蓬莱山 輝夜

Last-modified: 2023-09-10 (日) 14:56:45

基本設定

私は自分の部屋に戻り、奇妙な盆栽を愛でる仕事に戻った。
例月祭といっても私はやる事がない。
いや、例月祭に限らず普段の生活でもやる事が殆ど無い。
竹林の外の情報はイナバ達に伝えて貰うし、急患や来客があったとしても永琳がすべて対応してくれる。
何もしなくて良いという正直退屈なものだった。
月の都にいた頃も同様に、やる事が何もなかった気がする。退屈さ故に地上に憧れたものだったが、
地上に降りてきて初めて分かった。やる事が無いのは月の都や地上など環境に関係なく、
私自身の問題だと。何事も環境の所為にする心が退屈さと窮屈さを生むと言うことを。
だから私は退屈な日々を打ち破る第一歩として、盆栽を愛でることを仕事にした。(小説二話)

病院を始めた理由は、永琳曰く「これからは地上の民として暮らすのですから、地上の民の努めを怠ってはいけません。お互い他人のために働く事が地上の民の勤めなのです」という事らしい。
つまり、働かざる者食うべからずという事だろう。
私には何となく理解できる。わたしを匿った老夫婦も、なまじ月の都から財宝を頂いたが為に、
平穏な暮らしを奪われてしまったのだ。地上の民は自分の働き以上の見返りは期待してはいけない。
必ず不幸になるからである。
ただ、理解できるのだがまだ実践できていない。私に限らず、
幻想郷にはその地上の勤めを果たしていない者が多い気がする。
そんな悩みを永琳に打ち明けると「輝夜は自分のやりたいことだけすればいいのよ。
もしやりたいことがなければ、やりたいことを探す事を仕事にしなさい」とはぐらかされる
(小説二話)

価値観(小説二話)

最近、永琳が兎達に優しくなった様な気がしてならない。
昔は兎に限らず、永琳にとって地上の生き物は自分の手足でしかなかった。
月の都でも月の民にとっては、兎達はただの道具でしかないのだから当然と言えば当然である。
月の民は他の生き物とは別次元と言っても過言ではない程の、高貴な存在なのだ。
それがいつ頃からか永琳は、私達月の民も地上の兎達も対等の存在として扱い始めているように思える。
妖怪と人間が対等に暮らす幻想郷の影響だろうか。でもそれが嫌というわけではない。
むしろ私にとっては特別視されるよりは居心地がよかった。
何せ幻想郷には月の民は私と永琳の二人しかいないのだから、
地上の民より優れていると思っても孤立するだけだし、地上の民がみんな道具であるのならば
道具が多すぎるからだ。(小説二話 輝夜)

そんな日々を経て、いつしか地上を月の都よりも魅力的な場所だと思うようになっていた。
その時は永遠の魔法をかけることはなく、僅かだが地上の穢れに浸食されていた影響だと思う。
ただ、その時はまだ私も自分が地上の民とは違う高貴な者だと認識していたし、
地上の民は道具としか思っていなかったのだが……
ここ幻想郷はとても不思議な土地であった。妖怪と人間が対等に暮らし、
古い物も新しい物も入り混じった世界。そこに月の民と月の都の最新技術が混じったところで、
誰も驚かないのだろう。自らを高貴な者だと言っても笑われるだけである。(小説二話)

価値観(小説最終話)

隣では酔っ払った霊夢と輝夜が何やら話をしている。
月の都って、思ったより原始的ね。建物の構造とか着ている物とかさぁ
輝夜は笑った。
「そう思うでしょう? だから地上の民はいつまでも下賤なのよ
「どういうこと?」
「気温は一定で腐ることのない木に住み、自然に恵まれ、一定の仕事をして静かに将棋を指す……、
遠い未来、もし人間の技術が進歩したらそういう生活を望むんじゃなくて?」
霊夢はお酒を呑む。
「もっと豪華で派手な暮らしを望むと思う」
「その考えは人間が死ぬうちだけね。これから寿命は確実に延びるわ。その時はどう考えるのでしょう?」
「寿命を減らす技術が発達するんじゃない? 心が腐っても生き続けることの無いように」
その答えに輝夜は驚き、生死が日常の幻想郷は、穢れ無き月の都とは違うことを実感した。

竹取物語との関連

老夫婦が私をかくまってくれた理由は、月の都の監視役が定期的に富を与えていたからだと思う。
月の都の監視役は、私と同じように光る丈に黄金を隠して、
この老夫婦に私を匿ってくれたことに対する謝礼だと印象づけさせた。(小説二話)

いつの間にか老夫婦に感謝と愛着のような物も芽生えていたので、
老夫婦が家に匿ってくれる事は有り難かった。(小説二話)

能力について

永遠の魔法とは、一切の歴史の進行を止め、穢れを知らずに変化を拒む魔法である。
生き物は成長を止め、食べ物はいつまでも腐らず、割れ物を落としても割れることはない、
覆水も盆に返る。私は月の民である自覚から地上の穢れを恐れ、この魔法を建物全体にかけていた
のだが、地上の民の魅力を目の当たりにし、自らその魔法を解いたのだ。
その結果、永遠亭も地上の穢れに飲み込まれた。食べ物は早く食べないとすぐに腐り、
飼っていた生き物は皆一様に寿命を持ち、高価な壺は慎重に持ち運ばないといけなくなった。(小説二話)

永遠亭は特殊な建物であった。人間に見つからない限り、歴史が進まない仕掛けがしてあった。
姫の永遠を操る能力と私の智慧の結晶である。歴史が進まないというのは、
歴史になるような事件が何も起きないという事である。(小説一話 永琳)