第07話『出過ぎた力』
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「アンカー発射(ry」
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「敵は?」
「進路変わりありません」
ツインテールの報告によると、強奪部隊はこちらの追撃にも関わらず進路変更をしていないらしい。
……妙だな。
通常、強奪部隊というのは機動力確保のために少数精鋭で行われる。
つまり正規軍とまともに戦う余裕などあるはずは無く、そして此方の方が足が速い。
にも関わらず敵側の腰は重く、不自然極まりないのである。
大方、援護の部隊が待ち伏せしているか、賢しい策略でも張り巡らせているのだろう。
敵が策を巡らせている場合、最も回避すべきは奇襲による一撃離脱。
逆を謂えば、第一波さえしのげば此方の勝利が見えてくる。
この際、援軍の線は捨て置いて構わない。
存在しないかもしれないし、規模も予測出来ないので、考えるだけ無駄である。
「レイを残して、MS発進!敵艦に攻撃を仕掛けるわよ!」
っておおおおおおい!
敵の姿を確認してからがセオリーだろう!?
此方の方が速いのだ!確認してからでも遅くは無い!
もし奇襲されたら此方の手駒はレイしか無いのだぞ!
――しばらくお待ち下さい――
「シンから入電!
敵艦の姿、見当たらず!強奪MSの足止めを食らっているそうです!」
そら見たことか!んっ!?
きゅぴぃぃん
「デコイ……」
「後ろだァァァ!
後部ミサイル全門発射!
同時にアンチビーム爆雷展開し、180度回頭!
タンホイザー起動しておけ!」
「ちょ……貴方!?」
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「ミサイル来ます!」
「なにぃ!此方の攻撃を見きっていたのか!?
攻撃はいい、回避だ!」
ドォォォン!
「ぐぅぅ……MSデッキに被弾しました!」
「ええい!ゴッドフリート、てぇー!」
「ゴッドフリート発射!!……既にアンチビーム爆雷が張られています!」
「なにぃ!?」
「高エネルギー体!来ます!」
「人生オワタ\(^o^)/」
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「ボギーワン沈黙!」
ツインテールの報告と共に、クルー達の感嘆の声が上がった。
ふふふ、この程度、朝飯前だ。
「誰かシロッコを営倉に入れて頂戴!」
ざわざわ……ざわざわ……
「命令も無く、艦長をさし置いて指揮をするなんて……越権行為よ!!」
……なんということだ……
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「シロッコ、暫く我慢してくれ……」
「ああ……」
レイの同情めいた言葉に、私は力無く返事をした。
……私が窮地を救った筈なのに、この扱い……。
自嘲気味になり、思わず笑いが込み上がってくる――
「ふふふ……私が一番上手く……
私が一番上手くミネルバを指揮出来るのだぁぁ!!」
――憤怒を携えて。