作品集216

Last-modified: 2017-08-30 (水) 21:10:20
過ぎ去りし日々をいつまでも  苗洲烟氏

【作品集】216
【タイトル】過ぎ去りし日々をいつまでも  【書いた人】 苗洲烟 氏
【URL】 ttp://coolier.dip.jp/sosowa/ssw_l/216/1498884306
【あらすじ】
酉京都行きのヒロシゲ、指定席に腰を下ろした宇佐見蓮子はアンニュイな気分に沈んでいた。
京都を訪れるのは実に二年ぶりだった。大学卒業後は東京の大学院に進学したのだが、以来、京都には戻っていない。
それこそ大学の恩師への挨拶という明確な目的がなければ、きっとずっと京都を訪れることはなかったのだろう。
あの日を境に、京都は、蓮子にとって敷居の高い場所となってしまったのだ。

【感想】
大学時代のことを今でも後悔している蓮子のSS。
友情でも何でも積み重ねるのは時間がかかるのに、壊れるのは一瞬です。儚いですね。
蓮子の内情を静かに語る、その文体は、物語の雰囲気にすこぶるマッチしていると思われます。
個人的には、仲直りなんていつからでも間に合うと思うんですが、どうなんでしょうね。

鼠の報告書  まいん氏

【作品集】216
【タイトル】鼠の報告書  【書いた人】 まいん 氏
【URL】 ttp://coolier.dip.jp/sosowa/ssw_l/216/1499273701
【あらすじ】
主たる毘沙門天へ、ナズーリンは寅丸星についての定期報告書を作成していた。
導入こそ毘沙門天の化身たる資質への疑問を呈するものであるが、その内容は次第次第に惚気話に推移して行き……

 

「お?寅丸さん毎度ご贔屓にありがとう。そちらのお嬢さんは奥さんかな?」
「うむ。私の妻であり恋人であり部下でもある、我が身に代えても守るべき大切な人だ」

 

ナズーリンの誇らかな文章は留まるところを知らぬ御様子である。

【感想】
星を愛するナズーリンと、ナズーリンを愛する星のSS。
氏の二人への愛情が沁々と、或いはド直球に伝わってきます。
その文体は、ナズーリンという書き手を意識させるためなのか、クセが強く独特です。好みが分かれるところですね。
ただ執筆に勢い付くと、こういう文章に成ってしまうもんです。即ち、これは対象への愛着の裏返しと言えるでしょう。もちろん両方の意味で。

瞳映し花火、面映ゆしは鬼  怠惰流波氏

【作品集】216
【タイトル】瞳映し花火、面映ゆしは鬼  【書いた人】 怠惰流波 氏
【URL】 ttp://coolier.dip.jp/sosowa/ssw_l/216/1498576193
【あらすじ】
馴染みの店にて、星熊勇儀が意に依らず譲られたのは幾らかの線香花火だった。
冬という季節に逸れたその長手牡丹に、勇儀はやや難色を示すも、カエル顔した店主は『面に水』とばかりにケロケロ笑う。
挙句、"姐さんもちったぁいい人いるんでしょう?"などと色恋を揶揄され、勇儀は半ば照れ隠しに小銭を放って店を出た。
思い浮かんだのは翠の眼、寂しさを好む捻くれ者。三歩と逡巡することもなく、その足は旧都の外れへと向かっていた。

【感想】
季節外れの夏風情を贈り物とした勇儀と、夏浴衣の姿でそれに応じた橋姫のSS。
氏が"ずっと書きたいと思っていた"との意気込みも感じられ、実に"ろまんちっく"な話でした。
その文体は、根本が和風な物語であるからなのか、全体的に礼儀正しい文章という印象でした。
"また来年、冬には誘ってくださいね。"ってのは良いですね。これには勇儀も笑うしかなかったでしょうから。

見捨てられた花  仲村アペンド氏

【作品集】216
【タイトル】見捨てられた花  【書いた人】 仲村アペンド 氏
【URL】 ttp://coolier.dip.jp/sosowa/ssw_l/216/1498747295
【あらすじ】
メディスンが風見幽香に園芸の作法を訊ねたのは植えども育たぬ種子を得たためであった。
植えた場所の土壌が悪いということもなさそうで、幽香は、彼女に種子の現物を見せるよう促す。
人形の小さな手で差し出されたその種は粒ほどに小さく、また、その寸法と同じくらい小粒な妖気を纏っていた。
幽香はその妖気の原因を探るため、まずは種子の落ちていた花の丘へと赴くことにした。

【感想】
種のために奮闘するメディスンと、それに協力する優しい幽香のSS。
ゆうかりんは誠に素敵な花の妖怪さんなのだと思います。
文体についてですが、二人の掛け合いにはコメディの色が乗っており、読んでいて和やかな気分になれました。
個人的には"私は『花の妖怪をいじめる妖怪』になるから"って台詞が良いですね。そこはかとなく原作っぽ感じられます。

ある梅雨の日  モブ氏

【作品集】216
【タイトル】ある梅雨の日  【書いた人】 モブ 氏
【URL】 ttp://coolier.dip.jp/sosowa/ssw_l/216/1499353263
【あらすじ】
ある梅雨の日、干すことのできぬ洗濯物の処遇を思い悩んでいた咲夜のもとに、蹌踉と歩いている魔理沙が現れた。
その顔貌は仄かに紅潮し、眼は虚ろげで呼吸も怪しい。なおかつ体幹が揺れている。
風邪ではないかと指摘する咲夜の横を通り過ぎ、大図書館へと向かう彼女は、朦朧の十歩目、薄暗い廊下に沈んだ。
厄介事が増えたと閉口しつつ、咲夜は魔理沙を介抱してやることにした。

【感想】
風邪をひいた魔理沙を看病しつつ、昔の自分を思い耽る咲夜のSS。
のどかな紅魔館の日常を穏やかに感じさせてくれます。
特に難解な表記や表現などは使用されておらず、その文体はまるで口触りの良い"お菓子"のような印象でした。
何だか仲の良い姉妹のようだと感じたのは、たぶん氏の思う壺といったところなのでしょう。

神霊の宇宙  ドクター・ヴィオラ氏

【作品集】216
【タイトル】神霊の宇宙  【書いた人】 ドクター・ヴィオラ 氏
【URL】 ttp://coolier.dip.jp/sosowa/ssw_l/216/1499392522
【あらすじ】
ほたる火めいた神霊のクラスタが幻想郷の空を浮遊していた。
彼らは外界より集められた消えかけの神霊で、夜闇の上空に自分らの銀河を形成し、雲合霧集の喜びに打ち震えていた。
霊夢と魔理沙は二人してその宇宙を見上げていたのだが、ふと、とある空漠が隙間となって裂けた。まろび出た妖怪の顔色は蒼白していて――

【感想】
朱夏の幻燈めいた神霊の宇宙を眺めるSS。
たぶんストーリーを追うというより、その情景を愉しむ系統の物語でした。
全体として空を描出した文章が多いのは七夕という主題への面目を果たしたものと想われます。
星を神霊で例えるというのは、たぶん幻想郷でしかできない試みなのでしょうね。

先代巫女は言いました。  珈琲味のお湯氏

【作品集】216
【タイトル】先代巫女は言いました。  【書いた人】 珈琲味のお湯 氏
【URL】 ttp://coolier.dip.jp/sosowa/ssw_l/216/1498835150
【あらすじ】
幻想入り以前、東風谷早苗には変わり者の従姉が居た。
しかしながら今や早苗は彼女のことを忘れている。それは、一種の宗教家としての防衛本能であったのかも知れない。
いかにも拗らせた思想を持つ彼女は、神奈子の頭痛の種であり、同時に諏訪子の理解者でもあった。

 

「これだけは言っておきます。私は神奈子様のことが好きですよ。尊敬はしてませんけどね」

 

その告白の中身に、信仰は、いかほどを占めていたのか。或いは、全てであったのだろうか。

【感想】
早苗さんとは違った方向性ではっちゃけてしまっていた従姉さんのSS。
若さゆえなのでしょうかね、"「それは巫女の言葉ではない」"って神奈子の台詞はなかなか真に迫っていたのではないでしょうか。
文体は一人称の視点がバラバラしており、時系列も前後するので、読むには少し時間を要するかも知れません。
個人的には、多分、この自然主義を自称する従姉さんにとって二柱がいなくなったことは幸福だったのだと思います。多分ね。

東方チューバーレミリアの発進!!  戸隠氏

【作品集】216
【タイトル】東方チューバーレミリアの発進!!  【書いた人】戸隠氏
【URL】 ttp://coolier.dip.jp/sosowa/ssw_l/216/1499482812
【あらすじ】
おっぱい。ああ、おっぱい。
自警団の人、犯人はあいつです!!
おっぱ?へ?慧音先生と郷の自警団の方々?
12:00ssの冒頭で卑猥な言葉を発したので逮捕する。
東方チューバーレミリアと美鈴ガールが織り成すコミカルでメタなストーリー。
【感想】
メタな発言や内容が多く人を選ぶことは間違いない。
割と残酷な表現もあったりする。
なにより文法が崩壊している。
しかし、不思議な魅力がある。

東方チューバーレミリアの爆進!!  戸隠氏

【作品集】216
【タイトル】東方チューバーレミリアの爆進!!  【書いた人】戸隠氏
【URL】 ttp://coolier.dip.jp/sosowa/ssw_l/216/1499570057
【あらすじ】
フランスパンに恋した少女は・・・
少女は?
少女は・・・
どうしたの?
東方チューバーレミリアと美鈴ガーファンクルが織り成すコミカルでメタなストーリー。の2作目
【感想】
やはり、メタな発言や内容が多く人を選ぶことは間違いない。
前回と比べると残酷表現もなくやわらかくなった印象だった。
相変わらず文法は崩壊している。
しかし、妙な中毒性があってキャラクターの魅力を上手く引き出している。

東方チューバーレミリアの転進!!  戸隠氏

【作品集】216
【タイトル】東方チューバーレミリアの転進!!  【書いた人】戸隠氏
【URL】 ttp://coolier.dip.jp/sosowa/ssw_l/216/1499872357
【あらすじ】
咲夜いただきま~す。カプッ
あ、あ、
…………
チューチュー
ああああ
…………
何、撮ってるのよ妖精要塞K!
吸血鬼お嬢様の貴重な食事シーンですよ。
戸隠氏とは別の作者に書かれたかったフランの姉、レミリア500歳とフランの姉、美鈴ガーネットが織り成すコミカルでメタなストーリー。の3作目
【感想】
言わずもがなメタな発言や内容が多く人を選ぶことは間違いない。
オリキャラである妖精要塞Kの設定を上手く作中に溶け込ませていてすごいと思った。
文法も言わずもがな崩壊している。
やはり言わずもがな読者を引き込む魅力がある。

冬色天の川  露雫氏

【作品集】216
【タイトル】冬色天の川  【書いた人】 露雫 氏
【URL】 ttp://coolier.dip.jp/sosowa/ssw_l/216/1499332962
【あらすじ】
お空が行方不明になり、そうして地下に冬が来た。
どうやら人工太陽の鴉達は、お空がいなければ100%の稼働を行ってくれないらしい。
結果、地上の世界は夏だというのに辺り一面が雪化粧の銀世界。
寒さにやられたのか炬燵に篭った情けない姉は、こいしに、お空の探索を命じた。

 

「えっ、私? なんで?」
「お空もきっとこいし様を待っていると思います」
「外へ出るなら蜜柑を買ってきてはくれないかしら?」

 

かくして、こいしは姉の頼みを聞き捨てつつ、お空を探す冒険へと赴いたのだ。

【感想】
こいしがさとりに命じられて行方不明になったお空を探すSS。
「冬だから」、地底世界に雪が降る。この設定の時点で、なかなか凄まじい世界観を印象付けてくれます。
こいしが様々な場所を巡って行くプロットはとても巧みで、読んでいて惹き付けられました。
きっと七夕の夜の天の川は地霊殿の皆で見ることになるのでしょう。さとりを連れ出せれば、ですが。

虹の境界  こもかぶり氏

【作品集】216
【タイトル】虹の境界  【書いた人】 こもかぶり 氏
【URL】ttp://coolier.dip.jp/sosowa/ssw_l/216/1500282057
魔理沙が外の世界に放り出される話だけどよくある現代入りものではない。
抽象的なテーマなのにちゃんとキャラものになっていて最後はすとんとキレイに落ちる
ネタばれが致命的な作品であまり深く語れないのがもどかしい

一見魔理沙が主人公のように見えるけど本当の主人公は紫様なんじゃないだろうかと思ったり

Getting wild with our Satori  火男氏

【作品集】216
【タイトル】Getting wild with our Satori   【書いた人】火男氏
【URL】ttp://coolier.dip.jp/sosowa/ssw_l/216/1499393180
【あらすじ&感想】
私はもっと有意義な生活を送りたい。そう書き残して、さとりは〆切から逃げ出した。
潜伏した先は旧都。さとりはそこで蠅を追っかけて、三輪車投げて、牛丼タダ食いして、こいしを蹴飛ばして、札束撒いて、やがて宇宙に浮かぶ。
ムーンサルトして遊んでたところ、後ろから頭を殴られて、五人のこいしとパルスィの合唱を聞き、サディストな死神に足を斬られそうになるも、閻魔に救われる。
しかし、その閻魔もどこか頭がおかしくて……

 

あらすじ書いてみて再度思いましたが、すごく頭がおかしいストーリーですね。ひどい。
たぶん内容はギャグ。または"虚実の間を造型する"ことで、さとりが患ってるパラノイアを暗示させている感じですかね。
その象徴として適役なこいしがこの作品で重要な役割を果たしている気がします。
個人的には大変面白かったのでレビューさせて頂きました。
あと、このさとりは間違いなく近接物理型。絶対そう。

いつかきっと、あの向こうへ  仲村アペンド氏

【作品集】216
【タイトル】いつかきっと、あの向こうへ   【書いた人】仲村アペンド氏
【URL】ttp://coolier.dip.jp/sosowa/ssw_l/216/1500058835
【あらすじ】
地上に続く正規の道ではないその縦穴は、キスメのお気に入りの場所だった。地上との交流が戻ってもそこへ通うことやめない彼女に地上に出ようと話すヤマメだったが、その声は萎んでいく。
憧れて、夢見て、だけど手を伸ばさなかった――未だ地底に心を縛られ焦がれるばかりのあの空に、ヤマメはパルスィの肩を掴まえた。「空を見に行くんだ」
【感想】
空を見に行くということがちょっとした冒険になっていて、活き活きと作中で動くさまは飽きさせず、会話も楽しい。
ひとりではなく誰かと赴くことで、ヤマメにとっての地底の蓋はなくなったのではないでしょうか。

勇儀仮面vs怪盗ぬーX  あの時の魔理沙像をめぐる冒険譚  戸隠氏

【作品集】216
【タイトル】勇儀仮面vs怪盗ぬーX  あの時の魔理沙像をめぐる冒険譚
【書いた人】戸隠氏
【URL】ttp://coolier.dip.jp/sosowa/ssw_l/216/1501420944
【あらすじ&感想】210X年命蓮寺タワーに怪盗ぬーXからお予告お嬢ちゃんが送られて来た。
怪盗ぬーXに宝物を狙われたら絶対に盗まれるって聞いていた聖は悩んでいた。
すると、そこに1人の助っ人が現れたのだった。
他にも沢山とんでも設定なのにすんなり入り面白く感じてしまう作品だった。

もうすぐ聴こえてくるだろうか  henry氏

【作品集】216
【タイトル】もうすぐ聴こえてくるだろうか   【書いた人】henry氏
【URL】ttp://coolier.dip.jp/sosowa/ssw_l/216/1502769444
【あらすじ】
暇つぶしにTRPGしないかと投げかけた蓮子に、メリーはちょうどいいシナリオがあると動画のリンクを貼った。塔を昇る撮影者が、最上階で数式を書き飛び降り自殺するその動画を見返すうちに蓮子は、窓から覗く月を見て撮影場所を知る。
廃墟となった宝ヶ池観測塔、そこは遠く離れた星にいるかもしれない知的生命体に観測させるための施設だった。
「ねぇ、窓の外、何か」二人は越える、鬼門であるそのボーダーラインを。
【感想】
ぐいぐい引き込まれる話の転がし方が上手い。危うくも不可思議な秘封倶楽部の活動が文字を通して肌に伝わってくるようで、100kbがあっという間に終わるくらいに読んでいて飽きない。
張られた複線の回収も見事で、ちょっとの謎が残るところも魅力的。秘封好きなら読んで損はない一作でした。

真夜中マヨヒガ水族館  夏後冬前氏

【作品集】216
【タイトル】真夜中マヨヒガ水族館   【書いた人】夏後冬前氏
【URL】ttp://coolier.dip.jp/sosowa/ssw_l/216/1502734923
【あらすじ】
人々の現実を拡張させる魔法の薬。その名はニライカナイ。「拡現の使用者の中にね、時々、妙なものが見えるという人が居るらしいのよ」
科学のなかに潜むオカルトを持ちかけられたメリーは、ニライカナイを目に差した。幻覚が現れるのは決まって夜だ。景観保全地区をゆくふたりは、視界の先に横切った明かりにいざなわれるように、暗闇の長屋街へ飛び込んでいく。
【感想】
拡張現実の魅力と恐ろしさは科学世紀ならではで、短く纏まっている出来事はふたりのやりとりが面白いのもあって淀みなく読み進められる。少しホラーっぽい結末もその後が気になる引き方で個人的には好き。
ホラーとは書いたが内実は蓮メリちゅっちゅである、と信じています。