作品集112

Last-modified: 2011-11-04 (金) 18:23:08
11%ハクレイガール  胡椒中豆茶氏
ジャンルは壊れギャグです。

【作品集】112
【タイトル】11%ハクレイガール
【書いた人】胡椒中豆茶氏
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1273215794&log=112
【あらすじ】
 20.581歳。これが、御阿礼の子の平均寿命であって。
 0%。これが、ある日20.581歳で死ぬことが決まった子を持った親が、動揺しなかった確率だった。(本文より抜粋)
 
 20歳の朝を迎えた阿求と、ある願いを胸に新たな博麗の巫女となった「少女」の絆を描いたハートフルストーリー。
 繰り返される紅霧異変。走る阿求、宙を舞う「少女」、震える紅魔館……

 ――果たして「少女」の思いは阿求に届くのだろうか――
 
 幻想キネマ館にて2010年春公開予定ウサ。
【感想】
 ジャンルは壊れギャグです。
 シリアスな始まりからシリアスなままギャグに移行、そのまま突っ走る作風は個人的に大好物なのでとても面白く読めました。
 キャラ崩壊が苦手な人は注意かも。
【五段階評価】
 ★★★★★(久しぶりに腹筋がよじれるくらい笑ったので)

原作設定を踏襲してるように見せかけてブッ飛んでるカオス。

「11%ハクレイガール」 胡椒中豆茶氏
ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1273215794&log=112

原作設定を踏襲してるように見せかけてブッ飛んでるカオス。
なのにしっかりと着地するっていう怪作。
悲しいのか楽しいのか何がなんだか分からない。疾走感がやばい。
でもこの人の作品は少し下品な表現もあるからそこが
受け付けない人もいるかも。

『父さんは博麗の巫女に成ります。  稗田平蔵』

【作品集】112
【タイトル】11%ハクレイガール    【書いた人】胡椒中豆茶氏
【URL】ttp://coolier-new.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1273215794&log=112

【あらすじ】
『父さんは博麗の巫女に成ります。  稗田平蔵』
 見事な筆さばき。書道十六段の腕前が如何なく発揮されていた。
11%。と私は半紙を握りしめながら思った。
 私の父親はどういうわけか、カウントダウンの始まりの日、九人目にして博麗の巫女になるという選択肢を選んだらしかった。
 九人中一人だけがする行動を確率にすると、およそ11%だ。 
変な汗が背中に滲み出してくるのを感じて。
「こいつはヘヴィだ」と私は言った。(本文より抜粋)

【感想】
 高倉健似の阿求父が博麗の巫女になるお話だ。
 壊れギャグに見えるかもしれない。というか実際壊れギャグな面はある、の、だけど、他の人の読み方に何かを言うのはあまりよくないことだとは思っているのだけど、しかしそれでも、壊れギャグと、『そうとだけ』見るのはさすがに勿体無さが過ぎると思うわけで。このあたりは同作者の別作品『ラストプリンセス娘の挑戦』とかにも言えるのだけど。
 『ラストプリンセス娘の挑戦』『自称私立探偵○○○ 最後の事件』『ろくでなし』『探しもの、見失うもの、見つけもの』……私的には、この作者の長めの作品におけるテーマはわりと一貫しているように思います。
 すなわち、“世界を愛すること”。そして新しめの作品になってくるほど、“自分自身を愛すること”もすごく強調されてきてる。氏の作品には愛がある、みたいなことをかつて誰かが言っていまして、この読み取りはその受け売りなんだけども、たしかに、『愛』というのは氏の作品のキーワード足りうると思う。世界への、自分への愛を取り戻し、あるいは確認し、そっと胸の内にひそませて、これからもまた歩き続けてゆく……氏の作品は、本質的に、どうしようもなく王道な“再生の物語”なのです。
 そしてまた、初期状態としての喪失や絶望、それが何かに満たされてゆく過程、『こんな自分』にあんまりにも優しく語りかけてくる世界、……描かれる物語の切実さや誠実さ、それらを文章にそのまま乗せ、現すほどの技術も併せ持っている。氏の作品が評判高いのはこの辺りに理由があるのでしょう。
 ハクレイガールももちろん、この系譜の作品です。一つの読み方として、上述したような『愛』をキーワードにしたあれこれをオススメしたく思います。

 長過ぎって言われたので切ります。
 続き。

 ところでもう一つ、もう一つ補足したいことがありまして……前半に比して後半がダレてきてるんじゃないかという意見がちらほら見られまして、それはある意味正しいんじゃないかとも思います。あのバトルはね、父の意志を、想いを、何よりも雄弁な形で見せ付ける、阿求の心に刻み込む(そして阿求は父の危機に自ら行動さえ起こす!)という意味で、存在自体は問題ないのですが、それにしても少々ダレてないか。おそらくその指摘は正しい。感覚的にですが、正直、私もそう思う。何かこのバトルは、ちょっと、変だ。
 なのでここは、父の対戦相手たるレミリアに目を向けましょう。
 具体的には、上で名前を出していますが、『探しもの、見失うもの、見つけもの』の中にちらりと見えます。

(以下『探しもの、見失うもの、見つけもの』より抜粋)
 ま、今のあんただから話しとくけどね、吸血鬼条約の事よ、あれって実は私が幻想郷に一人で来た時にちょっとばかしここの腑抜けた妖怪と遊んでやってたらね、八雲が超マジで私にかかってきたんだけど、なかなか骨のある奴でさ、私もつい楽しくなっちゃって、相手も年期の入った妖怪でしょう、ほんとに楽しくてね、ついついあいつを結構やばいとこまで追いつめてやったら、あいつ私をスキマとやらに閉じこめたんだわ、うん私の勝ちって事。

 閉じこめられたのにお嬢様の勝ちなのですか。もちろん私は聞き返した。

 いいこと咲夜、あんただってわかってるだろうけど、世の中には使ってしまえば100%相手を簡単に倒せてしまう能力もある、私の運命を操る能力もそう、八雲の能力もね、先にそういう能力を使ってしまえば、それは自分の負けを認める事でしかない、わかるでしょ。
 私にも八雲にも、相手を単に倒すというだけならそれ以上簡単な事は無いってこと、だから大事なのは倒すか倒されるかではなく、相手に勝つか負けるか、そしてあいつは負けを認めた。
(以上『探しもの、見失うもの、見つけもの』より抜粋)

 わりとこの作者さんは、設定やキャラクターを、そこまで厳密ではない感触もあるのですが、しかしわりと、「繋げる」タイプである節があります(たとえば同作者の『ろくでなし』内に、『ラストプリンセス娘の挑戦』に登場するまりなに関するものと思われる記述があったりします)。ひょっとするとこのレミリアも、と考えると、あのバトルをもう一つの視点で眺めることができるかもしれません。そうすることで、なんだか色々なものがぴったり収まる感覚があるかも(実はこの辺そこまで詳細に検証してないんで誰かまかせた)。

 ていうか胡椒中豆茶さん次作の投稿まだかなーっていうか帰ってきてくれないかなぁ……。ラスプリの続きとか霊夢さんが妖怪の男とできちゃった結婚する話とか見たいのですが……。

【五段階評価では分け足りないので百段階評価】83/100点

Uを探して  大根大蛇氏
オカルトミステリー的な雰囲気が秘封倶楽部らしい話。

【作品集】112
【タイトル】Uを探して
【書いた人】大根大蛇氏
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1273051382&log=112
【あらすじ】
この連休中、我が相棒たる宇佐見蓮子は東京の実家に戻っていた。
その間、いっさい連絡が付いていない。
電話には出ないしメールも返さない。
でも、まあ、これはよくある事なのだ。

宇佐美蓮子さん25歳が横浜で交通事故で亡くなったり、
真っ黒い女の子が目の前で消えるという怪奇現象が大学で発生したりしているけれど、
あの馬鹿に連絡が付かないのはよくある事なのだ。

【感想】
オカルトミステリー的な雰囲気が秘封倶楽部らしい話。
毒舌なくせに蓮子の事を心配したり何だかんだ気にするメリーが可愛い。
結構長いですがメリーの一人称が軽妙でサクサク読めます。

大学生色が強い秘封倶楽部の怪談話。

【作品集】112
【タイトル】Uを探して【書いた人】大根大蛇氏
【容量】約89kb
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1273051382&log=112
【あらすじ&感想】
実家に帰ったはずの蓮子に連絡がつかない。そんなことはよくあること。
自分勝手でマイペースな彼女には仕方のないことなのだ。
でも流石に今回ばかりはメリーだって不安になる。
大丈夫、一字違いの宇佐"見"蓮子さん25歳が、蓮子の帰省と同じタイミングで事故に遭っただけのことなのだから――

大学生色が強い秘封倶楽部の怪談話。大学でサークルに時間と情熱を傾けた方々にとっては
学生としての秘封の話が好きな方も多いのではないでしょうか?
序盤から宇佐"見"さんは蓮子と別人のはずと示されていても、どんどん不安を煽られる展開が良いです。
バッドエンドなのかグッドエンドなのか?結末への不安や期待を裏切らずにビシッと決める、しっかり考えられた物語と
メリー視点の文章ががっちり合った、この容量に見合う作品です。
★★★★☆(間隔が空いても氏の投稿をずっと期待している人、いるのではないでしょうか)

巨大怪獣レティムルバス  かすとろぷ公氏

【作品集】112
【タイトル】巨大怪獣レティムルバス
【書いた人】かすとろぷ公氏
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1273164945&log=112

【あらすじ】
3月も終わりを迎えようとしていた幻想郷は、未だに雪に包まれていた。
霊夢はこの天候について、妖夢や天子が怪しいと思い、彼女たちをひっ捕まえて白状させようとする。
煮えたぎる鍋を前に、大ピンチへと陥る2人。
しかし、危ういところに早苗が興奮しながらやってきて、一大事だと霊夢に外の様子を見せた。

そこには、全長50メートルはあろうかという巨大怪獣の姿があった……。
【感想】
個人的に、これが初投稿とは思えないくらい、面白い作品でした。
誤字が目立つのが残念ですが、とにかく広げた風呂敷は全部解消しようとする気概が感じられます(その分、結構なボリュームになっていますが)
ゴ○ラやウルト○マンを見てきた世代の人たちなら、早苗と天子のやりとりにも、にやりとできると思います。
怪獣ものやコメディが好きな人にはオススメです。

レミリア・スカーレットのちょっと不安な一日  miyamo氏

【作品集】112
【タイトル】レミリア・スカーレットのちょっと不安な一日
【書いた人】miyamo氏
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1273152887&log=112

【あらすじ】
うだるような暑い日のこと。いつも通りの朝を迎えたレミリアは、咲夜の笑顔にどこか違和感を感じた。
その後会ったパチュリーにも同様の違和感をおぼえた彼女は、皆が何かを隠していることを確信する。
「自分は愛想を尽かされたのか?」
暗い過去を思い出し、不安になるレミリア。咲夜や美鈴は、そんな彼女に「明日まで待ってくれ」と告げるのだった。

【感想】
暖かい紅魔ファミリー。ベタと言えばベタですが、その分安心して読めます。
個人的に、ほのぼのとシリアスのバランスが絶妙だと思いました。
レミリアやフランの過去についての考察も「こういうのもありか」という感じで面白かったです。
オチがちょっと弱かったかなあという気がして、そこは少し残念なところ。でも、ほろっとなれるいい話が読みたい人にはオススメ。

藍より青い海  ガブー氏

【作品集】112
【タイトル】藍より青い海
【書いた人】ガブー氏
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1273371407&log=112

【あらすじ】
結界の修復作業に赴いた藍と橙は、突如結界の隙間に飲み込まれる。
次の瞬間、彼女たちはどぼんと音をたて、幻想郷にはあるはずのない海へ落ちていた。
水平線を眺めながら、自分たちが『外』へと放り出された事実を再確認する2人。
水に濡れたことで式が剥がれてしまった彼女たちは、仕方なく、紫による救助を待つのだった。

【感想】
東方SSではちょっと珍しい、海を舞台にした藍と橙の会話もの。
『突然外の世界へと放り出される』という危機的状況にも関わらず、次第に開き直って楽しみ出す2人の様子が面白かったです。
そして、どこまでも素直じゃない紫様が素敵。
澄み渡った夏の青空の様な、爽やかな雰囲気のSSでした。

レミリアの一日  へたれ向日葵氏
とてもとても穏やかで優しい、レミリアの一日を描いた作品です。

【作品集】112
【タイトル】レミリアの一日
【書いた人】へたれ向日葵氏
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1273032873&log=112
【あらすじ】
レミリアは、誇り高き吸血鬼。
しかし彼女は、とても悪魔とは思えない穏やかな性格で、穏やかな日常を送っている。
その日常を、覗いてみよう。
(一部本文より拝借)
【感想】
とてもとても穏やかで優しい、レミリアの一日を描いた作品です。
人間たちに合わせて朝に起き、妖精メイドの邪魔にならぬよう羽を収め、日光の下で美鈴の育てた花を愛でる。
何も事件は起こりません。ただただ、平穏に一日は過ぎていきます。
この作品を読むと、自分の心も穏やかになるのが分かります。
ちょっとフランドールが不憫なのはご愛嬌。
ぶっとびギャグやシリアスもいいですが、時には紅茶やコーヒーを飲みながら穏やかな作品を読んでみてはいかがでしょう?
【五段階評価】
★★★☆☆(時間があれば是非。個人的にはすごく良かった)

何も起こらない、ただただ穏やかな一日。

『レミリアの一日』作品集112 へたれ向日葵氏
 (自分は何度でもこの作品を推したい。何も起こらない、ただただ穏やかな一日。だがそれがいい)★★★★★

リア充の炎に包まれろ  遷都山氏

【作品集】112
【タイトル】リア充の炎に包まれろ
【書いた人】遷都山氏
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1273027487&log=112
【あらすじ】
幻想郷少女臭歴×××年 幻想郷はリア充の炎に包まれた。

【感想】
これはいいリア充w
みんながみんな職場で奮闘状態です。
栄養ドリンクを飲んでまで徹昼(?)するレミリアに始まり、幻想郷のどこもかしこもリア充の炎が燃え盛ります。
しかしこういう話にはオチと言うものがつきもので。本当のワーカーホリックの彼女には休んでもらいましょう。
なんだか楽しくなる作品です。
【五段階評価】
★★★☆☆(時間があれば是非。笑いながらわくわくできる作品だと思います)

LINE  夢月みぞれ氏

【作品集】112
【タイトル】LINE
【書いた人】夢月みぞれ氏
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1273338075&log=112
【あらすじ】
今日も紅魔館で何気なく働く小悪魔。
しかし何の前触れも無く、突然パチュリーから魔法を教えてもらえることに。
嬉しさのあまり彼女は異変に気が付けなかった。
【感想】
まず思ったのが、一体これは誰の物語なのか。
小悪魔のはずだけど視点が次々に変わるのでわかりにくかった。
それでもすらすらと読めたのが不思議と言えば不思議。作者の文章力のおかげかもしれない。
読みきれば、なるほど!と思わされるけれど、逆に言えば全部読まないとよくわからないSS。
あとオリキャラ含だから注意が必要。
なので★は五つつけたいながらも四つで。
しかしこれほど深くまでレミリアたちの能力を掘り下げて書いた人は、今までいなかったのではないだろうか。
★★★★☆(時間が有れば是非読んで欲しい。でもオリキャラ駄目な人は読まない方が吉)

なんとなく、な二人  こおりうり氏

【作品集】112
【タイトル】なんとなく、な二人
【書いた人】こおりうり氏
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1273228840&log=112
【あらすじ】
魔理沙とアリスが宴会で、スペルカードルールについてなんとなく語る作品。
スペルカードルールは基本的には異変解決者と異変を起こした者との一対一での弾幕戦、上海スタイルが多かったが最近は変な決闘方法を好む者もいる。それについてなんとなく会話する話。

【感想】
絶妙ななんとなくさ。
なんとなく雰囲気がよく、なんとなく二人の関係が良く、なんとなくいい作品。
時間が空き、なんとなく作品を読んでみたいというときなんとなく読んでみたらいかがだろうか。

【五段階評価】
★★★☆☆(なんとなく読んでみたほうがいい)

撃って学んで避けては学べ  はるか さん

【作品集】112
【タイトル】撃って学んで避けては学べ
【書いた人】はるか さん
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1273490412&log=112
【あらすじ】
 弾幕ごっこに勉強の要素が加わりました。
 そうしたら、レミリアが異変を再び起こしてしまい、やがて幻想郷全土が支配の危機に

【感想】
 序盤の真面目なパートはちょっと退屈だなあと思っていたのですが、中盤(レミリアVS紫)の辺りから急変
 これ、ギャグSSだったんですね
 EX三人娘関連のほのぼのエピソードやらディ○ニーランドのあのキャラクターやら、とにかくネタが盛りだくさん
 心に残ったフレーズは「雲居ゴブリン」
 そして「おっぱいバーで首の骨を折って死亡」

【五段階評価】
 ★★★★☆ 咲夜さんのおっぱいの描写がもうちょっとじっくりしていたら4.5コにしたかも

器物破損時に於けるセメダインの圧倒的有用性について  nekojita氏

【作品集】112
【タイトル】器物破損時に於けるセメダインの圧倒的有用性について
【書いた人】nekojita氏
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1273441985&log=112
【あらすじ】
紅美鈴の解雇は最早決定的であった。
レミリアが作ったフランの像を、不注意によってとはいえ壊してしまったのだ。この失態だけで解雇はおろか命を失う事すら覚悟しなければならないと言えよう。
紅美鈴は慌てなかった。紅美鈴は騒がなかった。
彼女が満を持して懐から取り出したのが、黄色いチューブの接着剤。
修復はいちおううまくいったけれども、これは大いなる混沌の序章に過ぎなかった……。

【感想】
超良質なコント作品です。テーマ無しに高い筆力を暴走させたらこうなるんでしょうか。
ネタがエスカレートしたと思ったら、いきなり
『氷嚢の情緒無き冷たさが脳幹を貫通して降りてゆき、奥歯にまで染みた。』
と来る。
とにかく一場面の終わるごとに余韻が半端ではありません。
テンポも良いです。語り口は仰々しいのに、何故だか軽快さを同時に備えている。
これはくせになる。いつまでも読んでいたいとさえ思います。
笑いよりも文章を求めて読んだら、期待は裏切られないでしょう。
作者自身がコメディを書き慣れていないようで確かに落ちは物足りないかもしれません。
ですがこれは物語として余韻を残す事を優先したんじゃないかと、私は思います。
氏でなければこのSSは書けなかったでしょう。
が、最も恐るべきなのはこの作者にとってギャグとは本領ではないということではないでしょうか。

【五段階評価】
★★★★☆
(この作者に関しては五つ星はシリアス作品に付けなくてはならないでしょう……)

体は曲がっても心は真っ直ぐに   愁氏
楼観剣は曲がっていた。刀身の真ん中で、ものの見事に直角に。

【作品集】112
【タイトル】体は曲がっても心は真っ直ぐに
【書いた人】愁氏
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1273081122&log=112
【あらすじ】
博麗神社を訪れた妖夢は、困り果てたように霊夢たちに相談する。

「楼観剣が曲がってしまったんです」
「知らんがな」

楼観剣は曲がっていた。刀身の真ん中で、ものの見事に直角に。

【感想】
刀にも心は宿るもの。それはもう、どこまでも人間のように。

……この発想はなかった。なんだこれは。
刀の鍔迫り合いとか、もしかしてそういう…
妖忌はきっと恋愛に詳しいんだと思うよ。
【五段階評価】
★★★☆☆(時間があれば是非)
はまる人ははまる。醒めちゃうとついていけなくなるお話。

なんか新境地が見出された感。

『体は曲がっても心は真っ直ぐに』作品集112 愁氏
 (なんか新境地が見出された感。そういうのもあるのか……妖忌は大変だったのね)★★★☆☆

天子にラブ・ソングを  おつもつ氏

【作品集】そそわ112
【タイトル】天子にラブ・ソングを
【書いた人】おつもつ氏
【URL】
ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1273235058&log=112
【あらすじ&感想】
天界で暇を持て余す天子が衣玖を伴って下界に行ってうんたらかんたら

タイトルは映画が元ネタだが知らなくても全く問題ない。
メインである天子が歌うシーンは実際にその光景をはっきり思い浮かべられるほど良く描写されていて
臨場感があって(・∀・)イイ!!
なんだかんだ言いつつも天子を支えている衣玖の思いも感じ取れるし
人を魅了し惹きつける天子の魅力がぎゅっと詰め込まれたほんわかした気分になれる作品。

【五段階評価】
★★★★(いくてんスキーなら+1)

不良娘と教師とチルノ  カラテマ氏

【作品集】112
【タイトル】不良娘と教師とチルノ
【書いた人】カラテマ氏
【あらすじ&感想】
チルノが魔理沙に勝つために妹紅や慧音と特訓する話。いわゆる王道的な話だけどうまく話がまとまっている。
アツいチルノが見たい人にオススメ。
【五段階評価】
★★★★★

親愛なる“幼年時代”さまへ  こうず氏

【作品集】112
【タイトル】親愛なる“幼年時代”さまへ    【書いた人】こうず氏
【URL】ttp://coolier-new.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1273069837&log=112
【あらすじ】
 少女に夜は歩かない。
 “幼年時代”はゆるやかに色褪せていく。
 終わりのない子供である彼女のもとからも、例外なく失せ始めていく。
(本文より抜粋)

 フランドール・スカーレットのおはなし。

【感想】
 うううううううううんこれはすごい。
 ぶっちゃけ理解できてる気はしないというか表面を掬い取れてる気すらしないんだけど、これはそういうものでいい。少しはなれたところから、真っ黒い、過度な輝きを持たない、冥い宝石を見つめているような、そんな感覚。そしてそれできっといい。
 こうずさんは、私自身全て読んでいるわけではなく、また感覚的な言い方で申し訳ないんだけど……文章がキラキラしてる、とまではいかなくとも煌めきが時たま見られるというタイプの方のような気がします(同様の印象はNさんあたりにも持ったりします)。これは単語選びのセンスなのか、それとも単語の繋ぎ、語りのセンスなのか……このあたりはきっちり分析したわけでもないのでわからないのですが。ただその分、と言ってしまっていいのか、リーダビリティを少々犠牲にしてるところがあるかな、とも(ただ、最近はわりと普通に読みやすく、そこまでリーダビリティ犠牲というわけでもなくなってきたかもしれない)。
 さてこの作品に関してですが……作者さん自身に文章煌めき度の上昇&リーダビリティ下降のアビリティがあるような気がするとは上述しましたが、この作品は、そのアビリティを極端に強化した文章によるものと思います。言葉、文章一つ一つをじっくり楽しみたい作品。けどめっさ読みにくい。その読みにくさは、お話のよくわからなさというか掴めなさ(上述したように私はこのお話を「掴んで」はいないです。フランドール・スカーレットを見つめている感じ)も影響しているのでしょう。
 でもね、よくわからないけど、よくわからないからダメって類のお話ではないような気がするのです。
 というか、この文章煌めき度の高さと、するりと飲み込ませてくれないお話が、“フランドール・スカーレット”と“幼年時代”を描くにあたって凄まじくマッチしている。ハンパなく読みにくいのは確かなんだけど、それでもたまにはこういう作品を味わってみてはどうかというかんじでオススメです(ああ、『味わう』という表現がすごくしっくりくる)。

【五段階評価では分け足りないので百段階評価】78/100点

仮面舞踏会の夜に  デルフィ氏

【作品集】112
【タイトル】仮面舞踏会の夜に    【書いた人】デルフィ氏
【URL】ttp://coolier-new.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1273019642&log=112

【あらすじ】
(以下作者サイトより抜粋)
 仮面舞踏会への招待状を受け取った阿求は、紅魔館へとやってきた。
 門にいたのは見慣れない老人。けれどそれは美鈴が変装した姿だった。
 ぬえの力を使って姿かたちそのものを変える、魑魅魍魎の仮面舞踏会。

 ――その中で、阿求はパチュリーの姿を探している。

 パチュあきゅです。
(以上作者サイトより抜粋)

【感想】
 雰囲気が素敵、などと抽象的な言葉を使ってしまうのはレビュー(紹介)をするにあたってはわりと負けた気分なのですけども、いやしかし雰囲気が素敵。
 自分のなりたいものへと変わることが出来る幻想の仮面舞踏会。そこに招かれた、稗田阿求。この作品の彼女はパチュリーと『とても』仲が良いのですが、しかし基本的には幻想郷の誰しもとかかわりを持ち、そして一方誰しもと深いかかわりを持たないキャラと言えるであろう阿求の視点から見るこの仮面舞踏会は……『向こう側』の雰囲気を出してるといいましょうか。幻想郷においてすら幻想的な、非現実の空気。酩酊しているような、まぼろしを見ているかのような、淡い時間。そのような表現がとても上手。これは作者さんの文体、いやもうちょっと広義に、作者さんの小説の書き方とも絡み合って効果を出してると思う……ちょっと感覚に任せた言い方をすると、女性的なのですよね。文体やキャラの心情もそうなんだけど、何を文章として表すかのチョイス、目の付け所みたいなのが、すごく女性的。そのあたりが、良い意味でのふわふわ感に繋がってる気がします。
 ただ強いて言うならこの作品、阿求が見る仮面舞踏会を描いていたのが、当然ながら(?)仮面舞踏会を舞台にしたパチェあきゅへと移り変わってゆくのですが……個人的には、阿求が見る仮面舞踏会そのものをもっとじっくり描いてほしかったかもしれません、というかそれだけで一作あっても良かったと思うくらい。そのくらいに、この作者さんが書く、阿求が見る仮面舞踏会そのものというのが、見てて面白く、興味深かったので。
 とまあ、素敵な雰囲気を身にまとった良作でした。

【五段階評価では分け足りないので百段階評価】71/100点

妖精たちの遠い夏  blue_nowhere氏

【作品集】112
【タイトル】妖精たちの遠い夏    【書いた人】blue_nowhere氏
【URL】ttp://coolier-new.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1273598362&log=112

【あらすじ】
 チルノの、妖精の一年。
 夏が来て、夏が来るまでのお話。

【感想】
 妖精の一面。
 東方における妖精というのは、わりと毎日楽しそうに見えます。なんかいろいろ悪戯なり何なり好き勝手して、きゃはきゃはけらけら笑ってるイメージ。刹那的にはたしかにそう。
 なのですが、もう少し広く考えてみると……私たちにとっては、ときに残酷に思えるすら程度に『違った』生態であり、『違った』生き方をしてるんじゃないかなと考えることがあります。この作品は、私のそこのところの思考にするりと入ってくるものでした。もしかしたら作者が考えて欲しいのとはちょっとずれているかもしれない。この作品に「物語」がないわけではない、というかちゃんとあるのだけど、私はそこよりも、その物語を通して描かれてる「妖精のありかた」みたいなのに興味を引かれたから。三人称で、少しキャラから『離れた』感覚のある記述も、その演出に一役買っているように思います。
 読んでみて、妖精への思考がちょびっと広がった気がします。短いしオススメ。

【五段階評価では分け足りないので百段階評価】64/100点