プロローグ

Last-modified: 2011-11-09 (水) 11:18:52

Prologue fallen ―追放―

- 追放 -

あの日の朝

あの日の朝

あの日の朝

あの日の朝

この都市の繁栄を象徴する‘Brand-New Millennia’までD-5日。
誰もが明日への期待に胸をふくらませていた'その日'
恐ろしい出来事が起こった。

 

あの日の朝、テレビの全チャンネルは同じ番組を放送していた。
画面の中では、大勢の人々が道路を埋め尽くしている。
よくあるデモ隊の行進かと思った瞬間、群集の前を塞いだ警察が発砲を始める。
一瞬にして大勢の人々が崩れ落ちるが、群集は止まらない。
むしろ彼らは前へ前へと進んで行った。倒れた人を踏みつけながら、どんどん進んでいった。
少しの迷いもなく進んでいく群集は、警察を押しつぶしていく。
警察の姿はたちまち画面から消えていった・・・

 

いったい何が起こったんだ?見当さえつかなかった・・・生放送のニュースカメラは
群集の姿をクローズアップする。画面いっぱいに拡大された彼らの姿は
・・・人間の姿ではなかった。

 

数千、いや数万にいたる変異生命体が街を埋め尽くしていたのだ。
そこは確かにオールドタウンの近くである。
紛れもなく、やつらは'都市の中'にいた。
人々はパニックに陥り、中継をしている記者も正気を失う。
テレビ画面は'ハザードレベル4'の表示とともにウイルス隔離シェルターの位置と
避難路の情報を必死で流していたが、・・・まもなく放送は終了した。

 

ハザードレベル4発令は‘あの事件’以後はじめてのことである。・・・これは現実だ。
どうやってやつらがハザードラインを越え、都市の中に入ってきたか知る由もない。
ただ確かなことは、今すぐ逃げなければならない、ということだけ。
‘変異生命体発生時の避難マニュアル’を思い出そうとしたが、何も思い出せない。
‘まずシェルター、それから家の封鎖?いや公共施設へ逃げ込む?だったっけ・・・?’

 

混乱の中、荷造りも満足にできず、近隣の隔離シェルターへ向かう。道にはすでに大勢の
避難民が行列となっており、どこのシェルターに行っても飽和状態だった。
シェルターの入り口にさえ近づくことが出来ない・・・

 

警察は避難民の迅速な案内より、シェルター入場の整理番号配布のためとの理由で
避難民達のIDのチェックを急いでいる。
何人かは彼らに先導されシェルター内に入ったが
ほとんどの人は整理番号を渡されるだけである。
私も同じであった。
警察に整理番号を渡すと、「シェルターへの入場は保障できない。ここで空きを待つか
臨時避難所へ移動するか選べ」と言う。
私の順番だと、明日の朝には臨時避難所行きの移送車両に乗ることができるそうだ。

 

・・・シェルターはすでに飽和状態なのに、整理番号に何の意味があるっていうんだ。
・・・それよりも、変異生命体がどこまで迫っているか分からないというのに、保護装置ひとつない
野外で夜を過ごさなければならないという現実に、恐怖と怒りを感じる。
警察は興味なく「どっちを選ぶのか?」と選択を急かす。選択肢なんてなかった。
結局、私は臨時避難所行を選択し、同じ避難所に移送される7~8人ぐらいの人々と共に
夜を過ごすことにしたのである・・・

 

翌朝、移送バスが到着し、臨時避難所に向かって出発した。
その時も避難民はシェルターの前に集まってきていた。シェルターの前なら
安全と思ったかテントを張る人さえいる。
あきらめてシェルターを離れ、他のところへ向かう人もいる。
だが、このとき私が臨時避難所を選択したのは賢明であった。
後から聞いた話だが、シェルターの前で順番を待っていた人は一人も生き残ることができなかったそうだ。

 

・・・もちろん結局は他の人もほとんど生き残れないのだが・・・

4日前 Day-4

4日前 Day-4

避難所へ向かう道は混乱そのものだった。昨日まで平穏な都市だったとは思えないほど無法地帯だった。警察と軍が誘導してくれることもあったが、
基本的に彼らは街の治安を放棄した。商店街では略奪が始まり、
道路は避難民が捨てた車とゴミであふれていた。
道路状況が悪化するのを見て、ビリーはバスを降りて歩いて移動しようと言い出した。
ビリーは私達の移送係として臨時避難所から派遣されてきた人で、
20歳くらいの若者だった。

 

「歩いて移動する途中暴徒に会ったらどうするんだ!?いや暴徒はまだましだ!
ゾンビでも現れたらどうするんだ!?」連れの一人でデイビットが声を荒げた。
道路には捨てられた車が多く、事故を起こした車両は道を塞ぎ、車での移動は確かに不可能なようだ。
それでも誰一人ビリーのような若僧に命を預けようとはしなかった。
そもそも彼らはシェルターに入れなかったことにも納得していない。

 

「あの、ビリーさん・・・ちょっといいですか。誤解しているようですが、
私にはシェルターに入る資格があるんですよ。上層部に確認してみてください。」
「そうだ!どうして私がこんな危ない道を歩かなければいけないんだ!!
シェルターには私の場所があるはずだ!臨時避難所!?そもそもなぜそんなところへ移送されなきゃいけない!!」
レイラは必死に落ち着きながら話していたが、デイビットはかなり興奮していた。

 

「彼らはバイオスフィア出身のようだな・・・」
彼らを見ていたビンセントが冷やかな笑みを浮かべながらつぶやいた。
彼が初めて口にした言葉だった。

 

「バイオスフィア?」

 

「お偉いさんがいるところだよ」優秀な人間や、ぶつぶつつぶやく子供たちにぴったりなシェルターを知っているだろう?'チキン野郎'にはどうせ分からないだろうがな・・・。
ビンセントの話にエミリオが皮肉を放った。

 

レイラは悲しそうな表情で彼らを見つめた。デイビットは胸ぐらでもつかみそうな形相になった。
デイビットとエミリオは言い争いをはじめ、他の避難民たちは愚痴を言い始めた。
ビリーの一言で、彼らの不満が爆発してしまったようだ。冷静になるにはしばらく時間が必要だった。

 

結局私たちは車での移動をあきらめ歩くことにした。
だが、変異生命体がどこまで追っているかわからなかったので不安と恐怖で足取りは重かった。

 

「おい、ビリー。まともな武器は無いのか?化け物が現れたら戦わないといけないんだろう」
デイビットが角材を拾いながら言った。ビリーは頼りげない声で、

 

「武器は私が持っています。こ・・・この道は安全なはずだから心配しないでください・・・」と言った。

 

デイビットは歩きながら武器になりそうなものを探し続けた。
エミリオは絶えず騒ぎ続けた。ビンセントとそれ以外の名前も知らない人たちは
黙り込んでいた。レイラは黙って歩いていたが、皆と離れないように必死だった。
険悪な顔つきのジェフリーは見かけによらず、最初からビリーに協力的だった。
赤ちゃんを抱いているベティは特に何も言わず、
静かに皆についていった。

 

引率するビリーを含む9人は夕方まで歩き続け、夜になって避難所に到着した。
到着直後、あわただしく登録を済ませ、そのあと身体検査が
あった。

 

避難所は安全そうには見えなかった。警備兵は私たちをまるで犯罪者のように扱ったが、
二日間一睡もできなかった私たちは抗議する体力すら残っていなかったので
救護品を抱えたまま深い眠りに落ちた。

 

翌朝、目が覚めてあたりを見回すと、臨時避難所は想像とまるで違っていた。
何か妙な感じがした。

3日前 Day-3

3日前 Day-3

3日前 Day-3
よく見まわしてみたら、避難所は昨夜見た時よりもひどい場所だった。
ミレニアムフェスティバルのために準備していた空き地に、文字通り'臨時'で立てられたものだった。あちこちミレニアムフェスティバルの設備がそのまま放置されていた。
核の攻撃にも耐えれることができる隔離シェルターを期待していたわけではないが
とても避難できる場所には見えなかった。

 

安全装置は電流が流れる鉄柵と自動火器が数個あるだけで、警察の兵力も少なかった。
適当に建てられた鉄柵は蹴ったらすぐ倒れるような脆いものだった。
まともな居住施設もなかった。テントとキャンピングカー数台で
寝泊まりしていた。
避難民のほとんどは、負傷者や一人では動くことができない老人だった。
ここで問題が起きたとしても、外部の助け無しには
自分達を守りきれないのは明らかだった。
こんな施設にこれだけの兵力では、変異生命体に攻められたら
ひとたまりもないだろう。

 

「かまわんよ。化け物たちが襲いかかってきても、怪我人や老人が餌食になるだろうから」
エミリオがつぶやいた。

 

警備兵と話したが、誰一人状況を把握している人はいなかった。
皆が不安で神経質になっていた。統制する人が居ない避難所では
とても落ち着かなかった。
不安な思いであたりを見回していたら、4,5人の避難民が入ってくるのが見えた。
スーツを着ていた彼らはバイオスフィアから来たと話した。そういえば昨日、
ビンセントとレイラにデイビットを見てバイオスフィア出身だと言っていたのを思い出した。

 

「ひゅ~!あいつらがバイオスフィア出身だって?」家に帰れないで少しホームシック気味の
ジェフリーが彼らを見て驚いたように言った。

 

ジェフリーの驚くのもそのはず。バイオスフィアは中央委員会が位置して要る都市の中心施設でトップエリートが集まっている施設である。そんな施設ならどこのシェルターや避難所よりもセキュリティはしっかりしているはず。こんな危なっかしい避難所に居るのはなぜなんだろう。

 

「たぶんバイオスフィアへ戻る道が封鎖されたとか、何かの間違いでしょう。
バイオスフィアは内部の人間をこんなところにほうり出したりしないはずですもの」
レイラが彼らを見つめながら言った。

 

「あいつら追放されたんだよ」ビンセントが言った。

 

「はっ?追放?なんのことだ?」

 

エミリオの言葉にビンセントはさらりと言った。「あいつら追放されたんだよ。
犯罪歴とか、持病とか、でなければ遺伝的な欠陥があるとかさ・・・
とにかく何かの理由で劣性因子として分類されたんだよ。委員会の奴らは
価値のない人間だと思った奴らはすぐ放り出す。何の役にも立たないから
追放された。きみの言うとおりだ、レイラ・・・。バイオスフィアは『内部の人間』なら
こんな風に追い出したりしない。この避難所を見てみろ。
病人や老人だらけ。あとはバイオスフィアからの追放者・・・」

 

ビンセントは「皆分かってんだろう」と皮肉っていた。レイラはそれ以上何もいわなかった。
しかし、彼らには何とも言えない違和感があった。

 

今まで通りすぎてきたシェルターでけが人を見たことはほとんどない。しかしここは
まるで病院のように負傷者や患者、老人が多かった。
しかもペティのように赤ちゃん連れもいた。
一番保護されるべき人たちがこんな環境に放置されているなんてとても信じられなかった。
それにビンセントが言ったように、追放される人までいるなんて
これから世界はどうなってしまうんだ。

 

不可解な点はまだまだあった。ここの警備をしているのは正規軍ではなかった。
ここで武装している警備兵らは私設警備会社のサン・セキュリティ・サービスの制服を着ていた。
私設警備会社が無能な警察の変わりに公共の任務を行うのは驚くことではなかった。
とはいえ、今はハザードレベル4の状況なのに・・・変異生命体に対抗する特殊訓練を受けている委員会直属軍の役割を、私設警備会社が代行することは不可能だろう。

 

矛盾だらけだった。皆気づいてはいたが、なぜこうなってしまったのか
全くわけがわからなかった。

2日前 Day-2

2日前 Day-2

2日前 Day-2
臨時避難所に来て3日が経った。
そのうち責任者の発表があるから、それまでおとなしく待っていてくれとのアナウンス以外、
不安を取り去ってくれる説明は一切なかった。
誰一人説明を受けた人もおらず、避難民たちの不安はますます膨らんだ。

 

他の地域から逃げてきた避難民の話もつじつまが合わなかった。
イテルカウンティ地域は変異生命体が出没した地域とは遠く離れているから
まだ安全な方で、ほかの地域は悲惨だと言う。
ある地域では正規軍が全滅し、都市全体が変異生命体で埋め尽くされたそうだ。
またある地域では、うまく変異生命体を防ぎ、物資の供給も問題なく
行われていると言った。
通信機器が使用できない状況についても、委員会が保安を理由にすべての通信を遮断しているとのうわさや軍の通信妨害を受けているから使用できないとのうわさもあり
何一つ確かな情報がなかった。

 

「ちくしょう・・・僕はここを去る。あんな私設の警備会社何かに命を預けることはできない。
奴らがいままで何も説明をしないのは、ゾンビはまだ遠くにとどまっているか
それとも制圧されたかのどちらかだ。あんな奴らを信じるより、おれは自分を信じることにする」
これ以上我慢できない、と、デイビットが言った。
デイビットは東側の都市に仲間が隠れているアジトがあると以前から
言いふらしていた。

 

「それは危険すぎるよ。変異生命体がどこまで迫っているのか、何処までが
安全なのかの情報がなきゃ・・・勢いに任せてしまうのは危険だよ・・・」

 

ジェフリーの話にエメリオは振り向きもせずに突き放した。
「好きにすれば?もうそいつのことはほっとこうぜ!」

 

デイビットが目をむいて襲いかかろうとするとエメリオはそばにあるフライパンを手に取った。

 

ジェフリーが彼らのけんかを止めに入った瞬間、
遠くから爆音と銃声が聞こえた。
避難民たちは一斉にしゃがみこんだ。
警備兵の叫び声に皆パニックになった。
爆音の大きさからして数km以内だった。略奪者同士の銃撃でないとすれば、
変異生命体がすぐそばまで迫っているということだ。
避難民たちのパニックは最高潮に達した。

 

ビンセントは昨日から見かけないし、ドクター(我々は東洋人の医者を『ドクター』
と呼んでいた)は表情が暗かった。
レイラは冷静を装っていたが、ストレスで爆発寸前であることは
誰から見ても明らかだった。

 

二回目の爆音が鳴り響くと、赤ちゃんの泣き声が耳に突き刺さった。
爆音に驚いて泣き出した赤ちゃんをあやすペティが近くにいた。

 

何より心配なのは、ペティと赤ちゃんだった。ペティは今まで一言も愚痴を
こぼしたことはないが、精神的にダメージを受けているに違いない。
こんな環境で赤ちゃんの面倒を見ること自体、あり得ないことだった。
劣悪な環境にもかかわらず彼女はいつも明るく振舞っていた。
明るい声と笑みを絶やさない若い母親は
とても楽天的な人だった。

 

「お子さんの耳にこれを・・・」

 

避難所に入る時にもらった防寒用耳カバーを差し出した。とても暑い陽気だったが、
警備兵から支給された救護物資に季節は関係なかった。
僕は冬用、ペティは秋用の物資を支給されていた。

 

「おお、すぐに効いたようだね。」
耳カバーをした赤ちゃんは直ぐ泣き止んだ。
「実は子供の調子がよくないんです。だから直ぐ泣きだしたりして・・・何の病気かは
お医者さんもわからないみたいで・・・」

 

シェルターに入って行く途中、手続きミスでご主人と離れ離れになり、幼い子供と
二人だけになってしまった彼女はシェルターの手続きのミスを悔やみながらも、いつも笑顔だった。
もうすぐ赤ちゃんと一緒にシェルターに移送されるという期待があるからだと思う。

 

爆音が鳴りやまない中、彼女と色々と話した。
皆が不安に震える状況で互いにいさめ会うことができる唯一のことだった。
何か手伝うことがないかと聞いてみたが、彼女は明るい顔で
今は遠慮する、本当に大変な時が来たら助けてほしいと
言った。

 

爆音は朝方まで続き、我々は眠りに入ることができなかった。
しかし、これが最後の会話になるとは
想像していなかった。

1日前 Day-1

1日前 Day-1

1日前 Day-1

 

昨日の爆音で避難民たちは厳しい現実を改めて突きつけられる結果になった。
子供らは泣きやまず、男たちは大声で警備兵に対応を要求した。
間もなく避難所責任者から対策の発表があるので集合するようにとのアナウンスがあった。

 

集合場所にはすでに大勢の人が集まっていた。ミレニアムフェスティバルに
使用するはずだった壇上には避難民たちが並んでいた。
警備隊員何人かと共に、責任者らしき男が壇上に上がった。
ミレニアムフェスティバルのために用意されたカラフルな色使いの施設が
今の状況と不思議な対照を成していた。

 

自らをキャプテン、臨時避難所を担当するサン・セキュリティサービスの責任者だと紹介した。
男性は現在の状況を説明し始めた。
彼の言い方は高圧的で、まるで部下に指示を出すかのようだった。
彼の説明によると、外の状況は予想よりはるかに悪かった。

 

変異生命体が都市の中にまではいってきた理由については彼らも知らなかった。
ただし、北側又は北西側の何処かのハザードラインが破られ変異生命体らが急速に
乱入し、その数は最近確認していた変異生命体の数からは想像もできないほど
急増しているとのことだった。

 

彼らはハザードライン崩壊の際、臨時避難所を建設し、委員会の正規軍が
到着するまで管理を任された任務以外には何も知らされていないと言った。
普通の場合なら管理任務は数日以内に委員会に引き継がなければならない。
しかし委員会からの支援はすでに期限を過ぎ、通信もたたれてしまい、
外部からいかなる情報も入ってこなかった。我々は孤立し、変異生命体が
何処まで迫っているか正確には把握できないが、最後の通信から推定すると、
数日以内にここまで到達するとの話が続いた。
つまり、外部からの支援がないまま、ここだけの兵力で、
変異生命体に対抗しなければならないとのことだった。

 

簡単な説明を終わるなり、彼はこのような状況は委員会との契約条件には入ってなかった事を
強調し始めた。
契約条件によると、このような状況では自分たちはこの避難所を守る責任がなく、
もっぱら人道的な立場で、避難民の保護にあたっているとのことだった。
委員会との通信が断絶されたまま、状況は悪化する一方であるだけに、
委員会がここの管理を引き継ぐまではすべての統制権利は彼らにあるとのことであり、
自分たちの指揮のもと、すべての避難民たちが戦闘に参加するように要求した。
今の状況でここを護ることはもはや自分たちの義務でもないし、皆が生き残るためには
一緒になって戦わなければならないと訴えた。

 

彼の話は間違っていなかった。危機に直面した時は力を合わせなければならない。
しかし・・・それは強盗や暴力団など人間を相手にしたときに言えることだ。
変異生命体との物理的な接触は集団全部を破滅にもたらしうる。
変異ウイルスは致命的な感染力を持つ。変異生命体には最小限の人員で
解決しなければならない、と言うのが基本原則であり、組織内にも数段階の防疫システムが
準備されなければならない。だから、変異生命体に関する事件は、軽重に関係なく、
対変異生命体訓練を積んだ委員会直属の正規軍が担当しているのだ。

 

しかし彼らは今避難民に武装して戦うことを要求している。
彼らですら変異生命体に対抗するマニュアルを持っていない状況で、
避難民たちが変異生命体との戦いの中で感染してしまったら・・・
その結果は見るまでもなかった。
想像だにしなかった彼らの話に、避難民何人か叫びながら反発したが、
彼は気にせず話し続けた。

 

「勿論戦うか戦わないかは貴方達の自由。
でも保護してもらおうなんて考えない方がいい。
通信は途絶え、我々は孤立状態だ。化け物たちは目の前まで来ている。
戦いに参加しない邪魔者まで保護する義務は我々にはない。
我々が契約条件にもない人道的な任務を担当していることを忘れてもらっては困る。
我々と一緒に戦って生き残るか、でもなければ外で一人で生き残るか、
選択は自由だ。
ただし、この中にいる間は絶対的に我々の指示に従ってもらう。
例外は無い。
これが今後この避難所で守らなければならない基本ルールだ」

 

キャプテンと名乗る男は契約条件にないという言葉を度々口にした。また'義務はない'という
言葉も頻繁に使った。
彼らはもはや避難民を保護対象として考えていなかった。
彼の口調は威嚇的で、断固としていた。彼らの要求に従うか、さもなくば外に出るしかなかった。
ここは彼らの管理下に置かれていて、選択の余地はなかった。
避難民たちは彼らの要求に従わざるを得なかった。

 

殆どの人々にとって変異生命体の襲撃は悪夢だった。
だがこの瞬間、それは現実となった。
しかし最も不安だったのは、急に姿を消した委員会。
それから私設警備会社が管理している臨時避難所、保護されない自分たちの存在、
それらがまるで水と油が混ざっているようなこの都市の違和感だった。

避難所襲撃

避難所襲撃

避難所襲撃

避難所襲撃

避難民たちは凍りついた体で一点を凝視していた。
変異生命体だった。

 

おびただしい数の変異生命体が、避難所の鉄柵を揺るがしていたのだ。
何処から押し寄せてくるかわからない大量の変異生命体は増えていく一方だった。
耐えきれず、鉄柵が壊れ始めた。
銃声と悲鳴が入り混じっていた。

 

警備兵たちは避難民とゾンビが入り混じっている場所に向かって銃を乱射し始めた。
避難民たちは逃げられずただ悲鳴を上げるだけだった。
片隅でビリーが銃を握ってうずくまったまま泣いていた。
私は取りつかれたように彼の銃を取り上げた。その後の記憶はない。
どれくらい経っただろうか。激痛が走り、銃から手を離すと、真っ赤に熱くなった
銃で私の左手は大やけどをしていた。

 

変異生命体はいなくなっていた。
避難所は酷い攻撃を受けて、半分も生き残れていないようだった。
生き残った者たちはぼんやりと黙り込んでいた。やっと冷静さを取り戻した
任務管理員だけが二言三言つぶやくだけであった。
「さっきの奴らは隣の街で変異した市民だそうだ・・・
つまりゾンビが本格的に攻めてきたわけではない。それでもあんなに数がいるとは・・・」

 

まだ現実に戻ることができずにいた。
目の前に倒れている死体・・・それから変異生命体。
恐ろしいこの光景は何処か非現実的で、
自分が直面している現実とは思えなかった。

 

何も覚えていない、夢を見ているような瞬間だったが、
倒れていた女性が起き上がった瞬間だけは脳裏に鮮明に焼き付いている。

 

彼女は'ペティ'だった。

コメント

  • 更新お疲れ様です -- 2010-06-23 (水) 01:34:14
  • ここの更新何気にすごい楽しみにしてる トライアル中はゲームに夢中で読んでなかったからなぁ -- 2010-06-24 (木) 12:36:11
  • 一部日本語が変な個所があったように思うので所々自分流に書き直した部分があります。あと、全部記入してはページが長くなり過ぎるので何処かで措置をとる必要があるかと・・ -- 2010-06-24 (木) 19:08:20
  • (;゚д゚)やっぱいいわ 前作?みたいに宇宙人とかは出ないで変異ものでいって欲しい 殺人鬼みたいな敵がイベントの時にザコででたよね -- 2010-06-25 (金) 04:51:54
  • お疲れ様!ページの肥大化についてはチャプターごとに区切ったほうがいいかも -- 2010-06-25 (金) 21:15:52
  • サブシナリオが必要かどうか不明ですが作ってみました・・。 -- 2010-06-26 (土) 12:17:46
  • ↑2の方法で概ねいいと思います。あとはチャプター内の項ごとにさらに細分化、または入れ子に。サブシナリオだけは自分でプレイして読む楽しみがある気がします。 -- 2010-06-27 (日) 01:00:34
  • プロローグだけこんな感じでどうかと、ちょっとやってみました。見栄えがうーん、、という感じですが、嫌でしたら戻します。 -- 2010-06-27 (日) 01:06:09
  • ↑×2んー了解しました。では、サブシナリオに関してはカットしておきます -- 2010-06-27 (日) 01:30:27
  • うほっ、良い成形 -- 2010-06-27 (日) 05:41:28
  • 上のほうになんか見えるけど見た目はすっきりしただろ?だが編集ボタンを押してはいけない。一応これでゲーム内表記みたいな感じだろか。 -- 2010-07-04 (日) 05:02:17
  • ちょうど書き出してたとこにこちらを発見。消えた人々のベティの約束までですけどこちらに記載させていただきますね!中途半端なのはまだここまでしかクエスト終わってないので。 -- 2010-07-06 (火) 11:59:00
  • 一部記載しました。日本語が変?と思う場所は自分流に修正してみましたが。。 -- 2010-07-09 (金) 17:30:40
  • ゾンビ映画の世界を満喫できて面白いです (^-^ -- 2010-08-24 (火) 16:43:51
  • 知ってる人がいたら教えてほしいんですが、lv38のクエ1個終了した時点でChapter1が577/585にしかなってないんですが、何かクエやり損ねてる?それとも39にクエがある?100%になってないのが、見捨てられた街道の生存者(28/34)、汚染された都市(47/49)です -- 2010-09-18 (土) 08:24:22
  • 日本語でおkの大合唱で名高いCap2キャンペのジャーナルがいつの間にかマシになってるね。ところどころ誤字が残ってるけど、読めなくはないレベル。 -- 2011-05-28 (土) 05:19:39