作品集213

Last-modified: 2017-06-11 (日) 21:39:00
どぶろく狂想曲  門司柿家氏

【作品集】213
【タイトル】どぶろく狂想曲   【書いた人】門司柿家氏
【URL】ttp://coolier.dip.jp/sosowa/ssw_l/213/1475060446
【あらすじ&感想】
「博麗の巫女さんがどうしたんだ」
「ああ、どぶろくを仕込むそうですよ」
「な、なんだって!」

 

「ホントに、君は何でも直ぐにわたしを追い越しちゃうな。羨ましいよ」
「お師さま?」

 

「来年仕込む時は、作り方を教えてあげようね」

 

霊夢がどぶろくを仕込むお話、ただそれだけ
しかしその内容を簡潔に書く中で霊夢の今の人間関係、そして先代の巫女への思いがしっかりと書かれている
霊夢がいまだ唯一先代を越えられていないどぶろくの味
だけどきっと追いつくのは遠い未来ではないだろう
その時を待っているのはきっと霊夢だけではないはずだ

そっちの復讐、ではなくて  面妖うわあうな!!氏

【作品集】213
【タイトル】そっちの復讐、ではなくて   【書いた人】面妖うわあうな!!
【URL】ttp://coolier.dip.jp/sosowa/ssw_l/213/1474302007
【あらすじ&感想】
先生の服は空の色。
そんなことを生徒に言われてから慧音の「いつもの服」はそれなりに大事なものなのだ。
着れば意識せずとも気持ちが引き締まる、自分が「先生」なのだと自覚できる。
だからといって、
「私だ、上白沢だ」

 

これを私にどうしろというのだろうか

 

「慧音先生だ」

 

「先生みたいな。お空のように澄んだ、青が着たいの」
いや、着ればいいと思うのだが。

 

盛り上がるような展開はない
思わず笑ってしまうような大きなギャグシーンはない
手に汗握るバトルシーンもやっぱりない
それなのにするすると読み進んでしまって、気が付けば読み終わってしまって、ふと考えれば面白かった
先生が泣いている子をあやし慰めちょっとした問題を解決に導くというただそれだけ
その中に微笑ましさや、ちょっとした可笑しさ、不思議な納得が詰め込まれていた
最後のオチにも思わずくすりとしてしまう不思議な良作だった

女子高生・子供・超能力者  待雪草氏

【作品集】213
【タイトル】女子高生・子供・超能力者   【書いた人】待雪草
【URL】ttp://coolier.dip.jp/sosowa/ssw_l/213/1478269692
【あらすじ&感想】
女子高生、宇佐見董子は超能力が使えるだけの普通の女子高生なのだ。
だからお弁当だって食べるし、卵焼きの好みはあるし、母親との距離の取り方だって悩む。
そんないつも通りのある日、ハンドクリームを切らしてしまい学校帰りに寄ったドラッグストア。
棚の前でふと、とあるハンドクリームが目についたのであった。

 

極々普通ではない女子高生である宇佐見董子の、ごくごく普通のある一日のお話
たいていの人が学生時代にちょっとは似たようなことを考えたことがあるのじゃないだろうか
彼女は妹紅や慧音に相談することにしたけれど、きっと相談しなくても同じようにしたのだと思う
読み終わるとなんとなく手が温かくなるお話だった

酉京都の金曜日は長い  待雪草氏

【作品集】213
【タイトル】酉京都の金曜日は長い   【書いた人】待雪草
【URL】ttp://coolier.dip.jp/sosowa/ssw_l/213/1479632677
【あらすじ&感想】
明日はお休みという夢の金曜日、蓮子はメリーの家にいた。
金曜日はメリーの家で食事をするというのが金曜日の決まり事なのだ。
疲れの溜まった金曜日、美味しい夕食を堪能したあととなれば当然のことながら眠気が来る。
ソファでごろごろとしてた蓮子はメリーに子ども扱いされてむくれてこう返す。
「私が子供なら大人のメリーさんが面倒見るべきだと思います」
そして、

 

「私が磨いてあげるから」
「……は?」
「歯」
「いや、そうじゃなくて――」

 

なんだかよくわからないままに蓮子の恥ずかしい時間が始まった……!

 

大学生の週の終わりの幸せな時間
ついつい甘えてふざけた蓮子への突然の罰ゲームのような恥ずかしい展開
ただ「誰かに世話をやいてもらう」ということのほのかな幸福感や仲の良い二人のことを考えると微笑ましかった
大学生の蓮子とメリーの幸せな金曜日という日常の1コマ

ロバート・リー・フロストは死をうたっていたのか?  火男氏

【作品集】213
【タイトル】ロバート・リー・フロストは死をうたっていたのか?   【書いた人】火男
【URL】ttp://coolier.dip.jp/sosowa/ssw_l/213/1482545860
【あらすじ&感想】
ある雪の日、縁側で庭を見ていた霊夢の前で雪の積もった枝が折れた。
その様をみてついつい笑ってしまった霊夢の傍にいつの間にか幽香が現れる。
その小さな笑いの理由を尋ねた幽香に対して霊夢はこう言った。
「私はね、あの枝のようで在りたいの」
それをうけて幽香はこう答えた。
「この枝が貴女?だったらそうね、相応に可愛がってあげなくちゃ」

 

なんとも詩的な文章が特徴的な火男氏の短編作品
静かな雪の日の霊夢と幽香のやりとりが短く、しっとりと書かれている
なんとも少女らしい霊夢と、それをからかいつつも気遣う幽香の関係性は不思議な温かさを感じることができる
終わりも爽やかなので少し時間があればぜひ読んでほしい作品だった

秘封倶楽部活動記『やっぱ秘境とか行ってみたい』編  ごまポン氏

【作品集】213
【タイトル】秘封倶楽部活動記『やっぱ秘境とか行ってみたい』編   【書いた人】ごまポン
【URL】ttp://coolier.dip.jp/sosowa/ssw_l/213/1482246655
【あらすじ&感想】
「屋久島の、奥深くで、なんか居たんだよ。そんで指さすんだよ。
 どこだか分からないもんで聞いたんだよ。そうしたら地図で、この辺だって」
そういうわけで今回の秘封倶楽部の活動地は屋久島!
一般の観光ツアーに参加して、途中から抜け出して二人だけの観光ツアーに予定変更という腹なのだ。
なんだか変わったガイドさん、秘境に存在した謎の結界、神秘の聖域で二人を待ち受けるものとは!?
ドキドキあり笑いあり冒険ありの二人の活動記にこうご期待!

 

タイトルはコメディ風な内容を想像させる軽さがあるが、ふたを開けてみればどちらかと言えばシリアス
落ち着いた文章で書かれる二人の冒険がいかに危ういものかを感じさせてくれた
っていうかこの作品の二人はいつもこんな感じで活動してるのだろうか
これ命がいくつあっても足りないと思う
読みやすくてそれほど長くないので、秘封が好きな人はぜひ読んでほしいと思う作品

入り口のない庭  地形性怪雨氏

『入り口のない庭』 地形性怪雨氏
ttp://coolier.dip.jp/sosowa/ssw_l/213/1482483947
Q,どんな話?
A,地底の生物相に関する研究施設を訪ねていたさとりは、実験で生まれた醜い肉塊のような生物の存在を知り、そんな「ばけもの」にも心があるのかと、その胸のうちを覗き見た。そこでさとりが見たものは、果てしなく広がるばらの花園だった。
Q,どういうところが面白いの?
A,醜悪な肉塊が美しい心象を見せるという惹きつけられる導入と、「青いばら」「小石」等のワードから早い段階で世界観を共有させる構成、これらが鮮烈かつ読みやすい印象を抱かせ、読者は作中のさとりのようにこの情緒豊かに彩られたばらの花園に惹きつけられるという寸法。なんたる巧妙な描写術か!
Q,特に良かった場面は?
A,ラストの絵がひたすら綺麗にはまっていて、余韻が後を引いて止まない。青虫の段階では『入り口のない庭』を一緒に空から見渡すことが叶わず、羽化のようにして生まれた覚のこいしと共に地底世界(入り口のない庭)を眺めるという対比が素晴らしい。
Q,後書きを見るにこの話は作中作なの?
A,自由解釈の時間です。まあ、後書きも含めて作品とするかどうかは人それぞれだから。