DEMONBANE-SEED_種死逆十字_第15話4

Last-modified: 2009-01-22 (木) 00:47:18

「いやはや危なかった、危なかったな。腐ってもかつてはアンチクロスの一席に名を連ねた身。油断大敵だったか」
 海底に潜りながら岐路につくリジェネレイト・サイクラノーシュのコクピットで、撤退の憂き目をみたウェスパシアヌスが自省と考察を繰り返していた。
「しかし真に恐るべきはやはり、やはりキラ・ヤマトか。圧倒的多数の敵と相対しながらほぼ被弾することなく戦い抜き、しかもその攻撃は一切コクピットに当たっていない! 正にスーパーコーディネーター、体力技量ともになんと申し分ない能力よ! 人殺しを好まぬというのは少々心許ないが、それもまた貫き通せば強さといったところかな……それがいかな偽善であろうとも」
 興奮を押さえながら、ウェスパシアヌスは夢想する。スーパーコーディネーター、その完成体の理論を手に入れられれば、彼の夢はまた一歩現実へと近づく。
 狂気の科学者、ユーレン・ヒビキの忘れ形見にして最高傑作。人としての能力を最大限に高めるとともに、更に人を遥かに凌駕する可能性をその身に宿した、人を超えたヒト。
 それはウェスパシアヌスが求める芸術に、限りなく近いものだった。
「……む?」
 夢想するウェスパシアヌスの意識を、軽い電子音が引き戻す。
 一通のメールが、不正規に開かれた回線からR・サイクラノーシュへと送られてきていた。差出人不明のメールに、ウェスパシアヌスはかすかな驚きと懐疑を抱く。
 R・サイクラノーシュにはウィルスや魔術汚染を防ぐ為、物理的、魔術的なプロテクトが幾重にもかけられている。通信システムも同様でハッキングなどは論外、通信も正規のラインでなければならない。
 そのプロテクトの網を潜り抜け、このメールは届いた事になる。怪訝に思いながらも、ウェスパシアヌスはウィルスなどが仕掛けられていないか一通りチェックを行なって後、メールを開く。
 危惧に反してウィルスの類は仕掛けられておらず、メールの内容も短い一文が綴られただけの簡素なもの。
 だが、その一文の内容こそウェスパシアヌスを驚かさせるものだった。
「……ふは、ふはははははは! そうかそうか! やはり、やはりか! そうだな、君がこちらに来ていない筈がなかったな!」
 笑い声を上げながら、ウェスパシアヌスはその進路を変更した

 
 

『親愛なるウェスパシアヌスへ アル・ダ・フラガの屋敷跡で待つ 逆十字の兄弟より』

 
 
 
 
 

「むむ……ふーむ……?」
「どうかしましたかぁ、ドクタァ~?」
 オーガアストレイの前で唸り声を上げるウェストに、他のMSの整備をしていたユンが訊ねる。
 普段なら多くのメカニックが忙しなく動き回り、機械の音とそれより大きな人の声が飛び交っている筈のハンガーは、今日はやけに静かだった。ウェストとユンのほかにメカニックは両手で数えられる程度。騒音も普段の喧騒と比べれば犬の鳴き声ほども響かない。
 しかめっ面をしたウェストの左頬は、かすかにあかく腫れている。オーガアストレイのシステムエラーで海に叩き落されたティトゥスの怒りを、右ストレートという形で叩きつけられたためである。殴られた直後は大きく腫れ上がっていた筈だが、数時間でここまで再生が進んでいるのはさすが■■■■と言わざるを得ない。
 ちなみに海に落ちたオーガアストレイを引き上げたのはドリルが戻ってきて浮上途中だったスーパーウェスト無敵ロボ$奴隷だったのだが、それが余計にティトゥスの怒りに油を注いだのではというのが大方の予想である。
 閑話休題。
「……そういうことであるか。しかし何ゆえこのようなことに……」
「エラーの原因、分かったんですかぁ?」
 調整用のコンソールには、オーガアストレイの各種データが表示されている。ウェストは先日の戦闘記録と機体データを検分し、なぜシステムエラーが起きてしまったのかを調べていた。
「うむ、どうやらエラー発生までの数分の間、魔力回路に供給されていた魔力量が増大していたようであるな。そのせいで負荷が限界を超え回路が断線、魔導書と機体の接続が切れてしまったのである」
「なるほど~。でも、なんでそんなことになっちゃったんですかぁ?」
「機体中枢である魔導書の保有する魔力量がわずかに上昇しているのが確認できたのである。上昇した分の魔力がティトゥス本人から伝達される魔力に上乗せされてしまったのであろう」
 憮然とした顔のウェスト。その言葉にユンははてと首を傾げた
「う~ん、わたしまだ魔術関係は弱いんでよくわかんないんですけど、魔導書ってあくまで魔術を使うための道具なんですよねぇ? 魔力とかって自分で持ってるものなんですか?」
「長い時を経て意思を持ち、人型形態を取るような魔導書も存在するのである。魔力を保有しているなんぞ珍しくもなんともない。ただ通常その保有量は術者に依存するはずなので、契約していない現状で数値が上昇している原因がまだ分からんのである。おそらく回路を使い流れていたティトゥスの微細な魔力が、少しずつ蓄積されたのではというのが私見であるが……ハッキリせんのである」
 ウェストが不満そうな顔でオーガアストレイを見上げた。割り切れない事柄というのは、彼にとって好ましくないシロモノだ。
「ともかくその調査と平行しつつ、魔力回路にリミッターをかけるなり、回路の質を高めるなり何らかの対策を立てねばなるまい……いや待て、いっそここは思い切ったリニューアルを! 形状を破壊ロボタイプのシンプル設計にし、回路数を増設、並列化すれば従来のもので問題あるまい! 流石は我輩、図らずも地球資源に対する気遣いが出来ているのである! 自然と健康を科学するドクター・ウェスト、ドクター・ウェストで御座います!」
 変な方向に話が進んでいるウェストに、ユンは引くでもなく感心したように拍手を送る。■■■■にツッコむことのないボケしか居ないこの現状は、危険であった(主にティトゥスにとって)。
「そーいえば、ドクターは興味ないんですかぁ? あのコのこと」
「フン! あのような小娘が本物だろうと偽者だろうと我輩には興味はないのである。お主こそ、整備などせず見物にいけば良いではないか」
「えへへ、実はわたしもあんまり興味なくて。こうやって機械を弄ってるほうが楽しいですし。それに……」
 ユンはソバカスの浮いた顔に、にぱぁ~と緩んだ笑顔を作った。
「ホンモノでもニセモノでも、あのコがいいコなのは間違いないですよぉ。わたしにだって、それくらいは分かります」

 
 
 

 ウェストとユンがツッコミのいない会話を繰り広げていたのとほぼ同時刻。ミネルバの中央甲板に、ミネルバクルーの過半数が集まっていた。この時間に合わせ艦内全ての部署に休憩時間が与えられ、一部の人員を除いて現在ミネルバは半停止状態だ。
「……っ」
 人、人、人。甲板上に立ち並ぶ人の群。その圧倒的な数と熱気に、急ごしらえで作られた小さなステージ台の後ろに立つミーアは息を呑んだ。
「……大丈夫か?」
 左に立つアスランが、心配そうにこちらを見ている。笑顔を作って頷いてみせるが、上手く出来たかどうかは自信がない。
「君が違うという証拠はないんだ、わざわざ公表する必要はないんだぞ」
 アスランが小声で囁く。確かに彼の言うとおり、アークエンジェルの【ラクス】がなにを言おうと自分がラクスでないという証拠はない。しかし──
「ううん、もう決めたことだし……この船の人達は、みんなわたしを疑問に思ってる。ならわたしは、その疑問に答えなきゃいけないと思うの」
 艦内の通信ラインでここでの会話は聞けるようにしている。それでもここに集まったクルーたちは、つまるところ彼女の口から直接真実を聞くことを望んでいるということになる。
 そして直接伝えたかったのは、ミーアも同様だ。
「本当に、いいのね?」
 右に立つタリアが最後の確認を取る。厳しい顔つき、睨むような険しい目。それに怯えず頷き返すと、表情だけはそのままに目つきが少しだけ険しさを弱めた。
 艦長には本当に感謝している。自分の正体を察しても口にせず、逆に励ましてさえくれた。この人がいなければ、自分は取り返しの付かない醜態を晒していただろう。
「……行きます」
 足を踏み出し、ステージ台へと上がる。たった数歩分の移動。その数歩で後ろの二人との距離が一気に離れ、人垣への距離が一気に狭まったように錯覚する。
 自分の眼前に居並ぶ数多くの人。自分を見つめる無数の目。
 【ラクス】になってから、ライブや握手会などでこの数倍の人数と対面したことは何度もある。しかし初めてのライブでさえ、今ほどの緊張感も、恐怖感もなかった。
 ファンは皆【ラクス】を見ていた。【ラクス】を見て喜び、笑い、歓声を上げていた。
 今は違う。目の前に笑顔なんて一つもない。今自分に向けられているのは不審、懐疑。こいつは本当にラクス様なのかという、疑いの眼差し──ミーアにはそう思えた。
 声を出せない、口が開けない。吐き気がする。気分が悪い。気を抜いてしまえば、今にも倒れてしまいそう。
(ダメ──!)
 この程度で倒れてどうするというのだ。こんなザマでは彼に──ハイネに笑われてしまう。
 撃墜、墜落の衝撃とコクピット内の爆発によって、深い傷を負ったハイネ。詳しい容態は分からないが予断を許さぬ状況らしく、顔を見ることすら出来なかった。
(ハイネ……)
 心の中で彼の名を呼ぶ。【ラクス】を演じていた自分を、ずっと支えてくれた人。ずっと【ラクス】ではなく、自分を見てくれた人。
 彼に誓う──わたしはもう、自分を【ラクス・クラインの偽者】として誤魔化さない。そのために──
「ミネルバの皆さん。わたしは皆さんに謝らないといけません……」
 そのために私は、告白しなければならない。謝罪しなければならない──伝えなければならない。
 口を開き、声を出す。意識して動作させると、意外にあっさり声は出た。
 ラクスに似た声。けどこれはわたしの、【ミーア・キャンベル】の声。
「もう、皆さんも分かっていると思います……わたしは、ラクス・クラインじゃありません」

 
 
 

 生い茂った雑草を、革靴の底が踏み潰す。人里からは少々離れた深い緑に覆われた地へ、ウェスパシアヌスは足を踏み入れていた。
「資料で風景だけは見たことがあるが、いやはや穏やかでのどかな場所じゃないか。しかし、しかし私のような後ろめたい魔術師には似合わんなあ」
 そう嘯いて、ウェスパシアヌスは辺りを見渡した。彼の立つ一角とその周辺は、少々周囲とは趣を異にしていた。
 ここまでの道程にはまばらにあった木々が、ウェスパシアヌスを中心に十数メートルほどには一本も生えていない。雑草も少なく、土色の地肌が露出している部分が目立つ。
 木々の代わりに存在するのは、黒く変色し崩れている木材や鉄骨の焼け残りだ。周囲に転がっているそれらは相当に劣化、腐食が進んでいる。未だ形を残しているのは、原型を留めていた時の手入れが行き届いていたためだろうか。
「……む?」
 地に押し付けたステッキから感じたかすかな違和感に、焼け残りに近づこうとしたウェスパシアヌスは足を止めた。知覚を鋭敏化する簡単な術式を行使し、探るように何度か地面をステッキで叩く。
 土の下に感じる硬い感触。どうやら地下に、埋まっている【何か】があるようだ。それもかなり大きい。
「地下室の存在に気づいたか。流石だな、兄弟」
 背後からかかった深みある声に、ウェスパシアヌスが振り向く。鋭敏化した知覚は維持したままだったのに、そこに人がいると気づけなかった。
「ここにはかつて、フラガという一族が暮らす屋敷があった。十年近く前に火災で倒壊した際、当時の当主アル・ダ・フラガとその妻は焼死。その一人息子ムウ・ラ・フラガは後に地球軍に入隊。『エンデュミオンの鷹』の異名を持つエースとして活躍するも、軍上層部との軋轢により新造艦『アークエンジェル』とともに脱走。三隻同盟として連合とザフトの争いに介入するも、ヤキン・ドゥーエで戦死。それによりフラガの血は完全に途絶えた……と、これが表の記録だ」
 木々の間を抜け、歩いてくる男。漆黒の肌に黒衣を纏い、口元に上げた指には紫煙を燻らせた葉巻が挟まれている。
 その姿にウェスパシアヌスは目を見開き、次の瞬間にはその顔に笑顔を作っている。
「やあ、やあやあやあ! 久しぶりじゃあないか、兄弟!」
 手を広げて近づくウェスパシアヌスに、アウグストゥスは葉巻を離した口に薄い笑みを浮かべた。地に投げ捨てた葉巻を、靴の底が強く踏み潰す。
「ああ、本当に久しい……壮健でなによりだ、ウェスパシアヌス」

 
 
 

「──これがわたし、【ミーア・キャンベル】の、全てです」
 ラクスになるまでの自分、そしてラクスに顔を変え、自分がやってきたこと──全てを告白して、ミーアは俯いた。今まで真っ直ぐ見据えていたクルーたちから、初めて目を背ける。
 パイロットやメカニック、ブリッジ要員に至るまで、ミーアの告白に唯々驚いて固まっている。全てを語り終えた後、彼らがどんな顔を自分に向けるのか。ミーアはそれを見るのが怖かった。
 それでも、言わなければいけないことがある。
「わたしは、皆さんを騙していました……本当に、今まで嘘をついていて、ごめんなさい……!」
 俯きから更に深く、ミーアは頭を下げて謝罪の言葉を口にした。
 ラクスの行動によりミネルバは被害を受け、クルーに犠牲者が出てしまっている。ミーアはこれを、自分の責任であると考えていた。偽者の自分がいなければ、ラクスはあんな行動をとってしまったのではないか、と。
 なら、自分は謝罪しなければならないとミーアは思った。皆を騙した上攻撃の理由を作り、クルーを死なせた。その責を自分が問われるのは当然なのだから。
 アスランが言ったように、誤魔化すこともできた。自分はラクスであり、あのラクスこそ偽者であると。だがラクスのように答えを誤魔化して逃げ出すということを、ミーアは許容できなかった。たとえデュランダル議長に迷惑をかけるとしても、自分がどうなるにしても──自分の決意を、実行することすら出来なくなるかもしれないとしても。
 集まったクルーたちが静まる中、黙して頭を下げたままミーアは動かない。遠目には分かり辛いが、その全身はかすかに震えている。
 顔を上げ、皆の表情をみるのが怖い。最初に誰から、何を言われるのかが怖い──覚悟が決まっていても、怖いものは怖いのだ。
 そしてしばしの沈黙の後、ついに声が投げ掛けられた。
「あんたに謝られたって、何も戻ってきやしねえんだよ」
 低いトーンの、厳しい声。ミーアが顔を上げると同時に、その場に集まった全員の視線が声の主へ集中する。
「ラクス様とフリーダムのお陰で、うちの連中が死んだ。若いのもいたし、ベテランもいたし、どうにも気にいらないヤツもいた……どいつもこいつも、もう死んじまったんだ。あんたが謝りゃ帰ってくるわけでもない。あんたの自己満足のために、わざわざ俺らを集めたのかよ?」
 憮然とした表情で、マッド・エイブスは言った。睨むような視線にミーアは後ろに下がりかけ、その衝動を押さえ込んだ。今にも泣きそうな顔を、無理矢理押さえ込む。
「……でも、今のわたしにはそれしかできませんから」
「今の、ね……じゃああんたはそのうち、死んだ連中になにかしてくれるってわけか。金か? それともあいつらの為にレクイエムでも歌ってくれるってのか」
「はい。歌います……歌い続けます、わたしは」
 エイブスは勿論、全員がその言葉の意味が分からないとばかりに呆気に取られた。
「あの時、わたしがアークエンジェルのラクス・クラインに言ったこと。あれはわたしの本心です。嘘をつき続けてきたわたしですけど、あれだけは嘘じゃない……いえ、嘘にはしません」
 アークエンジェルのラクス・クライン。理想のためなら他人を斬り捨てることを是としながら、それを自身では決して認めない。それを問い詰めてもはぐらかし、誤魔化し、言葉で答えをくれはしない。
 決める、そして遣り通す。それは決して悪いことではない……だが、それを言葉にせず、どうして人が分かり合える?
 ──あんなラクス・クラインを、ミーア・キャンベルは認めない。わたしは、あんな人の代わりをするためにラクス様になったんじゃない!
「だからわたしは、『本当のラクス・クライン』になります。わたしの中にある、平和の歌を皆のために歌う、ラクス・クラインに。もう、嘘で終わるつもりはありません」
 それこそがミーアの決意。ただ命じられ、流されるままにラクスでいるだけではない。
 理想では終わらせない。理想にたどり着く──わたしは、理想のラクスになる。なってみせる!
「わたしは皆さんを騙した、恨まれて当然の人間です。そんなわたしがラクスを続けるなんて、勝手だと思われても仕方ありません……それでも、わたしはラクス・クラインをやめません。皆さんに集まってもらったのは、わたしの行く道を皆さんには知っておいてもらいたかったから……もう、皆さんを騙したくなかったからです」
「……本当に勝手だな。単に、あんたがラクス・クラインとしてチヤホヤされたいだけじゃないのか?」
「そうお思いなら、いくらでも今わたしが喋った事を公表してください。録音して証拠を作られても、構わない。どんなスキャンダルにさらされても、わたしはラクスであることをやめませんから」
 ミーアはエイブスを真正面から見返した。目に浮かぶのは涙ではなく、進む事を決めた決意の光だ。
 その目をじっと見ていたエイブスが、ミーアへと歩き出した。厳つい男の身体が、人垣を引き裂いてゆっくりとミーアへと近づいていく。
「エイブス班長!」
 制止しようとしたタリアとアスランを、ミーアの広げた細い腕が遮った。背中が任せてほしいと意思を示し、ステージ台の前へと降りる。
 そして無理矢理人垣を抜けたエイブスが、ミーアの目の前に立つ。肩幅も身長も圧倒的な違いを持つ偉丈夫を前にしては、ミーアも流石に表情が引き攣るのを防げなかった。
「わ、わたしを恨まれるのは構いません。言いたいことがあったり、殴りたいんだったら好きにしてください。でも、わたしはさっきの言葉を取り消したりは、絶対に」
「フン」
 言葉を遮って、エイブスの腕が斜め前に突き出された。ミーアは思わず目を瞑る。
 だが、殴られる衝撃は一向に襲ってこない。恐る恐る目を開けると、そこには使い古したメモ帳を突き出したエイブスの姿があった。
「適当なことをメモするだけの粗末なもんだが、字を書いてもらえそうなものがそれしかなくてな」
「は?」
「……サインしてくれって言ってんだよ」
 ポカンと、ミーアは頭二つほど上にあるエイブスの顔を見上げた。彼は顔を真っ赤にして、視線をあちこちに泳がせていた。
「俺は正直音楽とかアイドルとかには興味がねえ。ラクス様に関してもそうだったし、歌の良し悪しも分からん……けど、ここ最近艦内で耳にしてたあんたの歌は嫌いじゃない。あんたのその考え方もな……あんたのファンになら、なるのも悪くない」
「わ、わたしのこと、憎んでるんじゃないんですか? さっき、謝られても仕方ないって……」
「いや、あんたのせいじゃないから謝られても仕方ないって言ったんだが。同僚が死んで昨日の今日だし、見当違いのことしてんなって少しイラついてはいたけどよ。あんたの話を聞いてそんな気持ちも吹っ飛んじまった」
 だからよ、と前置きしてエイブスは続けた。
「あんたの名前で、サインを書いてくれねえか? 偽物のラクス・クラインのサインじゃなくてあんたの、ミーア・キャンベルのサインをよ」
 照れくさそうに笑うエイブスを前に、ミーアは頭が真っ白になっていた。エイブスの言葉は聞こえているが、頭の中にまで入ってこない。
「お、俺達もっ!」
 エイブスの背後から声が上がる。人垣から飛び出し、床にずっこける二つの影。
 メカニック陣の名物コンビ、ヨウランとヴィーノだ。
「俺達にもサイン、ミーア・キャンベルって書き直してくれ! いや、ください! 手元にあるのラクス・クラインになってるんだ! 俺、あなたの歌のファンなんですっ!」
「オレもオレも! ラクス様じゃなかったのはちょっとショックだけど、それでもミーアちゃんの歌は最高だよ!」
 どこから取り出したか、白紙のサイン色紙を突き出す凸凹コンビ。ミーアは半ば無意識に、常備しているペンでメモ帳の表紙と色紙に名前を書いた。
 単に名前を書いただけ。しかも震える手で書いた、少し歪んだ文字。それが初めて書いた、ミーア・キャンベル名義のサイン。
 しかしそんなものにヨウランとヴィーノは飛び上がらんばかりに喜び、エイブスは相変わらず真っ赤なまま素っ気無く礼を述べ──
「あまり気負うんじゃねえぞ。この船の連中はみんな、あんたのせいなんて思っちゃいねえよ」
 ──それだけいって、ヨウランとヴィーノの首根っこを掴んで人垣へと戻っていた。
 生まれたのは小さな熱。しかしそれは人へと伝わり、相乗効果でより熱くなっていく。
「……別にあの娘が悪いわけじゃないんだよな」
「そうだぜ、ミーアちゃんはラクス様の代わりを今まで頑張ってくれてたんだろ。それを責めちゃ可哀想すぎる」
「本物のラクス様は、俺達の仲間を……いや、まだあれが本物なのかは分かんないけど……」
「少なくとも、あんなのよりずっとミーアちゃんはいいラクス様だったわ! 私、あのコのこと応援する!」
「オレも!」
「俺もだ! ミーアさん俺にもサイン書いて!」
 何処からともなく生まれた歓声。最初は小さかったそれは、いまやクルー全体へと広がっている。
 自分を好意的に呼ぶ声に、ミーアの意識が現実へと戻ってくる。
「み、みんな……わたしのこと許してくれるの? わたしは、みんなを騙して……」
「いいっていいって! そりゃビックリしたけど、ミーアちゃんの事情だって分かるしさ!」
「あの時ラクス様にミーア嬢が言い放った言葉、ありゃ俺達ミネルバクルー全員の代弁だったぜ。ありがとよ!」
「あんなのにプラントに戻られるより、ミーアがラクス様になってくれたほうがいいさ、絶対!」
「そうよ! 頑張ってミーアさん! ミネルバクルーはみんな貴女の味方よ!」
「立派なラクス様になれよ! けどミネルバにいる時はミーアでいいんだぜ! 今更秘密が一つ二つ増えても変わらないしさ!」
「ミーアちゃんオレだー! 結婚してくれーっ!」
『ミーアッ! ミーアッ! ミーアッ!』
 割れんばかりのミーアコール。それを耳にしたミーアの目から、我慢し続けていた涙がポロポロと流れ出した。
 みんなが、許してくれる。受け入れてくれる。嘘をついてばかりで、ラクス様を演じなければ何も出来なかった、こんなわたしを──
「やったじゃねえかミーア! 一気に大量ファン獲得だ! クソッ、少し羨ましいぞコノヤロウ!」
 大歓声の中でも良く通る、聞きなれた高音の声。その声に、信じられないという表情で振り返るミーア。それは他の人間も同様で、歓声が止み大きなどよめきが上がった。
「は、ハイネ!?」
「いよう、待たせたな」
 人垣が割れ、全身に包帯を巻いて車輪付きの簡易ベッドに乗せられたハイネが現れた。感情を高ぶらせたまま、ミーアがそちらへと歩み寄る。
「ハイネ! 大丈夫なの!?」
「ああ、ピンピンして……ってちょっと待てよ抱きつくのはノーサンキューな! 今はヤベェ!」
「お約束シチュのフラグを先に潰すとは、根性なしロボね」
「まあまあ。仮にも絶対安静ですから~」
 エルザとセトナが、ハイネのベッドを押して現れる。何故か二人の衣服はナース服になっており、クルーから男女問わぬ黄色い声が上がった。
「先ほど目を覚まされて、ミーアさんの言葉を艦内通信で聞かれてたんです。そしたらいきなり連れてけって仰られて。先生に無理を言って、こちらにベッドごと運んできたんです」
 セトナの説明も耳に入らぬままベッドに縋るミーアに、包帯まみれの手を差し出してハイネは笑った。
「まったく、俺や議長に相談も無しでどえらいことやりやがって……けど、悪くない。俺も応援させてもらうよ、お前を」
「ハイネ……うっ、うう──っっ!」
 その言葉に、ミーアは感極まってしまう。言い表せない感情に涙が溢れ、勝手に声が口から漏れる。
 その様子に苦笑しながらミーアの頭に、ハイネのもう一方の手が乗せられた。
「泣くんじゃねえよ。お前にはもう泣いてる暇だってねえんだ……歌ってやれよ。受け入れてくれたこの艦のやつらに。そして死んじまったやつらのために……お前の歌を」
「えっ……」
 ハイネの言葉に、再び歓声とミーアコールが湧き上がる。ハイネが優しく笑い、ミーアから手を放す。まるで後押しするように。
「……っ!」
 涙を拭い、ミーアがハイネに背を向けて再びステージ台へと歩き出す。
 バックミュージックも派手な演出もなく、ステージは小さな台しかない。舞台としては最悪、しかし目の前には自分を認めてくれるみんながいる。それだけで、構わない。
「この艦のみんなへの感謝を込めて、そしてもういなくなってしまった人達への思いと、魂の安らぎを願って……わたし、歌わせてもらってもいいですか!?」
 返答はこれまでで最大級、艦内全てに響き渡らんかぎりの大歓声。その大歓声を一心に受けながら、ミーアは自分の歌を歌うために口を開いた。
「みんな、本当にありがとう……それじゃあ、聴いてください! わたしの、ミーア・キャンベルの、ファーストライブ!」

 
 
 

 ミーアのライブは盛り上がりの絶頂を迎えていた。
 いつの間にかエルザの持ち込んだ旧式のラジカセから音楽がかかり、セトナなどは飛び入りでミーアと一緒に歌っている始末である。だが、それが更なる熱狂を呼んでいた。
「やれやれ。雨降って地固まるってやつかねこれは」
「そうだな……」
 ミーアを少し離れた位置で眺めながら、ベッドの上でハイネは息を吐く。それに付き添っていたアスランもまた、安堵しながら相槌を打った。
 しかし、その内心は複雑だ。今の状況が様々な偶然が絡まった結果であることを、アスランは理解していた。
 ミーアが受け入れられたのはここがミネルバであり、襲ってきたのがラクスだったからだ。
 ミネルバはクルーの信頼関係が強い傾向がある。それは同じ艦に所属しているからだけでなく、ミネルバが多くの機密を抱えているという点があるからだ。単に戦友というだけでなく、同じ秘密を共有する仲間であるということ──それはクルーの間に強い絆を作り出すには十分な要素だった。
 その仲間が殺されたとあって、黙っていられるミネルバクルーではない。しかもそれがプラントで半ば神聖視されているラクスによってもたらされた悲劇だと知った時、彼等の受けたショックはとてつもないものだったろう。アスラン自身、同じ思いを抱いているから良く分かる。
 何故、どうして──裏切られたという悲嘆は、そのまま彼女への反発へと変わる。行動を否定しつつも未だラクスを信じていたり、あのラクスもまた偽者でははないかという意見もちらほらある。だが概ね、ミネルバクルーがラクスへ向ける感情は【憤怒】で統一されていた。
 ミネルバ以外の艦では、こうはならなかっただろう。ラクスを語った不埒者と非難され、言葉では言い表せぬほどの責め苦を受けさせられた可能性すらある。
 結果としてそうはならずミーアは好意的に受け入れられ、ミーア自身も成長と【ラクスになる】という強い決意を持つことに繋がった。連合やオーブの方面から多少話が漏れるのは仕方ないが、これまでならまだしも今のミーアなら多少の困難に挫けはしないだろう。
 結局のところ、全てが丸く収まりすぎている。あまりに都合がいい展開に、アスランはなにか作為的な意図を感じてしまう。
(デュランダル議長……まさか、この結果を予想していたのか?)
 アスランの脳裏に浮かぶのは、最初にこの話を自分に持ち込んだ喰えない男の笑みだ。彼の意向が大なり小なり、この件に関わっているのは間違いない。
 ミネルバのクルーにラクスへの敵意を持たせるため? それともミーアにラクスの正体を知らせ、彼女にラクスとしての自覚を芽生えさせるためか?
 だがそうなると、議長はラクスが現れることを知っていた──?
(いや待て、議長を疑うのは早計過ぎる)
 アスランは頭を振った。どうも最近物事を勘繰るのがクセになってしまっている気がする。確かに油断は出来ないが、現状議長を疑うような証拠も確信もないのだし──
「くっ……」
 アスランを思考の海から引き戻したのは、小さな苦悶の声だった。ハイネの身体が一瞬硬直したかと思うと、身体を細かく痙攣させながらベッドに突っ伏す。
「クソッタレが……」
「ハイネ!?」
 慌てて慌ててより縋るアスランを、油汗を顔に浮かべたハイネは右手を上げて制した。
「声出すなよ、ライブに水差したくねえからな……しかし、やっぱ医者の先生の言うとおり無茶するもんじゃねえな。ベッド運んで貰っただけでこのザマじゃよ」
「……容態はどうなんだ?」
「破片が突き刺さった腹もメチャクチャ痛えんだが、そっちはまだいい。問題なのは海に叩きつけられた時、衝撃で頚椎に損傷を受けちまったことでな。まったく動かねえわけじゃないが、足の感覚がおかしいんだ。あと、かなりキツイ鞭打ち症ってとこかな……パイロットとしては、絶望的だな」
「そんな!」
 青ざめるアスランを、ハイネはまあ落ち着けと宥める。
「頚椎損傷っつっても、俺のはまだ大分軽いほうらしい。一昔前ならまだしも、今なら治療法もあるそうだ。ザフト脅威の技術力に感謝だな……ま、プラント本国の医療施設じゃねえと無理らしいから、しばらくは戻って療養生活だ」
「そ、そうなのか……良かった、というのは不謹慎かな?」
「いいさ。たしかに助かったのはラッキーだしよ……けどな」
 その言葉に心なしか安堵するアスランだったが、忌々しげに顔を歪めたハイネに顔を凍らせた。
「フリーダムの野郎、絶対許さねえ。直るからってはいそれまで、で終わらせるつもりはねえぜ、俺はよ。確かに死ななかったのはラッキーだが、ようは下手すりゃ死んでたってことだぜ? そのくせ殺さずを気取って、しかも仕方ないとか抜かしてたんだろ? ラクス様はよ! ……冗談じゃねえぜ!」
 吐き捨てるハイネ。アスランはその言葉に自分も責められるような気持ちと、友人たちへの憤りを抱く。
(キラ、ラクス……これだけのことをやって、君達は……)
 デュランダルへの疑心を一度心の片隅にのける。考えるべきことは、そんなことじゃない。
「復帰したら、絶対にあのヤロウに思い知らせて……」
「悪いが、それはさせられない」
 ハイネがその顔を見て言葉を失う様を、アスランは認識していなかった。熱唱しているミーアの視線がアスランに向けられれば、その瞬間彼女の歌声は止まっていたかもしれない。
 凄絶な決意を表す、修羅の顔。射殺すような視線の向けられる先は、記憶の中の戦友達。
 言葉は、アスラン自身があっけないと思うほどに容易く口を出た。
「フリーダム……キラ・ヤマトとは、俺がこの手で決着をつける。オーブのアレックス・ディノとして……
 そして、奴の親友であるアスラン・ザラとして」

 
 
 

「なんと、なんとまあ……」
 手袋を取った皺の浮かぶ手が、ノートのページをめくり続ける。隠し切れぬ興奮を瞳に宿し、ウェスパシアヌスは一心にノートの内容を記憶へと刻んでいく。
 薄暗い書斎を宙に浮かぶ光球の淡い輝きが照らし、立ち並ぶ無数の本棚が影を作る。フラガ家跡に残された秘密の地下室にウェスパシアヌスを導いたアウグストゥスが口を開く。
「私はここで目覚め、図らずも隠された真実の一端を知った……アル・ダ・フラガが書き記したその日記、その内容に偽りがないのは、君になら良く分かるだろう、兄弟?」
「ああそうとも、間違いないだろうて……しかしなんと、なんたる、なんたる傲慢よ。アル・ダ・フラガ、かの人物の表立った所業は聞き及んでいたが、まさかここまで愚かなる男だったとは。
 しかし故に、おかげで、彼の存在なくしてスーパーコーディネーターは生まれなかったとは、皮肉なものだ」
 ウェスパシアヌスは答える。目はノートに向けられたままだが、目と耳二つの機関から入力される情報を同時処理する程度、容易い事だ。
「まったくだ。そしてそのおかげで、我々は以前の世界で成し得なかった悲願を果たすことが出来る……私の計画に協力してくれるか、ウェスパシアヌス?」
「なにを言う兄弟、何を水臭い事を! マーベラス、君の計画は私の考えたベターなやり方より実にマーベラスだ! 不肖このウェスパシアヌス、喜んで君に協力しようじゃあないか!」
 ノートを閉じ、好々爺じみた笑みを浮かべたウェスパシアヌスがアウグストゥスの手を取った。硬く手を結ぶ、二人の魔術師。
「となるとやるべきはまず、まず先立って魔力炉の製作か。原型の方は【ファクトリー】で作られているのだな」
「ああ、詳細なデータはあとで送る。一つはかなり大きい物を作ってもらわねばならないが」
「まあ蓄積されたノウハウがある分時間はそうかからんだろう。大きい分出力は取れるだろうし。さておき、あとはサイクラノーシュの仕様を少し変えねばならんか……それと魔導書。まあそちらは当てがあるので問題あるまいて」
「ギルバート・デュランダルか」
「ははは、さすがに調べがついているか。しかし……あの書を使うとは中々、中々皮肉な話だ」
「しかしかの書こそ彼には相応しい。それにあれに書かれた記述は我々の目的を助けるだろう」
 親しげに今後のことを二人は語らう──その笑顔の仮面の下で、ウェスパシアヌスはアウグストゥスの腹の内を探ろうと目を光らせていた。
 アウグストゥスが語った【計画】。それに対しての賛同は偽りないものだ。自分の描いた計画も堅実だったと自負しているが、こちらはより大きく、派手で、面白い。最終的に完成させる芸術[アート]の完成度も高まることだろう。
 しかし、それとアウグストゥスへの信用は別物だ。元々アンチクロスに仲間意識などないに等しい。
 それに、自分はかつて『アウグストゥスを殺している』。まさかそんな相手と心底仲良くしようとは向こうも思ってはいまい。
 だがそれはこちらとて同じこと。お互いに利用し、利用されることを承知で手を結ぶ──下手に上辺を塗り固めた関係より、こちらのほうが気楽とさえ取れる。
「とりあえず、先立って『アレ】はそちらに預けておこう」
 ウェスパシアヌスの考えを知ってか知らずか、アウグストゥスが右手をかざす。部屋を照らしていた光球がすっと動き、書斎の奥へと向かっていく。その光を追う二人。
 数十歩歩いたところで二人は足を止める。書斎の最奥の、少し奥に窪んだ壁には一面に幾何学的な紋様が刻まれ、その中央に装飾を施された箱のようなものが存在していた。魔術を知る者なら封印結界、それも強力なものが何十にも張り巡らされていること事が分かる。
「受け取ってくれ。アル・ダ・フラガの所有していた中で最も位階が高く、そのフラガすら力を恐れ封印していた、この魔導書を」
 アウグストゥスが淡い光を纏った左腕を箱へかざし、何事か呪文らしきものを唱えた。たったそれだけの行動で、箱に施された封印の全てが一瞬で解呪される。
 箱が開き、その中から一冊の書物がひとりでに宙へと浮かび上がった。今度はウェスパシアヌスが手をかざす。すると本は吸い寄せられるようにウェスパシアヌスの手に収まる。
 古ぼけた一冊の本。表紙は正体不明の皮で装丁され、わずかに滑り気を帯びていた。懐かしい手触りを感じながらウェスパシアヌスが呪文を紡ぐと、ぎらついた緑の光が本を包み込む。光は徐々に大きくなり、やがて人間のシルエットを作り出す。
「あ……ら、ら……る・らー……」
 明確な【少女】の姿をなしたそれは、異常にか細い声で第一声を発した。

 
 
 

 マーチン・ダコスタはヘルメットの下で唇を噛みながら、ザクのスラスターを全開にしてその場を離れようとしていた。
 仲間達が稼いでくれた時間で、自分は逃げられたようなものだ。かつて【砂漠の虎】の副官を務めてた腕は健在だと思っていたが、生半可な自信は粉々に打ち壊されてしまった。
 後方には、既に小さくなった一基のコロニー──かつて自分達も身を寄せていた、既に放棄された廃墟。
「くそっ!」
 簡単な任務だった。デュランダル議長がかつてメンデルの研究に参加していたという情報を元に、彼の考えについて何らかの手がかりが掴めるではないかという曖昧な理由での探索任務。しかしいざ来てみれば、正体不明の集団による攻撃を受けこちらはほぼ壊滅状態だ。
「なぜメンデルに、あんな連中が……」
 連合製MSウィンダム、そして赤い法衣を纏い下卑た笑みを浮かべる異形のMS。奴等によって仲間は甚振られるように殺されていった。
 連中は何者だ? 何故メンデルにいる? 一体あそこで、何をしようとしているのか。
 答えは分からない。しかしこの事実を、ラクス様へ伝えなければ──その一心で、ダコスタは迎えの船との合流ポイントへと急いだ。

 
 
 

to be continued──

 
 
 
 
 

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