code geass-destiny第14話

Last-modified: 2010-02-12 (金) 08:10:33

コードギアスDESTINY
第14話 コードギアス・デスティニー

 
 

 月面ダイダロス基地に向けたジェネシスの攻撃は命中。
 その発射角度等は完璧であり、月面のレクイエムは完全に破壊されることとなった。
 機動要塞メサイア周辺の艦隊は既に、ラクスのギアスにより私兵とかし、さらにはアークエンジェル、エターナル等の戦艦も、その中には含まれている。
 ラクスはその広い司令部の中で歌を謡いながら、踊っている。
 なんとも心地が良い気分。自分に敵対するものすべてを一瞬にしてなぎ払ったのだ。
 あのゼロも、そしてミネルバも…。もう存在しない。

 

『ラクス、この後はどうする?』

 

 画面に映し出されるキラを見つめながらラクスは少し考え…。

 

「…そうですわ。地球に向けて、ジェネシスを撃ってみましょう?どうなるか楽しみですわ。
 戦いばかりしている地球の皆さんにはお仕置きが必要ですもの。それと、それと…、
 私1人だけでは国の運営が大変ですから、ミーアさんのような複製をつくりましょう。それと、それと…」

 

 ラクスは指を折りながら、思いつくことをあげていく。

 

『…ラクス・クライン。考え中のところ悪いな』

 

 振り返るラクスの前に映し出される黒き仮面の男の姿。

 

「あら?どうしてあなたが生きているのかしら…あなたは死んでなきゃいけないのに?」

 

 ラクスは不思議そうな表情でゼロに尋ねる。

 

『すべては、デュランダルの計画通りだ』
「デュランダル?」

 

 ラクスはその場で血の海の中に倒れている亡骸を見る。

 

『デュランダルは、お前が私欲のためにザフトを制圧しメサイアを向け、この月面に向け攻撃をしてくるであろうと読んでいた。
 ミネルバ率いるザフトは、それを知り、あえて攻撃をこちらに敢行した。お前をメサイアにおびき寄せるために…。
 ミネルバ率いる艦隊は、私達騎士団を攻撃するものではない!!
 お前を、倒すために…デュランダルが私に送り届けた、命をかけた最後の力だ』

 

 ゼロは力強くいう。それを見つめ微笑むラクス。

 

「ふふふふ、面白い方ですわ。もし、そうだとして…、私を倒せますの?私にはここにいる軍だけじゃないですわ。
 全世界の皆さんが私の味方です。あなたには私は倒せませんわ」
『やってみなければわからないさ。お前を倒すために集まった力…デュランダルが己の命をかけた、それを無駄にはしない!』

 

 通信が切れたのと同時に、ラクスは別の通信を繋げる。

 

「マリュー艦長、バルドフェルド艦長…至急、部隊を展開し、愚かな反逆者たちを迎え撃ってください。
 私の世界に…彼らのような異端な存在はいりませんわ」
『了解しました。ラクス様』
『こちらも完了した。必ずや勝利を約束しよう』

 

 ラクスは、メサイアのジェネシスの次の目標を地球に向ける。
 発射準備をして、最高のショーを騎士団の皆さんにもみせてあげないと。ラクスは新たに通信を繋げる。

 

「キラ…、敵はみんな殺してしまってはいけませんわ。手足を切断し…無抵抗のまま宇宙に残してあげて。
 いつ流れ弾で撃たれるか、そういったドキドキ感を味あわせてあげてくださいね?」
『ラクスの言うとおりにするよ…』
「アスランもお願いするわ。あなたのことを撃ったものたちに鉄槌を下して頂戴」
『あぁ、わかっている』

 

 みんなが自分を求めてやってくる。
 守るもの、命を奪おうとするもの…それらすべてが、自分に下るのだ。
 これほど楽しいことはない…。

 

―――

 

「…ありがとうございます。ゼロ、あーでもいってくれなければ、事実を知らなかったものは、混乱してしまっていたでしょうから」

 

 タリアは申し訳なさそうに言う。ゼロは画面を見ながら

 

「…本気で戦わなければ、ラクス・クラインに悟られていたことは事実だろう。
 あなた方が本気だということは、デュランダルからの、録画されたビデオでわかる。
 なぜ、あいつがここまで急いでいたのかということも、これでわかった」

 

 デュランダルはただ急いでいたわけではない。

 

『…ゼロ、本来ならば直接会って話をしたかったが、それは叶うことができなくなりそうだ。
 君達にミネルバたちザフトの軍を預ける。混乱しているだろうが、聞いて欲しい。
 私達ザフト、いや地球圏における民衆は、ラクス・クラインという1人の人間により意識が麻痺している。
 彼女はそれを利用し、この世界を手中に収めるつもりだ。
 本来ならば、その役割は、私がしなくてはいけなかったのだが…、
 残念ながら、私には出来なくなりそうだ。君達に…この世界を守って欲しい。
 ラクス・クラインの世界は、偽りの平和だ』

 

 デュランダルの狙いは最初からラクス・クラインを倒すことだけだったのだろう。
 自分たちで何とかできなければ、その運命を俺たちに委ねると。
 撃つものは撃たれる覚悟がなくてはいけない…、
 デュランダルは、自分が敵となってもかまわないから、ラクスによる世界の制圧を防ぎたかったのだろう。
 もう少しはやく、そのことに気がついていれば、奴とはまた別の未来を見つけられたかもしれない。
 だが、後悔をするのはまだ早い。
 まずは…ラクス・クラインを止めることが先決だ。

 

「…ギル」

 

 涙ぐむレイを見つめるシンとルナマリア。レイにとっては家族に等しい存在だったのだろう。

 

「…シン、ルナマリア、メイリン…そしてレイ」
「「艦長!」」

 

 タリアが4人の前に現れる。
 シンとホーク姉妹の三人はやはり、裏切ってしまったことへの罪悪感があり、なんともいえない気持ちが残っている。
 そんな三人に対してタリアは笑顔で…。

 

「私は、貴方達が生きていてくれたことだけで十分よ。私達は、ラクス・クライン討伐として、メサイアに向かうわ。
 おそらく、これがミネルバとしての最後の出撃になるでしょう。
 だけど、私達は最後まで生き残り、勝利を得る。
 これが私からの最後の命令よ。必ず生きて帰ってきなさい…以上」

 

 4人は敬礼をする。
 タリアは、この後ミネルバに戻り、ザフト軍の全面的な指揮をとる。
 シンはディスティニーの改良の新型MS、ルナマリアはインパルス、レイはレジェンド、メイリンはローズクォーツのオペレーターを務める。

 

「なんだか、かっこいいわね~あーいうのって」

 

 カレンはそんな4人を見ながら、自分もやる気に満ちてきていた。

 

「ステラも…あんなのやりたい」

 

 ステラは物欲しそうに、ゼロを見る。
 そのステラにあわせてC.C.とカレンもゼロを見る。
 ゼロ=ルルーシュは、これも士気を高めるためだと、思い、黒耀の操縦席に上り、ローズクォーツのパイロットたちを見る。
 連合・ザフト・オーブ、皆ばらばらの兵士達である。
 将兵である何人かにはギアスをかけ従うようにしたが、
 ここまで来た兵士は、ゼロという存在が本物になりつつあった。

 

「黒の騎士団、いや…私と同じく志を同じにするものたちよ!私は…諸君達のおかげでここまできた。
 そして、この長きに渡る戦いもこれで終わりにする!
 連合・ザフト・オーブ…それぞれの主義主張はあるだろう。
 だが…皆が思うことはひとつのはずだ!
 …自分の大切なものを、もう一度思い出して欲しい。
 ……そのものと作る明日、それが誰もが求めることであるはずだ!!
 今の間はすべての禍根を忘れ、供に手をとり、明日を掴もう!!」

 

 周りから『おおおお!!』という声が響きわたる。
 ステラも笑顔で手を上げて気持ちを高める。
 声援が湧く中、端っこのほうでカレンとC.C.は、ルルーシュの姿を静かに見守る。

 

「…あんたが死ぬわけ無いと思うけど、気をつけてね。あと…」
「わかっているさ、お前こそ……死ぬなよ?」

 

 2人は拳をあてて、それぞれの機体にと向かうC.C.は黒耀、カレンが紅蓮暁式に。
 言葉は要らない…。なんていったって、一年間も一緒にいた仲、良くも悪くもお互いをわかっている。
 それに…ゼロレクイエムがあってC.C.もカレンも成長したといえる。
 ローズクォーツ、ミネルバを中心とした艦隊はメサイアに向けMS部隊を出撃させていく。
 多種多様のMS…、それらすべてがメサイアに向かっていく。
 民衆の支持は得られないかもしれない。
 だけど…これは、自分たちの未来をかけた戦いだ。

 

『ステラ…、お互いこの戦い終わったら、一緒に地球を見て回ろう。
 レイもルナもメイリンもみんなで…、戦いが無い地球を見てみたい』

 

 シンの回線が皆を繋げる。

 

『うん!シンとみんなで……いっぱい、いろんなところに行く』

 

 嬉しそうにステラは声をあげる。

 

『フ…、随分と勝手に決めるんだな』

 

 レイは鼻で笑うが、その表情は緩い。

 

『そうよ!私の都合だってあるでしょ?』
『あ、お姉ちゃん…もしかしてシンと二人っきりがいいの?』
『ば、バカいってんじゃないわよ!!』

 

 みんなの笑い声がコクピットに響く。
 そう…俺たちはまだまだやらなくちゃいけないことがあるんだ。
 こんなところでやられてたまるか。そうだろう?マユ?

 

 うん、お兄ちゃんは…私が守るもん。

 

『…それでは、灰廉。ステラさん、発進どうぞ…』
「いってくるね?メイリン。…灰廉、ステラ・ルーシェ。出撃する!」

 

 ステラが一番手でローズクォーツから出撃する。
 今では慣れたその機体を自分の身体のように扱いながら、迫り来るラクスの軍勢に向かう。
 みんなと一緒に遊びに行くんだ。
 アウルやスティングの分まで…。
 私は生きる。生きて…戦場のない世界も見るんだ。

 

『レジェンド…発進どうぞ』
「…レイ・ザ・バレル。レジェンドでるぞ!!」

 

 レイの心は晴れている。雲ひとつない。ただあるとすれば…ギル。
 彼に対する思いだけ。だがそれも哀しみではない。
 彼は彼の道を進んだ。
 ならば次は自分の番だ。
 ラウ・ル・クルーゼではなく、レイ・ザ・バレルとして…。

 

『……お姉ちゃん』
「メイリン!…あんたがしっかりしてくれなきゃ、気持ちよくでていけないでしょ?」
『うん。お姉ちゃん…頑張ってね。インパルス、発進どうぞ!』
「…ルナマリア・ホーク、インパルスでるわよ!」

 

 自分にはこれだけの仲間がいる。
 これだけの力がある。
 みんなが、ひとつになれば怖いものなんか何も無い。
 私は…戦える、全ての力を出し切って…。

 

『カレンさん、また…みんなで話ししましょうね?』
「…当たり前でしょ。こんな修羅場、いくつも潜りぬけてるってね!カレン、紅蓮暁式、発艦!」

 

 こういうのも悪くない…、ゼロレクイエムのときの哀しみに満ちたものじゃない。
 なんだかみんなの勢いに自分が押されているみたい。
 ルルーシュだって、こんなのは初めてのはずでしょうね。
 だからこそ…、ゼロの道は私がつくる。

 

『…ゼロ。あの…、いろいろとありがとうございます』
「おいおい、まるで私達が死ぬみたいじゃないか。縁起でもない」

 

 C.C.は緊張をほぐそうと、笑って言う。

 

「メイリン、いや…シン・アスカ、ステラ・ルーシェ、ルナマリア・ホーク、レイ・ザ・バレルか。
 そしてミネルバクルーたちに、協力を感謝すると伝えてくれ。
 お前達の雰囲気、昔を思い出させてくれた。
 この戦いが終わったら…頭に被った帽子を取られたら1日デートゲームでもやろう」

 

 生徒会メンバーでのひとときの戯れ。
 だが…それはルルーシュにとってはかけがえのないものとなっているのは事実だ。
 シャーリー、リヴァル、ニーナ、ミレイ会長、スザク、ロロ、ナナリー……。

 

『???』
「フ…、ゼロ、黒耀出撃する!」

 

 飛び出すゼロを中心として部隊が編成されている。
 カレンやステラたちも待っている。
 その中心となるゼロは、指示をここから出していく。
 目標はメサイア。
 その中にいるラクス・クラインを抑えれば勝利する。

 

『…なにをしている。シン、置いていくぞ?』

 

 ゼロの言葉に目をあけるシン。
 今までのことを思い出していた。
 この数ヶ月、激動の中で自分が何をしようとしているのか、どこにいるのかがわからなくなりそうになったときもあった。
 だけど、今はこうして、みんなとともにいる。
 世界を救うなんて、そんなかっこつけたことは言わない。
 ただ、明日が欲しい。みんなと一緒にいるための…明日が。

 

『シン、お姉ちゃんのためにも…頑張ってね?』
「あぁ、メイリンも…しっかりフォロー頼む」
「うん!シン・アスカ機、発進どうぞ』
「……シン・アスカ!コードギアス・デスティニー!!いきます!!」

 

 出撃する白き機体『コードギアス・デスティニー』
 ガンダムの形式を保ちながらも翼はエナジーウィングに変更され、手には輻射波動、ハドロン砲をビームライフルの代用として装備。
 巨大なサーベルもナイトメア用の巨大な真・呂号乙型特斬刀に変更されている。
 飛翔する白き機体。目の前に迫る黒き要塞。そしてそこから見えてくる機体。
 あの中にいる、倒さなくてはいけないものたち…。
 最後の機体を操り、シンは宇宙を駆ける。

 
 

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