CCA-Seed_373 ◆lnWmmDoCR.氏_第24話

Last-modified: 2008-06-17 (火) 23:48:00

「うっ…なんなんだあなた達は!もう僕達に構わないでくれ!」

 

そう言いながらフリーダムのパイロット、キラ・ヤマトは三機のMSを多重ロックオンした…

 
 

数時間前、ミネルヴァの作戦室では次の作戦の説明が行われていた。

 

「先ほど司令部より入電がありました。ミネルヴァはエンジェルダウンに参加せよとの事よ。」

 

丁寧な言葉でタリアが続ける。

 

「本艦はこれよりテロリストの母艦アークエンジェル、及び主力MSフリーダムの討伐任務へと付きます。先日のデュランダル議長の声明であの艦はテロリストとして認識されました。
よって我々は友軍と協力し、任務遂行に尽力することなります。あの艦に一番辛酸をなめさせられているのは私たちよ。散っていった仲間のためにも失敗は許されないわ。」

 

作戦室は仇敵とも言えるAA、フリーダムの撃破命令に雄雄しい声に包まれた。
アムロは作戦室から出ようとするのをシンに呼び止められた。

 

「隊長…フリーダムは俺にやらせて下さい。」

 

アムロは久しぶりにシンが口を開けたと思ったら第一声がこれかとあきれながらシンに言う。

 

「何を寝ぼけたことを言っている。」
「あいつは…あいつはステラを殺したんですよ!俺がやらなくちゃ…ステラのためにも!」
「敵討ちか?止めておけ。自分の身を滅ぼすだけだ。」
「何でですか!俺はあれからフリーダムを落とすことだけを考えて来たんですよ!シュミレーションでも7:3で俺のほうが勝ってるんです!」
「シュミレーションで勝ったからと現実が思うように行くわけじゃない。そもそもこれは正式に下された作戦だ。お前の一個人の感情よりも結果が優先される。
三機で囲む方がこちらにもリスクは少ないし落とせる可能性は大きくなるんだ。わかるな、シン。」
「くっ…」

 

シンは唇をかみ締めこぶしを力いっぱい握っりデッキへと歩いていった。程なくタリアから艦内放送にてコンディションレッドが発令されアムロはデッキへと向かい、
乗りなれたプロトセイバーのコックピットに入るとシンとアスランに通信を入れた。

 

「シン、アスラン。俺たちの第一目標はフリーダムだ。三機で取り囲み確実に落とす。そのための鍵になるのはシン。お前とインパルスだ。」

 

えっという顔をするシン。アムロが今回フリーダム用に考えた作戦をシンとアスランに伝えるとシン、アスランともに作戦の内容に驚きを隠せない反面、これなら落とせると確信をもった。友軍艦より入るAA発見の一報がミネルヴァ内に緊張感を与える、と同時に三機のMSはデッキから発進していった。

 

数分後、AAをレーダー内に捕らえると、一筋の光が見えた。フリーダムがAAから発進すると、三機のコックピット内にロックオンされたことを知らせるアラームがなり響く。

 

「ちっ、ロックオンされたか。」

 

アムロはつぶやくと回避体勢に移る。フリーダムから発射される幾筋もの光が機体の脇をかすめていくがもう既にこの攻撃は全く通用しないものとなっていた。
それはキラにも解かっている事だができることといえば豊富なエネルギー供給にすがりただ撃ちまくるのみで回避される攻撃をただ単調に繰り返していくばかりであった。
シンはフリーダムに対し異常なほどの憎悪を剥き出しにしていた。タンホイザーの爆発に巻き込まれたミネルヴァクルー、父母にマユそしてステラ。

 

奪われたものはかけがえのない大切な人たち。その人たちの顔がシンの脳裏に浮かび、ステラの最後がよぎる。頭の中で何かがちぎれるような感覚になりシンの瞳にはSEEDが覚醒していた。
それでも頭の中はシンも自分で驚くほど冴え渡っており、フリーダムの行動だけでなくアムロ、アスランの動きまで把握しそれに対し最も有効なポジションを常にキープする。それによりアムロ、アスランの動きも自然にシンを攻撃の中心とした形となり、フリーダムが放つ射撃は全く三機にはかすりもせず逆に打ち返されるビームは確実にフリーダムを捕らえ、キラはシールドで防ぐ事で精一杯となっていた。
気付くとフリーダムは三機が織り成す三角形の中に絶えず閉じ込められていた。いくらもがいてもそのフォーメーションは崩れることはなく、キラは既にSEEDを覚醒させていたがそれでも同じくSEEDを覚醒させているシンとキラを撃つことに既に覚悟を決めているアスラン。
それに豊富なMS戦闘経験とNTとしての並外れた能力を持つアムロに囲まれてはもう袋のねずみと言うより他になかった。徐々にキラの心を死への恐怖が支配していく。

 

「ううっ…ちくしょう、ちくしょう…このままじゃやられる…いやだ…死ぬのは嫌だ…僕は…やられるわけにはいかない…やられるわけにはいかないんだ…そうだよね…ラクス…例え相手を殺したとしても!」

 

そう呟くととキーボードを引き出し、フリーダムの戦闘プログラムを驚くべき速さで書き換えていく。

 

「スラスターの推進剤噴出量を1.5倍に設定、各火器の供給電圧を2倍に変更、エネルギー供給をPS装甲優先から火器優先に切り替え、バラエーナ及びクスィフィアスの砲身の冷却を自然廃熱から強制廃熱に変更、各関節部モーターの過昇温防止サーモの接続カット、動作不良部のエラー表示OFF、パイロットへの安全配慮を解除。」

 

瞬く間に再構築された戦闘プログラムを立ち上げるとフリーダムのデュアルアイが切れかけた蛍光灯のようにチカチカと点滅する。
所々のPS装甲がダウンとアップを繰り返し、頭部、四肢ががくがくと揺れている。シンはフリーダムへ向けてビームライフルを放つとフリーダムは人間が乗っているとは思えないほどの加速にて回避するとインパルスのライフルの射程圏からあっという間に脱出した。
中のキラは無意識に唸り声をあげ、眼球の白目の部分に血管が浮き上がり白目を赤く染める。距離を取りながらキラは再度フルバーストの発射体勢を取るとインパルスとセイバーを二重に、プロトセイバーを一重にロックオンする。今までの二倍の電圧がかかることで火器の砲身がかなり熱を持ち陽炎が現れ、あふれ出たかのように周囲に電気を放電している。

 

「僕は…討たれる訳には行かないんだ!ラクスのためにも!」

 

開いた口から吐瀉物が出ようとするのをこらえながらトリガーを引くと放たれた一斉射撃は今までより速く、上がった威力によりビームは白色化し、三機を襲った。

 
 

「なんだと?速い!?」

 

そのアムロの言葉に全てが集約されていた。
殺気を読み既に回避行動に移っていたプロトセイバーは何を逃れたがインパルスは二撃目を右腕に受けビームライフルごと消し飛ばされる。セイバーは一撃目を左肩に受け、その衝撃により二撃目がセイバーをそれて行ったが左腕がぶらんと垂れ下がりもう使い物にならない。
がその代償は高くバラエーナが一門、耐え切れずに爆発した。しかしそれにひるむ事無くフリーダムはセイバーへと向かっていきビームライフルをよけつつサーベルをマウントから取り外した。ビームサーベルの刃がビームフライフルと同じように白くなり、刀身が肥大化しプラズマを放つ。セイバーもサーベルを抜きフリーダムを斬り付けようとするが切先が頭部をかすめるか否かと言う絶妙な間合いでびたっとフリーダムは急停止しセイバーの頭部を貫くとそのまま刃を下に下ろそうとした。
そこにビームが2本迫る。それに気付いたキラは余裕でかわすと手負いのインパルスへと狙いを変え、急加速した。インパルスのコックピットにアムロの声が響く。

 

「シン、来るぞ!さっき言ったことをやれるか!?」
「やって見せますよ!もうここで終わりにしなきゃ…なあフリーダムっ!!」

 

気合を入れるかのように叫ぶとサーベルを構えたまま突っ込んでくるフリーダムに備える。あとはシュミレーション通りにやればいいと自分に言い聞かせると
迫るフリーダムを見据え、タイミングを計る。

 

(あと600…500…400…なんて速さだ…やれるか?いややるしかないんだ!)

 

目前のフリーダムがインパルスの胸部を切り裂こうとするその刹那

 

「ここだっ!!」

 

シンは叫ぶとボタンを押してチェストを分離させ回避するとそのままフリーダムに抱きつきかせた。と同時にフォースシルエットのスラスターが全開となりフリーダムの動きを
抑制した。

 

「メイリン!チェストフライヤーとソードとフォースを!はやく!」

 

チェストフライヤーを引き剥がそうともがくフリーダムだがフォースシルエットの推力に押され上手く動きが取れない。インパルスはミネルヴァから射出されたチェストフライヤーと合体すると、フォースシルエットを装備し、ソードシルエットからエクスカリバーを取り外すと、そのままフリーダムにくっついているチェストごと串刺しにしようとする。アムロ、アスランはビームフライフルでシンの援護を行う。雨のように降り注ぐビームの中、片方のエクスカリバーがチェストフライヤーをを貫ぬくがフリーダムは身を捩じらせてそれをぎりぎりで避ける。が直後、チェストフライヤーの爆発に巻き込まれた。
少しの間の後に爆風を吹き飛ばすかのように推進剤を巻き散らかしながらフリーダムは爆発の中から飛び出すとインパルスに急接近し胸部にビームサーベルを突き刺そうとする。

 

「くっそ~!やられるかよ!」

 

シンはエクスカリバーを横に薙ぎ接近を許そうとしなかったが難なく避けられるとサーベルが振り下ろされる。が二機の間にビームがはしり、フリーダムを引き剥がした。

 
 

頭上でプロトセイバーがビームライフルを構えているのを確認するとキラは歯軋りし

 

「くっ…もう少しだったのに…僕の邪魔ばかりしてお前はーーー!!」

 

そう言うとスラスターを全開にしてプロトセイバーへと迫る。急激に回避動作をしようとしたアムロの操作に機体がついていけずにプロトセイバーががくりと一瞬力を抜かした。

 

「ちいっ!!こんな時に!!」

 

フリーダムがその一瞬の隙を見逃すはずもなく目前に迫っていた。コックピットに勢い良く突き立てられようとするビームサーベル。がその瞬間爆発音がしてフリーダムの
腕部が弾け飛んだ。

 

「え…?」

 

一瞬何が起こったか理解できないキラ。無茶な設定のため酷使していた右腕が間接から吹き飛んでいた。それを理解した時、フリーダムの胸部にセイバーのサーベルが突き刺さる。

 

「キラ…。」

 

アスランが呟くと同時にプロトセイバーのサーベルも腹部に突き刺さり、

 

「これで終わりだーー!!」

 

シンが叫びインパルスのエクスカリバーが上半身と下半身を分断した。

 

「あ…あ…?」

 

自分が落とされたことを理解できないままキラとフリーダムは海中へと消える。と共に海中へと潜行しようとするAAにミネルヴァからタンホイザーが放たれ海面にて大爆発が起きた。
爆発の中心部にいた三機はPS装甲でも防ぎきれないほどのダメージを受け、爆発が収まるころPSダウンした。空中に漂いながらシンは呟く。

 

「ステラ…やったよ…俺達、フリーダムを倒したんだ…でも…」

 

でもステラはもう笑わない。シンはそれを思い出すと少しだけ涙を流し、ミネルヴァへと帰投した。