幽々子、永琳、紫の思惑について

Last-modified: 2023-09-09 (土) 16:35:06

三者の目的について最終話から引用

幽々子の思惑

幽々子がお酒を盗み出した理由はただ一つ。月の民に喧嘩を売らずに、一度は惨敗した綿月姉妹に
復讐をする為であった。千年以上も昔に月に攻め入って惨敗したのは紫なのだが、紫はそれ以降目を付
けられていて目立ちすぎてしまう。だから、吸血鬼の襲撃を囮と見せかけて、さらに紫自らが囮となる
二重囮作戦に出たのだ。紫さえ地上に封じてしまえば、月と地上を行き来できる力を持つ者は居ない。
これ以上に綿月姉妹を油断させる方法はないだろう。しかしながらお酒を盗む事、それが、
紫が考えた第二次月面戦争の正体なのだろうか?(小説最終話 神主視点)

永琳の思惑

永琳は全て判っているつもりだった。
ある妖怪月の都に不穏な噂を流すために巫女を利用した。
巫女はその妖怪に言われるまま神様を呼び出し使役した。
それが許されるのは月の都にいる綿月依姫だけであった。それによって綿月姉妹は疑われ、
その師匠である永琳も疑われた。これもその妖怪が仕組んだことだ。
巫女が呼び出した住吉三神の力で、三段宇宙ロケットが完成するなど誰が想像できただろうか。
確かに住吉三神は航海の神様で筒である。まさにアメリカが最初に月まで到達したロケット、
サターンVの神様だった。永琳が初め吸血鬼のロケットを見たとき
外の世界のロケットの本を見て吸血鬼が住吉三神に気付くわけがないと思っていた。
外の世界にも月の都にも明るい者である必要がある。その時点で誰が裏から操っているのか
永琳には明白であった。巫女に神様を扱えるように稽古した人物がその人物像と一致した為、
永琳は確信していた。黒幕は八雲紫であると
たまたま月から兎が逃げてきたのでその兎を利用し、綿月姉妹に手紙を送った。
もしその兎が居なければ、再び月を偽物と入れ替え、主犯だけを月に到達させないつもりでいた。
ただ、それはまた幻想郷に不安をもたらす危険な方法ではあったが…。
だが永琳にも不安要素があった。その黒幕の目的がいまいち不明だったのである。
そこまで手の込んだ方法で月に潜入したとしても恐らく何も出来ないであろう。それだけに不気味であった。
そしてその黒幕が目の前に居る。紫は永琳を酒の席に呼ぶという挑発をしてきたのだ。
(小説最終話)

紫の思惑

「……では、明日は何をしに行くのでしょう?」
「月の都から新しい幻想郷の住民が現れたのよ? それなりのお返しを頂かないと。
 そう、住民税みたいなもんね
「はい? なんですかそれは?」
皆、好き勝手に暮らし自由を謳歌しているように見える幻想郷だが、
実際住んでいる者は決して自由を約束されている訳ではない。
皆の最低限の自由を確保するためには、ある程度の決まりのようなものが必要となる。
それが少なからず不自由を生む。しかしその不自由は、皆の自由のためには必要な事である。例えば、
幻想郷の人間は常に妖怪に襲われる危険があるが、その恐怖を甘んじて受け入れなければならない。
人を襲うことを忘れてしまうと自らの存在は危うくなってしまうから、妖怪は人を襲う。
しかし幻想郷に住む者の生活は妖怪の手によって支えられているのである。妖怪がいなければ幻想郷は
崩壊してしまうのだから、人間は妖怪に対する恐怖を完全に拭おうとはしない。
人間が自分を襲う妖怪をすべて退治してしまったら、その時は幻想郷は崩壊してしまうだろう。
逆のことも言える。妖怪が襲う人間がいなくなってしまったら、妖怪も自らの存在意義を失ってしまう。
だから、妖怪は人間を襲うが無闇に食べたりはしない。里の人間は基本的に食べてはいけない約束なのだ。
新しく住人となった月の民は、妖怪ではなく人間であることを選んだの。つまり、
 永遠亭のあの者達は人間を選んだのよ」
私は、兎を除いてね、と付け加えた。あれは人間になりすますには無理がある。
「人間…ですか? あの宇宙人一家が? うーん、私にはどう見ても人間には見えないのですが…」
「あら見た目の問題ではないわ? 
 あの者達は妖怪のルール下には入らず、人間の社会に入ろうとしているじゃない」
 薬を売って歩き病人が居れば診察する。それは人間の世界での営為であり、妖怪の社会のそれとは異なる。
「確かに、我々妖怪とはちょっと馴染めてないですね。里の人間にとっては変わった妖怪だと
 捉えられている様ですが…」
「しかし、幻想郷の人間の義務を果たしていない」
外の世界の人間にもいくつか義務がある。学ぶ事、働く事、そして社会に参加する事、つまり納税だ。
幻想郷ではそれに妖怪との付き合い方も義務である。
「人間の義務…ですか。そう言われてみればそんな気もしますね。あの者達は妖怪を恐れないし、
それどころか人間の力を強めパワーバランスを崩しかねない。ですがそれと月侵略計画と何の繋がりが…」
「さっき言ったでしょう? 私は住民税が欲しいと。人間の力を強めると言っても、怪我や病気を治したり、人間の護衛につく程度なら何て事もない。それよりは、納税の義務を果たして貰わないと、社会には参加できていない」
「…もしかして、月の都に潜入して住民税代わりに何か奪ってくるのですか? 彼の者が月の民だから」
藍は疑問の晴れた様子で私に問うた。私は珍しく自分が言ったことが理解して貰えたようで満足した。
「ええ、そういう事ですわ。月の都なんて侵略できる筈もありません。ですが、忍び込む事ぐらいは容易でしょう? 貴方にはその役目を負って貰います」(小説第五話)

 

藍「説明してくださいよ 一体なにが起きていたと言うんです?」
紫「だからおとりよおとり 月の使者のリーダーは二人
  一人は神様をその身に降ろして戦う実力派 一人は地上と月を結ぶ援護要員(綿月姉妹が描かれたコマ)
  月の使者を騙すには2種類のおとりが必要なの わかる?」
藍「二種類のおとりって…実力派を出させるための吸血鬼一味と そして私たち
紫「地上には月の頭脳だかなんだか知らないけど いわゆるスパイがいるから
  そのスパイを引っかけるためにはまず私が罠にはまる必要があったのよ 
  それで一番なにも考えていなさそうな幽々子に協力してもらったの 
  藍が私の作った切れ目に入って豊姫の能力を引きつけている間に 
  こっそりもう一つ穴を空けておいたのよ 
  二つのおとりで月の使者の家はがら空きになった 
  幽々子には直接指示はしなかったけど 必ずもう一つの穴を見つけて
   屋敷に忍び込んでくれる、と」
妖夢「そういうことだったのですか 私も同行しましたが幽々子様はなんにも説明してくれないので
   本当に困りましたよ あれから一ヶ月間も 月の都に忍びこんでいたのですから」
紫「幽々子を選んだ理由はそれもあるわ 私が再び月と地上を結ぶことができる次の満月まで 
  月の都に忍び込んでいても目立たないから」
妖夢「どういうことです? 十分目立っていた気も」(兎と幽々子がキャッキャしてるコマ)
   月の都は穢れを嫌うけど 貴方たちはすでに浄土の住人だからね」
藍「さすが紫様です」(漫画版最終話)

紫「幽々子が手荒な真似をするとは思えないし 何か宝物を盗んできているんじゃないかしら 
  それに気づいた綿月姉妹がぎゃふんと言ってくれるはずよ」
幽々子「賢者の家には珍しい物も置かれていたけど 剣とか玉ばっかりであんまり面白そうな
    物がなかったので…これにしたわ」
紫「…幽々子、この古くさい壺は何かしら?
幽々子「お・さ・け 月の都に置かれた千年物の超々古酒よ」(漫画最終話)

 

紫はにやりと笑った。その笑顔は永琳の心の奥深くに刻まれ、忘れることの出来ない不気味さをもたらした。死ぬことのない者へ与える、生きることを意味する悩み。正体の分からないものへの恐怖。
それが八雲紫の考えた第二次月面戦争の正体だった。(小説最終話 神主視点)