第08話『シロッコの覚悟』
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先程、捕虜となった者がいるのか、営倉が随分騒がしかった。
暫くすると、真っ暗な営倉に輝くように映える白――
タリア・グラディスがやって来たのである。
「釈放よ」
おかしい。まだ半日しか経過していない筈だ。
「もう……でしょうか?」
「ええ、作者の勘違い……と言えば分かるわね?」
「それは仕方ない。奴は俗物だからな。
ええと、最近の言葉ではDQ……」
「とりあえず、職務に戻って頂戴」
「今後の動きは?」
「本国への帰還よ」
そう言い残し、グラディス艦長は足早にじめじめとした営倉を去って行った。
さて、先ずは髭を剃らねば。
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現状把握のため、報告書に目を通していたとき、ある報告が私の目に留まった。
『ボギーワンのブリッジ部は破壊され、探索不能。
残った箇所を調査した所、用途不明の機器をギシギシアンアン発見。
データ類の一切は焼却されたようで、関わったらしき人間もギシギシアンアン死亡。
MSデッキに接収し、本国での研究に回す予定』
ああああ!うるさい!人が読み物をしているときに!
まだ昼の2時だぞ!この世界では貞操感だけでなく、モラルも無いのか!
隣はアベックの男の方の自室だったな。全く……。
ところで、用途不明の機器とは何か?
私は好奇心に駆られ、MSデッキへと向かった。
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MSデッキに辿り着くと、奪取されたMS全てが悠然と立ち並んでいた。
そして、まるで何かに当てられたか如く倒れ込んでいるメカマン達。
「何事だ!?」
倒れ込んでいる一人を抱き上げ、問掛ける。
「あ、あんたが一日でやれって言ったんだろう……」
カオスのコックピットは完治していた。
ボギーワンは撃破したので、そう急ぐ必要はもう無かったのだが……。
てへっ、パプティマス失敗(はぁと
……黒歴史にして頂きたい。
「よくやった。ご苦労。
ところで、接収した『用途不明の機器』とは何だ?」
「あちらです」
メカマンが指差す方角には、『ゆりかご』のようなカプセルが三つ置いてあった。
「これは……!?」
一目見て分かった。
――これは人間を調整する機器だと――
考えられる可能性は一つ。
好奇心を満たし、為すことがなくなった私はカオスのコックピットに腰を掛けた。
コンソールを操作し、機体のスペックを確認する。
「なっ……サイコミュじゃない!」
手動操作のポッド――
がっくりと肩を落としたのが、自覚できるくらいに私は落胆した。
実は密かにファンネルに憧れていたことは秘密だ。
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「全く口を割らないのです」
艦長席に体を預けているグラディス艦長が、困ったように首を傾げていた。
ガイア、アビスのパイロットたちは、尋問に対して黙秘を続けているらしい。
「ならば、シロッコ君に任せてみてはどうか?」
という議長閣下殿の提案によって、私は捕虜と対面することとなった。
取り調べ室に一歩入った時だった。
少女という外見にも驚いたが、何より私に訴えかけてくる感覚に驚愕した。
『この子は強化人間だ』
あのカプセルは彼女を調整するために使っていたのだろう。
気を落ち着けて、尋問を開始する。
「名前と所属は?」
「うぇーい」
「ふむ、奪取した実行犯か?」
「うぇーい」
「いかんな……」
少女の名はステラ・ルーシェ。
地球連合所属で、奪取の実行犯らしい。
正直言って、取引でもしない限り、極刑を免れることは出来ないだろう。
暫く思索する。とりあえず、もう一人の方も済ませてしまおう。
恐らく、此方の得た情報をちらつかせれば、観念して喋ってくれるだろう。
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案の定、ステラの言っていたことに私の推測を足した内容を話すと、
アウルという少年も黙秘を続ける意味が無いと察してか、たどたどしく話してくれた。
――彼も強化人間だった――
「よし……!」
そう、覚悟は決まったのだ。