ある晴れた休日の朝。
朝といってももう9時過ぎだが……
「んー…」
そのなか、美由希は目を覚ます。
まだ眠気が残る中、今日の予定を確認する。
(えーと……確か今日は……)
そう考えてはっと思い出す。
美由希は恐る恐る時計を見る。
既に朝の九時を回っている。
時刻を見て美由希の脳が一気に覚醒する。
(やっば……)
美由紀は速攻で着替えを済まして下へ降りる。
そこには恭也がゆっくりとコーヒーを飲んでいた。
「あれ、美由希今起きたのか?」
とっくの前に起きてると恭也は思っていた。
確か今日シンと出かけている約束をしていたことを彼は思い出す。
しかし、恭也の言葉を無視して簡単に食事を済ませて出かける準備をする。
(チケットは……よし、あとはサイフ……)
必要なものも全部そろい、急いで家を出る。
シンは今どうしているだろう。
待っているのだろうか、それとも自分みたいに遅れているのか……
「あれ?まだ来てない?」
シンは少し息を荒げながら思う。
シンは20分くらい前に家を出たのだが、まだ完全に道がわからず、結局道に迷ってしまった。
そして何とか待ち合わせ場所のバス停に着いたのだが、まだ美由希は着ていなかった。
周囲を見渡しても美由紀が来る様子が無い。
(もしかしてバス停間違えたか?)
美由希との待ち合わせ場所はあと5分くらいでここに来る海鳴ランド行きのバス。
だが、既にバス停には複数の家族や恋人たちがいるからここで間違いないだろう。
「なんとか……間に合った」
ふと、後ろから声が聞こえたので後ろを向くと、美由希がやってきた。
「はぁ……はぁ……」
家からずっと走ってきたのか知らないが、かなり息が上がっている。
「えーと…大丈夫か?」
とりあえず心配するシン。
シンの言葉に気付いて、美由希は顔を上げる。
「あ、ごめん。待たせちゃった?」
美由希の問いに、シンは首を横に振る。
「道に迷ってて、俺も少し前に来たばかりだった」
二人が話をしていると、バスが来たみたいだった。
「とりあえず、バスに乗ろう」
そういって二人はバスに乗り、目的地へと向かっていった。
「う……」
マユは久しぶりの日の光をあび、まぶしくなって目を閉じる。
この世界に来て依頼、ずっとプレシアの研究所にいて、こうやって日の光を浴びるのは久方ぶりだった。
そしてしばらくして光にも馴れて、ゆっくりと目を開けると……
「うわあ……」
今彼女がいるところは自分達の世界ではないが、確かに地上であった。
「どうだね?久しぶりの地上は」
横にいるクルーゼはマユに語りかける。
数日前、地球に降りるように手配してくれたのは彼だと聞いた。
「はい、とてもうれしいです。ありがとうございます」
マユは上機嫌で答える。
ちなみに、外にいるときは流石にあの仮面は目立つので、彼は今サングラスをかけている。
……このサングラスも特殊なため目立つことこの上ないが……
(さて、これからどうしようか)
自分の目的は別に今すぐでなくてもいい。
(まあ、まずはこの少女の機嫌でも取るか)
「マユ君、とりあえずお金もあることだし、何か買いたいものはないかね?」
マユはそう言われて、うーんと考える。
今必要なもの。携帯はなくしたけどここは別世界だからつながらないし……
とりあえず今必要なもの。それは…
「服…かな?」
今彼女が着ている服はプレシアのところにあった服。
話をきくと、プレシアにはアリシアとは別に、もう一人子供がいて、その人の服を使わせてもらっているとクルーゼから聞いた。
貸してくれるのはありがたいが、やっぱり自分の服は出来る限り自分で選びたい。
「解った。それじゃ早速いこうか」
そういいながらクルーゼは以前来た時に調べたショッピングモールにマユを連れて行くことにした。
今はとりあえず彼女の前では「やさしいおじさん」を演じる必要がある。
後々、彼女を大いに利用させてもらうために。
海鳴ランドの前には、開演前ということもありかなりの人数がいた。
「すごい人気だな……」
うん…と美由希も頷く。
ここはアトラクションはたくさんあるが、それでも載るときはかなりの時間を待たされそうであった。
「あ、シンと美由希さん」
ふと声が聞こえて、振り向くと、そこにはアリサがいた。
「アリサちゃん?」
美由希は、すっかり今日もなのはたちと一緒にいるはずの子がここにいることに驚いた。
「実は…昨日、パパが急に仕事にキャンセルが入って、たまには家族と遊びにいこうって事になって…急だったからなのはたちにもいえなくて…」
なるほど、それでなのはやはやても知らなかったのかと納得する。
おそらくその父親はアリサを驚かせようと前々からチケットはあったのだろう。
出なければ昨日だけで次の日のチケットを手に入れるなんて普通は出来ない。
アリサの話をしていると、後ろから両親がやってきた。
彼女の両親はともに忙しく、美由希もアリサの父を見るのが今回が初めてだ。
「あ、パパ。こっちがなのはのお姉さんの美由希さんで、こっちがはやての家にお世話になっているシン」
「ども」
「おはようござます」
俺だけ呼び捨てかよ、と思いながらも、と軽い挨拶をするシン。
一方美由希は丁寧に挨拶をする。
そんな二人を見て笑いながら挨拶する。
「アリサの父のバーン・バニングスです。娘がお世話になってます」
なんかのアニメか何かで聞いたような名前だが、それはさておき、シン達は少し彼と話しをした。
そして開園時間の午後10時が来ようとしていた。
「お、そろそろ時間だな。アリサ、いくぞ」
バーンに呼ばれて、ついていくアリサだったが、ふと何か思い出したように二人に近づく。
「なのはたちにお土産をプレゼントするつもりだから、私がここにいるのをなのはとはやてに黙っててくれますか?」
おそらく明日にでもプレゼントを渡して、皆を驚かそうとしているのだろう。
まあそれくらいなら、とアリサの頼みを聞いた二人。
「それじゃあ二人も楽しんでください」
何かを察したのか、アリサは妙な挨拶をして家族の下へ戻る。
そして海鳴ランドは開園される。
「なあ、最初に何に乗る?」
園内に入り、パンフレットを開けてシンが美由希に聞く。
シンの言葉を聞いてえーと……と顔を隠すようにパンフレットを見る。
よく見ると、シンのほうもすこしそわそわしている。
お互い、男女二人きりでこういうところに行くのは初めてだから微妙な雰囲気が漂わせる。
「おい、聞いてるか?」
さっきからボーっとしているのシンが聞いていると、やっと美由希は考え出す。
(やっぱ遊園地に来たんだし……)
そう言って彼女が選んだのは…………
「フェイトちゃん、もう風邪大丈夫なの?」
朝から皆で話をしていると、この一週間ずっと学校を休んでいた。
だが、今さっきフェイトがリンディとともにやってきた。
「うん。もう大丈夫」
だが、1週間もずっと学校を休んでいるので心配にもなる。
実は、風邪は既に治っているのだが、まだレイのことが気にかかっていて、今週いっぱい学校を休むことにした。
それで、今日なのはたちと話をすれば少しは気がまぎれるかもしれない思ったリンディたちは今日翠屋に来た。
「あれ、アリサは?」
ふと見ると、ここにいるのはいるのはなのはにすずかにはやて、そして今日はヴォルケンの皆も来ていたが、珍しくアリサがきていなかった。
「うん、お家の人と出かけたって昨日メールが」
話を聞いて、そうなんだ、と話を聞くフェイト。
「そういえば、シグナムって今日稽古で出かけるだったよな?」
ヴィータの言葉にいきなりだなともいつつもああ、と答えるシグナム。
ふと、ここでなのはが思った。
「そういえば、魔法なしだったらシグナムさんとフェイトちゃん、お兄ちゃんの3人だったら誰が一番強いんだろう?」
今日は少し前に恭也と忍も来ていて店を手伝っていた。
丁度今は客が少ない時間帯なので、みんなで話に参加していた。
このなのはの言葉に大いに興味を示した3人。
「確かに、興味はあるな」
ふと、ここで一番不利な人を考えてみる。
「魔法がないと、流石にテスタロッサは不利なんじゃないか?」
フェイトはシグナムの言葉にむっとするが、自分でも流石に不利だと感じた。
「確かにそうですね。体格の問題もありますし」
体格、体力、力。確かにどれをとってもまだ子供のフェイトには魔法なしではほかの二人に比べて不利な要素である。
「で、でも、この3人の中じゃ一番身軽だし、そういう利点もあるよね?」
さっきからフェイトがぼろくそに言われているので、なのはは必死にフォローする。
「まあ確かに……実際やりあって見ないとわからないか」
確かに、実際戦ってみないと誰が強いかなんてわからない。
そこで士郎は一つの提案をした。
「じゃあ、明日家の道場で戦ってみたらどうかな?勿論武器は木刀でだけど」
士郎の考えに3人は納得する。
「それじゃ、そろそろ忙しくなるからなのはは店を手伝ってくれ」
はーいといって、なのはは店の奥に入っていった。
「はあ、すごかった。まだ足ががくついてる」
美由希はひざを押さえながら答える。
シンたちが最初に乗ったのはこの遊園地でも注目度が高い乗り物だった。
だからあとで乗ろうとして待ち時間で結局乗れなかったというのは意味が無いので最初に乗ることにした。
それでもかなりの時間待たされたのだが。
そのアトラクションはジェットコースターの一つで、特徴は足を置く床が無く、足が宙に浮いたまま進行するのでしばらく足がガクついて動けなくなる。
「ああ、確かに」
流石のコーディネーターのシンでも美由希と同じように足が動かない。
「しばらく休憩しようか」
そう言って近くにあるにあるベンチに腰掛ける二人。
「とりあえず、次何に乗る?」
休みながら次に乗るものを決めようとするシン。
同じベンチに座っているので距離はかなり近い。
「えーと…次は…シンが」
美由紀は顔を少し赤らめながら言う。
最初は自分が決めたので、次はシンが決めて欲しい。
そう言われてシンはパンフレットを見る。
いきなり乗ったのがあれだったから次は何に乗るか、そう考えるが……
(ほとんどこういうのばっかりじゃねえか……)
パンフレットにある内容を見ると、ほとんどこういう、いわゆる絶叫系アトラクションが大半を占めている。
その中でどうしようか迷って……
「これにするか」
と決めたのが、急激に上昇、下降するアトラクション。
対G訓練のようなものの遊びバージョンのようなものだろうだろうと思ったからこれを選んだ。
だがその前に……
「いったん腹ごしらえする?」
まだ昼食には早いと思ったが、流石にこの人数。昼飯時に店に入っても時間がかかるだろう。
この考えは美由希も同じで、二人はどこで食べるか相談することにした。
「ふぅ」
マユたちは今、駅前で座っている。
マユは、両手いっぱい(といってもまだマユは小学生なのでそこまでの量はないが)の荷物を持っていた。
あれから、結局服などでいろいろ悩んでしまった。
「おや、もうこんな時間か」
クルーゼは時計を見るとすでに正午がこようとしていた。
しばし考えて、サイフからある程度の金額を出してマユに差し出す。
「マユ、これから私は少し用事がある。だからそれまでの間、あの喫茶店でお昼でも食べてきたらいい」
そういいクルーゼは近くにある喫茶店を指差す。
名前は「翠屋」と書いてあった。
「わかりました。けど、クルーゼさんはどうするんですか?」
「私はすることがあるから、そのついでにどこかで食べるさ」
そういうと、わかったね?といってクルーゼはこの場を後にしようとしたが、ふと何かを思い出す。
「わかっているとは思うが、魔法のことやプレシアのことは絶対に言わないように」
そういって、今度こそクルーゼはどこかに出かける。
マユもおなかが空いていたので、言われたとおりに翠屋という喫茶店に入る……
「いらっしゃいませー」
入ってきたときに聞こえてきたのは、自分と年はあまり変わらない女の子の声であった。
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