家賃は通勤時間の長短でこれだけ変わる!知られざる「1分の価値」を公開

Last-modified: 2020-01-27 (月) 14:42:41

家賃は通勤時間の長短でこれだけ変わる!知られざる「1分の価値」を公開

沖有人:スタイルアクト(株)代表取締役/不動産コンサルタント
2020.1.17 4:50

ミレニアムを境に変わった不動産の価格決定理論

 物件の家賃は都心へのアクセスの良し悪しで決まる。通勤時間が家賃を決定するため、まさに「タイム・イズ・マネー」である。今回、距離によって物件の価値がどう決まるかを具体的に試算することができたので、紹介しよう。

 20世紀には「地ぐらい」(土地のブランド、格)という言葉があった。地ぐらいがいいのは、低層の戸建てが並ぶ高級住宅地だった。たとえば、田園調布や成城学園前などが代表例だ。しかし、こうした閑静な住宅街は最近敬遠される。駅から遠く、都市計画上コンビニも近隣にないので、利便性が悪いのだ。それでも景観の良さや緑があるという環境面で良いとされてきた。

 21世紀になって不動産の証券化市場ができると、不動産の評価方式が変わった。不動産がどれだけ収入を生み出すかが、最大の価値基準になったのだ。こうなると、家賃から逆算して不動産価格が決まることになる。

 その家賃は冒頭で指摘したように、都心へのアクセス時間で決まる割合が大きい。とにかく利便性が重視されるのだ。結果、駅に近く、コンビニやスーパーにすぐ行ける場所が有利になった。その「申し子」のような物件がマンションで、戸建てから人気を奪っていった。

家賃は「1分の時間価値」をあらわす目安

 通勤時間は都心ほど短くなり、家賃は高くなる。市区町村別に「家賃÷通勤時間」(これを、通勤1分単価と呼ぶ)を計算すると、そのエリアの1分の価値が算定できる。東京都で見ると、最高は港区で1分あたり6000円を超える。都心3区平均で5000円、都区部の外周の区の平均が1800円、都心と外周の間の平均が2600円になる。都区部以外の市町村は平均して1500円となり、1000円を割り込む市は存在しない。

この1分の価値は、通勤時間で割っているだけに労働時間単価を反映している。職場への通勤時間1分は1日では往復するので2分、月20日職場で勤務すると仮定すれば40分に相当する。これの1.5倍が1時間(60分)相当になる。

 その前提で通勤1分単価を2000円とすると、月1時間相当の対価が3000円になる。だいたいこれが、その人の時給と近い水準になる。

 日本の平均労働時間は年間1700時間とされているので、3000円に1700時間をかけると510万円になる。それに有給休暇を入れると540万円くらいになる。東京都の平均年収が約600万円であることから、それと似通った水準になる。通勤時間は労働時間の一部として考えられており、同時に家賃負担能力ともバランスが取れていることになる。

東京の通勤時間帯別「1分単価」はこうなる

 平均通勤時間が30分未満のエリアは都心3区に限られる。都心から離れるほどに通勤時間は長くなるが、東京都では最長が50分超に相当し、小金井市、国分寺市、稲城市、清瀬市になる。

 これ以上離れると、逆に通勤時間は短くなる傾向にある。勤務先が主に都心ではなく地場になるからだ。福生市、武蔵村山市、羽村市、あきる野市がそれに当たる。これらを除いて、都心通勤が基本となる通勤時間帯別通勤1分単価は以下のようになる。

(1)30分以内/5031 円
(2)35分以内/3070 円
(3)40分以内/2239 円
(4)45分以内/1749 円
(5)50分以内/1492 円
(6)50分超 /1348円

(1)が年収1000万円とすると、(2)は600万円、(3)は450万円、(4)は350万円、(5)は300万円、(6)は270万円になる。自分の通勤時間と家賃・年収を照らし合わせてみよう。それらが相関していることに、多くの人が気づくはずだ。

通勤時間をマンション価格に変換「身の丈」に合った住まい選びを

 前述の通勤1分単価を家賃で表すなら、マンション価格としても表現することができる。マンションの平均利回りは4%なので、4%で割ると価格変換できる。都心が1億円なら、郊外では3000万円までとなり、東京都は通勤時間でピンキリになることになる。また、年収に対する家賃の負担割合は約2割なので、年収600万円の人なら1月で10万円ということになる。

 いずれにしても、年収・家賃・マンション価格は密接に関係している。通勤1分単価は、皆の金銭感覚の表れなのである。自分の労働時間価値を年収から算出し、家賃負担額を決め、購入するならいくらが適当かを決めるといいだろう。

 ここで大事なことは、自分の「身の丈」が5年後、10年後と大きくなっていくのを想定することだ。そう考えられるならば、住まい選びは賃貸なら現状の身の丈を踏まえて、購入するなら5年後くらいを見通して決断することが妥当と考えよう。
 
 今回紹介した「1分の価値」も目安にして、自宅探しをしてほしい。

(スタイルアクト(株)代表取締役/不動産コンサルタント 沖 有人)