スレ111推薦作品レビュー

Last-modified: 2010-06-12 (土) 01:42:24

スレその111の>>387以降に出された、スレ住人の「一番面白かった作品」のレビューです。
スレの内容についてはこちら
SSさがすよ!のマイリストはこちら→111スレ 一番面白いと思った話まとめ

 
俺は激怒した  万年初心者氏

【作品集】嘘々話1  【タイトル】俺は激怒した   【書いた人】万年初心者 氏
【ジャンル】一発ネタ  【ポイント】1236829  【レート】7067.74
【あらすじ&感想】
 あらすじも何も、本文が45字しかない。
でも、タイトルをクリックしてこれを見たら吹くに違いないだろう。
東方嘘々話らしい、純粋な一発ネタ。
【総合評価】★★★☆☆(嘘々話のノリが好きなら是非)

しゃぶれよ  aho氏

【作品集】86  【タイトル】しゃぶれよ  【書いた人】aho 氏
【ポイント】13970  【レート】11.66
【あらすじ&感想】
 タイトルとは裏腹に、起伏少なめのほのぼのとした中編。
博麗神社にお腹を空かせたルーミアがやってきて、霊夢と他愛無い話を繰り広げる。
まるで子供のようなルーミアの描写にさっぱりとした霊夢の受け答えがとても幻想郷らしい。
構成は流石のaho氏と言ったところ。ヤマはないけれどオチはしっかりしている。
ちょっとSSを読みたい時にお勧めの作品。
【総合評価】★★★★☆(リラックスして読みたい作品)

八雲紫は嘆いた  過剰睡眠摂取症候群氏

【作品集】84  【タイトル】八雲紫は嘆いた  【書いた人】過剰睡眠摂取症候群 氏
【ポイント】3410  【レート】10.41
【あらすじ&感想】
 藍が急病で入院し、橙と二人きりとなった八雲家。
家事に関しては問題無いのだが、橙の紫に対する態度が余所余所しく……
 テンポ良くサクサク読めるギャグ作品。橙に振り回される紫が微笑ましい。
作者の言う通り、オチのまとまりが悪いと感じたけれど、
そこまで大きな違和感は抱かない。笑える良い話。
【総合評価】★★★☆☆(カリスマブレイクが好きなら4以上)

幻想 Paddy Field  地球人撲滅組合氏

(修正版)
【作品集】ジェネ34  【タイトル】幻想 Paddy Field 【書いた人】地球人撲滅組合 氏
【あらすじ】
幻想郷の田んぼ。
一見、普通の田のように見えるが、そこには米たちの壮絶な戦いがある。
普段は、穣子さましかお聞きになれないライス幻想郷へ、いざ、ご案内。  (冒頭部より引用)
【感想】
 登場人物はオリキャラである米たちのみで、会話主体。
読むのに躊躇ってしまうような設定だが、オリキャラに対する違和感は無く、
雑談を雑談らしく表現していて、すんなりと読むことができる。
 そしてオチ。これは笑えばいいのか泣けばいいのか……。
小粒だけどしっかり芯の詰まった作品。米だけに。
【総合評価】★★★★☆(一方椛は笑った)

B境界の突破者  胡椒中豆茶氏

【作品集】71  【タイトル】B境界の突破者  【書いた人】胡椒中豆茶 氏
【ポイント】48880  【レート】14.98
【あらすじ】
 香霖堂に紫が訪れる事が日常となっていたある日、
いつも通り甘いやり取りが続くと思いきや……
怒涛の展開の後に明かされる霖之助の趣味、紫の思い、そして飛び越えるB境界。
【感想】
 正直に言って、高得点の作品としては珍しく、人を選ぶ作品だと思う。
作者のノリに付いていければ砂糖漬けの新世界へ旅立てるが、
付いていけなければ意味不明な作品と捉えられてしまうだろう。
 香霖堂が舞台の作品らしい静かな書き出しが幻のように、
制御装置の壊れたロケットの如く、設定と展開が物凄い勢いですっ飛んで行く。
それでいて、しっかり手綱をとれている作者のセンスと構成力には脱帽。
 人類には早すぎるというのが適切だろうか。タイトル通り、色々と突き抜けた作品。
【総合評価】★★★★☆(良い経験になる。読んでないなら読むべし。)

美味しくて強くなる  ら氏

【作品集】59  【タイトル】美味しくて強くなる  【書いた人】ら 氏
【ポイント】15720  【レート】12.85
【あらすじ】
 異変の落とし前として天人をタコ殴りにしようと思ったら、あっさり返り討ちにされた人妖。
天子曰く、秘密は桃だということで口にしてみるもひどく不味い。
そんなこんなで一日が終わったが、それが悲劇、いや喜劇の始まりだった……
【感想】
 嗚呼、いつの間にか東方Projectはメサ○ヤブランドになってしまったようです。
霊夢のツッコミに追いつかない怒涛の脳筋ボケラッシュ。
 そのうえ、食事あり、来訪者あり、風呂あり、事件あり、オマケに衝撃のラストと、
ストーリー展開がしっかりしているため、ギャグシーンにマンネリ感が出ない。
さらに、ら氏らしいセンスあるメタ会話がギャグを一層引き立たせている。
公共の場で見る事をお勧めしない、笑う事必至の良作。
【総合評価】★★★★★(腹筋が強くなる)

小児用ナイトメア  冬扇氏

【作品集】32  【タイトル】小児用ナイトメア  【書いた人】冬扇 氏
【ポイント】25180(後編)  【レート】12.45(後編)
【あらすじ】
 今日は十月の晦日ハロウィンだ。
この日は悪魔の謝肉祭。どんな略取行為も許される素晴らしい日。
そして館主の思い付きから紅魔館メンバーは幻想郷の空へ舞い上がる。
【感想】
 キャラからストーリーまで何もかもが、ギャグという魔砲で粉微塵に吹き飛んだ作品。
通った後にはペンペン草一本も残らないような、暴走っぷり見せる紅魔館メンバー(特にパチュリー)に、
冬扇氏ならではの語彙とセンスに満ちたメタ台詞が、これでもかと言わんばかりに盛り込まれている。
長さを忘れて一気に読めてしまうギャグ作品。
【総合評価】★★★★★(笑う事間違いなし)

いくとせいくとていくはいく  蛸擬氏

【作品集】111  【タイトル】いくとせいくとていくはいく  【書いた人】蛸擬 氏
【ポイント】9210  【レート】13.68
【あらすじ】
 天人の五衰により死が近い天子。床に伏した彼女は衣玖を呼び、こう願う。
「衣玖には私を、待っていて欲しいの。」
続けてこう言う、「天の盤石と言う巨岩を百年に一度羽衣で一撫で、それで岩が磨り減る頃に帰ってくる」と。
それから、永江衣玖の幾劫に亘る天子を待つ日々が始まった。
【感想】
 少し硬く淡々とした描写が美しい。作中の時間経過は物凄い速さで進むが、
読んでいる側も時間を忘れてしまうだろう。綺麗で完成度の高い作品。
 特筆すべきが最後の3文。自分はこれから、この文章を
「創想話で一番印象に残ったシーン」に推したいと思う。
【総合評価】★★★★★(戦前の短編小説を読んだ気分になりました)

11%ハクレイガール  胡椒中豆茶氏

【作品集】112  【タイトル】11%ハクレイガール  【書いた人】胡椒中豆茶 氏
【ポイント】16490  【レート】15.15
【あらすじ】
 御阿礼の子は寿命が短い。九回目となる自分は慣れてしまったが、自分を生んだ家族はそうでない。
短命である事を運命付けられた子を持った親が、動揺しなかった確率は0%。
 しかし、九人中たった一人の父親だけが取った行動がある。確率で言えば、だいたい11%の出来事だ。
【感想】
 シリアスな運び出しから壊れギャグに突き落とすという、ジェットコースターのような展開は相変わらず。
突っ込みどころ満載の文章を、突っ込む暇も無い勢いの展開で読まされる。
 笑いと感動が核融合を起こして猛烈なエネルギーを発している作品。
そのエネルギーに呑まれるか、それともブレーカーが落ちてしまうか、それはあなた次第。
【総合評価】★★★★★(圧倒されました)

レミリア様は本当に悪のカリスマなお方です。  幻想と空想の混ぜ人氏

【作品集】80  【タイトル】レミリア様は本当に悪のカリスマなお方です。  【書いた人】幻想と空想の混ぜ人 氏
【ポイント】25320  【レート】12.77
【あらすじ】
 「かつての敗北から幾数年……とうとう私達に反逆の時が訪れた!」
幻想郷を征服すべく悪の帝王レミリア・スカーレットは、声高らかに叫ぶ。
そして悪の帝王は外へ繰り出す。麦藁帽子を被り、紅魔の湖のゴミ拾いに……
【感想】
 全体でみると長いが、連続したストーリーの短編集であるため。サクッと読む事が出来る。
ジョーク作品でありながら、思わず涙腺が緩むエピソードも数多く含まれている。
 血も涙もない非道な態度でいながら、やっていることは優しく部下思いなこのレミィは究極のツンデレ。
こんな素晴らしい主なら付いて行かざるをえない。笑いあり涙ありの良作。
【総合評価】★★★★☆(カリスマがストップ高)

絶対に驚かせてはいけない幻想郷  goma氏

【作品集】102  【タイトル】絶対に驚かせてはいけない幻想郷  【書いた人】goma 氏
【ポイント】4980  【レート】11.78
【あらすじ】
 人を驚かせることに失敗し続け、お腹を空かせっぱなしだった小傘。
そこに現れた人間の子供の群れ。絶好のチャンスと言わんばかりに小傘は驚かしに掛かる。
そして見事に彼らを驚かせることに成功したのだが……
【感想】
 「感情を食べる」という食事概念を上手く調理した作品。
テンポの良いギャグ作品だが、笑うと同時に感心してしまった。
感情が連鎖していく様がそれらしく、質の良いコントを見ているようだった。
【総合評価】★★★★☆(お薦めのギャグ作品)

時には昔の話を  aho氏

【作品集】60~62  【タイトル】時には昔の話を (その1~5)  【書いた人】aho 氏
【ポイント】49190(その5)  【レート】13.82(その5)
【あらすじ】
 霊夢が起きると、そこは1万2千年後の幻想郷だった。
変わった所は変わり、変化して無い所は変化していない、遥か未来の幻想郷を
いつも通り暢気な態度で回って、霊夢は自分が物凄く尊敬されていて、
中には再会に感極まり泣いている者さえいるのに気付く。
 湿っぽい態度が嫌いな霊夢は嫌がるけれど、段々と周りの空気に呑まれていき……
【感想】
 aho氏の3作目にして、最も勢いのある作品。
独自の設定をありったけ詰め込んだその文章は、
構成や語彙、技巧よりも、勢いを重視して書いたような印象を受ける。
それでも、読者を引き込み、心を揺さぶるのは、その勢いある文章によって
描かれた世界と人物が、非常に幻想郷らしいからではないだろうか。
 この作品を誰よりも読んで欲しいのは、最近のaho氏の作品を読んでいるのに未読の人である。
この作品は以降の作品の世界観の基礎となっている作品でもある。
この作品を読んでから以降の作品を読むと、捉え方が一変する。是非読んでほしい。
【総合評価】★★★★★(王道中の王道。)

八雲紫は此処にいる  葉月ヴァンホーテン氏

【作品集】93  【タイトル】八雲紫は此処にいる  【書いた人】葉月ヴァンホーテン 氏
【ポイント】14860  【レート】12.89
【あらすじ】
 とある日の、幻想郷を見回りに来た「幻想郷の管理者」のお話。
【感想】
 幻想郷の管理者と、住民たちの会話によって構成されている作品。
全体に流れる動静のはっきりした幻想郷らしい空気の表現と、
巧妙に張られた伏線が見事。二度読みすると背景がガラッと変わって見える。
綺麗な文章で纏められた短編。
【総合評価】★★★★★(レビュアーは予測できませんでした)

おぺれーしょん・かうんとだうん  日間氏

(修正版)
【作品集】21~24  【タイトル】おぺれーしょん・かうんとだうん (全5話)  【書いた人】日間 氏
【ポイント】12870(あふたー・ぜろ)  【レート】12.34(あふたー・ぜろ)
【あらすじ】
 ロケットが完成し、月への打ち上げ準備に入る紅魔館、それを阻止しようとする永遠亭。
紅魔の湖にて二つの勢力が衝突し、大規模な戦闘が始まろうとしていた。
【感想】
 東方Projectは弾幕STGと弾幕格闘のゲームであるため、
東方SSでバトル物というと、どうしても一対一か一対多が主流となっている。
そのため、本作品のように部隊単位で戦術的な戦闘をするSSはかなり希少である。
 原作ではまず見られない司令官的な動きをする咲夜や鈴仙は必見だが、
霊夢、文など当事者以外の東方キャラや、妖精メイドや妖怪兎などのオリキャラ達も
非常に生き生きと書かれており、どのキャラからも目が離せない。
もちろん、東方らしく一騎当千のエースも次々登場し、展開から眼を離せない。
 戦況の行方はどうなるか、陣営の次の策略は何か、ロケット打ち上げは成功するのか、
逆転に次ぐ逆転で手に汗握る燃える展開。約30分間の戦闘が余すことなく詰め込まれている。
2006年の作品であるため儚月抄との矛盾は多数あるものの、それを全く気しない程の熱い熱い空戦SS。
多対多のバトルものの魅力を最大限に引き出している作品。
【総合評価】★★★★★(エスコン好きなら小ネタも必見)

スカーレットに恋して  ulea氏

(修正版)
【作品集】40~42  【タイトル】スカーレットに恋して (全6話)  【書いた人】ulea 氏
【ポイント】5070(最終話)  【レート】12.13(最終話)
【あらすじ】
 「咲夜が、近々死ぬらしい。」そういう運命を感じ取ったレミリア。
その方法を模索しているうちに咲夜が出来損ないの薬で寿命を延ばしていることを知る。
何とか咲夜が死ぬことを回避しようとするレミリアだったが、
竹林の勢力や慧音との衝突、行動が読めない咲夜の動きから順調にはいかず……
【感想】
 ulea氏のデビュー作。レミリアと咲夜、寿命の長い吸血鬼と短い従者のいつか来る別れというテーマを扱った作品。
それだけだと陳腐なテーマだけれども、その過程に謎解きや戦闘があり、しっかり緩急の付いた展開となっている。
 「シンペイ蛙」や「ブライダル幻想郷」など、以降のulea氏にみられるような、
精緻な風景描写や登場人物達の悩み・葛藤の濃密な描写、そして激昂し自分の思いのすべてを叩き付ける長い独白は
この作品の時から既に確立されており、物語をより一層引き立たせている。
 逆に言ってしまえば、主要な登場人物は自分に素直になれない不器用な人物か、
歪みのある人物として描かれているため、そのような描写が苦手な人は肌に合わないだろう。
 全話合計すると504KBとなる大長編だが、二転三転する物語の展開や、
息つく暇もなくぶつけあう登場人物達の感情に圧倒され、長さを忘れて読み通してしまう。
そして、それだけに全てが終わった後に待っていた、最後の場面が非常に切ない。
ハッピーエンドでもバッドエンドでもない、だからこそ非常に悲しい話。SSで泣きたい人は是非。
【総合評価】★★★★★(胸が締め付けられるシリアスストーリー)

Fragment  過酸化水素ストリキニーネ氏

(修正版)
【作品集】個人サイト(作品集64→削除)  【タイトル】Fragment
【書いた人】過酸化水素ストリキニーネ 氏
【著者紹介】
 繊細な描写と一人称が持ち味の作家。スカーレット姉妹・古明地姉妹が主人公の作品が多い。
非常にメリハリのついた作風の持ち主で、甘々な関係の姉妹と報われない姉妹の両方を描くことが出来る。
甘い話は砂糖を吐くと表現したくなるほど甘く、暗い話は心に突き刺さるほど暗い。
伝わらない思いというものを巧みに表現することが出来るため、
シリアスな話を読んだ時の心に残るもどかしさは、他の作品とは比較にならない。
 諸般の事情で、過去の作品を一度削除し創想話から退いていたが、
第8回SSこんぺより投稿を再開している。
【あらすじ】
 ある冬の日、いつも通りの、何も変わらない地霊殿の日常。でも本当はいつもとは違う。
今日は私の姉の、古明地さとりの誕生日なのだ。
【感想】
 互いの事を思っている、でもそれ故に思いがすれ違い続ける地霊殿の物語。
設定が重い、文章が重い。描写力が高く、心情・風景の描写がありありと伝わってくるからこそ重い。
誰でもいいからあと一歩踏み出せば幸せになれるのに、
それが叶うことなく、お互いの思いが伝わらない古明地姉妹を見ていると非常にもどかしい。
 特に胸が締め付けられるのは終盤のこいしのシーン。
目に焼きつく、心が締め付けられるというのはこのような文章を言う。
【総合評価】★★★★★(古明地姉妹珠玉の逸品)

私、マエリベリー=ハーン!  緩衝材氏

【作品集】99  【タイトル】私、マエリベリー=ハーン!  【書いた人】緩衝材 氏
【ポイント】1840  【レート】6.22
【あらすじ】
 Fラン大学生マエリベリー・ハーンの華麗なる大学生活!
【感想】
 バカ大学生としてメリーを描いている暴走系壊れ系ギャグ作品。
 点数・レートを見ての通り、あまり芳しい評価を受けていないのは、
キャラ崩壊するだけの中身ある展開がなく、状況説明もないまま短いシーンが連続しているからだろう。
キャラの描写も原作・二次創作での扱いと大きく乖離しており、
ギャグも汚い言葉を使用した物であると、かなり人を選ぶ内容となっている。
 それでも笑った人、推薦する人がいて、しかも創想話では名の知られた方が高得点を付けている。
それは、この作品に内容も展開も設定も吹き飛ばしてしまうような猛烈な勢いを感じたからだろう。
だからこそ、自分は作者の勢いに構成と描写が完全についていっていない事を残念に思う。
確かに笑える作品だった。でも笑いよりも先に不完全燃焼による冷めた笑いが出てしまった作品。
【総合評価】★★☆☆☆(空回り注意)

禁断の恋 renifiru氏

【作品集】87  【タイトル】禁断の恋  【書いた人】renifiru 氏
【ポイント】12850  【レート】14.41
【あらすじ】
 一目見た瞬間に、あなたに恋をした   (本文より引用)
【感想】
 タイトルとタグと序盤で読者を引き付け、
最後の一文で全部をひっくり返す、一発ネタのお手本のような作品。
短すぎず長すぎず、ちょうど良い長さであるのも良い。
一発ネタは総じて好きじゃないという人でなければ読んでいて損は無い。
【総合評価】★★★☆☆(百合というより……)

俺もいるぜ!  喚く狂人氏

【作品集】108  【タイトル】俺もいるぜ!  【書いた人】喚く狂人 氏
【ポイント】5810  【レート】12.68
【あらすじ】
 アリスが開発した新弾幕に挑戦する魔理沙。だが、それはアリスの巧妙な罠だった。
【感想】
 幻想と空想の混ぜ人氏の投稿不定期化を残念に思い制作されたSS。
その動機、及び氏の作風から分かる通り、オチに全てを込めた一発ネタである。
一発ネタとしての完成度は高く、自分は元ネタを持っていないけれど笑ってしまった。
【総合評価】★★★☆☆(世代が違うとサッパリかも)

友達のつくりかたとQED  無在氏

【作品集】66~67  【タイトル】友達のつくりかたとQED (全5話)  【書いた人】無在 氏
【ポイント】6500  【レート】12.55
【あらすじ】
 地下室に閉じ込められた悪魔の妹、フランドール・スカーレット。
ある日、姉のレミリアはフランドールの元を訪れ、こう切りだす
「さあ、友達百人つくりましょう」
彼女の手には白い札。語られる事の無かった紅霧異変前夜の物語。
【感想】
 優しい思いに包まれた紅魔館のお話。妹思いのレミリア、親友であるが故にレミリアを思うパチュリー、
そしてフランドールに対する、紅魔館メンバーの考えと苦悩が交り合い、紅魔郷EXへと進んでいく。
 独自設定と原作台詞との混ぜ方が絶妙で、公式だと言われても違和感のない遣り取りは見事。
 初めてのスペルカードを使った異変という事を巧みに解釈し、
スペルカード制初導入の裏にあった目的や苦労を、互いを思う紅魔館メンバーにより描いた心温まる作品。
【総合評価】★★★★☆(紅魔館好きなら必読)

フランお母さまの悲喜交々  無在氏

【作品集】68  【タイトル】フランお母さまの悲喜交々 (全5話)  【書いた人】無在 氏
【ポイント】4460(第5話)  【レート】12.12(第5話)
【あらすじ】
 ドタバタと賑やかなある日の紅魔館に、突然吸血鬼の少女が現れる。
その少女はなんと、未来から来たレミリアとフランドールの第一子だと言って……
【感想】
 前作の「友達のつくりかたとQED」とは打って変わって、ラブコメ基調でオリキャラが重要キャラな作品。
だが、善人ばかりの愛に溢れた紅魔館を描く、という作者のスタンスは相変わらず。
 前作のテーマが姉妹なら、今回のテーマは家族。
親を思うが故の子の行動と、子を思うが故の親の行動は読んでいて心が温まる。
 軽快で読みやすい文章で書かれた感動長編。
【総合評価】★★★★☆(紅魔館好きならオススメ。オリキャラ好きなら★5)

マリア・スカーレット(キャラレビュー)

【キャラクター】マリア・スカーレット
【書いた人】無在 氏
【登場作品】フランお母さまの悲喜交々(作品集68)
【キャラクター像】
 なんとレミリアとフランの子供。
レミリアの外観にフランの羽を持つツインテールの吸血鬼。
 55年後に生まれ、15歳の時に紫の隙間により過去の紅魔館へやって来る。
実は、70年後からこの時代に来たのには深い理由があるのだが……
【名言】
「私はお母さまたちの傍にいてもいいの?」
親思いの優しい子である。

嘘つき紅魔郷~泣きレミリアの為の紅霧異変~  にゃお氏

【作品集】67  【タイトル】嘘つき紅魔郷~泣きレミリアの為の紅霧異変~  【書いた人】にゃお 氏
【ポイント】23800  【レート】12.74
【あらすじ】
 紅魔異変が起きた直後の紅魔館。館主であるレミリア・スカーレットの心中は穏やかではなかった。
理由は彼女の身体能力。何故か誰にも知られていないが、実は大玉一つ出せないくらい弱いのである。
【感想】
 自分は平和に暮らしたいだけなのに、コトがどんどん大事になってくというコメディ作品。
 カリスマがどこかに飛んで行ってしまったへたれみりゃの作品は数あれど、
身体能力がヘタレで、それを卓越したハッタリで乗り越えていくレミリアは珍しい。
そんな超設定なのに、遣り取りが原作と丸々一緒というのが、自分が一番笑ったシーンだった。
 黄昏作品はどうなるなど、ツッコミを入れる事はいくらでも出来るけれど、それは不粋という物だろう。
【総合評価】★★★★★(この発想は無かった)

紅の霧雨  新角氏

【作品集】ジェネ4  【タイトル】紅の霧雨  【書いた人】新角 氏
【あらすじ】
 紅白も白黒も亡くなってしまった未来の幻想郷、例年通りなら春なのに、厳しい冬が続いていた。
異変を解決しようと、未だ現役のメイド長である咲夜が出かける準備をするが……
【感想】
 数多いフランと魔理沙の交流を扱った作品の中でも原点に当たるような作品。
「例え居なくなっても、心は引き継がれている」
書いていて恥ずかしくなるような台詞だけれど、この作品ではそれを前面に押し出し、
短いながらも心揺さぶられる作品に仕上がっている。
【総合評価】★★★★☆(素晴らしきフラマリ)

巫女神楽 (掌編)  反魂氏

【作品集】66  【タイトル】巫女神楽 (掌編)  【書いた人】反魂 氏
【ポイント】1550  【レート】10.86
【あらすじ】
 新年を控えた大晦日の夜、篝火が燃える祭殿で巫女と風祝が舞を奉納する。
【感想】
 化粧をし、真面目に舞う霊夢と早苗は非常に新鮮。
それに冬の静かな境内の静かで美しい描写が加わり、非常に幻想的な作品となっている。
タイトルに掌編とあるように、長さはとても短く、さらっと読めてしまう。
【総合評価】★★★★☆(もっと評価されるべき)

お疲れババァ!  aho氏

(修正版)
【作品集】59  【タイトル】お疲れババァ!  【書いた人】aho 氏
【ポイント】32360  【レート】12.15
【あらすじ】
 「お疲れババァ!」
 場の空気が固まるのを全く気に掛けず、チルノ、橙はそう言って紫に花束を渡す。
今日は敬老の日、きているこの世界を築き上げてきたお年寄りの方々に、敬意と感謝を捧げる日である。
【感想】
 1万点越えが5作という強豪ひしめく作品集59で、頭角を現したaho氏の記念すべきデビュー作。
ギャグとシリアスのバランスのとれた展開というaho氏の作風、
東方メンバーと密接な関係がある幻想郷観はこの頃から健在。
序盤の青筋を立てつつ怒りをこらえる紫も、後半の己の経験を静かに語る紫も非常にそれらしく、魅力にあふれている。
ギャグとほのぼのと感動を一つの作品に詰め込んだ、欲張りでいて完成度の高い作品。
【総合評価】★★★★★(文句なしの良作)

貴方のレミリアは笑っていますか?  幻想と空想の混ぜ人氏

【作品集】56  【タイトル】貴方のレミリアは笑っていますか?  【書いた人】幻想と空想の混ぜ人 氏
【ポイント】9190  【レート】11.59
【あらすじ】
 戦いに敗れた霊夢が落ちてゆく。それを受け止めた紅魔館の館主は手を下す。
もうこれで何度目だろうか、私はいつまで霊夢を殺し続ければいいのだろうか。
【感想】
 東方紅魔郷をボス視点から見た作品。あくまで紅魔郷であり、紅霧異変でない事が重要なポイントである。
紅魔郷における霊夢とは何なのか、Easyでレミリアまで到達できない理由は何か。
それらが、苦悩するレミリアと共にしっかりと描写されている。
STGの主人公ということに着目し、霊夢に対する新しい解釈を投げかけた作品。
読んでいてハッとなる。そして紅魔郷をクリアしていない事を申し訳なく思うだろう。
【総合評価】★★★★☆(ちなみに自分は未クリア……)

青空交響曲  ふじいつき(岩山更夜)氏

【作品集】79  【タイトル】青空交響曲  【書いた人】ふじいつき(岩山更夜) 氏
【ポイント】9000  【レート】13.18
【あらすじ】
 ある日フランドールは夢を見た。青空の下、姉と共に花畑で無邪気に遊ぶ夢。
不可能に思える、だからこそ輝いて見えて欲しくなる。
でも、不可能は行動次第で可能になるかもしれない。そう思い、フランは動き出す。
【感想】
 ノベライズ小説のように、生き生きとした描写の作品。
綺麗な情景描写、アクティブに動き回る紅魔館の住人達、
そして起承転結のしっかりしたストーリーにより、長さを忘れて一気に読んでしまう。
優しく温かな紅魔館で、遥かな夢に向けて大きな一歩を踏み出す話。
読んでいて元気になる。
【総合評価】★★★★★(ちなみに自分は未クリア……)

おい、そこのシューター! そう、お前だよお前! ちょっと話があるんだ  飛び入り魚氏

【作品集】90  【タイトル】おい、そこのシューター! そう、お前だよお前! ちょっと話があるんだ
【書いた人】飛び入り魚 氏  【ポイント】7030  【レート】12.38
【あらすじ】
 名無しの妖精が発した自機狙い弾、見惚れた霊夢に飛び込もうとするも……
【感想】
 この発想は無かった。自機狙い弾を主人公とした話。
某シューティングゲームの相棒のように、まっすぐな生き方を見せつける自機狙い弾は実にシブい。
そして、あとがきが本編の流れを一気に変えてしまう。思わず笑ってしまった。
発想、オチ、文章、全てが引き締まった、完成度の高い作品。
【総合評価】★★★★☆(文さん何やってるんすかw)

メイド冥土逝き記念式典始末記  白石 薬子 氏

【作品集】60  【タイトル】メイド冥土逝き記念式典始末記  【書いた人】白石 薬子 氏
【ポイント】14560  【レート】12.00
【あらすじ】
 その日の紅魔館は深い悲しみに満ちていた。紅魔館を訪れる者達も皆、表情は明るくない。
そして、厳かな空気の中で、紅魔館らしい十六夜咲夜の葬儀が執り行われる。
【感想】
 構成の完成度は創想話でも一二を争うであろう作品。
葬式の弔問客である東方のキャラクター達の描写が非常に濃く、それでいて違和感が無い。
 個性の際立った登場人物の、長い台詞に回想シーン、不自然な振る舞いは
序盤から中盤に掛けて読者を大いに不安がらせる。
そして、終盤で一気に伏線が回収され、納得する。
それはまるでミステリー小説を読んでいるかのよう。
幻想郷のキャラクターたちの個性が十二分に描かれている作品。
【総合評価】★★★★★(後半のちゅっちゅラッシュも必見)

次なる歴史へ  凡用人型兵器氏

【作品集】8  【タイトル】次なる歴史へ  【書いた人】凡用人型兵器 氏
【ポイント】23180  【レート】11.21
【あらすじ】
 人里に住むある男が記した日記。そこに込められた男の全人生の物語。
【感想】
 凡用人型兵器氏のデビュー作にして最高得点作品。
 無邪気な子供時代、将来について悩む思春期、娘と衝突する壮年期、
時の流れを感じる中年期、自分の人生を振り返る老年期、
人生の各段階がそれに応じて変化する文体で見事に表現されている。
 落ち着いた文章の中に、子供のころの思い出から人生の終焉までが凝集されている。
 これぞ歴史。とある思いを貫いた人間の、その一生の物語。
【総合評価】★★★★★(人里モノの傑作)

異説妖々夢  ほととぎす氏

【作品集】個人サイト(作品集8・22→削除)  【タイトル】異説妖々夢 (全6作)
【書いた人】ほととぎす 氏
【あらすじ】
 西行寺家には忠実な剣術指南役兼、庭師がいた。
奥方亡き後も当主に仕え、主とその一人娘を何よりも大事にした庭師がいた。
その名は魂魄妖忌。この話は、西行寺に一生を捧げた一途な男の半生の物語である。
【感想】
 作品は「西行寺」、「魂魄」の2つに大きく分かれており、ストーリーも大きく異なっている。
前者では、幽々子が亡霊となるまで、後者は妖忌が白玉楼から姿を消すまでを描いた作品である。
 作品名に「異説」とあるように、作者独自の解釈に基づき、白玉楼の設定が為されている。
文花帖・求聞史紀発売前ということもあり、原作とは大きく異なった設定であるが、
白玉楼らしさが十分出ていて、読んでいて違和感を感じる事は無い。
 そして、この作品の一番の特色は「幽々子が亡霊となっただけでは終わらない」ということ。
「西行寺」の3作だけならば、完成度は高いが、設定としてありがちな幽々子の過去話だろう。
しかし、この作品はそれで終わらず、西行寺家の終焉を見届けたよ妖忌が消えるまでを描いている。
壮大なストーリーの大作。涙腺が緩む事間違いないだろう。
 また、この作品はnagare氏によりFLASHで映像化された作品でもある。
(それどころか、今や東方老舗サイトであるnagare氏のサイトを東方メインにした作品である。)
氏のサイトで視聴する事が出来るので、興味を持たれたならば是非。
【総合評価】★★★★★(これほど一途な妖忌は見た事が無い)

【著者紹介】
 創想話初期に活躍した作家。シリアスからギャグまで手掛けた。
独自の世界観のもとで展開する、東方キャラの過去話は必見。
 残念ながら、創想話投稿作品は異説妖々夢を除いて、サイトから全て削除されている。
創想話から退いた後も「東方七星剣」「六花」など同人誌を中心に創作を続けていたが、
自身の仕事が多忙となったことから、2009年を持って創作活動を終了する事を宣言した。

アカルイセカイ  so氏

【作品集】13  【タイトル】アカルイセカイ  【書いた人】so 氏
【ポイント】9250  【レート】10.25
【あらすじ】
 妖夢と幽々子に、永琳の口から残酷な一言が告げられる。
「魂魄 妖夢は少なくとも3日以内に光を失うわ。回復する見込みは今のところないわ」
【感想】
 圧倒される作品。衝撃の出だしから、読者を離さずに最後まで巻き込んでいく。
三人称から妖夢目線、幽々子目線へと視点が変化しているため、
作品の中心に自分がいる様な感覚で読み進んでいくことになる。
そのため、この後妖夢はどうなってしまうのか、主従関係は維持できるのか、
当事者である妖夢と同様に、読者も今後の展開が読めず、ハラハラする。
 ただ残念なのは、中盤までの流れと比べて、終盤の流れが急であり、
自分は何度か噛み砕いて読まないと展開が分からなかった事である。
【総合評価】★★★★☆(二次創作を上手く生かした作品)

虚空の門番  天馬流星氏

【作品集】個人サイト(作品集9→削除)  【タイトル】虚空の門番
【書いた人】天馬流星 氏
【あらすじ】
 紅美鈴の朝は早い。空が白んで来る頃には起き、館の警備を始める。
【感想】
 ネタバレなので詳細は伏せるが、認知が狂った描写という物がリアルに記されている。
筆者が違和感を感じたのは序盤の終わりくらいだが、
読み返してみると、最初の数段落で既に綻びが描かれている事に気付いた。
 紅魔館が変わっても美鈴は変わらない。変わる事が出来ない。
それだからこそ読んでいて痛々しい。短編だが、心に容赦なく突き刺さるシリアス作品。
【総合評価】★★★★☆(ナイフのように鋭いシリアス短編)

【著者紹介】
 創想話初期に活躍した作家。作品集6でデビューし、紅魔館を中心にシリアスからギャグまで手掛けた。
度々スレで話題に上る、作品の削除が話題となり遺憾の書き込みで溢れる、削除後も話題に上るなど、
最も最初に、創想話のベテランらしい扱いを受けた人だった。
また、SSだけでなくイラストも描く事が出来た方で、東方最萌トーナメントや同人誌などでイラストを描いていた。
 残念ながら、氏に対してはその活動全てを過去形で書く事しかできない。
2007年、突如として、氏の人生は終焉を迎えてしまった。
現在は、親族の方の御厚意により、制作された作品とイラストがサイトで再公開されている。

リヴァイアサン  A-氏

【作品集】62  【タイトル】リヴァイアサン  【書いた人】A- 氏
【ポイント】8830  【レート】11.50
【あらすじ】
 間欠泉騒動が終わり、地上と地底の往来は解禁された。
しかし、地上と地底の溝は埋まる事無く、未だ開いたまま。
普通の魔法使いはそれを打開しようと地底へ行くが……
【感想】
 地底に追いやられるには理由がある。そう簡単に関係は改善しない。
そのような、地底の妖怪に対して考え得る、暗い可能性を突き詰めていった作品。
 パルスィの能力の解釈とキャラの描写が見事。
二次創作でありがちな鬱々しいパルスィでなく、笑いながら嫉妬を操り、
人間を破滅に導いていく様は実に妖怪らしい。
【総合評価】★★★★☆(ダーク好きなら★5)

たいせつなうた。  眼帯兎氏

【作品集】個人サイト(作品集32→削除)  【タイトル】たいせつなうた。 (全3話)
【書いた人】眼帯兎 氏
【あらすじ】
 嵐に巻き込まれ、羽を怪我してしまったミスティア。
万事休すかと思われたが、そこで人間の青年に出会う。
【感想】
 一途なミスティアが、思い人と会うために幻想郷の大妖怪に立ち向かう光景は
最近の作品では少なく、ある人は懐かしく、ある人は新鮮に感じるだろう。
目まぐるしく変化する風景で鮮やかに描写された、甘く切ない作品。
 なお、続編となる「たいせつなうた。-エクストラ-」は本作同様作者サイトで閲覧可能。
また、加筆修正し、同人誌化された作品が2009夏コミで頒布されている。
【総合評価】★★★★☆(ストーリーが王道だが素晴らしい)

【著者紹介】
 創想話作品集30から42まで、プチ創想話7から25まで活躍していた作家。
ほのぼので甘い作品が多いが、シリアスな作品も手掛けている。
 諸般の事情から、創想話から撤退。以後は自サイトで執筆活動を行っている。

門番になった日  西色氏

【作品集】25  【タイトル】門番になった日  【書いた人】西色 氏
【ポイント】23630  【レート】11.80
【あらすじ】
 「とりあえず、貴女には門番を辞めてもらうわ」
メイド長が発した美鈴の心を粉砕する一言は、解雇ではなく異動だった。
 そして、美鈴はフランドールの護衛という大役を頂くことになる。
【感想】
 暗くもなければヘタレでもない、ましてや非常識人の溜まり場でも無い、
本作のようなピシッと引き締まった紅魔館は、原作でも中々描かれなくなってしまったと思う。
そして何よりも、褒め言葉として中国という呼び名が受け入れられたのが新鮮。
 勢いある文章で表現されているため、
キャラクターが漫画のように動き回る姿を容易に思い浮かべる事が出来る。
 衝撃的な冒頭、妹様との出会い、外出、スペルカード戦などなど、
内容も盛りだくさんで、長編であることを忘れて一気に読んでしまった。
フランドールと美鈴による、素晴らしい紅魔館作品。
【総合評価】★★★★★(文句なし)

あの星には会いたい人がいるのさ。  shinsokku氏

【作品集】25  【タイトル】あの星には会いたい人がいるのさ。  【書いた人】shinsokku 氏
【ポイント】6130  【レート】11.95
【あらすじ】
 学校をサボり、浜辺で砂の塔を作っていたマトイ。
ある日、彼女の前に轟音と共に金属塊が降ってきて、
中から月の兎を名乗る、変な奴が出てきた。
【感想】
 これは人を物凄く選ぶ作品だと思う。
世界観もオリキャラも、他の作品では見られないような設定の話である。
特に、オリキャラのマトイは奇天烈と言わざるを得ない性格であり、
作品を楽しめるかどうかは、この猛烈なテンションのオリキャラと馴染めるか否かに掛かっている。
さらに、世界設定もオリジナル要素が強く、そのうえマトイの口から語られるため、
最初に読んだ時は何が何だか分からなかった。
 ただ、この作品はそれらを許容してしまうほどの勢いがある。自分はただただ圧倒された。
良くも悪くも非常に濃い作品だが、何も言わずに最後まで読んでみて欲しい。
【総合評価】★★★★☆(これだけは言える。読まないのは勿体無い。)

桃源の地  夢月みぞれ氏

【作品集】106  【タイトル】桃源の地  【書いた人】夢月みぞれ 氏
【ポイント】5320  【レート】13.20
【あらすじ】
 紫から唐突に幻想郷の管理を引き継ぐと言われた藍。
驚きを隠せないまま、外界の人間を幻想郷へ引き入れる作業を始めるが……
【感想】
 ほのぼの系な話を連想させるタイトルとは裏腹に、
幻想郷のシステムと、その管理の裏側を綴ったシリアスな作品。
淡々としている文章による、細切れの場面演出という、ミステリー作品的な要素もあり、
中盤までは物語の展開が読めずに、読者を不安にさせる。
 それ故に、全てが明かされる終盤は、重荷を降ろした時のような脱力感を味わう。
重厚なテーマを綺麗な文章で描いた作品。中編だが読み応え抜群である。
【総合評価】★★★★☆(綺麗だけどビターな作品。シリアス好きなら★5)

お空の愛した葬式  八重結界氏

【作品集】109  【タイトル】お空の愛した葬式  【書いた人】八重結界 氏
【ポイント】11160  【レート】12.78
【あらすじ】
 葬式で大勢の妖怪が泣いていた。死んだのは霊烏路空だそうだ。
どういうことだ。棺の中は空っぽで、私はまだ生きているのに。
【感想】
 八重結界氏のシリアス短編。読みやすい文章のもと、読めない展開で物語は進む。
何故棺は空なのか、死んだのは本当に空なのか、それなら「私」は誰なのか、
それらは物語の終盤、八重結界氏らしい独創性のある解釈により明かされる。
解明のシーンは理路整然としていて、まるで京極作品の憑き物落としのよう。
一度読んだらもう一度読み返す事をお勧めする、緻密な構成の作品。
【総合評価】★★★★★(この展開は読めなかった)

小野塚小町の越冬戦記  東雲氏

【作品集】27  【タイトル】小野塚小町の越冬戦記(全3作)  【書いた人】東雲 氏
【ポイント】61920(後)  【レート】14.47(後)
【あらすじ】
 雪かきをサボった結果、家が潰れてしまった小町。
考えた結果、白玉楼に居候する事にする。
【感想】
 「今更越冬戦記のレビューするのか」、おすすめ作品のレビューを始めた時にそう返された。
それもそのはず。ポイント61920点、4年もの間創想話の得点1位に君臨し続けている作品である。
 しかし、この作品はそのような評価をされて然るべき作品だと読んで改めて感じた。
文章は流れるようで読みやすく、物語の展開も起承転結がはっきりしている。
そのうえ、サブイベントもたくさん詰まっていて、長編にも拘らず読者を全く飽きさせない。
 まるで少年漫画をそのままSSにして読んでいるかのような、メリハリと勢いの付いた作品。
長い、得点が高過ぎる、4年前の作品で今更、などと食わず嫌いせずに読んでみて欲しい。
【総合評価】★★★★★(一見の価値あり)

小野塚小町の転職草子  東雲氏

【作品集】39  【タイトル】小野塚小町の転職草子(全3作)  【書いた人】東雲 氏
【ポイント】16140(後)  【レート】12.68(後)
【あらすじ】
 無事に我が家が復活した小町。しかし、先の件が閻魔王の目にとまり異例の栄転に。
しかし、あくまで船頭死神が良いと思う小町は辞職して再試験に挑む事にする。
【感想】
 小野塚小町の越冬戦記の続編となる作品。
今度は紅魔館に場所を変え、男気溢れる小町が周囲に笑顔を巻き起こす。
 メリハリの付いた展開、次々に起きるイベントなど、
前作での長所は変わらず、長さが気にならない読みやすい作品である。
 ただ、今作の小町はちょっと主人公すぎるきらいがあった。
良くも悪くも少年漫画的な描写が目立つため、合わない人もいるかもしれない。
【総合評価】★★★★☆(オリキャラが可愛いのも魅力)

バレンタイン交響曲  天野明氏

【作品集】ジェネ24  【タイトル】バレンタイン交響曲  【書いた人】天野明 氏
【あらすじ】
 早苗と親交があった○○、その人柄の為か早苗以外からもたくさんチョコを貰う。
しかし、彼は過去の出来事からバレンタインに対して良い感情を持っていなかったのである。
【感想】
 これはある意味凄い。○○という名前や、最初からキャラと親交がある設定だけでも
創想話ではなくイチャスレ向けと言わざるを得ないのだが、
それ以外でもバランスクラッシャー並みに強かったり、暗い過去があったり、
クールキャラだったり、理由も無くモテたり、読んで引っかかるような要素が
これでもかというほど詰め込まれている。ここまで行くとむしろ清々しさを感じる位。
 設定もかなり突拍子もなく、イベントに対する5W1Hも不足気味。
ただ、キャラクターの掛け合いに不自然なところは少なく、土台はある程度出来ていると感じた。
【総合評価】★☆☆☆☆(伸びしろは十分あると思う。成長に期待。)

シンペイ蛙  ulea氏

(修正版)
【作品集】52  【タイトル】シンペイ蛙  【書いた人】ulea 氏
【ポイント】8390  【レート】14.26
【あらすじ】
 16歳の夏の日、田舎での祖父の葬式での事。自分は“すわこ”という不思議な女の子と出会った。
【感想】
 幻想郷と全く関係の無い、第三者の側から見た風神録前夜の物語。
幻想郷に入る寸前の守矢神社組を描いた作品は結構あるが、
守矢組や早苗の親友から見た作品が多く、全く関わりが無い他人から見た話というのはなかなか無い。
 「ぼく」の独白形式で淡々と進んでいく物語は詩的で、切なくも爽やかな読後感を与える。
国語の教科書に載っていても不自然ではないような、完成度の高い綺麗な描写の作品。
【総合評価】★★★★☆(美しく纏まった短編)

二次元と三次元の境界  ulea氏

【作品集】ジェネ53  【タイトル】二次元と三次元の境界  【書いた人】ulea 氏
【あらすじ】
 蓮子に告白したその日、マエリベリー・ハーンの人生は崩壊を迎えた。
親友から手を切られ、大学では孤立した彼女はネトゲの世界へ逃げる。
【感想】
 ulea氏による秘封短編。
 幻想郷をネットゲームに重ね、紫=メリーの解釈をしたのは見事だった。
退廃的な空気が漂う中で氏独特の、重い心理描写、独特な解釈と演出、
そして心の内の全てを投げ付けるかのような長く重いセリフ回しが詰め込まれている。
 読後に感じるモヤモヤ感は物凄い。本当にこれでよかったんだろうかとか、
この後どうなるのとか、思うとキリが無いけれど、
そう思わせるくらいこの作品は読者の想像力をかき立てる要素が詰まっている。
二人の中ではハッピーエンド、うわべだけ。そんなお話。
【総合評価】★★★★☆(ulea氏らしい中編)