Lnamaria-IF_523第45話

Last-modified: 2008-03-19 (水) 22:43:22

レナとエドワード、対シホとサトーの隊は互角の戦いを続けていた。
――いきなり、サトーの部下のモビルスーツが被弾をする。
「何事だ!」
「わかりません! うわあぁぁぁ!」


「イメリア大尉、応援に来てやったぞ!」
「――! シュバリエ大尉! ありがたい! ハレルソン! シュバリエ大尉の隊と協力して敵を包囲するぞ!」
「はいよ!」
先程とは敵味方を変え、再び包囲戦が始まる。


「く、何なのだ! あのモビルスーツは!」
サトーは罵った。
互角だった戦いは、シュバリエ隊の介入でサトー、ハーネンフース隊の敗北へと急速に天秤を傾けていった。
「ハーネンフース! 俺が突撃する! その間に生き残った者をまとめて撤退しろ!」
サトーは覚悟を決めた。
「でも! サトー隊長!」
「若い者に先に逝かす訳にはいかんだろうが! 後は任せた! お前はなんとしても生きろ!」
娘のようなお前を助けるためなら、この命も惜しくはないさ……
サトーは砲撃戦用機らしいモビルスーツに向かって突撃した――


「――!」
イメリアは息を呑んだ。
バスターダガーのミサイルは撃ち尽くしていた。
イメリアのバスターダガーはサトーの突撃により、右腕を持っていかれた。
「教官! そいつから離れろ!」
エドワードのソードカラミティが背後からゲイツを襲う。
『く、まだまだぁぁぁ!』
サトーは振り向きざまに両腰からエクステンショナル・アレスターを射出する。
「――なんだぁ!?」
振り下ろしたソードカラミティの左腕が、アンカーに捕捉される。
『掛かったわ!』
エドワードはアンカーを切って逃れようとする。が――一瞬遅く、サトーは2連装ビームクローを振り下ろし、対艦刀ごとソードカラミティの左腕を破壊する。
「そこまでだ!」
モーガンのガンバレルが四方からゲイツを襲う。
『……くそ! せめてお前だけでも道連れに……この隙に早く逃げろ! ハーネンフース!』
サトーはソードカラミティに組み付こうとする。
「往生際が悪い!」
モーガンのガンバレルが再びサトーのゲイツを襲う。
サトーのゲイツは爆発した。
「さぁ、残りも逃がしゃしないよ!」
イメリアは残った左腕のビームサーベルを振ると舌なめずりをする。
「逃がしゃしないぜ!」
エドワードも右腕で残った対艦刀を構える。


「く……残った部下達だけでも――!」
シホと、残った部下3機はハレルソン達の部下達に邪魔されて突破する事はできず。
シホはサトーの作ってくれたチャンスを生かす事ができなかった自分を責め、ぎりっと歯軋りする。
「あなた達! 私が突撃したら……」
――その隙になんとしても突破しろ――
言い終える前に、周囲で爆発が起きる。
なに!? もしかして援軍!?
死を覚悟していたシホの胸に希望が甦った。


「……ぐわぁぁぁ!」
――いきなりハレルソン達の部下の機が爆発する。
「なんだ!?」
「ミサイル群、急速接近!」
「くっ、避けろ!」


「――ハーネンフース、大分やられたようだな。ここは私に任せて、撤退しろ」
「あなたは! あのフェイスのラウ・ル・クルーゼ!?」
「地球軍! もう勝ったつもりでいるようだな。だが、このプロヴィデンスとミーティアの力を持ってすれば……ははは! 教育してやろう!」
ミーティアの巨大ビーム砲が、ミサイルが、次々に地球軍のモビルスーツを破壊していく。
エドワードのソードカラミティとシュバリエのガンバレルダガーも例外ではなかった。
「では、ラウ・ル・クルーゼ。後をお任せします!」
シホは残った部下を引き連れ撤退して行った。


対してイメリア、ハレルソン、シュバリエ側は、クルーゼに翻弄され、被害続出という事態の急展開であった。
「部下が、全部――!」
「魔女の婆さんの呪いか!」
「くそう、こっちもやられちまった!」
「まだまだ! でかぶつが! ガンバレルを舐めるな!」
モーガン・シュガリエのガンバレルが、生き物のようにミーティアの攻撃を掻い潜りミーティア本体にビームを叩き込む!
ミーティア内部のミサイルが誘爆したのか、ミーティアが大きく爆発し抉れる。


「やったか!?」


「ふ……所詮は防御も無いでかい武器庫だったか。だがなぁ! プロヴィデンスにはドラグーンがあるのだよ!」
クルーゼは壊れたミーティアをパージするとドラグーンを射出する。
「有線式のガンバレルなど! 無線式のドラグーンの威力を見せてやる!」
モーガンはガンバレルを操って対抗せんとするものの、11基ものドラグーンに翻弄され、とうとうガンバレルを全て落とされてしまう。そしてドラグーンの攻撃はモビルスーツに向かう。
「きゃぁぁ――……」
イメリアのバスターダガーがドラグーンの作るビームの網に絡めとられ爆発した。
「――イメリア教官!」
「ハレルソン! 相手が悪すぎる! 撤退できる内に撤退するぞ!」
「ちっ、了解!」


「逃がしはせんよ! む、この感じは!?」
ガンバレルのビームが、プロヴィデンスを襲ってきた!
「ははは! 面白い奴に出会ったものだ! これが運命という奴か!?」


私達3機は一路ジェネシスを目指す!
私のドラグーン、フラガさんのガンバレルで敵を翻弄し、キャリーさんが止めを刺していく。
このまま、行ければ!
――!
あれは! シュバリエ大尉のガンバレルダガー! やられてる!
あぶない! 思いもよらない方向からビーム攻撃が来た! なに? その方向にモビルスーツなんかいない!
『このまま行かせはせんよ! あれは私の夢! 私の希望!』
何? あのモビルスーツは!? まるで円盤を背負ったような……
――!
またビーム攻撃! 危うく避ける!
よく見ると、周囲をドラグーンが飛びまわっている。
『ははは! ムウ・ラ・フラガか! よろしい! 決着をつけてやる! このプロヴィデンスの力を見せてやる!』
「貴様! ラウ・ル・クルーゼか! こんな時に!」
フラガさんのガンバレルが、動く。
『こんな時だからだよ! 線付きではなぁ! 稼動範囲も知れたものだ!』
「ふざけるなぁ! 道具って物は使い方なんだよ!」
一瞬――
「うわぁ!」
ドラグーンがいくつか爆発する。
だけど――フラガさんのガンバレルストライカーは破壊されてた。
「フラガさん!」
「……っつう! 無事だ! お嬢ちゃん!」
あ……この感覚……
――フラガさん? 違う。フラガさんじゃないけどフラガさんにそっくりな人が、私の前に居た――


あなたは、ラウ・ル・クルーゼ?
――お前は、誰だ?――
私は、ルナマリア・ホーク。あなたと同じ、メンデルで作られた者……
――これは……人類の革新? 私もそうだと言うのか?――
あなたの悲しみが、苦しみが、伝わって来る……
――ええい! 同情などいらん!――


世界が戻る。ドラグーンが襲ってくる!
わかる! 相手の動きがわかる! かわせる!
ドラグーンの数じゃ、分が悪いけど、その分集中できる!
「なんで、あなたはそうなの!? 分かり合えたじゃない、私達!」
私の悲痛な叫びを他所に、クルーゼはドラグーンで攻撃を仕掛けてくる。
『如何に分かろうと、理解しようと、譲れない物もある! お前も見たのだろう! 私を! 未来が見たければ、この私の屍を超えて行け!』
「なんでよーーー!」
涙がこぼれる。
『く、ドラグーンが! なぜ避けられる!? なぜお前にやられるのだ!? 私が劣っているからか!?』
悲痛な声……
「違うわ。あなたも見たのでしょう? 人類の革新を……人類の行く先を……受け入れて!」
『受け入れるか! 私は私だ! 例え死のうと私は私のままで居る!』
あ……これは……この感じは……プレア……!?
――僕に合わせて……僕とルナの想いを合わせて……全てを包み込む――
「……いいわ……私はあなたごと、全てを包み込む……感じて……」
ドレッドノートのドラグーンの作り出すバリアが、プロヴィデンスをドラグーンごと正四面体に包み込む。
『これは……伝わって来る……これが想いの力だというのか?』
「認めて……受け入れて……」
『……認めん! 認めんぞ! 私は私のままで逝く!』
プロヴィデンスの大型ドラグーンの9門のビーム砲が、小型ドラグーンの2門のビーム砲が、一斉に光る。
「やめて! クルーゼさん!」
『破れえぇぇぇ!』
残ったドラグーンから一斉にビーム砲が発射される。
――それは、ドレッドノートのドラグーンバリアを破る事無く、反射し……何度も、何度もプロヴィデンスの機体を貫き、そして消えた。
「クルーゼさん! クルーゼさん!」
『……よし。お前の勝ちだ……。私の屍を踏み越えて、お前は、お前の作る明日へ往け…………』
その弱々しいけれど、しっかりした言葉を最後に、私はクルーゼさんが逝ったのを感じた――


「プロヴィデンス、識別信号が消えました!」
「クルーゼがやられたか……不甲斐ない。では私も出るかな? 後は任せた」
「クライン評議会議長、なにを!?」
「フリーダム2号機で出る。なに、もう私がここにいてもしょうがないのでね。一次反射ミラーを交換次第、令なくして地球に向けてジェネシスを最大出力で発射せよ」
「な!?」
「ちょ!! 議長!?」
言い捨てると、慌てるオペレーター達を振り切ってシーゲルは司令室を後にした。




「やったか?」
「……逝ってしまったわ。クルーゼさんは」
「そうか。奴とは妙な因縁があってな……。まぁ、今更言ってもしょうがないか。奴は、誰かに自分を倒してもらいたかったのかも知れないな……」
そう。最後の攻撃はまるで自殺だった。クルーゼさん……
「おい、まだ戦いは終わっちゃいない。追憶に浸るのは後にしてくれ」
キャリーさん――
「そう、そうよね。まだ終わってないんだ! フラガさん、ガンバレルがやられて武器が無いでしょう? 私のビームライフルを!」
「ありがとよ、お嬢ちゃん!」
再びヤキン・ドゥーエを目指す私達。
「――あれは!」
ヤキン・ドゥーエ前面で、いくつもの爆発が……あれは……味方がやられてる?
その中心に、小型の戦艦のような物がいるのを見つけた。


ヤキン・ドゥーエから流星のように現れたそれ。小型の戦艦のよう。まるでディープストラーカー? 大型ビーム砲4門、大型ビームサーベル2本が地球軍の戦艦を撃破していく。そして、一斉に大量に放たれるミサイル。ヤキン・ドゥーエを目指す地球軍のモビルスーツが次々に駆逐されていく。
「くそう、なんだ、あの数のミサイルは!? これじゃ、倒そうにも近づけんぜ!」
「――私が! やる!」
「お嬢さん、私も居るって事忘れるなよ! 後ろは任せろ!」
「俺もな!」
「ありがとう! 行きましょう、みんな!!」
集中してドラグーンを射出する。――わかる! ミサイルの軌道が! ドラグーンのビームが、小型の戦艦みたいなのを貫く!
――爆炎の中から何かが現れる。それは確か……アスラン達が乗ってた?
そのトリコロールカラーのモビルスーツから、何本も一斉にビームが放たれる!


『はっはっはぁー! 私からすれば、お前達の強さなんて赤子同然なのだよ! 喰らえ! 死魔殺炎烈光(ディアボリック・デスバースト)!!!!!!』
叫び声が聞こえる度に、そのフリーダムから光が放たれ、地球軍のモビルスーツ、モビルアーマーがやられていく。
「……これ以上は! させない!」
ドラグーンのオールレンジ攻撃!
――避けられる!?
『ドラグーンか! ドレッドノートか!? ザフトから盗まれた奴だな! そんな物が私に効くと思うのかね!? 君達より進化した人類の私に!』
――ああ!? フラガさん! キャリーさん!
ビーム砲? レールガン? そいつが装備した砲が光る度に、ドラグーンが、やられる!
こうなったら! 接近戦を……! 複合兵装防盾のビームサーベル起動! 突撃!
『ははは! 無駄無駄無駄ぁぁぁ!』
推力が! こっちよりはるかに大きい!
あっという間に接近され……複合兵装防盾を装備した左腕を切り落とされた。
ざわわ……私の肌を違和感が走る。違う! 私があの感覚に目覚めてから、どんな人間にも感じる感触が、魂の感触が、無い! 人類を憎んでいたクルーゼさんにもあった魂が……空白だ! こいつは……人間じゃ……
「――あなたは、何者!?」






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