線犯

Last-modified: 2023-12-23 (土) 08:02:47

西岡剛(元ロッテ→MLB→阪神、現福岡北九州フェニックス兼任監督)の蔑称。
阪神時代における2014年の日本シリーズ第5戦での出来事がきっかけで、この蔑称が付けられるに至った。


概要・試合経過

ソフトバンクの3勝1敗で迎えたこの試合、8回裏にソフトバンクが1点を先制し、日本一に大きく近づいた。
そして9回表には守護神デニス・サファテをマウンドに送るが、この日のサファテは3四球の大乱調で一死満塁の大ピンチ。続く打席の西岡に対しても5球連続でストライクゾーンに入らない有様だったが、西岡は3球目をカットし、5球目を一塁正面を突くゴロにしてしまう。
ボールはそのまま一塁手→捕手→一塁手と送球され併殺完成、ゲームセット……

 

と思いきや、捕手から一塁への送球は打者走者である西岡の背中に命中、その間に二塁走者がホームを踏んだ。だが同点になったと思われた直後、球審の白井一行西岡に守備妨害のアウトを宣告。三塁走者封殺→西岡刺殺の併殺が完成したとしてゲームセットをコールしていた。
和田豊監督が猛抗議するも覆らず、その横ではソフトバンクが日本一決定の喜びを分かち合い、和田が試合開始から3時間34分後に退場するなど、史上稀に見る何とも締まらない優勝シーンとなってしまった。そしてこの状況を作り出した西岡は「戦犯」とかけて「線犯」と呼ばれ、西岡のメジャーな蔑称として定着した。

なおこの年のパ・リーグの方のCSファイナルステージは、ソフトバンクと日本ハムの間で6戦に渡って死闘が繰り広げられた上、当時引退が決まっていた稲葉篤紀金子誠を双方の選手で胴上げする優しい世界が展開された為、打って変わって日本シリーズの呆気なさからこちらのCSファイナルが「実質本当の日本シリーズ」などと揶揄されるハメになった。


公認野球規則6.05(k)*1

ざっくり言うと、打者走者は「スリーフットレーン」と呼ばれる一塁線からファウルゾーン内へ引かれた領域を外れて走って一塁に対するプレーを妨害してはいけないというルール。西岡はこの領域を外れてフェアグランド内を走り、送球が当たったことで守備妨害とみなされた。


なお、なんJでは同様のプレーは「西岡のアレ」と言えばだいたい通じる。


蔑称の派生

派生形を含め実際には数え切れないほどの蔑称が作られている。以下はほんの一部。


西岡の釈明

試合後、西岡はこのプレーについて「故意じゃない」「左打者は内側を走るものだ」などとマスコミに説明していたものの、その後自身のフェイスブック上でファンに向けて「僕なりにルール上ギリギリのプレーはした」「阪神ファンを喜ばせたい一心で」と故意であったことを事実上認めてしまう
妨害したことに対する反省や謝罪などはなく、むしろ「ファンのためにやった」と責任転嫁するかのような発言は火に油を注ぐ結果となってしまった。
一方でこれまで「コールがうるさいネタ審判」のイメージが強かった白井球審は、冷静に守備妨害を見極めアウトを宣告したことでなんJ民の評価を上げることとなった

  • 問題となったプレーのGIF
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記事

阪神負けた 西岡がまさかの守備妨害
http://www.daily.co.jp/newsflash/tigers/2014/10/30/0007463700.shtml


 甲子園に戻ることなく、阪神の29年ぶり日本一の夢はついえた。対戦成績1勝3敗で王手をかけられていた阪神は0-0の八回裏、2死一、三塁から松田に中前打されて先制点を許し、そのまま逃げ切られた。

 阪神は0-1の九回、先頭・上本がストレートの四球で出塁し、1死後にゴメス、福留が連続四球。1死満塁から西岡の一ゴロで上本が本塁憤死。続く一塁への悪送球で同点かと思われたが、西岡が守備妨害を取られた。

 先発・メッセンジャーが七回まで無失点と好投。三回2死二、三塁と六回2死二、三塁のピンチには、中堅手の大和がこん身のダイビングキャッチ、背走してのスーパーキャッチで断つなど神がかりの好守で0点に抑えてきたが、ホームが遠かった。

阪神西岡「自分を責めたい」併殺打で終戦
https://www.nikkansports.com/m/baseball/news/f-bb-tp0-20141030-1389637_m.html


 阪神西岡剛内野手(30)が敗戦の責任を背負い込んだ。

 1点を追う9回1死満塁で打席へ。一塁へのゴロは3-2-3の併殺コースだった。必死に走り、細川からの送球もそれてファウルゾーンを転々。得点が入ったかに見えたが、走者の西岡がファウルラインの内側を走って、捕手の送球を捕ろうとする一塁手を妨害したとしてアウトになった。最悪の併殺打で試合終了。

 西岡は「最初、打ったら、左打者は内に入る。プレーどうこうはね…。故意でできるはずがない。ケガして始まった1年。最後に僕で終わったことが1年間を物語っている。応援してくれた阪神ファンやチームメートにも、申し訳ないという言葉ではすまされない。自分を責めたいと思います」と話した。

ニッポン放送ショウアップナイター【公式】
‏@showup1242
https://twitter.com/showup1242/status/527815838212960259


阪神西岡の守備妨害について白井球審『完全にラインの内側を走っていた。左バッターだから、普通は内側は走らない。明らかに邪魔してやろうという意図があった。』 #npb


他の試合での線犯

2017年8月1日 広島対阪神(マツダスタジアム)

2017年8月1日 広島対阪神(マツダスタジアム)
9回表・阪神の攻撃、1点ビハインドの場面で一死から西岡が安打で出塁するが、次打者の上本博紀が空振り三振。この時西岡がスタートを切っており、二塁送球は間に合わずセーフになると思いきや、杉永政信球審が上本に守備妨害を宣告。
このケースでは守備妨害のアウトがランナーに適用されるため、一気にアウトが2つ増えて試合は終了。金本知憲監督の抗議も実らなかった。

上本の妨害行為はどう見ても露骨にホームベース上に立ちふさがっていたことから、「もはや阪神のお家芸」などと揶揄された。上本は前打席のランニング本塁打の歓声から一転して嘲笑と罵声を浴びせられる羽目になり、西岡も「何があった!また西岡か!」「西岡が走るとろくなことないな」など熱い罵声を浴びた。

2018年5月24日 阪神対ヤクルト(甲子園)

2018年5月24日 阪神対ヤクルト(甲子園)
糸井嘉男がヤクルトの先発デビッド・ハフから一塁側に向けて高くバウンドするゴロを放つ。ハフが捕球し一塁へ送球したが、一塁線の内側を走っていた糸井に当たったことで守備妨害が宣告された。

2018年9月28日 巨人対DeNA(東京ドーム)

2018年9月28日、巨人対DeNA(東京ドーム)
岡本和真がDeNAの2番手・スペンサー・パットンからピッチャー強襲の当たりを放ち、捕手の嶺井博希が取って一塁に送球。これが一塁線の内側を走っていた岡本の背中に当たり、岡本は守備妨害でアウトになった。
何度も見たようなプレーであり、流石になんJ内外でも守備妨害によるアウトは納得されていたが、巨人・高橋由伸監督は猛抗議。当然判定は覆らず、なんJでは失笑の声が漏れた。

ちなみに同年9月14日の同カードで岡本はパットンの投球を右手に受け、その直後から18打数ノーヒットと不振に悩まされたことから、岡本の打球および嶺井の送球を『報復合戦』とネタにする向きもある。

2019年9月13日 巨人対広島(東京ドーム)

2019年9月13日 巨人対広島(東京ドーム)
1回裏・巨人の攻撃、一死満塁という場面でアレックス・ゲレーロが投手へのゴロを放つ。投手の九里亜蓮はまず本塁へ送球し封殺、さらに捕手の會澤翼が併殺を狙い一塁へ送球したが打者走者のゲレーロが邪魔になったか送球がやや逸れセーフに。これに緒方孝市監督が「ゲレーロが一塁線の内側を走っていたのでは?」と抗議したが認められず。

6回表・広島の攻撃では鈴木誠也が投ゴロを放ち投手の山口俊が一塁へ送球。ところが鈴木が明らかに一塁線の内側を走っていたため送球が体に当たり悪送球に。当然のように守備妨害が取られアウトとなり、再び緒方監督が抗議するも覆らなかった。

2019年9月19日 阪神対ヤクルト(甲子園)

2019年9月19日 阪神対ヤクルト(甲子園)
1回裏・阪神の攻撃にて、植田海がヤクルトの先発・小川泰弘から三振を喫するが、振り逃げで出塁を狙い一塁へ向けて走る。捕手・松本直樹は一塁へ送球したが悪送球となり植田は二塁まで進塁。しかし、植田が一塁線の内側を走っていたことで守備妨害が宣告され結局アウトになった。
この試合で阪神は0-8と惨敗した*3上に四度目の「阪神のお家芸」と言われることとなり、植田は6月にやらかしたボーンヘッドに続き、散々な罵声を浴びる羽目になった。

2021年9月14日 ソフトバンク対ロッテ(PayPayドーム)

2021年9月14日 ソフトバンク対ロッテ(PayPayドーム)
4回裏・ソフトバンクの攻撃、無死走者なしの場面でリチャードが捕ゴロを放つ。捕手・加藤匠馬が捕球したが、一塁手・小窪哲也に向けて投げた送球がリチャードに当たってしまう。しかしリチャードは一塁線の内側を走っていたことで守備妨害が宣告され、結局アウトになった。
なおソフトバンクは先発千賀滉大の14奪三振の熱投も援護に恵まれず、8回表にブランドン・レアードに二死フルカウントから痛恨の2点勝ち越しタイムリーを許し、これが決勝点となって1-3で敗戦した*4

2022年3月26日 巨人対中日(東京ドーム)

2022年3月26日 巨人対中日(東京ドーム)
7回表・中日の攻撃、一死一塁の場面で京田陽太がバント。打球を処理した投手の鍬原拓也は一塁へ送球するが京田の頭部に直撃。ボールはファウルゾーンへと転がり一塁走者の石川昂弥は三塁まで進む。しかし京田が一塁線の内側を走っていたため守備妨害が宣告され京田はアウト、石川は一塁に戻されてしまった。
なお中日は8回裏に岩嵜翔の負傷降板*5に続き田島慎二・福敬登の乱調もあり5失点、5-7で敗戦した。

2023年6月25日 DeNA対阪神(横浜スタジアム)

2023年6月25日 DeNA対阪神(横浜スタジアム)
このケースでの阪神は守備妨害の被害者側となった。
4回裏・DeNAの攻撃、一死一塁の場面でトレバー・バウアーがバント。打球処理した投手・才木浩人が一塁に送球するがバウアーのヘルメットに当たり、ボールが逸れる間に一塁走者・伊藤光が三塁に到達。しかし、バウアーは走っている間に徐々に一塁線の内側へ入ってしまっていたため守備妨害が宣告されアウトに。伊藤も一塁に戻されてしまった。
なお、バウアーは6回にも同様にバントを行ったが、同じ轍を踏まないように露骨に外側を走っている。
また、2週間後に投稿されたYouTube動画にて、上記の西岡の件について言及があった。


海の向こうでも

試合日はいずれも日本時間で記載。

2019年10月30日 アストロズ対ナショナルズ(ワールドシリーズ第6戦・ミニッツメイドパーク)

2019年10月30日 アストロズ対ナショナルズ(ワールドシリーズ第6戦・ミニッツメイドパーク)
2-3で迎えた7回表、先頭・ゴームズが出塁し、1番・ターナーに打順が回る。
そしてターナーはボテボテの3塁線へのゴロを打つ。アストロズ投手・ピーコックが打球を処理して一塁に送球するが、ボールは誰がどう見ても線の内側を走っていたターナーの背中に直撃
当然守備妨害が宣告されるが、ナショナルズ・マルティネス監督はこれに猛抗議。相手投手が交代し*6、イニングが終わっても抗議し続けた監督はついに退場を言い渡されてしまった
なお、試合はこの後に追加点を挙げたナショナルズが2-7で快勝。ワールドシリーズ制覇に逆王手をかけた。

なお、ターナーの背番号は7で線犯当時の西岡の背番号と同じである。


余談だが、次の試合もナショナルズが勝利し球団史上初となるワールドシリーズ制覇を達成。これによりMLB史上初の完全外弁慶シリーズ*7が完成した。

2021年10月11日 ホワイトソックス対アストロズ(ア・リーグ地区シリーズ第3戦・ギャランティードレートフィールド)

2021年10月11日 ホワイトソックス対アストロズ(ア・リーグ地区シリーズ第3戦・ギャランティードレートフィールド)
6-6で迎えた4回裏、ホワイトソックスはティム・アンダーソン、ルイス・ロバート、ホセ・アブレイユの3連打で1点を勝ち越しなおも一三塁のチャンス。ここで4番のヤズマニ・グランダルが放った当たりは一塁へのゴロ。
一塁手のユリエスキ・グリエル*8は本塁突入を狙った三塁走者のロバートを刺そうと本塁へ送球したが、送球がファウルラインの内側を走っていたグランダルの左上腕部に当たり逸れてしまう
当然アストロズ側は抗議するがグランダルがいた地点が本塁・一塁間の本塁寄りの部分であったため守備妨害は認められず*9

試合はこの後ホワイトソックスが追加点を重ね12-6で勝利した。

2023年4月12日 KBO KIAタイガース対ハンファ・イーグルス(光州起亜チャンピオンズフィールド)

2023年4月12日 KBO KIAタイガース対ハンファ・イーグルス(光州起亜チャンピオンズフィールド)
KIAリードの2-0で迎えた9回表、ハンファの先頭・1番ノ・スグァンが初球をセーフティーバント、ホーム至近に転がりKIAの捕手ハン・スンテクから一塁手ファン・デインへ送球する際、スグァンと交錯する形で捕球が逸れてしまった。しかしスグァンが完全にスリーフットレーンのファールラインの内側を走ってしまっており、KIA側のチャレンジによるビデオ検証の結果、守備妨害によりアウトとなってしまった。
なお、その後ハンファは打者を一・二塁まで進めるものの、最後は外野フライでそのまま試合終了。守備妨害さえなければ犠牲フライになっていた事から痛恨の負けとなってしまった。

2022年6月14日 アストロズ対ナショナルズ(ミニッツメイドパーク)

2023年6月14日 アストロズ対ナショナルズ(ミニッツメイドパーク)
同点の9回裏アストロズの攻撃、一死満塁の場面で打者ジェイク・マイヤーズの打球はショートへのゴロ。遊撃手のCJ・エイブラムスはまず本塁へ送球、フォースアウトとなり併殺を狙った捕手のキーバート・ルイーズは一塁へ転送。これが悪送球となりアストロズがサヨナラ勝ちを収めた。ここでナショナルズのマルティネス監督はマイヤーズがファウルラインの内側を走っていたとして猛抗議するも認められずに試合は終了。
マルティネス監督はその後も怒りが収まらず、試合後の会見ではマイヤーズがファウルライン内側を走っていた「証拠写真」を提示した。


関連項目


*1 改正を挟んでおり通し番号は都度異なるので、調べる際は注意。なお2023年時点では同5.09(a)(11)に記載されている。
*2 かつては外房線と一緒に房総線として一体だったが、現在の内房線は房総西線、外房線は房総東線として分割されたのち現名称に。つまり、線の内と苗字に含まれる西つながりの二重の意味である。なお西線と東線は「さいせん」と「とうせん」と読む。
*3 さらに、この試合に敗戦したことで、阪神は自力CS進出がなくなった。なお広島
*4 さらに、この試合に敗戦したことで、ソフトバンクは自力優勝がなくなったどころか5位・西武とのゲーム差も3まで縮められてしまった。
*5 移籍後初登板を果たしたが先頭打者のグレゴリー・ポランコにストレートの四球を与えると右肘の異常を訴え降板。その半年後にトミー・ジョン手術を受けた。
*6 なお、これに関して岩村明憲は「交代した後の投手の集中力を切ることに成功した頭脳プレー」と評している。事実、交代したハリスはこの回、3番・レンドーンに被弾し、リードを広げられてしまうこととなった。
*7 NPBで日本シリーズが「完全外弁慶」になったことはなく、2011年の日本シリーズでは第6戦までビジターチームが勝利しており、これが「完全外弁慶」に最も近づいたシリーズである。なおその逆の「完全内弁慶シリーズ」はMLBでは1987・1991・2001年の3回、NPBでは奇しくも阪神が出場した2003年に記録されている。
*8 元DeNA。
*9 スリーフットレーンが設けられている一塁寄りの部分に置いてファウルラインの内側を走っている打者走者に当たった場合は守備妨害となるが、本塁寄りの部分においては故意がない限り妨害は認められない。