プチ作品集41

Last-modified: 2009-07-30 (木) 01:46:56
ルーミア「おっ! おおおおおお!! こ、こんな所にミスティアのダイイングメッセージがあるぞ!!!!!!!!!」 yuz氏

【プチ】41
【タイトル】ルーミア「おっ! おおおおおお!! こ、こんな所にミスティアのダイイングメッセージがあるぞ!!!!!!!!!」
【書いた人】yuz氏
【あらすじ】
一文字
【感想】
これはやられた。なんせ、このあらすじだけで本編の実に三倍もの文量が有るのである。
それでいて、その一文字に込められた意味はとても大きい。
何故なら、そのダイイングメッセージを見た者の十人に九人はその意味を理解し、犯人を特定する事が出来るからだ。
これならきっとルーミアも真相にたどり着き、ミスティアの無念を晴らす事が出来るだろう。正に理想的なダイイングメッセージ。
これだけの情報をたった一文字に込めるyuz氏の手腕。げに恐るべし。

秋風 千と二五五氏
大妖怪、風見幽香も今は昔。

【作品集】プチ41
【タイトル】秋風
【書いた人】千と二五五氏
【あらすじ】
大妖怪、風見幽香も今は昔。
好奇心を失った幽香は、ただ自分の愛する花を探し歩くだけの毎日を送っていた。
いつものように花を探して森を歩いていると、秋なのに何かが足りないと気づいた。
【感想】
幽香の今の性格に対する解釈が割と目新しい気がする。
花映塚の会話なんかを思い出しながら読むと、ああそう言えばと納得できる点が多くあった。
一応、主役は幽香ともう一人いるのだが、かなり珍しい組み合わせ。
会話も設定も東方らしさに溢れた作品でした。

お見事――この一言につきる。

【作品集】プチ作品集 41
【タイトル】秋風
【書いた人】千と二五五 氏
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_p/?mode=read&key=1237955950&log=41
【あらすじ】
 秋も深まり、冬が近づいてきた。
 少なくなっていく季節の花を探しながら、風見幽香は様々なものに関心を失っていく自分の身を思う。
 全てのことに無関心になること――それは妖怪にとって死を意味した。
 自らの死期が近いことを悟りながらも、それを静かに受け入れる幽香。
 そんな彼女は、紅葉の遅い森の中で、小さな秋の神様に出会った。

【感想というか考察】

 構成(文章全体の進行)、文章(文章のタッチ、書き方)、物語(キャラクター感情や物語の概説)、その他(レビュー筆者がとりとめもなく感じたこと) の4点において、感想、考察を述べます。 

 ※以下、ネタバレを含みます。

◎構成:
 お見事――この一言につきる。美しい情景描写は正しい語句の選定だけでなく、優れた文章構成によってこそ生み出しえるということを証明するような作品である。

 このSSは幽香の死への想いの変化と、幻想郷の景色が秋になり冬へと進んでいく流れの2つの機軸を中心に展開される。
 この2つの軸が綺麗に絡まりあい、寂しく儚くも思わず目を細めたくなるほどの美しい情景が作り出されている。
 このSSを解釈するのに、秋・冬=死というイメージは不可欠であろう。
 秋・冬=死の流れで、幽香の感情の流れと、静葉の登場も含め幻想郷の風景の移り変わりを整理すると以下のようになる。
 幽香:①自らの死への諦観 → ②紅葉(=死に関するもの)の美しさに気づく → ③生への意欲の回復
 風景:①少なくなっていく花。寂しげな秋の景色 → ②静葉の登場、紅葉を生み出す神徳の具現 → ③幻想郷の壮大な晩秋 (幽香の感情と風景の移り変わりの①~③は対応して書かれている)
 特に注目すべきは風景であるかもしれない。①から③に進むにつれて、秋の強さがだんだん大きくなっていく構造になっている。
 そして、注意しなければならないのは、②によって方向性の転換が行われていることである。
 つまり、②において、幽香の興味をもつ対象が変化していることに気づくべきなのではないか。
 ①の時点では幽香はあくまで『花』=すなわち、『生の美しさ』のみに関心を向けているのである。
 だが、②から③にかけて、幽香の興味の対象は変わっている。幽香は『紅葉』=『死の美しさ』に目を向けるようになっている。
 そして、『死の美しさ』に気づいた幽香は生きることへの意欲を取り戻すのである。このシーンはラストの幻想郷の晩秋の美しい風景描写に顕れる。
 この文章展開はまさに、幻想郷の風景が幽香の心象に影響を与え、同時に幽香の心象の象徴となっていることを示している。
 作者の高度な情景構成力に脱帽せざるをえない。

◎文章:
 静かで落ち着いた文章である。一人称に極めて近い三人称で、少しシニカルな語り口が幽香の性格によくマッチしているように思える。
 風景の描写も美しく穏やかで、秋の紅葉の様子を表現するのに相応しい。
 そして、文章の底に流れる、作者の幻想郷に向ける、控えめだが豊かな優しさが心地よく感じられる文章である。

◎物語:
 構成でおおかた書いてしまったが、このSSの主題は、幽香が秋が深まっていく幻想郷の中で、生への意欲を取り戻していくことにあるのだろう。
 『死』に惹かれるというのが、なんとも妖怪らしいところである。
 だが、『死』を単に『生』と異なるものと捉えるのは早計かと思う。
 注意しなければならないのは、『幽香=花』の図式が東方で確立されている(少なくとも、そこそこ)ことだろう。
 作者もこの図式に則ってこのSSを書いたのだと思われる。
 『花』は生の象徴である。それゆえ、このSSでは、幽香が『花』=『生』を愛することは何の不思議もない。
 さて、『最も紅葉の鮮やかな椛は、まさに木の花』――この一節が『死』が『生』に内包されていることを示していると考えるのは、行き過ぎだろうか。
 すなわち、『死』もまた『生』の一部であると考えられるのではないだろうか。
 幽香は『死』から『生』に似た美しさを感じ取ったのではないだろうか。
 また、『「来年も見にくるわ。御神酒も用意いたしましょう。ねぇ、静葉様」』の一文から、四季が巡ること――春夏秋冬が循環することのダイナミズムが感じ取れる。
 この一文は、幽香が静葉を信仰し、生の意欲を取り戻すとともに、自然の循環という雄大さを示しているのではないだろうか。
 さて、このSSにおける静葉の役割だが、これは『死の擬人化』と捉えていいだろう。
 秋のイメージ、『人間からの信仰も、妹ほどに厚くありません』からもそのことは容易に判断できる。
 さらに限局すれば、『幽香が死に対するイメージの擬人化』となるか。
 静葉の描写だが、『えらく弱そう』、『こんな弱そうな』、『細い腕』、『身なりこそ弱弱しい』であり、恐怖のイメージとは程遠い。
 そして、『単なる気まぐれだった』、『幽香にとってはどうでもいい』のである。
 だが、『物怖じする訳でも無く、ただ、穏やかな表情を浮かべる』、『無愛想にも感じられるが、柔らかく、物静かな』、『これだけ近くに寄っても、幽かに思える存在感、身に纏う神聖な雰囲気』なのである。この『これだけ近くに寄っても』という一節が決定的であろう。幽香は自らの死期が近いことを悟っていて、その暗喩であるととることもできる。
 幽香にとって、死とは、大して恐ろしいわけでもなく、比較的どうでもよくて、だが、どうしてか無視することのできない、どうしてか畏敬の念を畏敬の念を抱いてしまう存在だったのではないか。
 そして、幽香は静葉の神徳を目の当たりにし、自分が静葉を侮っていただけであり、本当は彼女がとても美しいものだったことに気づく。
 
 『それにしても、本当に見事な紅葉――。ちっぽけな神様に何が出来るのかと思ったけど、完敗ね』 
 
 幽香は静葉の神徳を目の当たりにし、静葉を『静葉様』と呼び、信仰することを伝える。
 その言葉を聞いた静葉は、嬉しそうにはにかむ。
 この幻想郷では『死』ですら優しい――
 ここに、作者の幻想郷に対する温かな視線を感じることができると思う。

◎その他
 「秋風のうち吹くからに山も野も なべて錦に織りかへすかな――」であるが、後撰和歌集の中の一首である。幽香はこの歌を口にして、幻想郷の秋の美しさを讃える。
 『「寿命が延びちゃったわね」
 幽香は、とても嬉しそうな顔で、とても残念そうに呟いた。』
 この文には幽香の死に対する親愛が存在しているのではないだろうか。幽香は死に憧れをもつことで、生に対する喜びを取り戻すことができた。
 だが、本当の意味で死に近づくには死ぬしかない。死を愛するがゆえに死ねないという切なさが含まれているのではないだろうか。
 最後だが、
 『――妖怪でいる事に飽きたなら、神様になるのも、悪くないかもしれないよ。』
 この一文は、魅魔の台詞の改変だろう。では、この台詞はだれが言ったのだろうか。
 ――作者としては誰でも良いのかもしれない。語り掛け口調から、幽香でないことは確かだろうが(ただし、幽香の潜在意識という選択肢は存在する)、ただ何となく、どこからそんな優しい言葉が聞こえてくるんじゃないか――そういう意味がこめられているのではないだろうか。
 別に『妖怪でいること』=『生きること』にそれほど執着することもない、もっと気楽に生きていいよ、そういう意味ではないだろうか。

【総合評価】
★構成:お見事と言わざるをえません。さりげなくも、全体にいたるまでしっかりと構築された情景描写。作者が丁寧に物語を作りこんでいることがわかるSSです。
★文章:穏やかで美しい文章。秋の美しく切ない景色を雄大に描写しています。そして、幽香の静かな感情描写が心に響く文章です。
★物語:生の美しさから離れ、死に近づいていく幽香と彼女に新しい美しさを教える静葉の物語。小さな神様が起こした奇跡が言いようもない感動を与えてくれます。
★総合評価:素晴らしいSSだと思います。文章構成、物語の主題など、お見事の一言です。読んで損をすることはないと思います。切ない系のほのぼの、ほんわかを読みたいという方には特にお勧めです。作者の幻想郷と幻想郷のキャラクターたちへの優しさを感じ取れる作品だと思います。

地霊おでん おでんき羊さん

【プチ】 41
【タイトル】地霊おでん
【作者】おでんき羊さん
【あらすじ】
暑い暑い、夏
さとりは竹輪でおでんの汁を啜ろうとしたが
とても熱かったのではむはむしたのだった

【感想】
地上メンバーがさとりにずらずらとぐだっているお話
とある理由により黙して応対するさとりは渋い
姉妹愛に和んだと思いきや怒涛のあとがきが!

黒猫と少女 地球人撲滅組合氏

【プチ】41
【タイトル】黒猫と少女
【書いた人】地球人撲滅組合氏

【プチ】25
【タイトル】黒い幸と呼ばれた黒猫
【書いた人】脇役氏

【共通あらすじ】
ずっと忌み嫌われてきた黒猫が、1人の少女に拾われて…………

【感想】
どちらにも言えるのは、黒猫の感情の起伏が豊かで面白かった。
なんとなく流れは似ているけど、飽きるものでもないし、気にならない。
見所は、少女が黒猫に名前をつけるシーン。
(注:両者は独立した作品)

そら色キャンディ、両の眼に 過酸化水素ストリキニーネ氏

【プチ】41
【タイトル】そら色キャンディ、両の眼に
【書いた人】過酸化水素ストリキニーネ氏
【あらすじ】
その青は何の色?
雨か、空か、それとも………
【感想】
タイトルの『キャンディ』が何のことか、分かった時は戦慄もの。
心地のよい優しい文章が、かえって不気味さを映し出すが、
その不気味さによって、優しさがよく表れている。
言葉に出来ない不思議な寂しさや切なさが、ゆっくりとのしかかってくるような作品。
読んだ後まで(いい意味で)何かが心に引っ掛かる。
深い作品を探している方は、是非。