作品集173

Last-modified: 2015-05-31 (日) 15:53:54
なかとりもち  爪影 氏
追い風に乗って駆け抜けるのではなく、向かいに神風を受けているような足取りで、しっかりじっくり読まなければ勿体無い。

【作品集】173
【タイトル】なかとりもち   【書いた人】爪影 氏
【URL】ttp://coolier.sytes.net/sosowa/ssw_l/173/1346997762
【あらすじ&感想】
守矢神社が幻想入り

ある意味この一言で終わってしまうし、これだけならスコッパー垂涎の地雷臭しかしないが決してそんなことはないとだけは。
ここから個人的な感想に入るが、まず冒頭の青年との対話。ここで違和感。詳しくは言わないのは作者の意図した通りに読み進めて欲しいから。
次の神奈子との会話への移行で違和感が疑問へとレベルアップし、終わる頃には疑問が納得へとクラスチェンジする。
恐らく、心の中で神はこういうものなのだろうとの納得を神奈子ファンは抱きつつも、やはりこうあって欲しくはないとの相反する感情と共に読み進めていくと思う。
正直、かなり重い。それでも彼女が決して諦めなかったように、最後の最後まで読み切るべき。
追い風に乗って駆け抜けるのではなく、向かいに神風を受けているような足取りで、しっかりじっくり読まなければ勿体無い。読後の清涼感は約束できる。

最後にひじょーに個人的な感想として、冒頭の青年はキーパーソンになると思いましたまる
それさえ狙い通りのミスディレクションであるなら、五段階評価を最大にする他御座いませぬ

【五段階評価】
★★★★☆

守矢神社の幻想入り直前のお話。

【作品集】173  【タイトル】なかとりもち
【書いた人】爪影 氏
【URL】ttp://coolier.sytes.net/sosowa/ssw_l/173
【あらすじ】
 加奈子は既に決意していた。幻想郷へ遷ることを。
 それをただ一人止める者がいた。
 この現代では信仰を得ることは限界と考える加奈子と諦めず、僅かにある人の儚き信仰に
 可能性を見出そうとする者。見解の相違、溝は埋まることなく、
 容赦なき神の裁きが下される。
 それでも尚、その者は加奈子の幸せを一番に願っていた。
 自らを孤独にしても、謗りを受けよう、神に嘲弄されようとも時代に抗い続けるのだった。
 
【感想】
 守矢神社の幻想入り直前のお話。今までにも数多くの作品が生まれ、
 早苗さんをメインとした名作などもあったと思いますが、
 今作で早苗さんの出番はないと言っていいです。
 オリキャラ?と云いましょうか?東風谷さんの必死の思いが常に作中から伝わってきます。
 まるで夢想のような理想を語り、加奈子の前に立ちはだかる姿は滑稽に映るかもしれません。
 しかし、その姿には言い表せない、表現しきれない信仰、情念が込められている気がします。
 最後まで一途に加奈子と早苗と諏訪子を思い、幻想郷へ送り出す彼女に涙する人もいるのかもしれません。
 そして、終幕で幽かに見える光とともに物語りは終わります。
 ですが、彼女が報われる日は来ない気がして、言い知れぬ絶望を感じました。

 ★★★★★(『援助交際』などとも全く違う新たな守矢の切り口に感服致しました)

現代から、幻想郷へ移ることを決めた神奈子達のお話。

【タイトル】なかとりもち  【書いた人】爪影氏
【URL】ttp://coolier.sytes.net/sosowa/ssw_l/173/1346997762
【あらすじ&感想】
現代から、幻想郷へ移ることを決めた神奈子達のお話。
しかし、ありがちなこの手の話とは唯一違うのは、このお話の主人公が
神奈子、諏訪子、早苗のいずれでもなく
現代に残る早苗の父、なかとりもちの彼であるという点…

とにかく最初の導入の損してる感が半端ない。自分も作者が爪影さんでなければ途中で切っていた
だが、出来れば最初の導入の長い宗教議論を斜め読みしてでもいいから
その後の神奈子登場まで読んでやって欲しい。そこまで行けば、自分は最後まで楽しんで読めた

ノリとしては最初期のNARUTOや、そういった物に通ずる熱さのある作品
地の文が多いため、サイズが大きいが、この作者の力量は立派な物だと思う
オリジナルのキャラが出ても拒否反応が出なくて「ちょっと熱いの読みたい」って人には是非。

この作品を読んで、この作品の登場人物が気に入ったなら
流れを汲んだ、同作者の「八≠八」を読むのもオススメ
逆に、気軽いギャグで肩の力を抜きたいなら「親父臭い」も良い
どちらも、この作品の流れを僅かにだけど、継いでいる描写がある。

【五段階評価】
★★★★☆(自分のツボを、ことごとく抑えられてしまった作品。この作品の良さが分かる人と飲みたい)

輪転のノスタルジア  pys氏

【作品集】173  【タイトル】輪転のノスタルジア
【書いた人】pys氏
【URL】ttp://coolier.sytes.net/sosowa/ssw_l/173
【あらすじ】

約100年弱が経過したある日、慧音の墓参りに行こうと人里に行くと、

数年前に助けた稗田の子と再会する。
聞くと彼女は稗田家で初の養子である。養母がその名前に込めた想いとは裏腹に、
まだ二人はこれが数奇な運命の巡り合わせだとは知る由も無かった・・・。

【感想】
序盤からお得意のオリキャラ、独自設定無双。それを生かすこと、矛盾無く話を展開して
いくのは流石ですが、それが魅力的か?興味をそそられるかと言われると話は別です。
また、文の行動に対する説明がなく、いささか不自然に映りました。
そして、文の手帳に妹紅が書いた言葉が何か、作中で明かされることがなかったのも残念でした。
中盤以降は妹紅と慧音の葛藤、他者を犠牲にすれば。これ以上傷つけたくないという稗田の子。
それぞれの立場が明確に描かれ、在るべき形へと物語が進んでいき、結末にも納得のいくものだと思いました。
(ネタバレは避けて、意図的に抽象的に書いてあります。)

★★☆☆☆(心のスキマが広い人なら読めるんじゃね?)
序盤と中盤以降で物語の雰囲気が大きく変わります。バトル物ではありません。

ルナ、茶、要るど?  爪影氏
【作品集】173  【タイトル】ルナ、茶、要るど?

【書いた人】爪影氏
【URL】ttp://coolier.sytes.net/sosowa/ssw_l/173
【あらすじ】
いつものようにルナチャイルドはいたずらをしていた。いや、しようとしていた。
「悪戯に命を賭けるのが妖精よ。」口ではそういうが別に何かこだわりや信念みたいな
ものはない。ただ、今を、着の身着のまま、過ごしていた。
だから、反省などしたことがなかった。

【感想】
ルナチャイルドはやはり妖精のなかでは珍しいタイプなんだなと改めて感じました。
終始ルナチャイルドが日々をほのぼの過ごしつつ、喫茶店のマスターと麦藁帽子の老人から
自分の非を認めること、反省することは優しく、いや厳しく教えられる。
それはまるで昔、近所の子供を町の人が注意しているかの様に。
素晴らしい妖精退治だと感心し、現実ではあまりないと思いました。

ただ、マスターとの何気ない雑談が多く、主題がぼやけている印象があり、諭している場面というか、
マスターの心情が見えにくかったです。おじいさんはすごい人だと思える描写が分かりやすくあり、
良い人だと感情移入しやすかったです。

★★★☆☆(良くも悪くもふつー。積極的に薦められないが自分は楽しめたZE!)
終始、東方の登場キャラはルナチャイルドのみといってもいいレベルの作品。
(自分はとりあえず、全部読むので読了出来ました。)

幻想郷に行きたいか?  aho 氏

【作品集】173  【タイトル】幻想郷に行きたいか?
【書いた人】aho 氏
【URL】ttp://coolier.sytes.net/sosowa/ssw_l/173
【あらすじ】
先日、旧来の友人が亡くなった。そいつは幻想郷に行きたいと常に言っていた。
私も幻想郷探しに付き合っていたが結局、そいつは行くチャンスがあったのに
怖がって行かずに夢を追いかけ続けるという妥協した。
そう思っていた。だが、秘封倶楽部の二人との邂逅が自らの胸中、
友人の思いを再考することになった。

【感想】
なぜ、自分は幻想郷に興味がないのにそいつに付き合っていたのか?
やりたいこともなく、惰性でただ緩慢とついて行っていたのか?
今まで考えてもいなかった。そんなこと。
彼を幻想郷に行かせなかったのは自分だった。別れるとなったら、自然と涙が出た。
あいつも俺のことを・・・。そう知った時、既に友人は逝き、喪失感に苛まれながらも
偶然出会った秘封倶楽部に昔の自分達を重ね合わせ、彼女らの前途に幸多きことを願った。
という独自の感想を持ちました。
オリキャラが好き放題する話、SSにすらなっていないものが多い、オリキャラ物で
見事に書ききったのはやはり評価される人だからでしょうか。
独立した話があり、尚且つそれが秘封倶楽部(東方)と結びつく。
読まれる、評価されるにはそれだけの理由がある。

★★★☆☆(心のスキマが広い人なら読めるんじゃね?)
オリキャラ物は嫌い、秘封倶楽部にも興味がないのでこの評価。

フルーツ属ライス科 学名ジョウシキトラワレナイ  aho 氏

【作品集】173  【タイトル】フルーツ属ライス科 学名ジョウシキトラワレナイ
【書いた人】aho 氏
【URL】ttp://coolier.sytes.net/sosowa/ssw_l/173
【あらすじ】
 東方風神録の騒動で霊夢に負け、意気消沈していた早苗の前に魔理沙が現れる。
 人を馬鹿にしたような彼女の態度に腹立つも、これ以上守矢の風祝として、
 無様な様は晒せない。
 そう思って、やり過ごしていると不意に「ルーミアな、一応気をつけた方がいいかもしれないぜ」と言われる。
 最近、私を見ていたのは知っていたが弱い妖怪だから気にしていなかった。
 しかし、思い返すとあの妖怪は本当の力を隠している強力な妖怪なのでは?
 その疑念は日に日に強くなり、早苗を追い込んでいく・・・。

【感想】
 優等生は失敗に対する耐性がなく、打たれ弱い。失敗を挽回する好機を探すも
 見つからず、一人悶々と深みに嵌っていく早苗さん。
 支えがないと人が落ちていくのはあっと言う間なんだなと深読みしつつも読了しました。
 勘違いギャグテイストでありながら、終盤のルーミアの言葉が人と妖怪の切っても切れない関係を
 表現している気がしました。諏訪子様は食えないお人。

★★★☆☆(良くも悪くもふつー。積極的に薦められないが自分は楽しめたZE!)

DNA式運命機構  LTM夢工房 氏

【作品集】173  【タイトル】DNA式運命機構
【書いた人】LTM夢工房 氏
【URL】ttp://coolier.sytes.net/sosowa/ssw_l/173
【あらすじ】
 いつも通りのティータイムのひととき。
 用意を済ませ、レミリアの元に向かうと掛け時計が1分ずれているようだ。
 だが、この時、既に運命の歯車はずれ、紅魔館と咲夜の別れを予期させるであった。
 それが見えるレミリアは、ただ、後悔と自責の念に駆られるのであった。 

【感想】
 夢から来る体の不調、その夢は過去の記憶とまぁありきたりとも言えるのですが、
 永琳と咲夜の関係が月人繋がりではなかったのは良かったです。
 しかし、全体的に116kbもある割りに読解力がないと言われれば終わりですが、
 説明不足、描写不足の箇所が多々あるように見受けられ、特にパチュリー、美鈴が 
 なぜ、運命を悟っていたのか?
 レミリアについても、咲夜にした過去の仕打ちを省みずに、ただ、運命を変えようとする
 姿勢にはいささか疑問であり、好意的に見ることは出来ません。
 永琳も大切な子を幼児退行させたうえ、森に放置した?点についてはちょっと。
 最後もレミリアと永琳にとっては良いのかも知れませんが、咲夜はレミリアとの記憶は残っているかが気になります。
 紅魔館のみんな、それぞれの繋がりや優しさは繋がってきたので紅魔組が好きな方は読んでみてはいかがでしょうか?
 個人的には輝夜のキャラ付けが好印象でした。
 
 ★★☆☆☆(心のスキマが広い人なら読めるんじゃね?)

大方、何も変わらない物語。  まふ 氏

【作品集】173  【タイトル】大方、何も変わらない物語。
【書いた人】まふ 氏
【URL】ttp://coolier.sytes.net/sosowa/ssw_l/173
【あらすじ】
 咲夜さんが倒れてしまった。妖精メイドは急いでメイド副長にそれを知らせに行く。
 副長は慌てることなく、メイド達のシフトを組み替え、対処する。
 咲夜さん不在の紅魔館でも業務に支障はなく、一見何事もなく日常は進んでいく。
 その光景から副長は過去、自分が倒れたことを思い返しつつ、己の無力さを嘆く。
 レミリアはその日常を受け入れる事が出来ず、普段は話をすることすらない副長に会いに行くのであった。
 
【感想】
 リメイク作品と有りますが、元の作品とは全く別物と思った方がいいです。
 (名無しの班長はどこへいったのか?)
 前作の「自己愛」はやはり読んで置かないと今作を完全には理解出来ないかなと思います。
 オリキャラ多数なのですが、特に副長が凡人のようで凡人じゃないのがいい味を出している印象です。
 副長を補佐する補佐役、その他の妖精メイド達、個人個人がそれぞれ個性あり、心情あり、
 次々と語られていく様は飽きることなく読み進めていけるのではないでしょうか?
 副長に幸あれ。大妖精と再び手を取り合える日が来てもいいのでは?そう思いました。

 レミリアさんは前作で副長の顔すら覚えていないみたいな発言があり、副長がかわいそう
 だと感じていたのですが、今作でじっくり会話していたのでほっとしました。

 ★★★★☆(これはッ!!自分一人で楽しんではいけないッ誰かにッ他の誰かに薦めねばッ!!)
 オリキャラ無双ではないですが、オリキャラ嫌いな人は無理かもしれない。

扇と打撃を組み合わせたまったく新しい告白  すねいく氏

【作品集】173
【タイトル】扇と打撃を組み合わせたまったく新しい告白   【書いた人】すねいく氏
【URL】ttp://coolier.sytes.net/sosowa/ssw_l/173/1347285185
【あらすじ】
残暑にまいってグダグダしている天子と紫。
突然、紫が持っていた扇で天子の額を打つ。憤る天子だが実は扇を使ったことには意味があって…

【感想】
ややネタばれになるが扇言葉などというものがあるとは初めて知った。
紫にはぴったりだし、紫だけでなく幽々子や輝夜も使ったら絵になりそう。
最後のやりあいがとても素敵だなぁと思った。
何故か普通のちゅっちゅだけでなくへたれも合ってしまうこの二人だが、それを含めてもやはり最後の二人は

可愛い。
それと紫の気持ちを知って返事をするときの天子も可愛い。

いつかまた紅魔館で逢いましょう、そしてただいまを  夜歩しょうけら削夜 氏

【作品集】173  【タイトル】 いつかまた紅魔館で逢いましょう、そしてただいまを
【書いた人】夜歩しょうけら削夜 氏
【URL】
ttp://coolier.sytes.net/sosowa/ssw_l/173/1347642966

【あらすじ】すこぶる平和に(?)カオスな日常を送っていた幻想郷。
例を挙げるならば、お燐は地上でタクシー業を始め、紅魔館には自動販売機が設置され、寺を出た雲山は香

霖堂内にできたバーで働いていた。等々…
ある早朝、アリスの家で行われた女子会から帰ってきた咲夜は、自動販売機の前でパチュリーが、咲夜が渡し

たお守りのナイフを自身に突き立て、倒れている所を発見する。
傍らには魔法陣。
パチュリーは何らかの原因によって、魂を失い、心を閉ざされてしまった。
彼女を救うことができるタイムリミットは24時間。
そして訪れる幻想郷の危機とは…

【感想】

929で勘弁
キャラ崩壊は気にしない人向け
とにかく最後までいってみようか
タイトルも読了後に見たら納得
時に真面目な事をいう面々は堪らなく魅力的
あと、予防線
咲夜さんがハードボイルドなので、素であの口調、ギャンブルで金欠気味、煙草吸うよ!

【評価】
★★★☆☆~★★★★☆
テンプレの評価基準では微妙
是非!というわけでもなく、消極的に誰かに薦めたい

ココロのスキマ  怪人二十HN 氏
雛○沢村出身のオリキャラを、紫が幻想入りさせます。

【作品集】173

【タイトル】ココロのスキマ  【書いた人】怪人二十HN 氏

【URL】 ttp://coolier.sytes.net/sosowa/ssw_l/173/1347020589

【あらすじ】
雛○沢村出身のオリキャラを、紫が幻想入りさせます。

【感想】
自分は、ひ○らしも好きなので、タグと概要に魅かれて読んでみたところ、
パロディネタが満載で、かなり楽しめました。
特に思わずニヤリとしたのは、ひ○らしの腋巫女キャラに関するものでした。

【五段階評価】
★★★★☆
「東方×ひ○らし」やパロディ好きな方にお勧めな作品です。

★☆☆☆☆(慧音先生の寺子屋行き!)

【作品集】173

【タイトル】ココロのスキマ  【書いた人】怪人二十HN 氏

【URL】 ttp://coolier.sytes.net/sosowa/ssw_l/173/1347020589

【あらすじ】
 東方×ひぐらしのなく頃にクロスオーバー。
 紫は幻想郷でも最近、人里の過疎、高齢化に苦慮していた。
 そこで、現実世界から若者を幻想入りさせる計画を立てた。
 ちょうど良い人物が見つかり観察していたがその者は「雛見沢症候群」感染者だった。

【感想】
 ひぐらしは好きだったんですけど、これは短編だけあってミステリー要素が皆無です。
 紫に口八丁手八丁で幻想入りさせられ、なんとなく快適だったが、ふと娯楽が恋しくなり、
 幻想郷からの脱出を図るも紫に阻止され、L5発症→発狂するというB級ホラーみたいな感じです。
 改めて、ミステリー物としては散々叩かれたひぐらしですが物語として観れば、色々な要素のかみ合った
 名作ノベルだった気がします。
 この作品はあっさりとしすぎで「ガツン」とはきませんでした。
 また、所々、文章を読んでいくと不快になる点があったのが残念です。

【五段階評価】
 ★☆☆☆☆(慧音先生の寺子屋行き!)

銀の猫  紅雨 霽月 氏

【作品集】173

【タイトル】銀の猫  【書いた人】紅雨 霽月 氏

【URL】 ttp://coolier.sytes.net/sosowa/ssw_l/173/1347156770

【あらすじ】
 レミリアは散歩の途中で白猫を拾って、紅魔館に帰ってきた。
 すると、咲夜が非常に不機嫌になっている。
 さて、どうしたものか?などと考えていると、咲夜は 
 「ただの猫だろうとなんだろうと、お嬢様の後ろに付き従うのは私だけで十分です。
  誰であれ、その位置を譲るつもりなどありはしません」などと愚直なことを言う。
 その様子から彼女との最初の出会いを回想し、瀟洒な従者に当時のことを語ってもらうのだった。

【感想】
 見も心もレミリアお嬢様に魅了された咲夜さんののろけ話?
 猫にまで嫉妬するとは大人気ない気もしますが、彼女の愛は正に純愛でしょうか。
 この作者さんの作品の登場人物はどこか影のある人が多い印象ですが、今回は、
 咲夜さんの凄惨な過去が消し飛んでしまうほどのレミリアさんの優しさが感じられます。
 ただ、運命ははっきりと見えていた訳ではなさそうです。
 また、終盤のレミリアさんの告白が若干哀愁を誘う様に思えます。
 そして、連作ではないので関係ないのですが、これほどの気遣いが出来るレミリアさんでも
 どことなくフランちゃんと打ち解けてないのが近すぎるがゆえなんだろうかと考えてしまいました。
 
 個人的には同作者の『こいしさがし』が大変気に入っています。
 あの作品を読んだ後、『砂の器』という言葉を連想して、言葉には言い表せないものがこみ上げてきたものです。

【五段階評価】
 ★★★★☆(これはッ!!自分一人で楽しんではいけないッ誰かにッ他の誰かに薦めねばッ!!)

往復書簡  長久手 氏

【作品集】173

【タイトル】往復書簡  【書いた人】長久手 氏

【URL】 ttp://coolier.sytes.net/sosowa/ssw_l/173/1347779687

【あらすじ】
 こいしの部屋に掃除しに入ると、
 帽子にピンで止められたメモに「洗っといて」の五文字。ただ、それだけが置かれていた。
 あまりに味気なく、小憎たらしくもあった。しかし、その帽子は私がプレゼントした物だったことを
 思い出し、洗濯した。
 それから、こいしに自分の手で手紙を書くように言い、二人のキャッチボールが始まった。

【感想】
 揺るがない姉妹愛とこいしを取り巻く人たちの日常のやり取り。
 その中で生まれる死を通して、こいしの精神が育まれていき、こいしは
 しばらくちゃんと帰ってなかった地霊殿に帰ったのだった。
 
 感じたのは、耳が聞こえない人が言語に障害が出るように、心が読めなくなり、
 無意識によって、他者との関わりが希薄になったこいしは本当に無知な子供のような印象でした。
 自分だけを見て、周りを見ていなかったであろう彼女が気遣いをし、
 心配や不安といった感情を吐露する場面にこいしの成長が見て取れるのではないでしょうか?
 
 また、さとりさんが定期的に使われていないこいしちゃんの部屋の清掃をしていると思われる描写。
 さらに、さとりさんの文末の「あなたの姉、さとり」にこいしへの気持ちが表れていると感じました。

 ★★★☆☆(良くも悪くもふつー。積極的に薦められないが自分は楽しめたZE!)

焼き芋霊夢  TG 氏

【作品集】173

【タイトル】焼き芋霊夢  【書いた人】TG 氏

【URL】 ttp://coolier.sytes.net/sosowa/ssw_l/173/1347856202

【あらすじ】
 いつも通り、霊夢は神社の境内を掃き掃除していると魔理沙がやってきて、
 掃いていた落ち葉を吹き飛ばしてしまう。だが、妖怪達の集会場と化している
 ここを掃除、維持していくことにどれほどの意味があるというのか?
 そんなことを思ったのも一瞬、魔理沙から焼き芋の話をされ、興味は焼き芋に移ってしまった。
 しかし、どこか違和感というかこの世界から隔絶した存在ではないかという疑念が頭に過った。
 ここから導かれる答えとは。一体・・・。

【感想】
 博麗神社に価値を見出せず、やや諦観しているかのような霊夢。
 魔理沙との何気ないやり取りから焼き芋をしようの流れまでは一見ほのぼのとした
 日常ですが、物語が進むにつれ、意外な方向へと話は進んでいきます。
 終盤の「博霊 霊夢」というの名、存在に囚われ、自壊していく様は
 私ではうまく表現することは出来ません。
 最後は自分自身と魔理沙の繋がり、絆によって救われたのでしょうか?

【五段階評価】
 ★★☆☆☆(心のスキマが広い人なら読めるんじゃね?)

秋の夜長に、私が私で在ろうとする理由を。  八条笹歳 氏

【作品集】173

【タイトル】秋の夜長に、私が私で在ろうとする理由を。  

【書いた人】八条笹歳 氏

【URL】 ttp://coolier.sytes.net/sosowa/ssw_l/173/1347863204

【あらすじ】
 最近は閉店間際に来る、待ち人が恋しくて仕方が無い。
 案の定、今日も彼女はやっていた。店主と客、和気藹々と酒とつまみを肴に
 杯を重ねる。
 そして、ついつい夜雀は饒舌に自分語りを始めるのであった。

【感想】
 序盤から中盤はおかみすちーと文の軽やかな会話と飲み食いの描写が
 食欲を誘ってきます。深く考えずにさらっと読み進めていけることでしょう。
 中盤以降はミスティアの幻想入り前から今に至るまでの話が展開されます。
 自らの歌が冴えを増し、魅力溢れるほど、力を得て、強者となればなるほど、
 孤独となり、回りから他者は消えていく。
 そんな折、幻想郷で見つけた本物の強者達。彼女達の姿から今までの自分を捨て、
 新たな道を歩み出したミスティアに賛辞を送りたくなりました。
 そして、望んだ日常の中で得られた何かは今を生きる活力となっているのでしょうか?
 
【五段階評価】
 ★★★☆☆(良くも悪くもふつー。積極的に薦められないが自分は楽しめたZE!)

花たるこの身に生まれたならば  白衣氏

【作品集】173
【タイトル】花たるこの身に生まれたならば   【書いた人】白衣氏
【URL】ttp://coolier.sytes.net/sosowa/ssw_l/173/1347032923
【あらすじ】
メディスンが拾ってきたのはほとんど話さず、正体も分からない花の妖怪。
そんな不思議な花の妖怪に興味を覚え、同居を始めたフラワーマスター幽香だったが…

【感想】
オリキャラに近いキャラクターは出てきたがやはり最も美しく咲いていたのは幽香だろう。
私は私、ひたすら己の信じる道を突き進む姿が輝いて見えるのは妖怪も人も同じか。
妹分ができて喜ぶメディスンも、それを見守る幽香も様になっていた。
読み返してみれば複線がいくつもあったが、気づかずに読んでいて花の妖怪の正体が分かったときには驚いた。
最後の種明かしのような部分は、できれば物語が進んでいくにつれて説明されていった方が話としては面白かったかも。

秋を謀る  監督氏
すなわち、「静葉様に蹴られたい病」を。

【作品集】173
【タイトル】秋を謀る
【書いた人】監督氏
【URL】ttp://coolier.sytes.net/sosowa/ssw_l/173/1347891562
【あらすじ】
 浅く沈んだ体勢から少女が一気に放った右足は、狙い過たず、彼女自身の頭と同じ高さで木の幹を打ち抜いた。

 時は晩秋。
 木は楓。
 そして、少女は秋静葉。
 紅葉の化身と、紅葉そのものが、今、文字どおりに交錯した。(本文冒頭より)

一枚一枚丁寧に色を塗って紅葉を起こしているとか、木を蹴っ飛ばして紅葉を落葉に変えているとか、余人の予想の斜め上を行く設定が口授にて明かされた静葉。その神の御業の決定的瞬間。
を、藪の中から見ていた一匹の狸。妖怪でもない普通の狸であったが、彼はすっかり静葉に魅せられてしまう。
そして発症する。
紳士であれば避けられぬ、真摯であれば思い募る、後のことなど知るまいと、情熱滾るズーノーシス。
すなわち、「静葉様に蹴られたい病」を。

【感想】
まず最初に読みやすいと感じた。テンポのいい展開、随所に仕込まれる小ネタ、何より状況を伝える手際が洒脱でそつなく無駄がない。いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どのように。初歩的といえば初歩的な要素だが、文章を読み進める上で最低限理解しておきたい情報をさらっと無理なく示してくれるのは個人的にはありがたいし、見ていて「上手いなぁ」と感じる。
タグに「狸」とあるように狸のオリキャラが二匹(発症した狸とその兄弟)登場するが、特に違和感や不快感を覚えることもなく最後まで読めた。兄弟姉妹の絆とか優しさとか暖かさとかともかく雰囲気がよくてほっこりできる良作でした。

【五段階評価】★★★★★(秋姉妹が好きでもそうでもなくても)

秋静葉の落葉蹴りに心奪われたとある狸が固めた決意とその顛末。

作品集173
『秋を謀る』
監督氏
タグ:狸 秋静葉 秋穣子

概要
秋静葉の落葉蹴りに心奪われたとある狸が固めた決意とその顛末。

感想
最後まで読むと、ただのギャグとは言い切れなくさせるうまさがある。
俺は見事にやられた。

聖ケモナー説  真坂野まさか氏

【作品集】173
【タイトル】聖ケモナー説   【書いた人】真坂野まさか氏
【URL】ttp://coolier.sytes.net/sosowa/ssw_l/173/1347723427
【あらすじ】
うだるような暑さの命蓮寺。村紗の口から爆弾が飛び出した。
「聖ってさ、ケモナーなのかな」
注:ケモナーなる存在については概要か作中の説明を参照のこと。

【感想】
読んでいて気づかされたが、確かに命蓮寺の獣キャラ率は非常に高い。
これでは非獣の誰かが意図的に集めて楽園を作ろうとしているのでは、と疑われても仕方がないかもしれない。
話もしっかりオチがついていたように感じた。
狐女房や南総里見八犬伝などケモナー要素がある物語は昔から存在するので、
あの人物たちが昔からケモナーであってもおかしくはないだろう。

浄頗梨審判 -文々。新聞-  ライア氏

【作品集】173

【タイトル】浄頗梨審判 -文々。新聞-   【書いた人】ライア氏
【URL】ttp://coolier.sytes.net/sosowa/ssw_l/173/1348181195
【あらすじ】
幻想郷が開花時、人里の外れを飛んでいた文は――おぅーい、新聞屋さーん!と声をかけられる
何事かと聞いてみれば文々。新聞を購読したいと言う
身なりも良くなく実際裕福でもないのになけなしの金を払ってまで購読するという男の真意とは

【感想】
読み始めでオリキャラとの恋愛物だったら嫌だなと思ったが、そういう物語ではなくて一安心
テーマ自体はそんなに珍しいものではないかもしれないが長命な妖怪としての文の思い出への感覚
そしてそれを購読者である人間との何気ない会話で描写していくのはとても面白かった
そして読者にそれを印象付けた上でのラストの文の描写が素晴らしく物語を上手に締めてる
スイスイ読めるタイプの話だと思うので時間のある人は是非読んでもらいたい
【五段階評価】
★★★★☆(欲を言えばもう少し文の生活を想わせる描写が欲しかった、物語としては◎)

火炎車輪  スパゲッチー氏
聖の葬儀の日、遺体の傍らに座り込む星の元に、死体を奪いに来た燐が現れた。

【作品集】173
【タイトル】火炎車輪
【作者】スパゲッチー氏
【タグ】火焔猫燐 寅丸星 ナズーリン
【容量】54.53KB 【ページ数】1ページ
【URL】ttp://coolier.sytes.net/sosowa/ssw_l/173/1347125295
【粗筋】
聖の葬儀の日、遺体の傍らに座り込む星の元に、死体を奪いに来た燐が現れた。
小競り合いの後、燐に誑かされた星は、聖の遺体を地底深くの炉の中へと葬る。
そうして出来た聖の怨霊をサファイアに閉じ込めて、星は聖を手に入れた。

【感想】
全体的にかなり歪で背徳的な雰囲気を纏ったお話。
聖と星の関係もそうだし、共犯の燐と徐々に心通わせて行く星の移ろいもそうだし、ナズーリンの卑屈な想いもそう。
そんな複雑な愛憎模様を、とても濃密かつ豊かな文章で以って表した力作。
★5つ(聖を筆頭にキャラ死にがあるので、苦手な方は注意されたし)。

キャラ死にがあるので注意されたし。

【作品集】173
【タイトル】火炎車輪
【作者】スパゲッチー
【容量】54.53KB
【URL】ttp://coolier.sytes.net/sosowa/ssw_l/173/1347125295
【粗筋】
 寅丸星は愛する聖の亡骸を、地底深くの炉の中で燃やしてしまう。
星は聖を愛し聖の教えを長い年月守り続けてきたのに、なぜ?
 徐々に明かされる星の過去。聖が彼女につけた、埋められない程深い傷跡。
ナズーリンは星のために、その傷を埋めようとするが――

【感想】
キャラ死にがあるので注意されたし。

 もうね……すごいエロい!最高にエロい!ひんやりとエロいって感じだ!
どういう意味かと言うと、文体は終始淡々としていて分析的だ。擬音語や擬態語を使っての直感的な表現はしていない。
そして、登場人物も終始淡々としていて冷静だ。決して興奮したりしない。
 でもね、エロいんです。な、何を言っているかわか(ry

 このSSを読むと、初めに「聖の死」という事実に戸惑う。
さらに、そこに「星が聖を地底炉に放り込む」という衝撃的な展開が来て、もうこのSSの世界観が
よくわからなくなるんですよ。「いったい何がどうなってんの?」という気持ちです。
 すると、ようやく筆者から断片的に星の過去が知らされるのです。本当にちょっぴりしか
教えてもらえない。んで、「まったく、どうして星はこうなっちまったんだ」と
その部分をよく読むと…
 ガーーーーーーーーッと自分の中に妄想・空想が湧きたち始めて、あっという間に時間が過ぎていくんですよ。
「50KBとは思えない濃さ」とコメントしている人がいましたが、私も同感です。

 つまりね、

『全裸のうなじよりも、着崩れた着物の間から見えるうなじの方がエロいってことだよ!!!』

わかってもらえるだろうか?
じ~っと見るよりもちらっと見た方がエロいよね!?
大広間で見るよりも、襖から覗き見た方がエロいよね!?
絶対領域しかり、ビキニしかり。

うなじ自体はエロくない。首だけにも、着物だけにも欲情なんか自分はしない。
着物・首、それ自体はとても厳かで、無色で、記号的で、自分は何の感触もない。
でも、着物の間から見える首には欲情する!
このSSはそういうことなんだ。文章はとても厳かなんだが、文章の余白がエロいんだ!!!!

余談だけど、これを読んでる時にKASAさんのSSを思い出して、
KASAさんのSSは「互いの合意の上で、対等で明るくて気持ちのいいセックス」なんだけど、
このSSはそれの逆を行く「他人を脅し、所有し、傷つけ自分も傷つけるセックス」なんだよね。

どっちも複雑な愛憎模様を、よく表現できている力作だなぁと思いました。
さて、今からこのSSにコメントしてきます…。本当はコメントを先にすべきだったのかもしれないけど…。
長文失礼しました。

★★★☆☆
(こんなにも褒めちぎっといて何ですが、評価は3。
キャラ死にが受け付けない人にはつらいだろう。でも自分にとっては★5です)

必殺死後お燐  ~火焔猫抹殺計画~  pys氏

【作品集】173
【タイトル】必殺死後お燐  ~火焔猫抹殺計画~
【書いた人】pys氏
【URL】ttp://coolier.sytes.net/sosowa/ssw_l/173/1348328315

【あらすじ&感想】
死体と魂の帳尻が合わない。閻魔のお燐への疑いの手紙が届く地霊殿。お燐は濡れ衣を晴らすために独自の調査を開始する。

pys氏の作品は読んでもそんなに魅せられたことが無かったのですが、今作が妙につぼにはまって楽しめました。
一番よい意味でラノベといったところ。気障なところがなく軽くて早い。それにきちんと物語になっているのがこの作品の強みだと思います。
オリキャラが出ますが補助線的なもので煩くはない。伏線で匂わせてはいるものの最後の方の話の運びは意外で面白い。
お燐の一人称がとても愛らしい。様々な描写の主体としてきちんと構成されているから実感がありとてもいい。
美点はなどなど。書き殴り的な欠点もいくらかあると思うのですが、基本的に良作の印象です。
少し長めの作品ですが、物語が一本通っている割にはむしろよく分量が抑えられていると思います。
挿絵がついていれば買ってもいいくらい個人的には好評価です。時間のある人はぜひ一読を。

【五段階評価】★★★★☆

達成の夢、永遠の夢、回廊の夢  イムス氏

【作品集】173
【タイトル】達成の夢、永遠の夢、回廊の夢   【書いた人】イムス氏
【URL】ttp://coolier.sytes.net/sosowa/ssw_l/173/1348585662
【あらすじ】
ミスティア編は焼き鳥撲滅達成後の騒動を、
妹紅編は遥か未来の不死者たちを、
咲夜編は三時間の間をループしてしまう異変をそれぞれ描いた短編集。

【感想】
三作とも夢をテーマにしているが、どれも異なる色をしていたように感じた。
ミスティア編は実際の夢のように混沌としていて、
首をひねりながら次の妹紅編へ進んだら背筋が凍りそうになった。
咲夜編は初っ端から無限ループという妹紅編を読んだ後では嫌な予感しかしない出だしだったものの、
実際にはホッとさせてくれる王道的な終わり方をしてくれた。
いずれもどこか浮ついた現実味のなさがあって、その雰囲気がテーマである「夢」を際立たせている。
SFということで読む人を選んでしまうかもしれないが、どれもクセのある面白さがあった。

みすちーの足、始めました   わつじ氏

【作品集】173
【タイトル】みすちーの足、始めました   【書いた人】わつじ氏
【URL】ttp://coolier.sytes.net/sosowa/ssw_l/173/1348907387
【あらすじ】
『みすちーの足は、お出しするまでに時間がかかります』
看板に書かれた文字と店主の説明に、魔理沙は唖然とした。

【感想】
看板とは基本的に人の興味を引くためのものであり、時として誇大であったり看板と内容が違うことがある。
ネタバレになるが看板で魔理沙を騙したように、この作品も題名からパッと思い浮かぶ内容とは異なっていた。
しかし、みすちーの足なるものを食べるシーンは見られなかったものの、味のあるミスティア・ローレライを見ることができて良い意味で期待を裏切られた気分だ。
一寸の虫にも五分の魂、弱小妖怪の夜雀にも矜持。そのしたたかな輝きが素敵である。
姿を隠していたこいしに気づかぬふりをして、おもむろに肩を抱いた藍の大妖怪らしさも対照的で面白い。というか格好良かった。

オヤジと天ぷら、時々むし  PNS氏
人間の里で天ぷら屋を営む源さんこと武者小路源蔵(46)は大の妖怪嫌い。

【作品集】173
【タイトル】オヤジと天ぷら、時々むし   【書いた人】PNS氏
【URL】ttp://coolier.sytes.net/sosowa/ssw_l/173/1349016534
【あらすじ】
人間の里で天ぷら屋を営む源さんこと武者小路源蔵(46)は大の妖怪嫌い。
ある日、彼は民家の軒下にできた蜂の巣を駆除するが、その夜から奇妙なことが起こり始め…

【感想】
頑固オヤジが主人公ということで身構えていたら意外や意外、予想以上にコミカルな作品で大いに楽しむことができた。
人と妖怪の関係という一見重くなりそうなテーマだが本作にはドロドロとした雰囲気や暗さは一切なく、
人間の里の一角での出来事が面白おかしく、またテンポ良く描かれている。
頑固一徹で妖怪嫌い、そして天ぷら料理人として誇りを持っている源さんを通じ、幻想郷で暮らす普通の人間の思考や生き様が見事に表現されていたと思う。
なので、結末の書かれ方はあっさりしていたものの、ストンと落ち着いて納得のできるものだった。
主人公だけでなく、毎晩の悪戯や現れた際の行動が実に虫の妖怪らしいリグル、
物語の初めと締めで軽妙に筆を振るう阿求、店に現れる謎の客など他の登場人物も魅力的だ。
幻想郷を里の中から見つめた素敵な作品である。

幻想郷で起こったすごく小さい事件の話。

【作品集】173
【タイトル】オヤジと天ぷら、時々むし【書いた人】PNS
【URL】ttp://coolier.dip.jp/sosowa/ssw_l/173/1349016534
【あらすじ&感想】
 などと古臭い書き出しを試してみたが、私こと稗田阿求はまだ若いのでやめておくことにする。

 幻想郷で起こったすごく小さい事件の話。いや、事件というのか。これは怪異ってやつである。
 昔読んだ妖怪ものの漫画に「稲生物怪録」というふるい妖怪の怪異をえがいた体験談が参考文献に出てきますが
 それを一部読んだときの感覚に似ています。人の成長は未熟な過去に打ち勝つことだな。

 バーカ

 最後に付け加えるとこの物語に阿求は出てきません。確か。
【五段階評価】
 ★★★★★

夏の日、ある海の妃にて  haruka氏

【作品集】173
【タイトル】夏の日、ある海の妃にて   【書いた人】haruka氏
【URL】ttp://coolier.sytes.net/sosowa/ssw_l/173/1349011037
【あらすじ】
照りつける太陽とナンパにうんざりしつつ蓮子の家に到着したメリー。
そこで蓮子がある祭事の巫女に選ばれたことを聞き、さっそく二人で祭事が行われる町へと向かうことにしたが…

【感想】
秘封倶楽部にはどうも悲劇的な別れが訪れるのではないか、という影が付きまとっている気がする。
二人の能力がそう思わせるのかもしれないが、この作品のメリーからは絶対に蓮子を離すものか!という覚悟が伝わってきて非常に頼もしい。
しかし、彼女を動かしているのが好きよりも依存に近い感情に見えてくるのは何故だろうか。
どこかへ出かけて謎に触れ、また帰ってくるというサークル活動、
気心の知れた大学生らしい会話など秘封倶楽部の魅力が光っている作品だった。
もっとも、作中で一番謎めいているのはメリーなのかもしれない。

Replay  maruta氏

【作品集】173
【タイトル】Replay
【書いた人】maruta氏
【URL】ttp://coolier.sytes.net/sosowa/ssw_l/173/1349002982
【あらすじ】
「フランは、これが人間だって知っているのよね」
「……うん? 当たり前じゃない。私のことを馬鹿にしているの」
「なら、どうやって人間がこれになっているのか、知っているか?」
「知ってるよ。おっぱいの大きい人間から絞るんでしょ」
 どうにも妹は根本から、吸血鬼という物を誤解をしていた。自分という物が分かっていない。
 それでは吸血鬼ではなく、吸乳鬼ではないか。
 レミリア・スカーレットは頭を抱えた。妹が完全に的外れの認識をしている事と、それを放置していた自分に絶望した。(本文より)

そうした次第で妹へのダメージの少ない方法で根本的な勘違いを正すべくレミリアがとった行動とは、全てを親友へ丸投げすることだった
そこで場面は移り変わり、そこには一匹の兎となったフランドールの姿
そう、対処を任されたパチュリーの選んだ方法、吸血鬼の業を伝える媒体とはテーブルトークロールプレイングゲーム
所謂TRPGの遊びだったのだ

【感想】
とても丁寧に書かれた作品という印象。
概要には『フランが命や自分の事について、特殊な方法で理解する成長譚』と書かれてあるが、これは決して急激なものではない。自分は人間(巨乳)の乳を糧に生きているのだと思っているフランドールに突然、「あなたは実は今まで人間の血とか命とか生贄にして生きてきたんです」などと言えば当然彼女は傷ついたり、事実を正確に理解できなかったりするだろう。それだからか作中では、じっくりと外堀を埋めるように、より自然な形でフランドールが吸血鬼の業を理解できるようにゲームが展開されていく。その過程でのフランドールの心情の変化や行動の描写が何より丁寧で、終始フランドールと同じ視点に立って物語を読み進めることができた。
ただ長さが長さなだけに、人によっては若干だるいと感じるかもしれない。
それも長編を読むのが苦にならない人なら全く気にならない程度ではあります。

【五段階評価】★★★★☆(TRPGやフランドールが好きな人にはプラス補正)

レイマリの大人ステップ  道楽氏

【作品集】173
【タイトル】レイマリの大人ステップ
【書いた人】道楽氏
【あらすじ】
母の死に近いことを知り、霊夢を誘い里を訪れる魔理沙。
二人は帰り道、「橋の下で、かわいそうなくらい不細工で、汚くて、黄色というよりは茶色っぽいネコ」を見つけた。
魔理沙:「どうする、霊夢」
霊夢:「飼う」
こうして物語は幕を開けた。

【感想】
作品と作者の人格とは必ずしも関連付けて考えるべきではない。
だがしかし、この作者に関して言えば、作品の背後にその人格が見えてくるようなモノが多いのが特徴だろう。
「大人とは何か」「友情とは何か」「愛情とは何か」
そうした主張を、霊夢と魔理沙の関係、そうしてその二人を見守る人物たちとの交流を通じて描かれた作品である。

【五段階評価】★★★★☆(任侠映画『首領への道』とか富山のローカルネタとか、いろいろと楽しめる人には×2な?)

私の妹とペットが宗教家共の玩具と書いてオモチャにされてしまうとかマジありえないんですけど 平安座氏

【作品集】173
【タイトル】私の妹とペットが宗教家共の玩具と書いてオモチャにされてしまうとかマジありえないんですけど
【書いた人】平安座氏
【URL】ttp://coolier.sytes.net/sosowa/ssw_l/173/1349194033
【あらすじ】
「お姉ちゃん! わたし仏教徒になっちゃった!」
こいしの宣言に続いて空も山の神様に連れ去られたことが発覚。
地霊殿分裂の危機に、さとりと燐が痴力の限りを尽くして立ち向かうのだった。

【感想】
頭の中をまっさらにして読むことができる作品である。
概要にもあるようにさとりと燐が変態だが、別段崩壊しているわけではなくむしろ心地よい程度のもの。
それに変態たちが跋扈しているとはいえ話自体もしっかりまとまっているし、あとがきの部分までしっかり楽しめる。
できれば作中のさとりたちを見習い、余計なしがらみを取り払って素っ裸で楽しみたいところだ。

千四百年はもう一つ  酢烏賊楓氏

【作品集】173
【タイトル】千四百年はもう一つ   【書いた人】酢烏賊楓氏
【URL】ttp://coolier.sytes.net/sosowa/ssw_l/173/1349264917
【あらすじ】
藤原妹紅は慧音の家で見知らぬ人物に出くわした。
相手が亡霊であることに驚いた妹紅だったが、その名前が蘇我屠自古だと知ってさらに驚愕することになる。
藤原家と蘇我家の間にはただならぬ因縁が存在したのだ。

【感想】
1400年の歳月を経て祖父が滅ぼした一族の一人と出会うというなかなか因果な話である。
一方の屠自古も物部家の滅亡に加担して恨みをかっているなど一縄筋では行かない。
これだけ見るとハードな内容を想像してしまうが、本編は屠自古の性格のおかげか不思議と重さを感じなかった。
しかし、妹紅がちょっと素直過ぎに見えたり、これだけの題材が集まっているのでもっと波乱があってもよいのではと思ったりと、
作品全体にやや物足りなさも覚える。良い意味でも悪い意味でもあっさりしていた印象を受けた。
着眼点が面白いので、違う調理法で生まれた作品も読んでみたい。

ふわりと少女は夏の風  白衣氏

【作品集】173
【タイトル】ふわりと少女は夏の風   【書いた人】白衣氏
【URL】ttp://coolier.sytes.net/sosowa/ssw_l/173/1349283088
【あらすじ】
夏。
真紅を身にまとった自転車に跨り、比那名居天子は幻想郷一周の旅に出る。

【感想】
読んでいるうちに今の季節を忘れてしまう、それほどまでにお話の中は夏であった。
大まかな流れは自転車に天子が行く先々で人妖と交流していくものだが、
夏を迎えた幻想郷の自然も丁寧に描写されていて作品によりいっそうの爽やかさを提供している。
もちろん、登場する幻想郷の住人たちは皆魅力的であるし、何といっても主人公の天子が素敵だ。
自転車に乗って夏を満喫するという青春的シチュエーションを存分に活かして冒険し、成長していく姿はとても美しい。
他作品と設定のつながりがあるものの、守矢神社が売り出して自転車ブームが起きているといった程度で、
読み始めてしまうと特に気にならなかった。

土蜘蛛にサングラス  エムアンドエム(M&M)さん

【作品集】173
【タイトル】土蜘蛛にサングラス
【書いた人】エムアンドエム(M&M)さん
【容量】130.04kb
【URL】ttp://coolier-new.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/173/1349089697
【あらすじ】
千年前の大妖怪にしてテロリスト、久我ミカサ(オリキャラ)が地霊殿から脱獄した!
さとりは地底最強の鬼、勇儀にミカサを捕縛せよと命令を下す。
同じ頃、レッスンをさぼった地底のアイドル・ヤマメは記憶を失くした土蜘蛛と出会う。
成り行きから彼女を家に匿うヤマメだが、その間にも勇儀の捜査は進んでいき……

【感想】
現代的な世界観を持つ独特の地底で繰り広げられる青春&刑事(?)モノ、といった印象のストーリー。
著者があとがきに書いているように、ヤマメが大人の世界に不信感を持っていたり、
勇儀が職場の些事に頭を悩ませていたりと、『うまくいっていない妖怪たち』の様子がよく描写されている。
そんな中でも育まれる友情や人間関係のために必死に頑張る登場キャラたちの姿が胸を打ちました。
霊夢が地底に現れてから、封じられていた地底妖怪たちが地上の天狗たちと和解し
地上に出られるようになるまでというごく短い期間の話らしく、それが一種のタイムリミットとなっているのが妙な緊張感を生んでいます。
ヤマメ、勇儀、ミカサの三者の感情が丁寧に描かれるので、この長さになるのも納得といったところ。
ストーリーのオチはネタバレのため書けませんが、魑魅魍魎の跋扈する幻想郷ならではの説得力がありました。
爽やかなラストシーンで読後感も良い。オススメです。

【五段階評価】
★★★★★
起承転結のはっきりした、秀逸なストーリーでした。

鬼のさとり  春日傘氏

【作品集】173
【タイトル】鬼のさとり  【書いた人】春日傘氏
【URL】ttp://coolier.sytes.net/sosowa/ssw_l/173/1347274016
【あらすじ&感想】
勇儀×さとりの百合もの。マイナーカップリングはギャグが主体でもない限り受けないものと思っていたのだが、ギャグ要素一切なしで真正面から描いて見せた意欲作。
話の流れにぎこちなさ見られるものの、二人の不器用ながらも接近していく様のようで、一つの味となっている。
最後の真正面からの会話にはドキリとさせられた。この会話文以外を地の文にしていれば、さらに心を動かされたかもしれない。

運命の愚者・第一部  めと氏

【作品集】173
【タイトル】運命の愚者・第一部
【書いた人】めと氏
【分類タグ】レミリア 過去話 【容量】69.2KB
【URL】ttp://coolier.sytes.net/sosowa/ssw_l/173/1349082154
【概要】
レミリアの一人称視点で進んでいく幻想入り前過去話三部構成の第一部。
レミリアがもともと人間であり姉妹もいない、というちょっと思い切った設定。
「運命の愚者」のタイトル通り、(死の)運命と宗教を絡めたシリアス長編。運命の影に翻弄されるレミリアはまさに「愚者」。
第一部は異教の大帝国(オスマン帝国?)との戦火の中にある15世紀中盤の(と思われる)ワラキアが舞台。

【感想】
シリーズ全編に通して言えるものの、語り手であるレミリアに幼さがほとんど見受けられないのは
少しだけ違和感があったが、それがまた独特の味を出しているように感じた。
戦乱に巻き込まれ、物語の後半で半ば意図しない形で吸血鬼となってしまう過程が歴史背景も交えて鮮明に描写され、
人間でなくなった後も精神と変化した肉体との乖離に苦悩する非常に「人間臭い」レミリアが描かれていたのは新鮮だった。