KtKs◆SEED―BIZARRE_第18話

Last-modified: 2008-05-05 (月) 10:53:28

 『PHASE 18:闇の道、光の道』

 

 戦闘開始の直後、ミネルバの主砲、陽電子砲『タンホイザー』が撃ち放たれた。
 閃光は視界を真っ白で満たし、爆発と爆風が渓谷を揺るがした。
 しかして、陽電子砲の爆心地跡には、リフレクターを展開する新型MA『ゲルズゲー』と、無傷のMS郡があった。
 ゲルズゲーは、下半身は六本足の蜘蛛、上半身はMSのストライクダガーという、ケンタウロスのような姿をしている。
 六本の足は、この岩山の行動でも安定しており、機敏に動けそうだ。
 つまり、どこから攻撃がきても、移動して盾を張れるということだ。

 

「なるほど、これは骨だ」

 

 アスランは呟く。ゲルズゲーという盾と、陽電子砲『ローエングリン』という矛。この二つがある限り、この基地は確かに難攻だ。
 だが不落ではない。逆を言えばこの二つ以外に、この基地に怖いものはない。MSの動きからして、兵の実力は大したことない。二つの強力な兵器におんぶにだっこの状態だ。

 

「どちらかを破壊すれば、それでこの基地は終わりだ」

 

 ゲルズゲー破壊へと乗り出した。

 

 J.P.ポルナレフの搭乗機・グフチャリオッツは、グフイグナイテッドの改造機である。
 ポルナレフが使いやすいようにチューンナップした結果、まず滅多に使わないスレイヤーウイップが排除され、代わりにビームソードの予備が増えた。

 

「かかって来い! ホラホラホラホラホラホラァーーーッ!!」

 

 グフチャリオッツは俊敏な動きで突きを繰り出し、ダガーLは機体を数箇所貫かれ、爆散する。
 ポルナレフの操縦技術はアスランなどと比べればまだまだ荒削りだ。
 熟練の戦闘センスと、コーディネイターに勝るとも劣らぬ身体能力で、経験不足を補っている。
 更に、テスト中の最新装備も彼の強みだ。
 一つは今使われている、新型のビームソード、『ジョワユース(Joyeuse)』。シールドも易々と切り裂く高出力ソードだ。
 今、ポルナレフはジョワユース一本と、普通のビームソード二本、計三本を装備している。
 ちなみにジョワユースの命名はポルナレフである。彼の祖国フランスの英雄、シャルルマーニュ大帝が持っていたという聖剣の名をとった。
 頭文字が『J』.P.ポルナレフの『J』で、しかも『JO』なのが更にいい、とのことだったが、その言葉の意味はポルナレフ自身以外には理解できず、ポルナレフも説明はしなかった。

 

「シンよぉ。早くしねえと、俺たちだけで片付けちまうぜ?」

 
 
 

「なんだよこりゃーーーッ!!」

 

 坑道に飛び込んだシンは、思わず叫んだ。視界は完全な黒。自分が暗闇というものを侮っていたことを、悟らざるを得なかった。

 

「なんつぅーか、ヤッベェーぜッ! スゲェー見えねーッ!!」

 

 声を張り上げることで、ちょっとの操作ミスで岩盤に激突する恐怖心を押さえつける。
 だがシンの操縦技術はさすがであった。データどおりの正確な飛行により、ついに『闇の道』を抜け、出口へと到達する。
 シンはミサイルを発射し、出口を埋める落石を吹き飛ばした。
 突然の爆発に驚く連合MSパイロットたちの前に、コアスプレンダーが躍り出た。
 コアスプレンダーはすぐさま合体し、インパルスとなって『ローエングリン』を睨みつける。
 さきほどミネルバを撃ち漏らした『ローエングリン』は、エネルギーのチャージを行っていた。
 もしシンがもう少し遅ければ、二発目が発射され、ミネルバを撃沈していたかもしれない。

 

「よぉーし!」

 

 シンは気合を入れて、砲台破壊へと急行した。

 
 

「アスラン! シンの奴が来たみたいだぜ!」

 

 ポルナレフの通信にアスランも笑みを浮かべる。
 MS郡を引き付けると言う役割を達成した彼らは、次なる行動を開始した。
 スピードに優れたアスランとポルナレフが連合MS郡を突破し、『ローエングリン』の真下まで高速で迫る。
 二人の後を追おうにも、レイやルナマリア、形兆たちは残っているのだ。追おうと背を向けた時点で打ち倒されてしまう。
 シンの援護に向かうアスランとポルナレフの前に、砲台護衛のゲルズゲーとMSが立ちふさがる。
 二人は冷静にビームソードをかざし、斬りかかった。

 

「すでに弱点はわかってるんだよ!」

 

 ポルナレフはゲルズゲーの懐に飛び込み、MS状の上半身をジョワユースで切り倒す。
 アスランは、下半身に生える右側の足を三本とも切り落とした。ゲルズゲーは大地に倒れ、爆発する。
 陽電子リフレクター装備MAの真骨頂はあくまで防御力だ。それ以外は並みのMAと大差ない。
 盾を張れぬほどに接近してしまえば、充分倒せる相手だ。
 MS戦闘では世界有数の強者であるアスランと、長所と短所は背中合わせであることを知り尽くしたポルナレフの敵ではなかった。

 

   ―――――――――――――――――――――――

 

 彼は通信機を片手に立っていた。

 

『なるほど。彼が、君を敵と狙う男か』

 

 通信機から、男の声がする。このガルナハン基地に派遣されたブードゥーキングダムの同僚の声だ。

 

「そうだ。彼がJ.P.ポルナレフだ」

 

 彼は男に答える。彼は漆黒のパイロットスーツをまとい、ヘルメットも被っていた。肉体に露出部分は一つもない。
 ヘルメットも黒く、中の顔もまるで見えない。

 

『良い動きをする……いいのか? 俺が倒してしまって。楽しみにしていたのだろう?』

 

 同僚の問いに、黒尽くめの彼は答えた。

 

「構わない。最近は色々楽しくなってきたからな。楽しみが一つ減っても、大したことはない」

 

 もっとも、ポルナレフを殺すことはまた別の人間の怨みを買うことになるだろうが……。
 彼はもう一つの所属組織にいる、盲目の同僚の顔を思い浮かべる。

 

『では、譲ってもらうとしよう』

 

 その言葉を最後に通信が途絶える。
 黒尽くめの男は、ブードゥーキングダムの一員にしてヴェルサスの部下でもある男は、チョコラータの救い手にしてポルナレフの仇でもある男は、ザフトにも連合軍にも手を貸さず、淡々と戦争を眺めていた。

 

「しかし退屈だな……そろそろ監視だの結果報告だのといった雑用でなく、この力を振るえる仕事を回して欲しいものだ。そのために組織を掛け持ちしているというのに……」

 

   ―――――――――――――――――――――――

 

『ローエングリン』を取り囲む対空防御用の砲台が動き、連合MSが構えを取る。
 だがその防御陣はインパルスによって次々と切り崩される。迫り来るインパルスを前に、連合軍は『ローエングリン』を収容し始めた。

 

「くっそぉ!」

 

 ダガーLのコクピットにナイフを突き立てながら、シンは唸る。収容されたら破壊が厄介になる。

 

「こいつでぇッ!!」

 

 シンは閉まろうとするシャッターの隙間に、ナイフを突き立てたダガーLを持ち上げ、投げつけた。
 シャッターの隙間に挟まったダガーLは、ナイフの破壊が元で爆発を起こす。
 爆発はシャッター内部を打ちのめし、陽電子砲を誘爆させた。

 

「よっしゃぁ!!」

 

 シンは勝利の声をあげる。

 
 

「やったようだな」

 

 アスランも岩山の下から爆発の光景を見上げ、あとでシンを褒めてやろうと思う。
 ザフトの兵士全員が勝利を喜び、連合の兵士全員が敗北に絶望した。本来ならば、それでこの戦いは終わるはずであった。

 

  ―――――――――――――――――――――――

 

 その男は自分の『能力』を発動させた。

 

  ―――――――――――――――――――――――

 

「……え?」

 

 シンはインパルスを離陸させ、敵MS掃討のため、岩山を降りようとした。
 従って、シンは岩山の下を見下ろすはずだったのに、今シンが見ているのは、『収容』されようとしている、『無傷』の陽電子砲だった。

 

「……何?」

 

 アスランもまた、呆然とその有様を見ていた。
 空を飛んでいたはずのインパルスは、いつの間にか、ダガーLにナイフを突き立てていた。
 自分が破壊したはずの敵MSが立ち上がっていた。
 そして、『ローエングリン』が破壊されていなかった。

 

「そんな……馬鹿な!」

 

 自分の目が狂ったのだろうか。さっき、確かに破壊されたはずなのに。作戦は成功したはずなのに。
 目の前の現実を受け入れられぬ彼らを嘲笑うかのように、今度は完全にシャッターが閉ざされ、『ローエングリン』は収容されてしまった。
 シンによる『ローエングリン』の破壊は失敗した。
 ザフトの兵全員が呆然としていた。連合の兵全員もまた呆然としていた。何がなんだかわからず、誰も次の行動を取れなかった。
 だが一人だけ、それが起こるのを知っていた者がいた。それを起こした張本人だ。

 

「失礼をした。卑怯な行為だが、仕事だからな」

 

 そいつは、ウィンダムに乗って現れた。均整の取れた体格をした男で、口髭と顎鬚を生やしており、顎鬚を髑髏の形に刈り込んでいた。

 

「そしてここからは私事になる」

 

 男は、インパルスへと通信を入れる。

 

「これから君には、俺と『果し合い』をしていただく」

 

「なんだと……!?」

 

 シンはナイフを突き立てたダガーLを放り捨て、近づいてくるウィンダムを警戒する。

 

「「シン!!」」

 

 二つの声が届く。岩山の下から飛び出してきた二つの機体。セイバーとグフチャリオッツだ。
 異常事態の中、それでも行動するだけの精神力をもっていた二人は、連合軍の機体を切り裂きながらここまで登ってきたのだ。
 こうして、陽電子砲台の前に、4体のMSがそろった。
 3対1となったというのに、ウィンダムのパイロットはまったく慌てた様子のない口調で、通信してきた。

 

「君らはJ.P.ポルナレフとシン・アスカ……だな。情報は来ている」

 

 ウィンダムのパイロットの言葉に、三人はいぶかしむ。
 アスラン・ザラの名前がない。この三人の中で、最も有名なのは彼のはずなのに。なぜ?
 その疑問を解消する、だがアスラン本人には到底認められないことを相手は言った。

 

「それともう一人はアスラン・ザラだな……ここで今から俺と戦いとなったら……『君は俺に勝てない』……。だが他の二人なら俺に勝てる可能性はある。だが君には無理だ。だから君は下がれ。戦うのは二人とだけだ」
「な……!!」

 

 愕然とするアスランたちに、パイロットは更に言葉を続ける。

 

「自己紹介させていただく……。俺の名は『リンゴォ・ロードアゲイン』。ポルナレフ……君はスタンド使いを知っているな……? 俺もそうだ」

 

 リンゴォの背中に人間の頭のような形をした、網目模様のスタンドが浮かび上がる。

 

「スタンド名は『マンダム』。ほんの『6秒』、それ以上長くもなく、短くもなく、キッカリ『6秒』だけ『時』を戻す事が出来る。それが『能力』」

 

 説明がなされた後、アスランたちは何も行動を起こせなかった。いきなり自らの能力を明かすという、今までにない敵に、どう対処していいかわからなかったからだ。
 その混乱の前に、リンゴォの能力の凄まじさについて深く考えることもできなかった。
 そんな三人の中で、まず混乱を脱したのは、やはり経験豊富なポルナレフだった。

 

「『時を戻す』か……。何をされたのかわからなかったとか、催眠術なんてチャチなもんじゃねえ、もっと恐ろしいものの片鱗を味わったとか……言ってやりたいところだが、実はそういうのは初めてじゃねえ」

 

 時間に干渉する能力。数あるスタンド能力の中でも、最も恐ろしい系統の能力。
 この世界は空間と時間によってできている。何かがあるためには空間が必要であり、何かが起こるためには時間が必要である。
 それが宇宙の、宇(空間)と宙(時間)の理。
 時間を操る力の持ち主は、あらゆる行動をする上で、時間の束縛を受ける他者よりも圧倒的に優位に立つことができる。
 ポルナレフはかつて2度、時間干渉の能力者とまみえたことがあったが、どちらもポルナレフが手も足も出せなかった恐ろしい相手だった。

 

「説明される前から感づいてはいたが、わざわざ自分の能力をばらしてくれるとは、随分肝っ玉がでかいじゃねえか。なんのつもりだ?」
「……このオレを『殺し』にかかってほしいからだ。公正なる『果し合い』は自分自身を人間的に生長させてくれる。卑劣さはどこにもなく……『漆黒なる意志』による殺人は、人として未熟なこのオレを聖なる領域へと高めてくれる」

 

 リンゴォは自分の目的を語る。気負いも興奮もなく、ただ真剣に訴えかけるように。

 

「乗り越えなくてはならないものがある。『神聖さ』は『修行』だ。だから君たちに全てを隠さずに話している。『能力』にも『目的』にも俺には嘘はない」

 

 そして彼はポルナレフたちに敬意を表し、締めくくった。

 

「よろしくお願い申し上げます」

 

 アスランには、リンゴォの言うことが理解できなかった。
 殺し合いを神聖視し、人を成長させるなどという考えは、アスランが最も嫌うものであった。殺し合いは所詮殺し合い以外ではありえないのだ。
 シンもリンゴォの言い様は気に入らなかったが、ほぼ聞き流していた。相手がどうあれ、敵対する以上、倒さなくてはならないことに変わりはないのだ。
 ただ、相手から敵意や憎悪を感じられないという状態は、居心地が悪かった。
 そしてポルナレフは、多少リンゴォと共感できるものが心にあった。ゆえに彼は自然と顔に笑みを浮かべていた。

 

「反社会的と言いたいか? だがこれが『男の世界』……」
「そんなに人を殺したいのなら、俺が相手をしてやる!」

 

 憎憎しげに言いながら、アスランの乗るセイバーが、ビームライフルを片手に進み出た。
 だがリンゴォはコクピットの中で首を振り、セイバーにウィンダムの右手をかざし、『待った』をかけた。

 

「さっきも言ったはずだ。君では俺には勝てない。無駄だからやめておけ」

 

 リンゴォは無情に言う。傲慢さはなく、ただ理科の教師が、科学の法則について理路整然と説明するかのように。

 

「悪い事は言わない……君は下がれ。もう少しだけ話をしてやろうか……? 君以外の二人にはいざという時、俺を殺しにかかる『漆黒の意思』が心の中にある……だが君はそうではない……。そういう『性(さが)』。だから下がれ。それが理由だ」
「………ッ!」

 

 アスランの操縦桿を握る手が震える。それは侮辱への怒りか、悔しさか、あるいは……恐怖か。

 

「君は俺が攻撃したらそれに『対応』しようとしている。それが心体にこびりついている。『才能』ではすぐれたものがあるのかもしれないが、こびりついた『正当なる防衛』では、俺を殺す事は決して出来ない……。受け身の『対応者』はここでは必要なし」

 

 アスランは攻め込もうとしているのに、崖っぷちに追い詰められたような心境になっていた。息をすることすら苦しい。

 

(こんな、相手はただの殺人狂だ。人殺しを愚かな理由で正当化している、身勝手な男のはずだ……こんなに、こんなに動揺する理由なんか)

 

「なあアスラン。悪いが、一番手は俺にやらせてくれないか?」

 

 息を荒げるアスランに、ポルナレフの声が届く。

 

「え、いや、何も敵の誘いに乗ることは……」
「どっちにしろ戦うのに違いはねえんだし……援護頼むぜ?」
「……わかりました。任せます」

 

 そしてポルナレフは勇んで前に出た。

 

「さて、名乗られたからには、こっちも名乗らずにはいられねえな……。わかってはいるんだろうが、我が名はポルナレフ。ジャン・ピエール・ポルナレフ。スタンドは『シルバー・チャリオッツ』。どんな敵でも切り裂く剣士のスタンドだ。MS戦じゃほとんど意味はないがね」

 

 ジョワユースを振り回しながら名乗りを上げる。リンゴォも今度は文句をつけず、迎え撃つ姿勢をとった。

 

「……参るッ!!」

 

 グフチャリオッツが駆ける。ザクなどより遥かに迅速な動きで、大地を蹴り、スラスターを噴射する。
 対するリンゴォのウィンダムは、落ち着き払った動きでビームライフルを構える。

 

(まったく骨太な敵だぜ!)

 

 ポルナレフはリンゴォの言葉に少し賛同していた。
 確かに戦争においては、正々堂々だの、騎士道だのは、欠片も意味がない。戦争の中で人は人ではなく、勝利のための駒にすぎない。
 すべての行動は勝利するためにあり、そこに駒の意思などない。ただ指し手に動かされるのみだ。
 だが、これは決闘だ。今までの人生、これからの人生、努力、才能、意思。そのすべてを賭けて、自分の全存在をさらけ出し、搾り出し、ぶつけ合い、理解しあう。
 自分がどれほどのものかを試せる場。自分自身を解放する、その楽しさ。
 他人に語ったところで理解はしてくれまい。だがポルナレフは倫理や社会正義を突き抜けて、戦いを、容赦なく言ってしまえば、殺し合いを楽しむ自分を認めていた。
 それは確かにあるもので、目を背ければ自分を歪めてしまうから。

 

「チャリオォォォッツ!!」

 

 ポルナレフが戦った二人の時間干渉能力者。
 一人は時を止める能力。『ザ・ワールド』。時の止まった世界で能力者だけが動くことができ、誰も行動することができない中で一方的に攻撃できる能力。
 一人は時を消し飛ばす能力。『キング・クリムゾン』。未来の光景を予知し、都合の悪いものであれば消し飛ばして、なかったことにしてしまえる能力。
 二度の経験から、時間干渉能力の共通点が把握できる。
 一つは干渉時間の短さ。『ザ・ワールド』で時を止められるのは数秒、『キング・クリムゾン』で時を消し飛ばせるのは十数秒というところだった。
 リンゴォの自己申告によれば、時を戻せるのは『6秒』。
 もう一つは、連続して時間に干渉することはできないということ。一度時間に干渉したら、次に干渉するまでにタイムラグがある。
 そのことを脳裏に浮かべつつ、

 

「まずは一撃で! 能力を使う前に仕留める! 時間を戻す前に!」

 

 一番単純な方法で攻めるポルナレフ。
 ジョワユースを振りかざすグフに、リンゴォはビームを放つ。光線はグフの装甲を掠めるが、致命打には至らない。グフはなおも走り続ける。

 

「ハアッ!!」

 

 間合いに入ったところでジュワユースが閃き、ウィンダムのライフルを持つ右手が切り落とされ、空中に舞い上がる。

 

「ぐ、ぬうっ」
「今だ!」
「! はいッ!」

 

 ポルナレフの通信に、シンが反応した。インパルスから放たれたビームが、ウィンダムへと殺到する。

 

『カチリ』

 

 そこで時が戻る。

 

「「うう!」」

 

 シンとアスランが、世界が巻き戻る不条理についていけず、呻く。
 だがポルナレフは走り出す前の位置に戻っていながら、冷静に状況を把握していた。

 

「やはり攻撃にさらされながらだと、コクピットを一撃で破壊するのは難しいな……」

 

 呟きながら、またも走り出す。その闘志に衰えはまったくない。

 

「いいぞポルナレフ! さすがだ!」

 

 リンゴォもまた答えて、ライフルを向ける。リンゴォには今度の攻撃は当てる自信があった。
 確かに高い機動力だが、捕えきれないほどではない。2度目ともなれば、目に慣れて正確に狙いをつけられる。
 そして放たれたビームは、グフチャリオッツの装甲に着弾した。グフの姿は爆煙に巻き込まれ、装甲の欠片が飛び散った。

 

「ポルナレフさん!!」

 

 アスランが叫ぶ。
 だが、半瞬としないうちに、グフは煙の中から姿を現した。装甲を離脱させた姿で。
 グフチャリオッツの装甲は、前大戦でよく使用された、追加装甲(アサルトシュラウド)と同じく本体から分離可能なものだった。
 分離することで大幅に重量を下げ、速度を上げられる。
 ただし、装甲を脱ぎ去った下にはほとんど装甲がなく、更に攻撃をくらったら終わりという、危険があった。ポルナレフのような度胸の持ち主ならではの機体だ。
 とにかく無事、速度を増したグフチャリオッツは、ウィンダムへと詰め寄る。

 

「時間干渉の能力者は経験上、連続して時に干渉できない! 使えるようになる前にッ!!」

 

 ポルナレフの言葉は正しかった。リンゴォの『6秒』時を戻す能力は、戻した後で『6秒』間を空けなければ使えない。
 つまり、さきほどより更に早く、6秒経つ前に攻撃することで、能力を使えるようになる前にとどめを刺すができる。

 

「おおおおッ!!」

 

 リンゴォが吠える。冷静に勝負を行う彼をして滾らせるほどに、ポルナレフは強敵であった。
 再度、ビームが放たれる。だがそれは高速移動するグフを貫かず、グフの後方へと飛んでいく。

 

「甘い甘い甘いーーーッ!!」

 

 ジョワユースの斬撃が振り下ろされる。その動きを予想していたウィンダムはそれを辛くも避けるが、今度は左手を切り裂かれる。

 

「やった!」

 

 ポルナレフは勝利を確信する。追い討ちをかければ次の一撃でコクピットを破壊できる。
 だがそこで、背後から爆音があがった。ポルナレフには耳慣れた、MSが砕け散る音。嫌な予感を覚えたポルナレフは、後方をカメラで確認し、声をあげた。

 

「シン!!」

 

 インパルスが煙を噴き、倒れていた。

 

(さっき俺を撃ち漏らしたビーム!! インパルスを狙っていたのか!!)

 

 実際には、グフに当たらなくても向こうにいるインパルスに当たりそうな射線で撃ったのだ。
 正確に狙いをつけたわけではないので、当たらなくても不思議ではなかった。それが当たってしまったのは、シンにとって不幸という以外にないだろう。
 ほんの一瞬、気を取られた。それがリンゴォという敵に対しては致命的な隙となった。

 

「はっ!!」

 

 ポルナレフは我に返って、戦場で動きを止めてしまったことに気づく。すぐにその場から移動しようとしたが、

 

「遅い!」

 

 閃光が放たれた。

 

「ポルナレフさぁぁぁぁぁん!!」

 

 アスランの目に、リンゴォからのビームを受け、コクピットを貫かれたグフの姿が映った。

 

「うわあああああああ!!」

 

 アスランのセイバーが動く。ビームライフルの銃口がウィンダムに向けられる。だが、

 

「ふんっ」

 

 冷酷な目でその動きを捉えたリンゴォは、グフを撃ってすぐにセイバーへと狙いをつけ、セイバーより一瞬早く、引き金を引く。
 ビームは狙いを外すことなく、セイバーの持つビームライフルを破壊した。そしてセイバーの足元を撃ち、足場を崩す。

 

「くうううっ!!」

 

 セイバーはバランスを崩し、膝を突いた。

 

「やはり……お前は……アスラン・ザラ、お前は『対応者』にすぎないッ! 仲間を失ったからその『ライフル』を撃ちやがって………汚らわしいぞッ!! そんなのでは俺を殺すことはできないッ!!」

 

 リンゴォはアスランの乗るセイバーを、軽蔑の視線で見据え言い放つ。

 

「俺が仕留めるのは『漆黒の殺意』で俺の息の根を止めようと、かかってくる者だけだ。お前なんかにとどめを刺さない………。出て行け。見逃しやる」

 

 それだけ言うと、もはやアスランへの興味をなくしたようだった。地に倒れたグフチャリオッツと、インパルスに視線を向ける。

 

「J.P.ポルナレフ……手強かった。偶然インパルスを倒して隙ができたものの、一対一の勝負だったら、負けていたかもしれない。シン・アスカも、鋭い殺意と攻撃を向けてきた」

 

 ウィンダムは腰を折り、頭を下げ、

 

「感謝いたします」

 

 敬意を表した。

 

「ふーっ、ふーっ………」

 

 アスランは、グフチャリオッツとインパルスを見る。内心では激情が渦巻いていた。
 悔しさ。怒り。哀しみ。苦しみ。情けなさ。痛み。前大戦で、戦友ニコル・アマルフィを死なせてしまったとき同様に、あるいはそれ以上に、アスランは自分を恥じた。
 だがそれらを押さえ込み、彼は仲間の機体を見つめていた。仲間の機体は、どちらもコクピットは『無傷』だった。

 

「通信機が故障したのか、攻撃のショックで意識を失ったのか、連絡はとれないが……二人とも生きている可能性はある……。インパルスは撃たれ、両腕が爆発を起こしたが、致命的な損傷はない。グフは……コクピットを貫かれたように見えたが……」

 

 それはグフチャリオッツにつけられた、もう一つの最新鋭装備であった。
 ミラージュコロイド。普通は機体隠蔽のステルス機能として使われるが、このミラージュコロイドの役目は、散布したコロイドに機体を映し出し、『分身』したかのように見せかけ、敵を幻惑することにある。
 開発中の次世代機に装備する予定であり、グフチャリオッツを使ってテスト中であった。
 コクピットを貫かれたグフは、分身の方だったのだ。ほんの少しずれた場所に移動していた本体は右肩を貫かれ、コクピットはすれすれで完全破壊を免れた。

 

「まだ、二人とも助かるかもしれない……こんなことで、二人を失うわけには、二人を敗北させ、死なせるわけには、いかない……ッ!!」

 

 後悔も自虐もすべては後だ。今、自分にできることを、しなければならないことを、する義務がある!!
 セイバーを立ち上がらせるアスランの目には、漆黒の炎が宿っていた。

 

『まだ戦うの……? アスラン』
「!!」

 

 よく知っている声が聞こえた気がした。だが、『彼』がここにいるはずがない。

 

『戦いの後に残るのは、癒しようのない哀しみと、やり場の無い怒りと、限りのない憎しみの連鎖だと……君だってわかっているでしょ?』
「キラ……」

 

 それでもアスランは確かに見た。見てしまった。親友キラ・ヤマトの姿を。そして、

 

『行ってはいけませんわ、アスラン。戦争を起こさないために、あなたもカガリさんも、努力してきたではありませんか』
「ラクス……」

 

 もう一人の友、ラクス・クラインの姿までも。

 

『戦いは何も生まない。暴力ではなく言葉で解決する道を選ぼうって、決めたじゃないか……』
『なのに、なぜあなたは今もまた、そこにいるのですか?』
『もう、戦いなんかやめようよ。戦争に参加して、敵を討って、これじゃあの時の繰り返しじゃないか。戦って失ったものは、もう戻らないんだよ?』
『仲間を、友人を、失う苦しみはわかります。けれどその憎しみに任せて敵を撃つことで、更なる悲劇を生み出してしまうのです。酷いことを言ってしまいますが、どうか、敵を許す道を進んでください』

 

 キラが、ラクスが、口々に言う。アスランを説得しようとする。

 

『『この戦場を抜けて、そしてこの戦争自体からも抜けて、平和の道に戻って! アスラン!!』』

 

 アスランは、しばし目を閉じて無言になり、数秒か、数十秒かした後、再び目を開いて答えた。

 

「…………残念だが二人とも、俺はこの戦場を引き返すことはできない! この戦争から抜け出すことはできない!!」

 

 アスランの胸に、恐竜へと立ち向かったシンの勇気が宿る。リンゴォへと剣を向けたポルナレフの闘志が宿る。セイバーは音を立てて、体勢を立て直し立ち上がった。

 

「ここで逃げたら、俺はどこへも進めなくなってしまう!! 平和への道どころか、憎悪の道へすらも、行けなくなってしまう!!」

 

 アスランは、世界のすべてに宣言するように叫んだ。

 

「俺は行く!! 戦うしか仕方がないから戦うんじゃない!! 俺の、俺の意思で、俺がそうしたいからこそ、俺は戦う!!」

 

 アスランはそして歩みだす。キラとラクスの幻影を振り切るように。リンゴォへと、一歩を踏み出した。

 

「……なんだ? まさかまだやる気なのか?」

 

 リンゴォはセイバーの動きに気づき、面倒だとばかりに言葉を放つ。

 

「俺にとってお前は殺さなくてはいけないほど、価値ある存在ではない。一人でこの戦場を出て行け」

 

 冷酷無情なる言葉、敵意すら含まれていない無関心。そんな最悪の屈辱も、アスランの心をもはや動揺はさせなかった。アスランはリンゴォへ通信する。

 

「……あなたがどう思うかなど、俺には関係ない。ただ、俺は俺たちの勝利のために、あなたを……」

 

 セイバーはビームサーベルを抜く。強力なビーム兵器はグフチャリオッツやインパルスを巻き込む恐れがあるし、避けられたときの隙が大きい。

 

「『殺す』だけだ。リンゴォ・ロードアゲイン」

 

 戦いの勝敗は、精神によって決まる。どれほどの力を持ったところで、振るうことができなければそれは無駄な持ち物だ。
 能力と根性のないウスラボケは、どんなモンスターマシンに乗ってもビビってしまってみみっちい運転しかできないように、どんな武器も、どんな技術も、それを扱う意思がなければ意味を成さない。
 セイバーの力はウィンダムに勝り、アスランの操縦技術はリンゴォを凌駕する。それでもなおアスランが撃ち伏せられたのは、精神が負けていたからにほかならない。

 

「ああああああああッ!!」

 

 雄たけびと共に、アスランはリンゴォ機へと切りかかる。そこにためらいや怯えは一欠けらもない。
 この戦争に参加してからの戦いとも違う。『できれば殺したくない』『できるだけの殺さずにすまそう』などという、遠慮や甘さもない。
 決死と必殺の覚悟による、斬撃であった。

 

「ぬッ!!」

 

 セイバーはウィンダムから見て、左肩より切り込んで来た。リンゴォは正面からコクピットにライフルを突きつけ、撃った。
 その攻撃をアスランはかわそうともしなかった。

 

「なに!?」

 

 身を捻るくらいはするだろうと考えていたリンゴォは、思わず声をあげる。セイバーのコクピットは真っ直ぐに貫かれ、アスラン・ザラの肉体は一瞬にして焼き尽くされた。
 だが操縦者の命が失われても、惰性のついた機体の動きは止まらない。かわすための動きがなかった分、勢いのついた斬撃は、そのままリンゴォ機の右肩に食い込み、コクピットへと迫る。
 シールドで防ごうにも、シールドは左手と共に、ポルナレフに切り裂かれてしまっていた。

 

「うおううぅッ!」

 

 リンゴォは左手首にはまった腕時計に右手を伸ばす。この腕時計のつまみを捻り、秒針を戻すことが、リンゴォのスタンド能力『マンダム』のスイッチ。
 リンゴォがつまみに指先を当てたとき、コクピットを切り裂いたビームサーベルの輝きがその目で確認できた。

 

『カチリ』

 

 時は戻る。
 セイバーはビームサーベルを出した体勢に戻っており、ウィンダムも肩を斬られてはいなかった。

 

「……時を、戻したようだな。じゃあ、もう一度と言うわけか」
「面白いぞアスラン・ザラ」

 

 そして二人の戦士は向かい合う。リンゴォも今度は本気でアスランと向かい合った。

 

「少しいい動きをするようになった。まるで、あの時のようだ!!『一度死んだ』あの時のようだ!!」
「言葉はもはや不要――ッ!! 勝負だッ!!」
 ドッ!!
 大地がセイバーのパワーで砕ける。さきほど同様、高速で迫るセイバー。

 

「来い!!」

 

 リンゴォの猛禽よりも鋭く澄んだ眼光が、セイバーの右手に握られたビームサーベルを貫く。
 ジャッ!!
 迫る死神の化身を前に、リンゴォは心を平静に銃口を向けた。
 ビームが迸る。それは正確に標的に命中した。

 

「ぐうっ!!」

 

 コクピットのアスランは強い衝撃を感じた。右手を打ち砕かれたのだ。今、セイバーに剣はない。

 

「2発目だッ! これで勝利ッ!!」

 

 かつての敗戦のときは、一手目でしのぎ、二手目で破れた。だが今回はそんな不意打ちを仕掛ける余地はないはずだ。
 リンゴォはセイバーのコクピットへと、ビームを浴びせかける。
 だが今度はセイバーの方が射線からずれた。リンゴォではできないような、精密な操縦を行い、微妙に後ろへ腰と足を捻ったのだ。
 それだけでビームは紙一重でかわされ、大地を抉った。

 

「おおおおおおおッ!!」

 

 セイバーは急速に身の捻りを戻す。その勢いで遠心力によって振り回された右腕が、ウィンダムの顔面に叩き付けられた。

 

「なッ!?」

 

 ウィンダムの首が飛ばなかったのが不思議なほどの衝撃。正面から不意を打たれた格好のリンゴォは、バランスを崩して仰向けに倒れそうになる。

 

(ビームサーベルを失って退くどころか、破壊された右腕で殴りつけ来ただと!?)

 

 バランスを建て直し、逆襲を図ろうとするリンゴォだったが、次の瞬間、爆音と閃光が彼を襲った。
 セイバーの左手で輝く、もう一本のビームサーベル。突撃の状態では抜く余裕はなかったが、リンゴォがバランスを崩したことで出すことができた。
 そして抜く同時に一閃を浴びせたのだ。
 焦燥にかられた素人のように、ただ薙いだだけの、なんの技もない攻撃。だがそれは充分な効果をもたらしたようだ。
 ウィンダムは胸部を裂かれ、音を立てて倒れこんだ。

 

「……どうだっ!?」

 

 アスランは言い放つ。これだけの猛撃を与えてなお安心できぬほどに、アスランはリンゴォに脅威を感じていた。

 

「………まさか正面からとはな。見事だ。すまない、みくびっていた」

 

 通信が入ったことに、アスランは驚愕する。コクピットを切り裂かれたと言うのに、操縦者が生きているなんて。
 土煙が晴れると、ウィンダムの現状が確認できた。コクピット部分に裂け目が入り、内部が見えている。だがパイロットにまでは光の刃は届かなかったようだ。

 

「まさか、まだ生きているとはな……」

 

 アスランはそこで初めて、リンゴォの顔を見た。

 

「……奇跡だな。通信機が動いているのも含めて。だが、無傷ではすまなかったな。左手も潰れてしまった。もう、スタンド能力も使えない……」

 

 能力のスイッチである腕時計ごとビームサーベルに触れて、焼けちぎれた左腕を見ながらリンゴォは答える。全身も真っ赤にただれて酷い火傷だ。これだけの重傷を負いながらも、彼は冷静なままであった。

 

「……もう戦えないというなら、投降してくれ。これ以上、殺し合いを続ける意味はないだろう」

 

 アスランの申し出に、リンゴォは厳しく答えた。

 

「だから対応者だと言うのだ! 『光の道』を見ろ……進むべき『輝ける道』を……」

 

 ウィンダムの右手が、ライフルを握りなおす。どうやら動力や操縦システムもまだ健在だったらしい。

 

「『社会的な価値観』がある。そして『男の価値』がある。昔は一致していたが、その『2つ』は現代では必ずしも一致はしてない。『男』と『社会』はかなりズレた価値観になっている……。いや、もしかしたら一致したことなんて、なかったのかもしれないが……」

 

 リンゴォは己の『過去』を省みて言う。

 

「だが『真の勝利への道』には『男の価値』が必要だ……。おまえにも、それがもう見える筈だ。この戦いを生き抜き、それを確認しろ。『光輝く道』を……」

 

 アスランは、リンゴォの言葉を心に刻みつけるようにして聞いていた。

 

「俺はそれを祈っているぞ。そして感謝する」

 

 突如、ウィンダムの右腕が持ち上がり、セイバーへとライフルが向けられた。
 ザグンッ
 だがその右腕はすぐさま切り落とされた。そしてセイバーは、ウィンダムの右腕を落とした刃で、更に切りかかる。
 ズバンッ
 アスランは、コクピットを切り裂いた。直後、爆発が巻き起こり、ウィンダムは完全に破壊された。無論、パイロットの命も完全に絶たれた。

 

「リンゴォ……ロードアゲイン……」

 

 アスランは、リンゴォを生かそうと思えばできた。刃を振り下ろさなくても、コクピットを破壊しなくても、ウィンダムの無力化は可能だった。
 だがあえて、アスランはリンゴォを殺した。仕方なくではなく、自分の意思で、自分がそうしたかったから彼を殺した。
 けれどアスランは後悔していない。彼の『死に場所』を奪う気には、どうしてもなれなかった。
 彼を『生かす』ことは、彼の『生き様』を汚してしまうように思えたのだ。
 アスランは胸中で反芻していた。切りかかる直前、リンゴォがアスランにかけた最後の言葉を。

 

「ようこそ……、『男の世界』へ…………」

 

 10分にも満たない戦いで、アスランは自分が今までよりも更に、重く深く厳しい戦場へと、足を踏み入れてしまった気がした。だがそれを、後悔する気はなかった。

 

「ん……」

 

 アスランはレーダーの反応を見て、連合のMSが迫ってきたのを悟る。
 手を出しかねていたのか、単純に間に合わなかったのか、ようやくこの場にやってきた連合MSを目にし、まだ戦争が継続中であったことを思い出す。

 

「シンとポルナレフさんが戦えない分、俺が三人分、戦わなくちゃな」

 

 そしてアスランは剣を振るう。今までよりも迷いなく、力強く、彼は一歩を踏み出した。

 
 

 この後、ミネルバ及びラドル隊の進撃により、連合のガルナハン基地は陥落した。
 しかし、『ローエングリン』破壊によって一気に基地を攻め落とすことはできなかったため、被害は当初の計算を大幅に上回るものとなってしまった。
 ガルナハンの市民に被害は及ばなかったことが、せめてもの救いであったが。
 ミネルバのガルナハンでの戦闘は、このようにして幕を下ろした。

 
 

 アスラン・ザラ……勝利
 シン、ポルナレフ……生存、MSも再起可能
 リンゴォ・ロードアゲイン『マンダム』……死亡

 
 

TO BE CONTINUED