CCA-Seed_125氏_第13話

Last-modified: 2007-11-10 (土) 19:10:29

格納庫

突如、連合の奇襲を受け何とかこれを退けることに成功し、現在は整備員達がMSの損傷チェックに右往左往している。

しかしそんな喧騒の中、エアーポケットとも言うべき空間が片隅に存在していた。
そこはパイロットスーツに身を包んだままのアスランとシンが険悪なムードで睨み合っている。
「俺は………間違ったことはしていない!!」
「シン!」
整備のクルーやルナマリア達が心配そうに見守る中、二人の言い争いは平行線を保ったままだ。
二人がこうなった経緯というと・・・・

ミネルバはスエズ攻略のために潜水母艦ニーラゴンゴ護衛にカーペンタリアを出港。
しかし、それから僅かのあいだに連合のMS部隊の襲撃を受けたのだ。
その中には強奪されたG及び、それを指揮するネオ・ロアノーク大佐も含まれておりミネルバは苦戦した。

このなかで特筆すべきは、水中戦に特化したアビスの猛攻をルナマリア、レイとの連携で防ぎ被害を最小限に食い止めたことだろう
(ニーラゴンゴは多少の損傷を受けたが撃沈されずに済む。が、航行に支障ありと判断しカーペンタリア基地に引き返している)

乱戦の中、シンは偶然にも連合の前線基地を発見、虐げられている地元住民の姿を見てこれを解放せんと基地に攻撃を加える。
が、それはMSに対し無力な連合兵に対する虐殺にも等しい行為であり、駆け付けたアスランの制止にもシンは聞く耳を持たなかった。
……戦いが終息し、シンがミネルバに着艦すると待っていたのはアスランの叱責だった。
そして、今に至る……

「なにがいけないんです!?相手は連合兵で、あいつらは住民を虐待してて、それを解放することのどこが!!」
「シン!お前は・・・!!」
「二人とも、そこまでだ」
このまま平行線をいくかに思えた言い争いだが、MSから降りてきたアムロに制止される。
二人の間に立ったアムロはシンに向くと…
「シン…軍に於いて命令は絶対、ということは分かっているだろう。ザラ隊長はそのことに関して責めている」
「それは……」
アムロの言葉にシンは言葉を濁らせる。
「アムロ大尉、俺は……!」
アスランはアムロに言おうとするも、アムロに目で抑えられ口を閉ざす。
「軍隊という組織に於いて、命令というものは守られなくてはならないモノだ。さもないと組織は機能しなくなる…わかるな?」
「わかってますよ、そんなこと!でも……!!」
「お前がやった事の正否は問題じゃない!付け加えれば正しいかどうかを決めるのはお前でも、ザラ隊長でも、ましてや俺でもない!!………それを判断するのは政治家であり、民衆だ」
「!!」

その言葉にシンは言葉を失う。
「確かにお前はあの住民たちを助け、開放したと言える。だがその一方で、連合兵を虐殺したと世間に非難されてもしょうがないことをお前はしたんだ。そうなったとき、おまえは責任を取れるのか」
「う…」
「………よく考えてくれ。何かを為すにはそれ相応の責任を伴うということを。そして自覚しろ…俺たちが乗っているマシーンはその気になれば何百人、何千人とヒトが殺せるんだということを……」

その言葉にシンは俯く。
言い返したいが、言い返せない……。
自分が間違ったことをしたとは今でも思っていない…だけど……

黙考するシンを見ていたアムロだが、遠巻きにこちらを見守っているレイ達に目配せするとアスランに声を掛けた。
「ザラ隊長、ブリッジに報告に行こう」
「はい……」
アスランとともにMSデッキから出て行く。

「……大尉、すみません」
二人で歩く道すがら、アスランが声を掛けてきた。
「いや、こちらこそすまない。君の役目を奪ってしまったな」
「いえ、おれではああは言えませんでしたから。しかし、大尉に憎まれ役を押し付けてしまって……」
「年長者の務めとして、あれ位はやるさ。………シンな」
「え?」
「シンは昔の頃の俺に良く似ている。命令されてもいないのに二回ぐらい敵の基地を壊滅させたりもしたし、兵器を持ち出して脱走もしたよ」
「…………そ、それは(汗)」
なんだかいま、さらっととんでもない事を聞いた気が……
「あのころは……無我夢中だった。自分がしたことの結果がどうなるかなんて考えもしなかった……。だから思わずシンを昔の自分と重ねて見てしまう」
「大尉……」
意外といえばこれ以上ないほど意外だった。
いまのアムロを知る限り、そんな時期があったなんて想像するのも難しい。
「シンも、今回のことで良い方向に向かってくれるといいんだが……」
「はい…」
そんなこんなで二人はブリッジにむけて歩を進める。

目指すはマハムール基地・・・・

おまけ

アウルはアビスの水中型の性能をフルに発揮し、潜水艦から発進されたグーンを次々と撃破しつつ海中を進んでいった。
「へへ、楽勝。動く的はもう終わり?」
潜水艦からの魚雷もらくらく避けつつ、お返しとばかりにこちらも魚雷を放つ。
命中!………しかし、撃沈には至ってないようだ。
「ならもっと派手にぶち込んでやるよ!」
と、さらに肉薄しようとした瞬間・・・・
ガクンッと機体が制止してしまった。
「んっだよ!!」
モニターで確認したら、肩のシールドに…鎖状のものが絡まっていた。

「捕まえたわよーーーっ!レイ!!」
甲板上からアビスがいると思しき場所に鎖を突っ込ませたルナマリアは近くにいるレイに合図する。
「了解」
そしてレイも海中にバズーカ、魚雷を次々に撃ち放つ。

「ふざけんな!!こんなモン」
と、弾頭を避けつつ鎖を解こうとするが爆発の余波で機体は振り回されてしまっている。
「畜生、こうなったら海面にっ!!」

「……出てきてくれたわね!!」
タイミングを計っていたルナマリアは咄嗟に自分が掴んでいた鎖もアビスに投げ放つ。
「なめんな!」
とビームランスで払おうとした所…アウルはその鎖の形状が違うことに気付く。
そう思った瞬間、怖気で全身が逆立ったアウルは再び機体を海中に没したまさにその時、

ピッ!チュドドーーーーーーン

と数瞬早く、鎖が爆発!
そうルナマリアが最後に投げた鎖には沢山の爆雷が仕掛けてあったのだ。
「いい感じじゃない。さすがアムロさん♪」
「…だが、どうやら仕留め損なったようだぞ」
レイが指摘するとおり、どうやら致命傷とまではいかなかったらしい。
「いいわよ、友軍艦は守れたし。それに……」
と言うとルナマリアはこちらに漂ってきたアビスのビームランス(どうやら堪らずに離した様だ)をむんずとつかみ上げると
「今度はこれで串刺しにしてあげるわ」
とのたまったそうな。