「はーい、みんなあつまったー?」
管理局宿舎の前でなのはは全員いるか点検をする。
どこの学校先生だよ、と思ったが、いまさらなので気にしない。
勿論全員集まっている。
なのはの近くにいる人は、おそらく前に言っていた彼女の友達だろうか。
今日は皆で海水浴。
場所もここから近いので歩いてでもいけるなかなか管理局員に優しい海がある。
この季節にもなると、休暇で家族連れでやってくる局員も少なくない。
「流石に人が多いねえ」
海に到着すると、周りを見るとそこにはやはり人が多かった。
ただ、予想よりも少し少ない気がした。
とりあえず場所取り等いろいろ準備するメンバー。
「なのは、フェイト。これってどこにおいたらいい?」
「あ、これは……あそこにおいて」
こうしていろいろ準備をするなのは達。
準備も終わり、思い思いのときを過ごすメンバー。
キャロは浮き輪につかまりながらぷかぷかとフリードと一緒に海に浮かんでいた。
そこへスバルがやってくる。
「ほらキャロこっち来て。泳ぎ方教えてあげるから」
スバルに言われて、キャロはスバルの所へ行こうとするが……
「はい……うわ!……あっぷ」
スバルが足がつく場所でも、まだ背の小さいキャロにとっては深く、泳げないのでなかなか思うように進まない。
それを見てスバルは笑う。
「あはは、大丈夫?」
スバルはキャロを受け止める。
「とりあえず足の着く場所まで移動しようか。エリオもきなよ」
スバルは一人で黙々と泳ぎの練習をしているエリオも誘おうとする。
「え…あ…えっと、僕は……」
エリオはどぎまぎしながら目をそらす。
「まーまーきなって」
そうして半ば無理やり敵に三人は何とかキャロの足が着くくらいまで移動し、ちょっとした泳ぎの練習をするのだった。
一方ヴォルケンズ女性陣+アリサたちは浅瀬の海でボールをバレーのパスをするように遊んでいた。
はやてたちとティアナ、そしてザフィーラはみんなの分の飲み物を買いに出かけている。
「ヴィータちゃん、ボールがそっちにいったよ」
すずかのことばにおっしゃあ!と意気揚々とボールへ向かうヴィータ。
しかし……
「おわっぷ!」
波に体の自由を奪われ、そのままこけてしまう。
ボールは無常にもヴィータの横に落ち、ぷかぷかと浮かぶ。
それを見て一同は笑う。
「くっそー!みてろよー!!」
笑われたヴィータは向きになってボールを思いっきり飛ばす。
「ふう」
シンは水着に上着を着た格好で、シートにすわり海を眺める。
(いざきてみると、することないな)
これがヨウランと一緒なのなら、話でもして時間をつぶしたり、ヨウランやヴィーノがナンパしているところを遠目から観察したりしているだろう。
シンはそう思って缶を開け、それを飲む。
そこへレイがやってきた。
「水着の女性を酒の肴にするつもりか?」
「!!」
レイの言葉にむせるシン。
「ゲホ!ゲホ!……」
なんとか以前みたいに吹かなくて済んだ。
流石にアルコール飲料を拭くのはまずい。
シンが今飲んでいるのはアルコールがそこまで高くない市販のカクテル。
「どこのスケベ親父だよそれ。普通に飲んでるだけさ」
シンが飲んでいる酒は、トダカからもらったものだ。
休暇中なら大丈夫だろうと渡されたのだ。
せっかくなので今飲んでいる。
そこへ、
「あれ、なに飲んでるんですか?」
シンの横からひょこっと顔を出すリィン。
ちなみに、リィンはいつものサイズとは違うビッグサイズ(それでもヴィータと同じぐらい)。
この人手であの大きさは問題だかららしい(多分水着のサイズがないと言うのも理由の一つだろう)
シンは少し笑いながら缶をリィンに差し出す。
デバイスだから年齢もくそもないだろうという判断である。
りシンは差し出された缶を口に近づけようとしたときだった。
「う!」
アルコールの匂いに鼻をつまむリィン。
そこまでアルコール度高くないんだけどなあ、とシンは思う。
「ちょっと!なにお酒なんて飲んでるんですか!?これは没収です!!」
ぷんすかとシンを怒るリィン
「リィン、どないしたん?」
そこへ少し遠くへいたなのは太刀がシンのもとへやってきた。
リィンははやてが来るなり事情を説明する。
「はやてちゃん!シンが未成年なのにお酒なんて飲んでるんですよ!!」
そういってリィンは没収した缶をはやてに差し出す。
確かに、何故か日本語で思いっきり「アルコール飲料」とかかれている。
なのはは少しシンを睨みながら注意する。
「いくら休日だからって気持ちが緩んでいても、未成年がお酒を飲んじゃだめだよ」
なのはは意外とこういうことには厳しい。
根が真面目だからだろうか?
シンはくすっと笑いながらあるものを取り出しなのはに見せる。
見てみると、それは成人証だった。
「俺、一年前に成人しましたよ」
証明書、そしてシンの言葉で驚く一同(レイを除く)
驚いているなのはたちにレイが説明する。
「俺達の世界では15歳で成人なんです」
そして今年で16歳のシンは(まだ誕生日は来ていないので15だが)とっくの間に成人を迎えているわけである。
自分達より年下なのに既に成人しているシンに違和感を感じるなのは達。
「ほな、これは返さんとな」
はやてはそういってカクテルをシンに返す。
そこへ……
「あぶねえ!!」
誰かの声が聞こえてそっちを向くと、ボールが飛んできて……
「ぶ!」
思いっきり顔面に直撃する。
ヴィータが思いっきり投げたボールは思いっきりずれてシンに向かっていたのだ。
まあ、たかがボールなのでそこまで痛くはないが。
「わりぃ、だいじょうぶかー?」
ボールを取りに来たヴィータがボールにぶつかったシンを見る。
シンはボールをとってヴィータを見る。
シンは黙ってヴィータに向かってボールを投げようとする。
そのときだった。
「ヴィータ、そろそろお昼にするよ。」
時間を見るとちょうどお昼時で、周りを見ると所々で既に昼食を食べている人たちもいる。
「みんなも、ちゃんとご飯は食べるようにね」
なのはの言葉に、わかりましたといって、一同は昼食を取ることになる。
「けど、まさか本当になのはが先生になるなんてねえ」
「ほんと、びっくり」
友人達はそんななのはを見て驚き、なのはもあはは苦笑いする。
「私自体がまだ未熟者なんだけどねえ」
だが、13歳で教導官になり、現在S+の能力をもつ魔術師などあまり聞いたことがないが……
「ティアー、お待たせー!」
その時、スバルはたこ焼きやら焼きそばやら両手にいろいろ持って皆のところへ戻ってきた。
二人は朝に調理をする時間がなく、このように近くにある出店で買うことにした。
「いやあ、たくさん人がいたけど、買えてよかったよ」
まあ、確かにこれだけいれば店も行列が少しは出来るだろう。
「おそい!」
ティアナはいつもどおりのツッコミを入れながらスバルが持っている食べ物の中から適当なものを手に取る。
スバルもホットドッグを手に取り口に入れる。
「あれ、二人とも向こうで買ってきたの?」
なのははさっきからスバルがいないと思っていたが、そういうことだったのかと納得する。
ちなみに、なのは達はちゃんと自分で作ってある。
なのはは自分の分だけだが、はやては勿論ヴォルケンの分も作っている。
「やっぱりはやてちゃんののご飯はギガうまです!」
リィンはがっつきながらはやての料理を絶賛する。
「ほら、行儀が悪いからもっとゆっくり食え」
ヴィータの注意にはーいといって、リィンは姿勢を元に戻す。
「どうエリオ、キャロ。おいしい?」
フェイトは二人に自分が作った弁当の味を聞く。
二人はフェイトが作った弁当を食べて……
「はい、おいしいです」
エリオの言葉にほっとするフェイト。
作ってきたかいがあった。
ふと、スバルが思い出す。
「そういえば、朝台所見たら調理器具とかいろいろあったけど、誰か使ったのかな?」
そういえば、とティアナも思う。
自分達は料理などしていないし、チビたちを見ても首を横に振る。
残った人物は……
「なんだよ?」
六課のメンバーはどう見ても手作りという感じのパンを食べているシンを見る。
「それってシンがつくったの?」
フェイトの言葉にそうですよ、と頷く。
意外、といった感じでシンを見る一同。
まさかシンが料理を出来ようとは。
「なんですか、皆して俺を見て。俺だって料理ぐらいしますよ!」
実は、シンはトダカの家に世話になっているときに彼の妻アキから料理を教わった(ほぼ無理やり)のである。
アキによると、「料理ぐらい出来ないと独り暮らしは厳しい」かららしい。
こうして、シンの料理の腕はそこそこできるようになっていた。
シンが作ったパンに少し興味があるリィン。
「食いたければ食ってもいいですよ。まだたくさんありますし」
シンの言葉でリィンは喜んでパンを選ぶ。
ちなみにリィンが選んだのはジャムパン。
今日は時間がなかったのでパンの中身は出来るだけ最初から出来ているようなものをチョイスしている(簡単なものは作っているが)
「いただきまーす!はむ……」
リィンはパンと口へ運ぶ。
しばらくその味を堪能して……
「うん、おいしいです!」
リィンは満面の笑みでおいしいという。
おいしいといわれ、シンは少しうれしくなる。
例え料理でも、ほめられるとやはりうれしい。
こうして、意外と楽しく過ごせた昼食時間。
「おっしゃー、遊ぶぞリィン!」
「はいです!」
ヴィータとリィンはまた遊ぶためにボールを持って海に向かう。
やっぱガキは体力は底なしだなあと思うシン(機動六課の中で意外と少ない成人の一人)
というより……
(半数が未成年以上っていうのはどうよ?)
まあそんなのは自分が考えることではないし、自分くらいの年齢の人は管理局でも良く見かけるが……
そのときだった。
「隣、ちょっといいかな?」
後ろを向くと、そこにはフェイトがいた。
どうぞ、とシンは言って、フェイトハそこへ座る。
ちなみに、今フェイトが来ている水着は露出度が高く、シンは微妙にどきどきしている。
まあ、今回の女性メンバーのほとんどがそんな水着なのだが……
少しどぎまぎシンを見て笑いつつ、フェイトは話す。
「4年前に会ってるけど、こうやって話するのは始めてだね」
フェイトの言葉にそうですね、と言うシン。
あの時はシンがかなり参っていて、自分のことで精一杯で人と話すなんて出来なかった。
ふと、頭に何かの感触があると思うと、フェイトが手をシンの頭の上にぽんと置く。
「それにしても背伸びたね。男の子ってやっぱり背が伸びるの早いんだね」
フェイトの言葉にガクッと来るシン。
まるで子供みたいな言い方だ。
「あの、さっきも言いましたけど……俺は既に成人してます。子ども扱いしないでください」
そうだね、とフェイトがいうが……
「けど、まだ未成年の私より年下だよね?」
うっとシンは何も言い返せないまま下を向く。
未成年の女性よりも年下の成人男性……微妙すぎる。
それにしても……
「ずいぶん気軽に話しかけますね……」
なにか、部下と話すよりも弟と話しているような間隔で話しているフェイト。
「一度、少しだけだけどシンは私が保護していたよね?」
少しといっても二日や三日ぐらいなのだが……
「けど、それだけで半分家族みたいなものだよ?」
それを聞いてシンはある確信をする。
彼女は大の世話焼きだということに。
まあ、それは4年前にある程度はわかっていたが……
「シンをトダカさんの引き渡した後も、何回か調子を聞いたりしたんだよ?」
それはシンも知っていた。
引き渡したとも彼女は自分を心配してくれていた。
「けど、管理局で働いているってわかったときはびっくりしたけどね。私はてっきり、オーブの軍に入ると思っていたから」
けど、とフェイトは付け加える。
「どうして管理局にいるって教えてくれなかったの?言ってくれれば世話とかしてあげたのに」
シンが管理局へ入ることを決意したとき、トダカはフェイトに連絡を入れようかと思ったが、シンはそれを拒んだ。
シンは、出来るだけ自分ひとりの力で強くなりたかった。
だから入学費以外はバイトなどで自分で払った(入学費も自分でためようとしたが、トダカがいつのまにか払っていた)。
シンはフェイトに内緒で管理局の学校で日々勉強をしていた。
フェイトもフェイトで執務官の仕事で忙しく、ライトニング分隊の隊員選抜のときもほとんどエリオとキャロを決めていたので、シンがいることに気付かなかったのだ。
「そういえば、シンは泳がないの?」
フェイトにいわれ、シンは考えたあという。
「一人で泳いでも楽しくないでしょ?」
まあ確かに、とフェイトは苦笑いを浮かべる。
「じゃあちょうどいいわ」
シンは後ろを振り向くと、そこにはなのはとその友達がいた。
「ちょっとレースでもしない?」
なのはの友達の一人、アリサ・バニングスが提案する。
「は?」
あまりにも急なことに疑問符をつけるシン。
新アシンを半分無視するかのように話を続けるアリサ。
「だって、せっかく海に来たから泳ぎたいし、それだったらやっぱり数人で泳いだほうが楽しいじゃない」
シンは悟る。
だめだ、こいつに何言っても多分聞かない。
シンは今は局のほうにいるであろう二人の友人を思い浮かべる。
……幻影が笑うな手を振るな……
「わかったよ」
結局、シン、フェイト、アリサ、すずか、スバル、エリオの5人でレースが始まった。
何故この人数で邪魔にならないかというと、この海水浴は競泳用のスペースがあるからである。
その結果……
「はあ……はあ……あんたら早すぎ」
アリサは息を荒くして言う。
アリサの負けず嫌いで5回ほどしたのだが、ほとんどシンとフェイトの一騎打ちだった。
しかもシンがフェイトに3勝2敗と上回る。
「はあ…はあ…」
当のシンとフェイトもくたびれて、シンは大の字に倒れる。
思いっきり体を動かした後は気持ちいいし、勝てたのもうれしい。
子供時代に近所で水泳の連勝記録を持つ記録がシンにはある。
その時のシンは「将来はマリントルーパーになりたい」といっていたが、俺はどうでもいい話。
コウ楽しんでいるうちに日も暮れていくのであった。
「すぅ~~……」
日も暮れ、皆が家に帰る中、まだ家に着いていないのに寝ている人物が数名。
それはリィンフォース、ヴィータ、キャロの3名。
リィンはいつものリィンハウス(はやてのかばん)、ヴィータははやて、キャロはフェイトが抱えている。
「じゃあ、私はアリサちゃんと鈴鹿ちゃんを私の世界へ返したあと、休暇が明けるまで私もそこへいるから」
はやてとフェイトにそういって、なのはたちははやてと別れる。
臣達も今日は疲れたのでささと自分達の量へと戻る。
そのあと、シン達は自分達の寮に入った瞬間、自分のベッドで疲れて爆睡したとかしてないとか。
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