達は戦争を止めると言って戦場を荒らしまわった、彼女達さえいなければ死ななくて済んだ人間だって沢山いたのに……!』
「極めつけは……オーブで戦犯であるジブリールを逮捕しようとしたザフト軍を邪魔した事ですね、
彼らが介入したせいでザフトはジブリールを逃し、月に逃げたジブリールは連合の最終兵器……
レクイエムを使ってプラントを半壊させました……それが後の滅びの引き金になったのです。」
『戦争はクライン一派の勝利に終わった……でも彼女達のせいで大切な人を失ったプラントの人々が反乱を起こし、クライン一派をことごとく処刑した……。』
「そしてザラ派が再び政権を取って、前大戦で消耗しきった地球軍に対して改修したジェネシスを撃ち込んだ……何十年後かにはコーディネイターも絶滅したんです……。」
「「…………。」」
ゲイザーとデスティニーの話に、シンとフェイトは呆気に取られて何も言えずにただただ黙りこんでいた。
『僕達はそんな未来が嫌で……僕達を大切に扱ってくれた人達が不幸になるのがイヤだった!だから僕等はヴィア母さんに回収されて姿を変えてもらい、平行世界であるアンタ達の世界にやって来た……念には念を入れて態々7年も前に戻って……!』
「フェイトさん、アナタのお母さん……プレシアはヴィアさんや私達に協力してくれたんです、アリシアさんをある次元世界で見つけたある技術で蘇生させるために……。」
「二年前俺と家族を助けてくれた時は何も言ってくれなかったけど、まさかそんなことが……。」
「じゃあシンが私達の元に来たのも……。」
フェイトの中に沸き上がった疑問を、デスティニーは肯定する。
「……本当は事故ではなくプレシアの仕業だったんです、スウェンさんも同様に……ジュエルシードを揃える為に私達とのユニゾンが同調できる手駒が必要だったんです、もっともスウェンさんはリニスさんが逃がしちゃいましたが……。」
『後は君達の知っての通りだ、本当はコズミックイラの人間によって引き起こされる筈だったコペルニクスの悲劇はあの豚によって引き起こされ、ヤキンドゥーエ戦役が勃発した……折角僕達が阻止しようとした戦争を、あの豚が自分勝手な欲望で引き起こしたんだ。そして僕は悟った……もう僕等の世界は救えないんだと、そしてこの世界も同様、放っておいたら他の世界にも不幸を撒き散らす。』
「そ、そんな事ある訳ないだろう!時空管理局がいるのに……!」
『その時空管理局に!あの豚が所属していたんだろうが!!そしてあの豚レベルの下衆があの組織にはまだウジャウジャいる……シン・アスカ!僕のしている事は間違ってはいない!むしろ他の次元世界を守っている事になるんだ!』
「そんな……!」

 

一通り話を終え、ゲイザーは再びシン達にトドメを刺そうとフォーチュンガンダムの巨大な触手を振り上げた。
「さて……冥土へのいい土産話はできたかい?そろそろここでお別れといきましょう……あの世で首領とプレシアが待っている!」
その光景を見たシンは、思わず隣にいたフェイトを抱き寄せた。
「ごめんフェイト……どうやらここまでみたいだ、こんなことなら先に君を降ろしていれば……。」
「ううん、いいんだよ……むしろ死ぬ瞬間にシンと一緒にいられて嬉しいよ。」
「バカ……。」
そしてフォーチュンガンダムの触手が、シン達の乗るデスティニーガンダムに振り降ろされた。

 

その瞬間シンとフェイトは互いに抱き合いながら目をぎゅっと瞑り、最後の時をじっと待ち続けた。

 

「……あれ?」
「攻撃が来ない……?」
しかしその瞬間がいつまでも訪れずシンとフェイトは恐る恐る瞳を開いた、すると彼等の眼前には信じられない光景が広がっていた。

 

『な……!?貴様!!』
『この二人は……殺させない!』
なんとEN切れになって動けない筈のデスティニーガンダムが、振り降ろされたフォーチュンガンダムの攻撃をアロンダイトで受け止めたのだ。
「な……どうなっているんだコレ!?」
「あれ?デスティニーはどこにいったの?」
『私はここですよフェイトさーん!』
するとデスティニーガンダムのコックピットのモニターにユニゾンデバイスのデスティニーの顔が映し出された。
「デスティニー!?何をしているんだそんな所で!?」
「まさかアナタ……ガンダムとユニゾンしたの!?」
『この子は元々同一の存在……こういう事だってできちゃいます……よっと!』
デスティニーはそのまま触手を打ち払うとそのまま羽を展開して上空に舞い上がった。
『クソッ!往生際の悪い……!』
『私はもう芸術家きどりの脚本家が書いたようなバッドエンドはイヤなのですよ!アナタみたいに何もかも諦めて投げやりになるより最後まで抗ってみせます!』
「デスティニー……!」
シンは操縦桿を握ると周りにいたセンチュリオ・フォーチュンを次々と持っていたアロンダイトで切り裂いていった。
「すげえ!前よりも反応速度が上がっている!」
『当然です!どれだけ長い間戦い続けたと思っているのですか!』
「でも……敵も相当多いよ、私も手伝えればいいんだけどこの怪我じゃ……。」
「いやいやいや、その前にサイズ差が相当あるだろ!とにかくここは俺に任せとけ!」
「うん……。」
シンに諭されたフェイトはそのままコックピットの端っこでシュンとしながら体育座りした、するとその光景を見ていたモニターに映っていたデスティニーはにやりと笑った。
『フェイトさん……我が主の手伝いがしたいですか?』
「デスティニー……?」
そしてデスティニーは必死に敵の攻撃を回避しているシンに話しかける。
『主……この状況を打破する策が一つあります。』
「お前……色んな事俺に隠しているんだな、それで策ってなんだ?」
『それは……。』
『無駄話している暇があるのかい!?』
その時、フォーチュンガンダムから発せられたビーム光線がデスティニーガンダムに襲い掛かり、シンはそれをビームシールドで防がせた。
「だあ!こっちは取り込み中だ!」
『フェイトさん……バルディッシュを私に貸してください。』
「バルディッシュを……?」
『説明は後でいくらでもします!早く!』
「う、うん!」
そう言ってフェイトは待機状態のバルディッシュをデスティニーの顔が映っているモニターに翳す、するとバルディッシュは光に包まれ、そのままモニターの中に取り込まれていった。
「バルディッシュ!?」
「と、取り込んだ……!?」

 

―――バルディッシュ、私は……アナタに憧れていた……羨んでいました。―――

 

―――何度も何度も辛い目に遭うマスターを支えて、幸せな未来に導いて行くアナタを……。―――

 

―――リニスさんがアナタに託した思いが、きっとアナタに力を与えたのでしょうね……。―――

 

―――だから私も……アナタみたいになりたいと思っていたのです。―――

 

―――その夢が……想いが……今、叶います。―――

 

『なんだ!?デスティニーガンダムが光り出した……まさか!?』
何かを察知したゲイザーはセンチュリオ・フォーチュンの部隊にデスティニーガンダムを攻撃させる、しかし次の瞬間デスティニーガンダムから強い光が爆発的に広がって行き、辺りを飲み込んでいった。

 

「な、なんだ今の光……!?」
突如発生した光で腕を目で覆っていたシンは、光が収まったのを確認すると腕を下ろした、そして彼の目の前には優しい光の空間が広がっていた。
「な、何だコレ……!?」
「シン……。」
すると隣からフェイトの声が聞こえ、シンはそのまま声がした方を向く、そして……彼女の姿を見て驚きのあまりひっくり返りそうになっていた。
「フェフェフェフェイト!?服はどうしたんだ!?真っ裸だぞ!!」
「し、シンだって……一体どうなってるのコレ!?」
すると彼等の目の前にまな板程度の大きさのスクリーンが出現し、そこにユニゾンデバイスのデスティニーの姿が映し出された。
『主とフェイトさんの意識を私の中に取り込んだのです、これで……セットアップした時のようにガンダムを自分の体のように動かすことができます。』
「そ、そんな事ができるのかお前!?」
「な、なんで裸かはとりあえず置いといて……ていうことは私も……?」
『ええ、いつものようにセットアップしてください……アナタ達なら息が合う筈です。』
デスティニーの指示を受け、シンとフェイトは互いに手を繋ぎ、瞳を閉じた。
「わかった……信じるぞデスティニー。」
「それじゃいくよ!シン!」
そして二人は互いに繋いだ手を頭上に掲げた。

 

「バルディッシュ……!」
「デスティニー……!」
「「セェーット!!!アーーーーーップ!!!」

 

最終話「gnited ~ETERNAL BLAZE~」

 

次の瞬間、デスティニーガンダムの手元にMSのサイズに合わせた巨大なバルディッシュアサルト・ハーケンフォームが出現し、デスティニーの両腕に銀色の籠手が装着される、さらに背中のエクストリームブラストの羽の色が赤から金色に変色していった。

 

そしてデスティニーガンダムの変化を見ていたシンとフェイトは、思わず興奮が入り混じりながらも驚きの声をあげていた。
「ガンダムに……!バルディッシュが……!」
「すげえ!すげえよデスティニー!いや……バルディッシュも!」
するとどこからかバルディッシュの声がシン達のいる場所に響いてきた。
『私も驚いています……まさかデスティニーにこんな力があるなんて……。』
『名付けて“バルディッシュデスティニーガンダム”と言った感じでしょうか?ちと長い名前ですが……。』
「ふふふ、そうだね……それじゃ行こう!」
そう言ってシン達は目の前に立ちふさがるゲイザー達の軍団に向かいあった。

 

一方、バルディッシュデスティニーの奇跡のユニゾンを目の当たりにしたゲイザーは、フォーチュンガンダムのコックピットの中で憎たらしく舌打ちした。
「チッ……!ただガンダムにバルディッシュを持たせた程度で……!こいつらが止められるか!いけ!」
ゲイザーはセンチュリオ・フォーチュンの部隊に指示を出し、バルディッシュデスティニーに突撃させる。
「来た……!いくよ!デスティニー!」
『はい、フェイトさん!』
「やるぞバルディッシュ!」
『イエッサー』
対するバルディッシュデスティニーもバルディッシュアサルトを構え、そのままセンチュリオ・フォーチュンの部隊に突撃し交戦を開始した。
「どうするんだ!?相手はシールドを持っているんだぞ!?」
『そんなのは問題になりません、ねえバルディッシュ?』
『はい、力ずくで切り裂きます。』
その時、センチュリオ・フォーチュンの一機がバルディッシュデスティニーに向かってビームソードを振り降ろす、そのままビームソードはバルディッシュデスティニーを真っ二つに切り裂いてしまった、しかし……。
『それは残像です。』
「フェイト!」
「うん!」
切り裂かれたバルディッシュデスティニーはそのまま蜃気楼のように消え去ってしまい、その右隣に金色の翼を展開したバルディッシュデスティニーが現われ、ビームソードを振り降ろしてきたセンチュリオを横に真っ二つにした。
「はああああ!!!」
そしてバルディッシュデスティニーはそのまま周辺にいたセンチュリオを次々と切り捨てて行く、その動きはまるでバルディッシュとデスティニーのスピードが相乗し、神速を超えたこの世ならざる動きを見せていた。
センチュリオの部隊もただやられているだけではなく、動き回るバルディッシュデスティニーをやられている仲間もろとも銃撃して仕留めようとする、しかしバルディッシュデスティニーは神速を超えた動きに加えエクストリームブラストによる幻影の出現もあり、攻撃は当たることなくそのままバルディッシュアサルトの錆になっていった。

 

『く……!?まさかこんなことが……!!?』
バルディッシュデスティニーの一騎当千の動きを見てゲイザーは歯ぎしりをしていた、折角イヤな思いまでしてじっくりと準備していたセンチュリオの部隊が、まるで人形のように何も出来ず蹂躙されているのだ。
『このまま……このまま負けてたまるか!』
そして激昂したゲイザーはフォーチュンガンダムの腹部に設置された怪物のような口を開かせ、そこから特大のビーム砲をセンチュリオと交戦しているバルディッシュデスティニーに向かって放った。

 

『!敵MAから巨大エネルギー反応!』
「シン!」
「ああ!一緒に!」
それに対しバルディッシュデスティニーは右腕を前に突き出し、ビームシールドを展開する……だがそれだけにはとどまらず、シールドの前にはさらに金色の魔力障壁が重なる様に展開される。
そして襲いかかって来たビーム砲から完全に自分の身を守った。
『バカな子……今ので手駒のMSもほとんど消失してしまいましたね。』
「あとはアイツだけか……!」
そう言ってバルディッシュデスティニーはフォーチュンガンダムへに向き合いバルディッシュアサルトを構える。するとコックピットにゲイザーの狂ったような笑い声が響いてきた。
『ククククク……!!!アハハハハハ!!!まさかこの形態を使う事になるなんて……つくづく忌々しい奴等だよ!』
「どうする!?まだ続けるのか!?」
「もうこれ以上酷い事をするのはやめて……!そんな事をしたって誰も……アナタだって幸せになれない!」
『フェイトさん……あの子にはもう何を言っても無駄です。』
その時、フォーチュンガンダムの腹からMSサイズのロボットが這い出てきた。
『こうなったらこのMS形態で直接引導を渡してやる……!』
そしてフェイトはフォーチュンガンダムの姿を見てある事に気付く。
「なんだろうあれ……デスティニーが禍々しくなったような姿をしている……。」
『あれは闇の書の闇に残された主の蒐集された魔力データを元に作られたのでしょう。』
「蒐集……まさか……!」
シンがある考えに至ったその時、フォーチュンガンダムはバルディッシュデスティニーに向かって手のひらをかざし、そこに桜色の魔力を収縮させていく。
『お二人とも!回避指示を!』
『スターライトォ……ブレイカ―!!!!』
次の瞬間、フォーチュンガンダムの掌から桜色の光線が放たれ、デスティニーはそれを紙一重で回避する、そして遮るものが無くなった光線はそのまま天空に浮かんでいた雲を、さらに成層圏を突きぬけてこの星に一本の光の線を立たせた。
「あのガンダム……なのは達の魔法が使えるのか。」
『ご名答!』
フォーチュンガンダムはビームを出した反対側の手にレヴァンティンの形をした黒い剣を出現させ、そのまま高速で移動しバルディッシュデスティニーに斬りかかるが、バルディッシュアサルトによって防がれ鍔競り合いに発展する。
「まさかそんな物まで用意しているなんて……!」
『ええ、7年前に首領が回収したコアの中のデータを私なりにアレンジさせていただきました。さて……MSになった魔導師にアナタは勝てますか?』
その時、デスティニーは体を捻ってフォーチュンガンダムのわき腹に向かって回転蹴りを入れ、一度距離をとった。
「バルディッシュ!ライオットザンバー・スティンガーだ!」
『イエッサー!』
シンの指示を受けバルディッシュは双剣形態のライオットザンバー・スティンガーに変形し、レヴァンティンを構えるフォーチュンガンダムに向かいあう。

 

そして二機のMSの影が重なり合った時、辺りに雷が落ちたような衝撃音が何度も何度も響き渡った。
「「はああああああああ!!!!!」」
『うおおおおおおおお!!!!!』
何度も交差するライオットザンバーと黒いレヴァンティン、その光景はまるで巨人達の舞に見え、その場に第三者がいたらきっと魅了されていたであろう。

 

「くそ……!アイツ剣一本でライオットザンバーの攻撃を捌いてやがる!」
「なら……!」

 

次の瞬間、バルディッシュデスティニーは持っていたライオットザンバーの片方を天空に弾かれてしまう。
『今だぁ!!』
その隙を見逃さないゲイザーはレヴァンティンをデスティニーのコックピットに向かって突き出す。
「なんのぉ!!!」
シンはすぐさま背中に装備されたアロンダイトを手に持ち、それを使ってフォーチュンガンダムからの攻撃を凌いだ。
『なっ!!?』
「スキあり!」
動揺するゲイザーを見たフェイトはそのまま手元に残っていたライオットザンバーの片割れでフォーチュンガンダムの喉元辺りを突き刺した。
『ぐうううう!!!?』
「これで……最後だ!」
バルディッシュデスティニーは喉元に突き刺したライオットザンバーから手を放し、弾かれて頭上でくるくると回転しながら落ちてきたもう片方のライオットザンバーをキャッチし、アロンダイトと一緒にフォーチュンガンダムに振り降ろした。

 

スバァァァァァン!!!

 

『があああああ!!!!!』
フォーチュンガンダムは体に×印の傷を受けながら地上に落下していった。

 

『決まり……ですかね?』
「ああ、あれだけ攻撃すればもう……。」
『いえ、あの子はそんな簡単に諦めたりはしません……。』
「……!見て皆!」
皆はフェイトが指をさした方向を見る、そこには大破したフォーチュンガンダムが分離したMAの方へ再び取り込まれていく光景が広がっていた。

 

『ふ……ふふふふ……ここまでダメージを受けたらもう……暴れる力は残っていない……なら……!』
その時、MA形態に戻ったフォーチュンガンダムの足もとに黒い文字で描かれた魔法陣が展開される。

 

『あの魔法陣は……!やめなさいゲイザー!アナタ自爆する気ですか!!』
「自爆……!?」

 

『ふふふふ……僕にはもう君達みたいに主と共に過ごす未来が残されていない……!戦争の火ぶたを切ってしまったコズミックイラはいずれ前の世界と同じように滅びの運命が待っている!だからこの手でじっくりとその原因を作ったこの世界を縊り殺そうとしたのですが……しょうがない、一気に無に返すとしましょう!』

 

『デスティニー、奴の自爆の規模はどれほどのものになるか解るのですか?』
『単刀直入に言えばこの星の10分の1は吹き飛びます、そうなればこの星は機能不全に陥り、至る所で地割れやら噴火やら地震やら津波やら……もう災害パニック映画メドレー&オチは人類滅亡ENDが待っております。』
「そんな……!ここまで来たのに!」
「止める方法はないのかよ!」

 

『方法は一つだけあります……!』
そう言ってデスティニーはコックピットにフォーチュンガンダムの断面図を表示させる。
『このMAの中心部にゲイザーがいます、この子を機能停止……つまり殺せば魔力供給は立たれて自爆魔法は解除される筈です。』
「それしか……方法は無いの?」
「お前はそれでいいのかよ?アイツは前の世界から一緒にいた仲間だったんだろう?」
シンの質問にデスティニーは何も答える事が出来ず黙り込んだ、そんな彼女に対してバルディッシュがフォローを入れる。
『彼は……未来を失って自暴自棄になっているように見受けられます、まるで……誰かに自分の存在を消してもらうことを望むように。』
『……私やノワールは幸せでした、こうして長い間主やその大切な人達と幸せな時を過ごせたのですから……でもあの子にはそれができなかった。』
「……それしかアイツを救えないんだな。」
「……だね。」

 

そしてバルディッシュデスティニーはライオットザンバー・スティンガーを大剣形態のライオットザンバー・カラミティに変形させ、金色の翼を空を覆う程大きく広げた。
『さあ……見せてあげましょう、運命に導かれた二つの世界が奏でる、とても強く、とても優しい魔法を。』
『Realize(理解しました)』
「シン・アスカ……!」
「フェイト・T・ハラオウン……!」
「「行きます!!!」」
次の瞬間、バルディッシュデスティニーの体は金色のオーラに包まれ、そのまま神速を超えたスピードで突撃し、ライオットザンバー・カラミティをフォーチュンガンダムのコックピット部分に突き刺した。
『この世界に点そう、人々を幸せな運命へ導く灯火となる永遠の炎を、ETERNAL BLAZE……。』
そしてデスティニーは右手首と左手首の動脈部分を合わせ体を捻る、
すると掌に金色と紅のエネルギーが収縮され混ざり合い、太陽のように暖かく真っ白な色に変化していった。
『gnited!!!』
デスティニーはそのまま光色のエネルギーを突き刺さったままのバルディッシュ目がけてぶつける。
光色のエネルギーに押し出されたバルディッシュはそのままフォーチュンガンダムをコックピットにいたゲイザーもろとも貫いた。

 

ウォォォォォォォン……!!

 

フォーチュンガンダムはまるで泣き声のような断末魔を上げて、そのまま海中に沈んでいった。

 

「勝っ……た……?」
「そうみたいだね……。」
シンとフェイトは茫然としながらも沈んでいくフォーチュンガンダムを眺めていた。だがその時、フォーチュンガンダムから何本かの触手が放たれ、それはデスティニーの足に絡みついた。
「しまっ……!」
「きゃあああああ!!!!」

 

そしてデスティニーガンダムはシンとフェイトを乗せたまま、フォーチュンガンダムによって海中に引き摺りこまれていった……。

 

スターゲイザー……。

 

いつかアナタがこの世界とは極めて近く、限りなく遠い世界で……。

 

アナタの主となる者達と幸せな時を過ごせる事を……手と手を取り合える事を……。

 

私と……バルディッシュは心から願い、そして祈っています。

 

もしそうなったら……その時は私達も一緒に……。

 

もっと沢山の大切な人達と一緒に……沢山の仲間と一緒に……いられるといいね……。

 

「ん……んんん……?ここは……?」
シンはコックピットの中で目を覚まし、モニターを使って外の光景を見る。するとモニターにはどこかの海底が映し出されていた。
「そうか……俺達ゲイザーに引き摺りこまれて……あ!フェイト!デスティニー!バルディッシュ!」
シンは辺りを見回してフェイト達の安否を確かめる、そして……。

 

「ん……ううん……。」

 

「すぅー……すぅー……。」

 

フェイトはバリアジャケットの姿に戻っており、パイロットスーツ姿に戻ったシンの肩に寄りかかって眠っていた、そして彼の目の前には待機状態のバルディッシュを抱きしめて眠っているユニゾンデバイスのデスティニーが眠っていた。
「よかった、皆生きている……。」
「んん……?シン……?」
その時、フェイトはシンの声で目を覚まし、眠い目を擦って彼の顔を見つめる。
「シン……!ゲイザーはどうなったの!?」
「……あれを見ろ。」
シンは残骸となって海中に沈むフォーチュンガンダムの映像を見せる。
「そっか、私達勝てたんだね……ミッドチルダも救えたんだ。」
「ああ、でもデスティニーもエネルギー切れで酸素も全然残っていない、通信も届かないみたいだしこのままじゃ……。」
「……私達、死ぬかも知れないんだね……。」
フェイトは自分の発した一言で落ち込んでしまう。
それに対してシンも何も言えず、コックピットに長い時間重苦しい沈黙が流れた……。

 

ふと、フェイトの心の中にある考えが浮かんだ。
(そうだ……もうすぐ死んじゃうんだ、それなら……。)
フェイトの心の中には、シンと出会った七年前からずっと心に秘めていた想いがあった。
(それなら……もう言っちゃってもいいよね?)
その瞬間、フェイトは緊張と気恥ずかしさから顔をトマトのように真っ赤にし、心臓は機関車のように激しく動いていた。
「し、シン!あの!そのっ……!!」
自分の気持ちを伝えようとするフェイト、しかし緊張のあまり声が上手く出なかった、その時……。
「フェイト……少しいいか?」
「ふぇ!?」
突如シンの方から声を掛けられ、フェイトは思わず出したことのない素っ頓狂な声をあげてしまう。
「どうした?さっきから様子が変だぞ。」
「そ、そう!?空気が薄いからかな!!?」
シンはフェイトの行動を不思議に思いながらも、真剣な眼差しでフェイトの瞳を見据えた。
「ふーん……まあいいや、あのさ……もうすぐ俺達死んじゃうかもしれないんだよな……なら俺、フェイトに伝えたい事があるんだ。」
「伝えたい事……?」
フェイトはシンにじっと見つめられて顔を赤くしながらも、それを我慢して彼の話を聞いていた。
「俺……フェイトと初めて出会った時……時の庭園で初めて出会った時、フェイトの事可愛い子だなって思ったんだ、でもフェイト……その時は全然笑わなかったよな、まるで人形みたいに……それで俺思ったんだ、もしこの子が笑ったら、どんな笑顔を見せてくれるんだろうって……だから俺、魔法を必死に覚えてフェイトの役に立とうって思ったんだ。フェイトの笑顔が見たくって……。」
「…………。」
「でも結局笑わせるどころか……俺が弱いせいで辛い顔や泣いている顔しか見れなくって……俺もどうしたらいいか解らなくて泣きそうになったよ、でもジュエルシードを全部揃えた時、フェイト……俺に笑いかけてくれたろ?その時俺すごく嬉しくて……心の中にある想いが生まれたんだ、でもそれがなにか解らなくて7年も経って、そしてスウェンやロアノーク大佐に言われてやっと気付いたんだ、俺……俺フェイトの事が……!」
そしてシンはフェイトの両肩を掴み、そのまま深呼吸する。
「し、シン!?ちょっと……!?」
「フェイトの事が……フェイトの事が……!」

 

―――フェイトの事が好きなんだ!!―――

 

「…………………………………………………………………………………………………………………え?」
突然の告白にフェイトが絞りだせたのはその一言だった、対してシンは先程のフェイト以上に顔を真っ赤にして再び告白した。
「だから……!俺はフェイトの事が好きなんだ!マユよりも!他の皆よりも!フェイトが一番……一番好きなんだ!愛しているんだ……!」
シンはそのまま体を恥かしさで震わせながら何も言わなくなった。

 

再びコックピットに永遠とも思える静寂が流れる、そして数分経った頃、シンはフェイトの様子がおかしいことに気付く。
「フェイト?泣いているのか……?」
「う、うん……ごめん……。」
フェイトの目には沢山の涙があふれており、彼女は精一杯それを腕で拭っていた。
「ど、どうしたんだ!!?もしかして……俺のさっきの言葉がイヤだったとか……!?」
「違うよ、これは……多分嬉し泣きだと思う……。」
「嬉し泣き?」
すると今度はフェイトが真っ赤に腫らした目でシンの瞳を見つめる。
「私……私ね、初めてシンと会った時から……一生懸命私の為に戦ってくれているときから、シンに不思議な想いを抱いていたの、でもそれが何なのか解らなくて戸惑っていた……でもある時ある人が気付かせてくれたんだ、この気持ちは……作り物なんかじゃない、私が私である証なんだ。」
フェイトの目には、もう溢れる涙も緊張の色も失せ、その言葉を発する為の勇気が詰まっていた。
「私も……ずっと前から、小さい頃から……。」

 

―――ずっと前からシンの事が大好き!―――

 

「…………………………………………………………………………………………………………………え?」
今度はシンが、先程のフェイトと同じようなリアクションを取る。
そして数分の静寂の後、コックピットに笑い声が響いてきた。
「あ、あははは……。」
「ふふふふ……。」
「はははは……!」
「うふふふ……!」
「ははははは!!」
「ふふふふふ!!」
「なんだよ!じゃあ俺達……ずっと昔から両想いだったのか!」
「そうだったんだね!そう思うとなんか今までヤキモチ焼いたりしたのが可笑しくなってきた……!」
「今気付くなんて俺達らしいっていえばらしいのかな?」
「そうだね……でも死ぬ前に気付けてよかった、もしこんな状況にならなきゃ私達多分……死ぬまでお互いの気持ちに気付けなかったね!」
「ははははは!違いない!」

 

そして笑うだけ笑った2人は、そのまま互いの目を見つめあった。
「それで……俺の告白の答えを聞きたいんだけど……。」
「私の答えは……。」
次の瞬間、フェイトはシンの両肩を掴みそのまま自分の顔を突き出して唇を重ねた。
「ずるいぞ、俺が先にやろうとしたのに……。」
「私が先に好きになったのに、先に告白したから……お返しだよ。」
そう言ってフェイトは意地悪く笑いながら下をペロッと出した。
するとシンは少し強引にフェイトを抱き寄せると、今度は自分からフェイトの唇を、先程彼女がやったのより濃厚に重ねた。
「ん……!ふむぅ……!」
シンの予想外の行動にフェイトは抵抗を試みるが、やがて体から力が抜けていき成すがままシンに体を預ける、そしてやっと唇が離れた時には、フェイトの顔は昂揚して赤くなり、目はトロンととろけ少しばかり涙ぐんでいた。
「……ばか。」
「へへへへ……これでおあいこだからな、俺にとってコレはファーストキスだし……。」
「……ふふふ、そうだね……シンのファーストキスは私とだよね……私もファーストキスはシンとだよ……。」
フェイトは自分の中にある7年前の秘密の事を思い出し、クスクスと笑いだした。

 

「ねえシン……どうせこのままここで死んじゃうんだし……。」
するとフェイトはコックピットのシートに座るシンの膝に跨り、彼のパイロットスーツのチャックを上から下へゆっくりと下げて行く。
「ふぇ!フェイト!?流石にそれは……!まだ心の準備が……!」
フェイトがこれから何をしようとしているのか理解したシンは、流石に理性が働いて抵抗する、しかしフェイトはそんな彼に構うことなく、真ソニックフォームのままだったバリアジャケットの胸部分のチャックを開け、豊満な胸をシンに見せつけながら頭のリボンを外し金色の長い髪をなびかせた。
「どうせ死んじゃうなら心残りが無いほうが……それともシンは私とじゃイヤ……?」
「ぐっ……!」
まるで捨てられた子犬のような目で見つめてくるフェイト、そんな彼女の瞳を直視できずにシンは目線を下に移すが、それが彼の敗因になった。
「ほぐぅ!!?」
シンの視線の先には、ボディラインをくっきり出す露出の多いバリアジャケットでしか覆われていない、フェイトの美しく発達した肢体が飛び込んできた。

 

フェイトの大きな胸が、

 

控えめなお尻が、

 

うるんだ瞳と唇が、

 

美しくなびく金髪が、

 

シンの心を誘惑し、屈服させていった。
そして脳内では流石に貞操は守ったほうがいいんじゃないかとか
リンディとクロノに殺されるとか殺された後はあの世でアリューゼに殺されるとか
マユに幻滅されるとか色んな思考が廻ったが、
フェイトがここまでしてくれるのならそれに応えたほうがいい、
むしろこんな美しいバディを頂かないなんて色んな世界の恵まれない童貞達に失礼!
ていうか早くしないと冷静さを取り戻してきたフェイトの顔が
恥ずかしさと後悔で爆発するという煩悩満載の結論に至った。
「わわわわわ……わかった!俺も男だ……!」
「きゃ!」
そう言ってシンは再びフェイトを強引に抱き寄せる、するとパイロットスーツを脱いだせいかフェイトの柔らかい胸を通して伝わる心臓の鼓動が、逞しく鍛え上げられた胸板を通してシンの心臓にも伝わって来た。
「フェイト……緊張しているのか?」
「シンだって……すごい音だよ、まるで車のエンジンみたい……。」
二人はまるで永遠に離れないように互いを強く抱きしめあう、そして温もりを感じ合いながら再び唇を重ねた。
すると2人の頭は真っ白になっていき、シンの右手はフェイトの胸に伸び、フェイトの手はシンの

 

『二人とも!大丈夫か!!』
その時突如デスティニーガンダムのコックピットにストライクノワールに乗ったスウェンから通信(映像付き)が入って来た。
「うわっはあああああああああ!!!!?」
「にゃああああああああああん!!!!?」
突然の通信にシンとフェイトの口から心臓が飛び出しかけた。
『え?あ……え……その……。』
スウェンはコックピットに映るシンとフェイトの格好を見てしばらく思考を巡らし……。
『その……お邪魔しました。』
通信を切った。
『だわっわわわわわわ!!!待ってくれスウェン!』
『こここっここれはその違うと言うかあれじゃないというか!!おながいしますから話をおおお!!』
すると割と早く通信が回復される、しかしモニターに映っているのはスウェンではなく……。
『ちょっとスウェン!何切ってるんや!?』
『フェイトちゃんは無事なんですか!?』
恐らく一緒に捜索に来たはやてとなのはが映っていた。
『おおおおお前等待て!2人は取り込み中……!』
『はあ?何を言って……。』
『もう!おかしなこと言ってないで早く……。』
そして二人はその時初めてシンとフェイトの格好に気付き、石のように固まってしまう。

 

『テスタロッサ!怪我はないか!』
『お、落ちつけシグナムさん!手元が……!』

 

『シン、大丈夫?』
『MSに外傷はないみたいだが……。』
『お二人とも~!』

 

『二人とも怪我は~!?』
『シャマルさんと一緒のコックピット……なんて幸せ者なんだ俺は……!』

 

『おい!坊主は無事なのか!』
『シン!フェイト!』

 

『シン……!フェイト……!』
『お兄ちゃん!』
『フェイト!平気かい!?』

 

『シン!無事なの!?無事なら返事して!』
『フェイト!お姉ちゃんが助けに来たよ!』

 

すると次々と海底までシンとフェイトを救出に来たスティング、ステラ、アウル、ネオ、レイ、ルナマリアのMSと、それに同席していたシグナム、リイン姉妹、シャマル、ヴィータ、マユ、アルフ、アリシアが次々と通信を入れてくる。
『『『『『『『『『『『『『『『え?』』』』』』』』』』』』』』』
そして全員がシンとフェイトの格好を見て固まってしまう。
そしてその沈黙を破ったのは、なのはとはやての叫びだった。
『『ふぇ!フェイトちゃんが大人になったああああああ!!?』』

 

『てててててててテスタロッサががががががががががが』
『うおおおお!?泡吹きだした!?』

 

『むー……なんだろう、このもやもや……。』
『おねえちゃん?なんでリインの目を塞ぐですか?』
『…………。』

 

『ふ、二人ともいくらなんでもそれは早いわよ!』
『ああ、赤くなっているシャマルさんも可愛いなあ……。』

 

『はははは……そうか……そうだよなぁ……アイツ等がああなるのは当たり前……うぇっ……!』
『お、おい……泣くんじゃないよお嬢ちゃん。いやしかしやるねえ2人とも!』

 

『なんだ、元気そうじゃないか。』
『心配して損した……おめでとうお兄ちゃん!』
『うううう……2人もようやく結ばれたんだね……!』

 

『さてと、死ぬか。』
『わああああ!ルナちゃんはやまらないでええええええ!!!!』

 

「スウェン……どうしてここがわかった?」
『いや、デスティニーから救難信号を受けて……なるべく遅れて来いって言われていたのだが……。』
「ぎく!」
その時シンとフェイトは初めてデスティニーがバルディッシュに裸締めをキメながらタヌキ寝入りをしている事に気付く。
「ぐ、ぐーぐー!もう食べられないよう……!」
『ちょ!ホントに締まって……!(ガクッ)』
「「で~す~てぃ~に~!!!」」
『あとで録画したテープダビングさせてくださいッス。』

 

その後デスティニー(ついでにノワール)はシンとフェイトによる洒落にならない折檻を受けた。

 

こうしてコズミックイラとミッドチルダ、二つの世界を巻き込んだ“時の方舟事件”は終わりを告げた。
事件の首謀者であるアリューゼとゲイザーは死亡、フェリシアとカシェルはリンディによって身柄を拘束され、後に本人達の希望で軌道拘置所に収容された。
またコズミックイラの戦争や今回の事件の原因を作ったフクザワ提督は、後にリンディやアリシアの証言により総ての悪事を暴かれ、コズミックイラ側の要求により身柄をプラントに預けられ、数年後に連合とプラントの同意のもと第一級戦犯として銃殺された。

 

またこの事件がきっかけで時空管理局に不審感を抱いたコズミックイラの各国家が報復戦争を仕掛けようとする気運が高まったが、デュランダルの仲介により管理局が大量の賠償金を払う事で戦争には至らなかった。

 

なお、アリューゼの残したデータにはありとあらゆる時空犯罪者や不正を行う局員のデータと証拠が記されており、管理局はこのデータを元に犯罪者の一斉検挙と内部の人事改革に成功する。

 

その犯罪者の中には凶悪なスカリエッティ一派や、
彼を生み出し裏で操っていた管理局最高評議会も含まれており、
アリューゼ・ハンスブルグは後の世に数々の次元犯罪を未然に防いだ英雄として祭り上げられた。

 

そして……二つの世界に永遠では無くとも、永く穏やかな平和が訪れた。

 
 

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