Ace-Seed_626氏_第01話

Last-modified: 2013-12-25 (水) 20:26:27

「諸君、注目!我々ユーラシア連邦は先のプラント評議会議長ギルバート・デュランダル氏の呼びかけに応じ、
 ロゴス壊滅作戦を援護することを決定した。
 君たちにはザフト艦隊が最速で地球へ向かうための途中航路――
 プラント戦略最重要宙域、B7R――通称"円卓"の制宙戦を行ってもらいたい。
 その後、彼ら強襲部隊とともに地球へ降下、ロゴス本陣・ヘブンズベース攻撃を援護すべくその裏手から攻撃してもらう。
 作戦開始は十二時間後だ。以上、準備に入れ!」

指揮官のその言葉と共に皆が席を立ち作戦行動の準備に入る。
ヘブンズベースの裏手には対空、対地兵装に充実した要塞、ハードリアン防衛線が敷かれている。
まともな軍隊なら不満の声の一つや二つ上がるだろうが黙って席を立ちハンガーに向かっていく。
ここにいる人間は傭兵としてサインをした人間だ。こんな作戦もまた契約のひとつ……。
そこで今まで黙っていた司令官殿がファイルをこちらに投げながら。

「ガルム隊…サイファー、ピクシー。
 君たちの今までの任務遂行に対する感謝として我々ユーラシアのオリジナルモビルスーツ、
 ハイペリオン4、5号機を贈る。更なる戦果を期待する。」

そうのたまって去っていった。
一応の感謝を込めて敬礼を送りハンガーに向かう。その途中、横にいるピクシーに愚痴る。

「――まったく、アレはただ単に自分らの国の兵器がいかに優秀か示してこいって話だよな。
 …いい機体に乗れるのはうれしいものだが。」

それを聞き、横にいる相棒はため息をつきつつ

「そうだな…。だが、この機体、出し惜しみなく作られた試作機ってだけあって、反応・スペックはファイルを見る限り
 今まで俺たちが乗ってきたストライクダガーよりは1割り近く増しなのはうれしいことだ。
 しかし…余計な物が付いてるな。これのせいで射撃官制とかが若干落ちてしまうし。はずした方がいいな。」

【モノフェーズ光波防御シールド"アルミューレ・リュミエール"×5】という項目に指をさす

「ああ、そうだな。あと、こんなのいるか?…オレはあまり必要ないが」

返すようにオレは【ビームキャノン"フォルファントリー"×2】をさす

「……オーバーキルだな。拡散式に設定できるようだがロック機能はいい加減。
 混戦では味方殺しと成りかねない…使いようにならん。
 きっちり狙って撃てば敵は落とせる。特殊兵装としてもっとコンパクトに出来るなら話は別だろうがな。
 外す替わりにバズーカーとか接近戦のためにビームサーベルを装備させたほうがいいな。
 あと、シールドは今まで使っていた機体と同じようなものを装備しよう。やはりコレはバッテリーを無駄遣いしすぎる。」

そういって機体のカラーリングを右腕・右足を赤、大雑把に灰色、末端を黒く染めている整備兵にあれこれ指示を出し始めた。
ラリーを見送ったオレもまた。自機にカラーリングをしていた整備兵に機体の装備変更を伝えその整備を手伝い始めた。

――使い慣れたジェットユニットなどを装着するため背部のほとんど作り変えて
ザフトのゲイツRのように腰に着脱式のレールガンを装備させる。…結局終わったのは作戦開始ぎりぎり。
そのため射出口は順番待ち状態で俺たちが出れたのは最後になってしまった。
そして自国技術の代表作であるものを外されたことに対して、
発進時に管制官の後ろにいた司令官殿の顔がしかめっ面だったのは言うまでもなかった。

――B7R――プラント戦略最重要宙域

≪ロゴス討伐同盟軍 統合本部より入電  同盟軍戦力は 既にその40%を損失!≫
≪くそ!ロゴスの奴らめ 金に飽かせて無人機のメビウスまで投入してきやがった 数が多すぎる手に負えん!≫
≪増援はまだか!≫

味方の怒声がヘルメットから聞こえてくる。

≪よし、花火の中に突っ込むぞ≫

"片羽の妖精"の言葉を皮切りにB7R宙域に居たロゴス軍たちの悪夢のような十数分が始まった。

≪くそ、こんなでたらめ規模の宙戦はじめてだ≫

同じ、ユーラシア傭兵部隊・クロウチームの三番機PJの怒声が聞こえる
まずは味方の戦列を立て直すために、2番機・ピクシーに戦闘の味方機の護衛を指示し、オレもそこに突っ込む
早速無人機に狙いをつけ一機落とす。しかし…レーダーを見る限りあと何機敵機がいるのか数え切れない。

≪くそ、二機だけの援軍じゃどうにもならん。もう援軍は来ないのか?≫

味方の愚痴をBGMにしつつ、敵MSの懐に入りコックピットを一突き――その機体を盾取り無人機に特攻をかける
無人機の弱点はパターン化された軌道しか取れないこと、それ以上に味方IFFを撃つという判断は出来ないこと、
ユーラシアにも無人機はあったのでいろいろ試した結果一番効率の言い落とし方はこれだった
その戦術を利用し無人機を4、動揺したMSを2落とす

≪すげえ…≫

≪!!来ました。このコードは…ザフトの"凶鳥"、"凶鳥フッケバイン"≫
≪"凶鳥"!?…頼もしい。フッケバイン!ガルム隊と共に敵を殲滅せよ≫

俺たちの間に強化バーニアを積んだゲイツRが一機飛び込んできた

≪"片羽の妖精"…久しぶりだね。
 MSの半身を失いながらヤキンの戦役では随分てこずらせてくれた君と、
 こう背中を合わすのは悪い気分じゃない。どうする?指示をくれ≫

と落ち着き払った声が聞こえてくる

≪悪いが一番機は俺じゃねえ 一番機は両肩がブルーのあっちだ サイファー"凶鳥"に見せてやれよ≫

ピクシーの言葉に反応してこっちに意識を向けてきた…緊張を押さえこむためにオレは出せるだけの声で

「ガルム2、兵装の制限を解除する、自由戦闘に入れ。フッケバインはオレの直援だ――」

ヘルメットの右側からは口笛を吹く音が聞こえ 左側から

≪――その腕見せてもらうよ。ヴァレーの番犬≫

と苦笑交じりの声が聞こえてきた

そこから五分強 俺と"フッケバイン"は"円卓"の中央を目指しつつ敵を落としていき
ピクシーは突っ込むオレたちに動揺した敵機に砲撃を放ち そこまでであわせて15のスコアをあげていた

≪よくやった 敵の脅威レベルが50パーセント以下に減少 あと一踏ん張りだ≫

その声に疲れを感じ始めた体に鞭をうちさらにもう一機落とす

≪あの両肩の青いやつだ アイツが戦況をひっくり返してやがる≫
≪なんなんだ、あの部隊の戦闘力。コーディでもめったに見られん機動を連発している≫

敵の射撃をシールドで受け止める、ただ、そのときAMBACをカットしてわざと吹っ飛ばされる。その拍子に狙いをつけ撃つ。
判断力と運動能力に優れた者ならば動きを止めつつ狙った上で生き残れるだろうが
混戦時に止まってしまうことを嫌っているオレが生み出した宙戦でのひとつの戦闘法だ。
――ただ、遠心力で頭がシェイクされるが…

≪化け物か悪魔だ≫

敵がそういっている間にまた1機落とす
…運よくまだいきてるようだ…よろけながらも去っていくようなので深追いはしない…まだ、敵は多い

≪そんな生易しいもんじゃねえ ああいうのはな…"鬼神"って言うんだよ≫
≪ウィザード隊はどうした!?こないのか?≫
≪あいつらは最近行方不明になったばっかりだろ!?何、いないのに頼ろうとしている≫

そんな敵のやり取りが聞こえてくる なんとなく敵の覇気がうせてきた

≪ソーサラー隊 傭兵に負けるな 大西洋連邦の意地を見せろ 一気に畳み掛けるぞ≫

味方の叱咤を聞きながら 自分の部隊のほうの様子を聞き取る

≪俺は平和の為に戦ってる あのベルリンのような場所を生み出さない だから世界の空で飛ぶ≫
≪お前の言うその平和の下 世界では何万ガロンもの 血が流れているんだよ 小僧≫
≪アンタが流すその血も 俺が止めてやるよ≫
≪血で血は止められない 理想で空を飛ぶと死ぬぞ≫

クロウ隊3番機のPJとピクシーの罵声が聞こえてくる ピクシーが集中を切ることはありえないが
まだ経験の浅いはずのPJはまずい 戒めようとしたところで

≪何をやっている 前をしっかり見ないか!!≫

と今までオレの後ろにいた者の声が聞こえてきた 
その声でPJは素っ頓狂な声を上げて戦闘に戻っていった――それを確認した後ろの方は

≪――"片羽"…どうした?先の大戦で"かの騎士団"にいて理想を求めた君らしくもない≫

と罵声を上げていたもう片方に声をかけた

≪夢は覚めるものだ、アンタには関係ない――≫

普段のその声が話す言葉とはまるで違うものが聞こえたあと通信機の音が少し途切れた
居心地の悪くなったオレが声をかけようとしたとき

≪作戦中の部隊に告ぐ 複数の機体が接近中! 様子が妙だ 警戒せよ!≫

管制官の声が沈黙を破った

――制空宙戦開始 数時間前――L4メンデル

50ほどだろうか、だが外見に似合わない体格のよいその男はコロニー内の数ある施設を漁っていた。

「隊長、例の探しものは?」

「ああ、一応は…な。」

そういって顔の横にノートを出し振る

「何か面白くないことでも?」

「バカな話しだ。いろいろ捨て去った末に完成した、自分のたった一つの研究成果を実証するために世界を
 この混乱に落とし込んだのだからな。――同じ科学者だが私には理解できん。」

疑問視を浮かべる部下にそのまま話し続ける

「たいした策士だよ。あの議長殿は。ザラ派の残り物…先の戦争で何もかも失った者にナチュラルとの融和――と、
 もう憎しみのはけ口がもうないような絶望感を見せ、彼らを誘導し戦争を起こすきっかけを作り。

 ラクス・クラインとその取り巻きの性格を、とことんまで調べ上げた上でちょっとした攻撃を仕掛け自分に疑惑を持たせる。
 さらに疑惑に対するあてつけのように偽者を演出する。そして彼女らに自分を討たせる。ここまで来るとたいしたものだ…。」

「?そのノートのプラン実行の布石に戦争を起こす工作をするのは判る――。
 しかし自分をラクス・クライン達に討たすと言うのは?」

そう怪訝な表情を見せる部下に対しあるページを開き指をさす。

「こうゆうことだ。今の状況から考えるにロゴス追討の後、奴は人類最高の知名度を持った者となるだろう。
 その後、その英雄はプラン強行という愚を犯す。
 そしてそこに書かれているような者たちが自分を討つ。討った彼らは救世主と成りその後この世界を統治する。

 ――どこぞのエセ導師と目的は大して変わらないだろうな。
 ただ、あのエセのように宗教的に見つけるという事ではなく。科学を用い、自分らの犠牲を以ってということだ。

 先日クラインらを襲撃した連中についての情報が取れたが。皆、ギルバート・デュランダルのプラン研究チームだそうだ。
 ――まったく、理解できない連中だ。救世主を見つけるというレースでもやっているつもりなんだろう。
 どちらにせよ先の大戦末期から続く覇権というパイの醜い奪い合いだ。…くだらん、終わりにしなければなこんな茶番。」

「いよいよ、我々が動くのか?」

普段2番機を任せている男が血気盛んになっている…珍しい

「…まだ早い、今動いたらそれこそロゴスの一味といわれて討たれてしまうだろう。
 しばらくは奴の脚本どおり動くとしよう。何、策略に気づいて乗っている分には流されないからな。
 とりあえずスポンサー殿、ラクス・クラインにはここを省いて渡すとしよう。
 余計なものを与えてやる気をなくされても困る。癪だが流石に我々のみでザフト・地球連合と戦うわけにいくまい。
 世界中の同志にそろそろ準備に入ると伝えてくれ。」

そういってなだめつつ、ノートの一部、"SEED"と書かれた部分を切り取り持って来ていた鞄の中に詰め込む。
そして残りの部分を持っていけと渡す。

「…失望させられた。そう思わないか?シーゲル・クラインの後継者と思っていたのは選民思想者。
 また、クラインの娘も、自分が統治者であるかのように考えるパトリック・ザラの亡霊そのもの。
 ――しかも、宗教家の操り人形。先の大戦、我々がしたことはなんだったんだろうか…。」

ノートを受け取った部下はため息を吐くようにこう呟いた。それに苦笑で答え、先に行くよう促す。

――そうだ、その失望ゆえに我々は動くのだろう 先日参加を決めた"片羽"もまた同じだろうか。
先の大戦で世界を破滅に導こうとした、ラウ・ル・クルーゼもこんな思いだったのだろうか?
――いや、我々は違う。すべての破壊など望んではいない。

部下が去っていったのを確認し。何かを思い出すように目を閉じたあと

「偽りの英雄、"特別な者"によって統治される世など必要ない。シーゲルお前のいったとおりになったな、お前の娘は道を誤った。
 …担ぎ上げた責任だ。我々"国境なき世界"、破壊という創造を以ってして踏み潰す。」

そう呟きその場から去る。その顔が映すはただ決意、そう言い表すであろう表情だった。

―――B7R

≪管制官、敵のデータを送れ 早くしろ≫
≪敵ザ…Mザザ…数は…ザ機…3時…ザ……≫
≪――聞こえん 太陽風か?いや、ジャマーだ!≫

ピクシーの怒声と共に通信が乱れ、司令部の無線がまったく聞こえなくなった。今日は太陽風がひどい日だ…
しかしNJの干渉がひどく、太陽風が荒れ狂う今日でも、レーダーは最低この円卓の20%ほど
―――MSの長距離砲の射程程度はカバーできていたはずだ

それがいつの間にか10%…ビームライフルの射程以下しかなかった

≪目標を射程距離に捕捉 シュネー1より各機 槍を放て ズィルパー隊、援護する≫

頭部、そして末端を白ほかを黒の迷彩のカラー4機のランチャーらしいものを装備した
ダガーLが一斉に高インパルス砲を放つ

≪了解だシュネー隊。味方も敵も速い…ついていけ 私の最後の授業だ≫
≪了解、ボス≫

その声と共に白と灰色に塗装したエグザスを先頭に後方についていた4機のウインダムが散開する

≪長距離砲だ!!かわせ、クロウ隊!!どうする?サイファー≫

敵、エースの急襲で味方の戦線がまた乱れ始める 管制官とまともに通信が取れなくなった今
この範囲の傭兵部隊は俺の指示を待っていた

「……"フッケバイン"、クロウ隊の指揮をとり、先行してくる銀色の部隊を抑えてくれ
 ピクシー、ガルム隊は後方の長距離砲を装備した部隊を迎撃する」

≪了解した≫
≪了解だ≫

フッケバインとピクシーの返事を確認した後

「クロウ隊、ここで戦うのならば余計な括りは捨てて挑め」

と念を押しておく
1~2年ほど傭兵をやっていれば人種なんてものあまり関係なくなってしまうものなのだが
クロウ隊は傭兵としての年数が浅いものが少なからずいる若い部隊のため、人種を持ち出すものが多少いた

≪分かってます 大丈夫ですよ≫

ムードメーカーのPJの声を聞きつつ銀色の部隊とすれ違う
ビームライフルの先端に固定されている銃剣を編隊を乱すように振る
すかさずバーニアをふかし奥の部隊に向かう

≪生き残って我が隊の名声を上げる もっと速く飛べ≫
≪下手に戦場を荒らすな 彼らの邪魔になる≫

攻撃をいなしつつ前に進む…うまい射撃だ5発撃つならそのうちの3発はこちらの動きを制限するように計って撃ち
残りを正確に急所に打ち込んでくる
こちらは先と同じように敵の射撃をシールドにAMBACを殺しつつあてる
その変則的な機動の中で敵機の隙を探しピクシーの牽制に乗じて1機落とす

≪なんなんだこいつ こいつの飛び方…まるで読めん≫

そしてまた1機火達磨にする
三機目を落とそうとロックオンをかけた瞬間、上から攻撃が来ることを警報が告げる
慌てて上にシールドを向け、防いだが左腕が使用不能と表示が出た

≪なんというパイロットだ たった数コンタクトで…≫

あせり声の無線が聞こえるがこちらもわけが判らない。ランチャーストライカーは長距離砲と肩のバルカン
このチームはバルカンをレーザーに変えていたようだった。
だが、シールドはまだアグニ2発ほど、レーザーは通常射程で10秒はまだ耐えられるはずだった
――ならば何故、一発で腕ごとでやられた?

「ピクシー、アレを抑えてくれ」

≪了解だ≫

あいまいな指示だったが俺の思った意図を理解し、眼の前の敵を相手にしつつこちらの援護をしている
目の前の隊長機はその攻撃を避けつつこちらに接近してくる 接近戦?だがあの装備にそんなのは…

大きく砲身を振りかぶる…その砲身に強力なレーザーが渡っているのを見た俺はとっさに左腕に付いたままの
残りのシールドを持ち替えその太刀筋に逆らわないようシールドを添え受け流す つんのめったところを逆袈裟に切る

≪ヴァレーの猟犬…見事だ≫

と声が聞こえて数秒後、目の前の機体は爆発した その光の影に脱出したらしいパイロットの影がちらりと見えた
デブリをかわしつつ往ってしまった様だ…
生き残ることこそパイロットにとっての勝利。――なら間違いなく彼は勝者だろう

≪円卓の生んだ鬼か…これまでだな。作戦中のMS撤退しろ!≫

敵のこの無線を皮切りに敵機が次々とレーダーから外れていく銀色の部隊も2機ほど欠いていたが去っていった
それを確認した俺は大きく息をついた

≪こっちも落とした、ジャマー機がいたから追い払ったぞ あっち側に戻るか?サイファー≫
≪こちら司令部。よくやった 敵を退けたのを確認した 作戦終了だ≫
≪さすが"フッケバイン"だ。あっちも終わったか≫
≪何、君たちの戦いが終わった後だよ反撃できたのは、"鬼神"また一緒にとびたいものだね≫

どこから聞いていたか そういって"凶鳥"のゲイツRはプラントの方向に飛んでいった

空母ケストレルに着艦した俺たちは早速デブリーフィングを行い、戦果報告をまとめ報酬請求の手続きを済ませ
ザフト・連合のMSが入り混じる見本市ともいえるハンガーにある機体の整備に戻る。

その途中

「すごかったんですよホント、ガンバレルを俺たちのほうに行かせないように牽制しながら、
 こっちへの援護も正確だったんですから。」

PJが先の戦闘のフッケバインの戦い方を興奮しながら言ってくる

「敵じゃなくてよかったなサイファー。アイツは自分の機動で敵を困惑させ、敵の機動を乱すことを重点に置く戦い方をする
 仮に敵だったらもっとここの戦いは長引いていただろう」
「ああ、まったくだ」

そうやってピクシーを交えて雑談をしていると

「よう"片羽"久しぶりだな。『考えは決まったか?』ブリストーからの伝言だ。そろそろだからな、確かに渡したぜ」

とピクシーに金髪と褐色の少年がデータディスクを渡して去っていった 確か、ジュール隊の副長だったか…
『そろそろといっていたが何のことだ』と聞こうとしたがピクシーの表情に気圧され聞くことが出来なかった

通路にごった返す人と物を避けつつ自分の所属隊の元に帰り着く

「おい、ディアッカどこ行っていたんだ?」

隊長面したおかっぱ頭が偉そうに言ってくる。
それに対しヤツにとってのいつも通りのつら皮を浮かべ"片羽"に会ってきたと告げる
まあ、あってきたのは事実だ。本当の用事は違うものだが

「"片羽"か…アイツには先の大戦でてこずったものからな。まあ、お前は仲間だったから気になるのは当然か。
 だが、俺は気に食わない、あんな金で動くプライドがない輩。」

その愚痴にいつも通り適当に相槌を返す そんな会話をしつつ頭の中ではまた別のことを考えていた

――数日前――

彼に呼び出された場所はプラントから少し離れた宙域…その戦艦の狭苦しい和風の一室に組織の長といえる者と二人でいる
一つ一つの動作がまったく淀みなく行われ目の前に茶が振るわれる。その動作はまさに達人といえるほど修錬されていた。
だされた茶の味に舌鼓を打ち、心からその手前に対する賛辞の言葉を送る

一通りの作法が終わった後、目の前の男が口をやっと開いた

「…娯楽室はどこの船にもある。戦場に疲れた者が休みを取るのは当然のことだ、
 私はその中でもっともここが気に入っている、何故か分かるか?エルスマン。」

自分の趣味である日本舞踊と通じる何かを感じると答えると、彼は何度かうなずいた後

「儀礼という堅苦しさの中に行うそれを最大限楽しむ。この茶道というものはこれを生み出した国が戦乱の世に生まれたと聞く、
 殺伐とした世の中でその狂気に飲み込まれぬよう。そういった意思の現われだと私は思う。」

「――そういった心を時の中で忘れ、華美に走り、物を消費することに没頭し、満たされることのみに執着するようになった。
 それに埋没し己を見失った時、再構築戦争:第三次世界大戦が起こり、国の意味を見失ったその国は滅んだ。
 だが、一部の者は国を飛び出し新たな国を作る。そしてその国は彼らの故国以上の繁栄を遂げた。――しかし…」

そこで何かを思い出すよう目を閉じたあと少し経ち

「また、彼らはその故国と同じような過ちを繰り返し始めた。また、プラントも同じ歴史を辿るように…」

確かに、趣味であるもののルーツをいろいろ調べ、そのなかで知った歴史と似ていると言われればそうかもしれない

「そして世界はそんなもの達の流れに流され始めている。止めなくてはならん。」

そういってこちらを見てくる
意志の強い目。が、以前会った同じようなものを持つ女とはまるで違う色を持つその目に頷いていた。

――――

聞いてるのか!?と目の前の男が怒声を上げる。どうやら考えに没頭しすぎた。

…精々、そうやって莫迦丸出しで突き進んでくれ 俺もやり易い こうやって付き合ってやるのは俺が借りを返し終えた時までだ

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