作品集120

Last-modified: 2011-03-06 (日) 21:53:23
吸血鬼と猫  まりまりさ氏
レミリアと猫のお話、としか言えない。

【作品集】120
【タイトル】吸血鬼と猫
【書いた人】まりまりさ氏
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1279371560&log=120
【あらすじ】
レミリアと猫のお話、としか言えない。
読めばわかる。 というか、あらすじは書けない。
書かないほうが楽しめる。

【感想】
一言で言うなら、このSSは先の見えないすべり台ね……
読者の気持ちがあるベクトルに向かった所で、急に別ベクトルへ向かわされるわ。
そしてそのベクトルへ急降下したと思ったら、上がっていた、何を言ってるかわからないと思うが俺もわからない状態よ。
穏やかな気持ちに、そして胸が締め付けられる思いになれるいいSSだったわぁん(だぶるはぁと
そして一番驚いたのが21.58KBという容量ね。 ささっと読めて、10もないように思ってたからビックリだわ。
これが作品に引き込まれるということなのね、得をした気分になっちゃった♪

【五段階評価】
★★★★☆(とても良作、しかし傑作ではない)

深い悲しみは吸血鬼さえも壊してしまうのかもしれない。

『吸血鬼と猫』作品集120 まりまりさ氏
 (つい先日スレで話題になっていたが、これは確かに凄い。深い悲しみは吸血鬼さえも壊してしまうのかもしれない。最後の一文はどういう意味を持つのか)★★★★★

なんていうか、もう、読め!

吸血鬼と猫/まりまりさ氏
ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1279371560&log=120

なんていうか、もう、読め!

仄暗い湖の底から『声』を届けて  白々燈 氏

【作品集・ジェネ】 創想話120
【タイトル】 仄暗い湖の底から『声』を届けて
【書いた人】 白々燈 氏
【URL】 ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1279463406&log=120
【あらすじ・要約】
村沙は命蓮寺で日常を過ごすなか奇妙な夢を見る。
そしてとある人物と出会い親交を深めていくなかで…
【感想】
切ない話だが不思議と読み終わったあとに鬱にはならない。
オリキャラが出ているが幻想郷に溶け込んでいて不自然ではないのでオリキャラはちょっと…という人でも読めると思う。
文章量が多いが退屈にならず気にならないし文中の伏線もしっかり回収してあるので
量に足踏みせず読んでみて欲しい。

【五段階評価】
描写★★★★★
おすすめ度★★★★★(命蓮寺スキーじゃないなら-1)

風祝が愛した幻想郷  可南氏

【作品集】120
【タイトル】風祝が愛した幻想郷
【書いた人】可南氏
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1279596162&log=120
【あらすじ】
ある夏の日風邪をひいた早苗さんを霊夢が看病しにいく事になりましたとさ
【感想】
全体的にキャラクターが感じた事、思った事をそのまま描写するのではなく
地の文の風景描写やキャラクターの動作で読者に想像させようとしてる。……多分。
読者に想像の余地を残す作風は好きなのでそこは良いのだが、全体的にセリフと地の文のバランスが変わらず
起伏に乏しい印象を受ける。
もう少しバランスにメリハリをつけてここは強調したいって部分を作るといいのかも。

【五段階評価】
★★★☆☆ あと少し違いを出せればもっと良かった。

『忘れじのイカロス』  873氏
橙、天子、にとりという主人公三人の組み合わせを不思議に思った人も少なくないだろうけど

【作品集】創想話120
【タイトル】『忘れじのイカロス』
【書いた人】873氏
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1279520260&log=120
【あらすじ】

 最近の妖怪の山の渓流では、意外な人物が釣り糸を垂れている。
 退屈な天界を抜け出して、幻想郷で釣りをすることがお気に入りの天子、
 妖怪の山に住む橙、にとりと顔見知りになり、親しく話を交わすようになる。
 ある日、藍からの連絡が途絶え、不安に思った橙が天子とにとりを伴って紫を訪ねて行くと、
 出迎えたのは普段と全く違う、冷たく、突き放すような紫の一言だった。
「藍は封じました」

【感想】
 橙、天子、にとりという主人公三人の組み合わせを不思議に思った人も少なくないだろうけど、
 この話はこの三人の魅力が噛みあわさって素敵な化学変化を起こしている。
 オリキャラはオリ「キャラ」というほどのものでもないのでオリキャラを敬遠する方もご安心を。
 三人に加え、文、萃香、幽香、妖夢、幽々子、そして紫などメインキャラ全員の描写がいい。
 文章も読みやすく、この長さが気にならず一気に読めた。
(というか巻を置くあたわず、といった感じで一息に読まされてしまった)
 表現を漢字とひらがなとで意図的に使い分け、
 目が追う文章の読みやすさというものに気を払っているのだと思う。

 おそらく主人公三人組の関係性の読めなさと、153kという話の長さ、オリキャラタグが避けられる原因なんだろうけど
 そういった初見のとっつきにくさをとっぱらってぜひ読んでほしい。
 

【五段階評価】
 ★★★★☆(4.5 八雲の式は愛で繋がっています。という方は+0.5)

冒頭を読んだ瞬間。あ、これはいかん。引き込まれた。と思いました。

【作品集】創想話120

【タイトル】忘れじのイカロス
【作者】873 氏
【容量】約154kb
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1279520260&log=120
【あらすじ】
 突然、橙の式が剥がされた。
 雨の所為でもない、水を被ったわけでもない。剥がされたのである。強制的に、突発的に、関係を絶たれたのだ。
 橙の式が剥がせるのは、その主である八雲藍のみ。主の身に危険を感じた橙は、友達である河城にとりと――天人の比那名居天子と共に、藍の安否を確かめることに。
 そこに待ち受けていたのは、悲しくも愛に溢れた昔話であった。

【感想】
 冒頭を読んだ瞬間。あ、これはいかん。引き込まれた。と思いました。

 何気ない会話から事件が起こるまで、そこから解決へ向かうまでのひたむきな努力。真核に向かうまで自分を厭わない橙の強さと無邪気な真っ直ぐさ。
 それを支える友人たち。友達想い?そんなチャチなもんじゃ断じてねぇ。友達のためなら、友達を助けるためなら自分の命さえ惜しまない。最後に友達が笑えるのなら、
死んでよかったとさえ思える。こんな関係、そんじょそこらじゃ見れないと思います。

 ひたすらに情報をかき集めて走り回っていたらこうなった。という感じ。
 地の文よりも台詞が多く、スピード感のある作品になっていると思いました。
 ただ、台詞といっても文字の羅列ではありません。一つ一つの台詞には、確かに「言葉」がありました。人の心を揺るがすほどの。
 それは冷ややかだったり、暖かかったり。不明瞭だったり、不思議だったり。これほどまでに言葉は力強いものだったかと、キャラが作品の中で生きているのだというこ
とを痛感させられました。悔しいっ!でもっ(ry

 さらに驚くべきことはこの容量に対して、一度も止まらずに読み続けることができたということです。読んだのではなく、読まされたのです。この膨大な量を。
 ラストシーンを間近にして、全てがどう絡んでいたかを知ったとき、心だけではなく身体も粟立つと思います。
 所々ある小ネタにクスリときてしまう方もいるのでは。

【五段階評価】
 ★★★★☆
 是非一度読んでほしい。投稿ペースが速い今作品集でも、こんな名作が埋もれているのだということを知ってほしい。
 3作目にしてこのクオリティは評価されるべき。

 個人的には星5つ
 今年に入って、今まで見た中で最高だと思った。
 芯で繋がっている、とはこういうことを言うのだろうな。支え、支えられ。愛し、愛される人のいる空間。少しだけ羨ましいと思ってしまった。

橙を中心に天子とにとりが頑張るストーリー。

【作品集】創想話120
【タイトル】『忘れじのイカロス』
【書いた人】873氏
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1279520260&log=120
【あらすじ】
 前スレ426(一番上のレビュー)に詳しい。
 橙を中心に天子とにとりが頑張るストーリー。
 その他大物妖怪が結構出てくる。(要はラスボスたち)魅魔様の気配も無い事も無い?
【感想】
前スレ426でレビューされた作品を読んだ。泣いてしまった。
中盤くらいまでは、うん、まあ、普通に良い話だなぁ、って感じだったんだけど、
半分くらい読み進めたところですごく衝撃的なことになる。そして涙が溢れてきた。
紹介してくれた人たちありがとう。

【五段階評価】
★★★★★(これは5をつけても良いと思う。)

この界隈で俗に言われる『王道』と呼ばれるイイハナシだな、というのが第一印象。

【作品集】120
【作品】忘れじのイカロス
【作者】873氏
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1279520260&log=120

物語 15点
 橙の式が外れた。その原因を知るためににとりと天子を含む主人公三人が、紫の過去にに隠されていた悲劇を知るという話。ネタバレすると投稿当時世間で話題になっていた『はやぶさ』とのクロス。現代の科学技術の結晶たるそれと東方を組み合わせるというアイディアがまずすばらしい。また、後述するが登場人物のチョイスが独創的。全体として先を読み進めたくなるような物語だと思う。こういうの好きだ。

キャラクター 13点
 橙に天子、そしてにとり。一見なんの関係もなさそうな三人を作品の主人公たちとして作り上げたのが秀逸。なんとなく『あり』だなと思わせる謎の説得力があった。その他のキャラクターもなかなかに魅力的であり、不自然にならない程度に原作と自己アレンジを組み合わせようという努力が感じられた。やや紋切り型のパフォーマンスや人物設定にも作者の愛が感じられるので目がつぶれるだろう。

ストーリー 14点
 この界隈で俗に言われる『王道』と呼ばれるイイハナシだな、というのが第一印象。橙をめぐる物語がうまく動いていて、心を動かされるような話だった。ただ現実の『はやぶさ』に思いをはせすぎたのか、序盤から読者が持ったであろう疑問や違和感が後半ではやや説明不足になっているようにも感じた。強調したい部分(書きたい部分)に目を向けさせようとするあまり、その他の内容を予定調和気味にこなすのもいかがなものか。いや、王道だからいいとも言えるんだけどね。

構成 15点
 詳しくは後述するが、序盤の背景説明がややぶっきらぼうな点以外では理想的な導入だと思う。「珍しい」と思わせる中心人物たち、序盤に提示される謎、違和感のない場面展開、クサい台詞、少しずつ明らかになる真相など構成はうまいと思う。細かい粗をあげる事はできるが、そんなこと気にさせないくらい吸引力があった。
 個人的にはタイトルの時点で掴みがうまいと思った。というか思わず口に出して読んだ後にクリックしてしまった。読み終えた後にも納得できるし。

表現 14点
 良くも悪くも標準的な文章。場面ごとの表現には良い所も多いのだが、リズムや接続が悪く感じられる事もあった。地の文では一般小説のような丁寧な言い回しが見られるも、軽いギャグパートや会話文がそれに反して砕けすぎてる気もする(特に序盤)。また、読みやすさを意識したのか改行が多いのだが、改行する意味があまり感じられない部分や、心がけていたと思われるルール(会話文と地の文の間は原則空白改行する)が徹底されていなかった部分もあった。全体的に、例えるならプロアスリートの動きの形だけ真似てるアマチュアような不自然さがあった。
 ちょっとキツくてごめん。

総点 71点
 なんだか悪いところばかりあるような言い方になってしまったが、非常にできのいい作品だった。話題性や評価に合致した秀作。これで三
作品目という後書きに驚かされた。文章表現に気をつけたり設定や展開の細かい違和感を消せればさらに良くなると思う。いわゆる王道な話が好きな人、タグに興味を持った人、感動する作品を読みたい人におすすめできる。

『V.S.O.P. - July 20 2010』  即奏 氏
個人的にはもう、この作品が今年(2010年)のMVPでいい

【タイトル】『V.S.O.P. - July 20, 2010』
【書いた人】即奏 氏
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1279675294&log=120

【あらすじ】

騒霊リリカは考える
舟幽霊ムラサも考える
霊の存在意義とは何か?
自分たちの存在意義とは何か?
だが、そんな哲学っぽい疑問からこの物語は始まりはしない
物語に始まりがあるとしたら、それはルナサは水が苦手だったということで、その原因がレイラに由来するのだけど
ならば、レイラとプリズムリバー姉妹の関係が主要なテーマかと言えば、そんなこともない
そもそもレイラはストーリー上は特に重要な役割を果たす訳じゃない
むしろレイラがどうしたとかを、はるか彼方に吹っ飛ばしつつ、リリカやムラサの哲学っぽい思考を割とあっさり振り切りつつ、またはそれら二つを推進力にしつつ、物語は彼女にとってら生涯で最高のライブへと強制進行する
何故なら、このお話はあくまで、プリズムリバー姉妹の生き様の話だから、彼女らの生き様そのもの、つまりは音楽にしかストーリーに意味を求めてはいけない

しかし、ライブが進むにつれて、見えてくるのは、リリカやムラサにとっての、「答え」だったりするのだが
やはり哲学っぽく物語が一つの答えに終息するわけではない
大事なことなので二回言うが、これはあくまで、とあるポルターガイストたちの生き様の話であって、テーゼではない
だから、教訓や真理は得られないかも知れない 
でもきっと、熱い情動といい知れない爽やかさは得られる

【感想】
「一つのライブを書ききってみたい!」
とは作者氏のあとがきだが…これを普通の書き手が思いついても、ここまでやる人は絶対いない
普通に考えれば、リリカ(主人公)にとって生涯で最高のライブというものを表現するだけなら、あれほど長い尺を取る必要は無いし、
作者氏ならば、あの五十分の一程度の尺でも、十分に表現できるはずなのだが、
あえてあの尺でライブをノーカットでやることによって、リリカと読者の肉体的な一体感(読むのにも労力が必要という意味で)を図るという壮大な趣味に走りまくり&高難易度な構成を貫き、なおかつしっかりと高品質に描ききった表現者魂は、趣味の分野とはいえ戦慄を憶える
自己満足もここまでやると、自己満乙とかそういうレベルじゃなくなる
呆れるとかを通り越してブラボー!と感心するしかない

【五段階評価】
客観的には★★★☆☆
自信を持って誰にでもに勧められるかといえば、そういう作品とは言い難いが
読者にアピールする熱量は確かにある 
だからとにかく一度読んで欲しい

主観的には★★★★★
個人的にはもう、この作品が今年(2010年)のMVPでいい

書き分けが難しいとされるプリズムリバー三姉妹を個性を生かして丁寧に動かしている。

【作品集】120
【作品】V.S.O.P. - July 20, 2010 Ready,Steady,Go!!(それぞれ三分割)
【作者】即奏
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1279674876&log=120
ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1279675074&log=120
ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1279675294&log=120

物語 16点
 プリズムリバー楽団の初となる雨天ライヴを描いた長編。ありがちなストーリーだが、『一つのライヴを書きってみたい!』という作者の情熱を感じられる作品で、安易な省略表現に逃げることなく最後までライヴの全てを書ききったのは見事。登場人物も結構多くそれぞれに独自設定などが見られるが、それも作品のいいアクセントとなっていると思う。具体的な音楽用語を使った演奏描写、主人公の高揚感、合間に挿入されるエピソード、熱い台詞などライヴパートの圧倒的なボリュームが素晴らしい。

キャラクター 14点
 書き分けが難しいとされるプリズムリバー三姉妹を個性を生かして丁寧に動かしている。序盤で登場する準メインキャラの村紗や早苗などもしっかりと見せ場を作り、楽曲のモチーフキャラも生き生きとしている。しかしそれぞれのエピソードが多すぎて食傷気味になったのも確かである。丁寧に書いているせいで余計に読者は新しいキャラにスポットが当たる度に振り回される気分になるだろう。だがここから削ったり増やしたりするのも難しいところだと思われる、このお祭り騒ぎ的な雰囲気を重視しての評価である。

ストーリー 15点
 とにかくライヴの一言に尽きる。それぞれの思いをもってステージに立つ姉妹の勇姿が素晴らしい。作中のキャラも読者も文字通り一体となってその場に立ち会ったかのような気持ちになれるだろう。序盤でしっかりと積み重ねたものがあってこそのカタルシスが心地よい。音楽って、ライヴっていいなと思えるストーリーだった。しかし前述したように多すぎる個々のエピソードが少しバランスが悪く感じる。

構成 15点
 起承の部分でライヴ前を、転結を大きく使ってライヴを描く構成が良い。もし仮にライヴだけを書いていたなら独りよがりになってしまっただろう、丁寧に背景やキャラを書いたからこそのライヴパートの満足感がある。また、序盤ではテンポよくギャグを交えて引き込ませ、中盤でキャラの内面や背景を描き、全体の多くを占める後半でライヴとして爆発させた事こそが読者を夢中にさせた力だろう。

表現 14点
 文章そのものは標準並。テンポの良いネタの挿入で明るくさせたり、丹念な心理描写や情景描写、そして音楽用語を豊富に使用した演奏描写と表現の工夫が見られた。しかしライヴパートでの音楽用語の洪水は確実に一部の読者を置いてきぼりにする要因になるだろう。知っていると確実に楽しめる、でも知らないと読み飛ばすには多すぎるのでそこが問題か。こういったある程度の知識を必要とする話はともすれば作者の独りよがりとなってしまうので注意した方がいいだろう。理想は知らなくても知っていても楽しめる表現だがそれは難しすぎるか。
 個人的な話だが私は音楽知識はかじった程度、楽器もほとんどできない素人だが十二分に楽しめた。ライヴは観客としても演奏者としても参加したことが何度かあるが、そういった臨場感や現実感もうまく書けていたと思う。

総点 74点
 素晴らしい。文章では表現が難しいライヴを描いた傑作である。プリズムリバーが好きな人、音楽が好きな人、熱い長編が読みたい人におすすめできる。ただし音楽知識が皆無の人の場合は楽しむには難しいだろう。

個人的プリバもの最高峰。

【作品集】 120

【タイトル】 V.S.O.P. - July 20, 2010 Go!!
【書いた人】 即奏氏
【URL】 ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1279675294&log=120
【あらすじ&感想】
同タイトルReady・Steadyから続き、雨の中で初めてのライブを決行するプリズムリバー三姉妹。
そのライブの模様をリリカ視点で完全ノーカットで書ききった力作。

個人的プリバもの最高峰。Ready・Steadyは読まなくてもいい(読んだ方がそりゃ良いんだけど)
これだけは読め、と言いたくなるほど、単品だけでも素晴らしい。
上述した作品でのライブシーンの難点に対し、真っ向から全部書ききる、という力業で挑んだといえる。
それぐらいライブの描写密度、内容が凄い。この作品の魅力はライブシーンに尽きる。
実際にその時々の原曲(アレンジでもいいが)を流しながら聴いてみるといい。そうでないと勿体無い。
描写が生き生きと見え、そして本物のライブシーンが想像出来るように映ってくるはずだ。
実際にライブを行っているリリカの視点だというのも良い。ライブの生々しさ、舞台上の緊張と楽しさが伝わってくる。
これが観衆から、或いは三人称だけで書いてしまってたらきっと魅力は、熱さは半減していただろう。
とにかくプリバもの読むならこれまず読めと言いたくなる。そんな作品。

【五段階評価】
★★★★★   鉄板だろう、と言いたい。

腐れ谷  耳かき氏

【作品集】120
【タイトル】腐れ谷
【書いた人】耳かき氏
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1279723565&log=120
【あらすじ】
 地底の一角にある廃れた洞窟。そこには呪いや疫病、毒等の『穢れ』が溜まっているところであり、『穢れ』の一つである病を操るヤマメにとっては
 周りに気を使わずに過ごせる希有な場所であった。
 ある日、のんびり昼寝をしているヤマメのもとに地上から厄神さまがやってきて……

【感想】
 ちょっと珍しいヤマメと雛のお話。オリキャラタグが付いているが、狂言回し的な役どころであり鼻につかないのでよほど気にする人でなければ
 大丈夫だろう。『穢れ』を操るヤマメと『穢れ』を集める雛。似てるようで違う、けれど似た者同士な二人のふれあいが心に響きました。
【五段階評価】
 ★★★☆☆(ヤマメも雛も好きだよ!という人なら+1)

神さまはどこへ向かうの?   月空 氏

【タイトル】神さまはどこへ向かうの?
【作品集】120
【作者】月空 氏
【容量】約22kb
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1279704546&log=120
【あらすじ】
 列車の揺れに身を任せて。かたんことん。かたんことん。
 一体どこに向かうのでしょう。向かって、それからどうするのでしょう。
 諏訪子と早苗、珍しく二人だけで行った場所はどんなところだったのでしょう。

【感想】
 なんでもないただの一日。その中にある一場面。
 大きく動くところもなければ、盛り上がる場所もない。規則正しく揺れる電車のように、淡々と昔の話を掘り下げていくだけのお話。
 何も考えずに頭の中がすっからかんになると、昔のことを思い出しやすいようです。

 幼い早苗と諏訪子の出会い、神との出会い、力との出会い。
 無邪気な早苗の言動に頬が緩む。なんにでも興味が持てた子供時代、行きたい場所がたくさんあっても、まだ帰る場所があるというのはいいことです。
 全体を通して薄い感じだが、文章の雰囲気は評価したい。

【五段階評価】
 ★★★☆☆
 電車の中で読むと入り込めると思います。

暇な巫女と締め切りに追われる天狗  UC 氏

【タイトル】暇な巫女と締め切りに追われる天狗
【作品集】120
【作者】UC 氏
【容量】約13kb
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1279803851&log=120
【あらすじ】
 お腹が空いた。500mlのペットボトルが私だとすると、50mlも入ってないくらいお腹が空いている。(本文抜粋)
 お腹が空いて空きすぎて、ついに雑草でできたスープまでも作ってしまう霊夢。
 全てが食べ物に見えてしまうのではなかろうか。そんなとき、一枚のビラが霊夢の目にとまる。
 『文々。新聞製作スタッフ募集!』

【感想】
 話の内容的には、どこにでもありそうなきっかけと終わり方である。
 だがただの単調な作品とあなどるなかれ。この作品で注目してほしいのは、文章の中にあるもりだくさんの比喩表現。このセンスは凄い。
 話のテンポも実によく、面倒くさがりで天然な霊夢と珍しく苦労人な役回りをしている文のシーンが脳内に浮かぶよう。
 こういうあやれいむいいじゃないですか。

【五段階評価】
 ★★★☆☆
 もうちょっとこのコンビを見ていたかったです。

素敵畳愛好論  わおん 氏

【作品集】120
【作者】わおん 氏
【タイトル】素敵畳愛好論
【容量】約17kb
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1279592036&log=120
【あらすじ】
 畳は一生愛し愛される関係を続けなければいけないのではないかと思う。
 そうして愛する畳の上で、想い人に心を寄せ、しまいには成就させなければいけない。
 これはラブでちゅっちゅな物語なのだ。だがいつそうなるかは定かではない。

【感想】
 畳の部屋が恋しくなるお話。
 読み始めたときは、文字の羅列が長く途中でだれることはないかと心配していたが、それはどうやら杞憂だったらしい。
 畳をどれほど愛しているかというところから早苗の物語は始まっており、話を外側から包み込んで核心に触れていく様子がとても読んでいて気持ちよかった


 ぶつぶつと文句を垂れたり想い人への妄想にふけたりするところはさながら四畳半に住む学生のようであり、想い人と畳どちらへの愛が重いのかと訊きたく

なる。
 畳最高ですよ。

【五段階評価】
 畳   ★★★★★(告白するなら畳の上がいいです)
 両想い ★★★☆☆(ただし畳に限る)
 描写  ★★★★☆(読みやすくストンと読めてしまう)
 全体  ★★★★☆(もっと評価されるべき)

二つの太陽  Rekuto氏

【作品集】120
【作者】Rekuto氏
【タイトル】二つの太陽
【容量】9,98KB
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1279727048&log=120

【あらすじ】
 突然、星の入浴中に乱入してきたナズーリン。
 わけのわからぬ力説をしたあと、「私に抱かれてくれ!!!!」とまで言う始末。
 そんなナズーリンを星は自室に連れて行き説教を始めるが…
【感想】
 わりと短めな作品ですが、多少ぶっ飛んでいるナズーリンが爽快でした。
 テンポが良く、何だかんだ言っても星はナズーリンのことが気になっているんだろうなぁ、と思わされました。
 文章自体は短めなのであっさりさくさく読めます。
 くすっとしたい貴方にお勧めの作品となっていると思います。

【五段階評価】
 ★★★☆☆(少し短かったので3です。どうせならもっと読みたかった…!)

本物の風を見抜け  神田たつきち氏

【作品集】120
【タイトル】本物の風を見抜け
【書いた人】神田たつきち氏
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1279891197&log=120
【あらすじ】
「わだぢ、じんぶんぎじゃやべる」

天狗の新聞大会が近づくある日、様子を見に来たはたてに向かって、文はそういった。

【感想】
文章も読みやすく、感情移入も楽です。
気持ちがストレートに伝わってくるので、色々と感銘を受けました。
椛の気持ちもしっかりと描かれています。多少お約束の展開ともいえなくもないですが、それがいい、ということで。

ただ一つだけ。ネタバレになるやもしれませんが、
あるキャラとあるキャラ(同性)が最初からくっついており(友好じゃなくて彼女という恋愛的な関係)
それがデフォルトとして扱われているのに強い違和感がありました。
まぁ、それは私が死ぬほど百合が嫌いなだけなのでいいのですが。

それを差し引いても、十分に楽しめたといわせていただきます。

【個人評価】
★★★★☆(百合を許容できる人なら★★★★★)

女の価値  アデリーペンギン氏

【作品集】120

【タイトル】女の価値
【書いた人】アデリーペンギン氏
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1279950156&log=120

【あらすじ】
天子に胸が無かった

【感想】
同じことをずっと繰り返されると、言葉の意味を疑い始める。
サクッと読めて、なんじゃこりゃって気持ちになる良作。

【五段階評価】
おすすめ度★★★☆☆(ものすごく短いので、息抜きにどうぞ)

地底に安らぐ有頂天  なめレス 氏

【作品集】そそわ120
【タイトル】地底に安らぐ有頂天
【書いた人】なめレス 氏
【URL】
ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1279593136&log=120

【あらすじ&感想】
ある日霊夢に地底の話を聞いて興味が湧いた天子は期待に胸を膨らませ行ってみるが・・・

無邪気で自分勝手だが微笑ましい天子の様子が書かれている。
読み終えたあとに爽やかな気分になれる作品。
【五段階評価】
★★★(天子かさとりが好きなら+1)

…たっなうこてしうど  馬小屋氏

【作品集】120

【タイトル】…たっなうこてしうど
【書いた人】馬小屋氏
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1279552440&log=120
【あらすじ】
……たっだんへがまさりとさ、らたきおさあ
イカれたさとり様を中心に繰り広げられる救出劇……
と思いきやお燐の活躍を見守るお話 

【感想】スタイリッシュに駆け抜ける作品だったわねぇん。
作中の小ネタは元ネタを知らないとちょっと楽しめないのが難点ね……
だけど中盤のお燐ちゃんの走り抜けるシーンはとてもよかったの、まるでクレしん映画のような躍動感が出てて興奮しちゃった♪
内容も走り抜けるような展開だったからささっと読めるのはいいけど、オチが弱い印象がどうしてもあるわ。
そのオチに到るまでの過程がなく、いきなりオチが出てくるのは突拍子と思われても仕方ないものよ。
でも個人的にお燐ちゃんが可愛かったからそれだけでお腹いっぱいよ!!

【五段階評価】
★★★☆☆(元ネタがいるものはメインで使うのはもったいないわ)

昔々、小町と映姫が職場を異動したようです。  ぜくたん氏

【作品集】120

【タイトル】昔々、小町と映姫が職場を異動したようです。
【書いた人】ぜくたん氏
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1279983021&log=120
【あらすじ】
三途の川を船が進む。
一人は死神一人は閻魔。二人は長い沈黙の後、口を開き始める。
そこにあるのは楽しい雑談ではなく純粋な心の疎通。
だが二人にはそれが一番心地よかった。

【感想】
スタンダードにいい作品だったわ、こう、グっとクルものがあるわね。
小町ちゃんの中間管理職なような苦悶が少しクドかったけど、そこが魅力でもあるのよねぇ……
恥ずかしいセリフを真面目に言い合える、書けてるのは純粋に面白さとして評価できるわ☆ミ
惜しむらくは序盤の読みにくさね、あれだけ文字がぎゅうぎゅうに並ぶとあそこで読まれなくなるかもしれないわ。
小説は掴みが肝心と言われるだけに、あれで読まれなくなるのは勿体無いと思うナァ……
飴玉を噛む人じゃなく、最後まで舐める人にお勧めできる一品かしら。

【五段階評価】
★★★★☆(読んだ後にやる気を出させてくれる作品ね、何のって? 人生のよ)

ファル・フィア・クフェーナ  KASA氏

【作品集】120

【タイトル】ファル・フィア・クフェーナ
【書いた人】KASA氏
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1279789259&log=120
【あらすじ】
 自分の事を名前で呼んでくれない衣玖にやきもきした天子は半ば強引に名前で呼ぶように命令する。
 一時は従う衣玖だったが、一日と経たず耐えられなくなってしまう。

 「総領娘様! 正直に申し上げます。やはりお名前で呼ぶ事はできません。その、無理です」

 なぜ衣玖は天子を名前で呼べないのか? それにはとある事情があって―――

【感想】
 どうしても名前で呼んでほしい天子の態度と、どうしても名前で呼べない衣玖の心情が面白かったです。
 霊夢に『天子様』アピールをしている天子が可愛すぎる。ああ天子ちゃんマジ天子。
 天子に対抗するレミリア嬢のシーンもおススメです。
 衣玖が無理と突きつけた後の天子のとった行動に少しハラハラしてしまいました。 
 残念ながら私はこの作品のタイトルの元ネタ(?)を知らなかったのですが、分かる人には分かるのかな?
 
【五段階評価】
 ★★★★☆(衣玖天が好きなら+1)

~個人的お気に入り本文抜粋~
 天子の顔が見ていて吹き出しそうになるほど歓喜一色に染まっていく。

 「衣玖! しかたないわねぇ衣玖! 早くしてね衣玖!」
 「はいはいわかりましたから天子様」

ラブ・モンスター  飛び入り魚氏

『ラブ・モンスター』作品集120 飛び入り魚氏
 (腹抱えて笑ってしまった。謎の疾走感。色鮮やかに脳裏に情景が浮かんでもうだめだった)★★★★☆

貴女の為の優しい音楽  おるふぇ氏

『貴女の為の優しい音楽』作品集120 おるふぇ氏
 (短いながらも優しく美しくまとめられている。作者コメにあるがジムノペディを頭の中で流しながら読むとより雰囲気に浸れるかもしれない)

其来(それから) ~ ダウザーの小さな大将の場合 前・後・補  蛆氏
聖救出の際、誤って聖輦船から落ちてしまったナズーリン。目を覚ますと何故かそこは守矢神社だった。

【作品集】120,121

【タイトル】其来(それから) ~ ダウザーの小さな大将の場合 前・後・補
【書いた人】蛆氏
【URL】
【あらすじ】
 聖救出の際、誤って聖輦船から落ちてしまったナズーリン。
 目を覚ますと何故かそこは守矢神社だった。神奈子に助けられ介抱されていると、出掛けていた諏訪子が帰ってくる。
 そして始まったのは二人の喧嘩。なんとか喧嘩を止めようとナズーリンは知識にある仏法を説く。
 神奈子はそれで折れることを認めたが、逆に諏訪子の様子が一変する。
 どこの門徒か尋ねられナズーリンが答えると、諏訪子は不気味にも嗤い出した。
 その瞳に憎悪を灯して。

【感想】
 作品冒頭でも注意されているが、この作品は宗教、歴史について作者様の独自解釈が多くみられます。
 しかし、その解釈が作品の中で良く組み込まれていて読み進めるうちにどんどん引き込まれていきました。 
 祟りを通して自分の信仰のあり方、命蓮寺での立ち位置に気付いていくナズーリンは情けなくも格好良い。
 神奈子と諏訪子がちゃんと神様してるのも良かった。
 難解な文章、多くの仏教用語、ボリュームで難しい話かと思い、避けている方も多いと思われるが、
 意外にもギャグが多めだったり、登場キャラが可愛かったりと深く考えなくても楽しめるように出来ています。
 もちろん仏教の専門本などを片手にじっくりと読むのもいいでしょう。
 作者様のこだわりが随所に感じられる面白い作品。今まで避けていた方もぜひ一読して頂きたいです。

【五段階評価】
 ★★★★☆(歴史や宗教に興味があるなら+1)

~個人的お気に入り本文抜粋~

 身を乗り出して興味を示す諏訪子。端から見れば、母親の話に喜ぶ子供のようで微笑ましくもある。

「ウム中々言い得て妙な符丁だったな。つまり諏訪子、お前もそうだがね。民は神に対し心安かれ、神は民に対し莫迦足れ(莫迦であれ)ということだ」
「……ば、ばかたれだとっ。この私にばかたれって何だ、ええ神奈子。お前ね最近調子に乗っているよ。そこへ来て面と向かってばかたれだとっ。やいこら表出ろ」

 母子の語らいから一転、仁王のような形相で神奈子の襟首をきりきり締め上げる諏訪子。まさかの弁護の余地無しな家庭崩壊劇に私はただ、言葉のすれ違いの悲劇を残念に思うばかりである。また少し神奈子の神威にも残念を感じる。

ま、結局は愛よ愛。

【作品集】120 121
【作品】其来(それから) ~ ダウザーの小さな大将の場合
【作者】蛆 さん
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1279335878&log=120
ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1279692951&log=120
ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1280635188&log=121

物語 15点
ナズーリン、諏訪子に祟られるの巻。
もともと仏教は外来宗教で土着神は駆逐されたというのが理由である。
つながりのないキャラクターどうしを接近させる見事なアイディアだと感じた。
一方で、宗教的立場の違いを物語の土台に置いているせいか、家族愛やら自己の成長と多少の齟齬がでている感もあるかもしれない。

キャラクター 16点
この物語はナズーリンのかわいさ50パーセント。
一輪のナズーリン溺愛っぷり20パーセント。
星のちょっぴりキリリ度10パーセント。
ぬえのぬえぇぇん度10パーセント。
諏訪子のおそろしさ度10パーセントでできています。
ナズーリンが未熟なキャラクターとして書かれてあって、主人公設定にするならそうするしかないと思う。
先にも述べたとおり宗教的立場を元に立体的にキャラクターを構築している点が評価できる。

ストーリー 14点
ま、結局は愛よ愛。

構成 17点
この作品の構成はなかなかよくできている。きっちりと練られて書かれてあった。

表現 15点
達者。仏教用語が多めでちょっときついところもあるが、
基本は普遍的な愛のイメージで覆われているのでそこまで読みにくいということはない。

総点 77点
とてもよくできた物語だと思う。
最初は宗教っぽいイメージで突貫するが最後まで読めば、きっちり東方っぽさがあった。

悪から本を取り戻せ  西風 氏

【作品集】120
【タイトル】悪から本を取り戻せ
【書いた人】西風 氏
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1279639707&log=120
【あらすじ】
9:15(エーックス……)
黒い悪魔、霧雨魔理沙。図書館の本を強奪していた。
みな、諦めかけていた。その時、一人の住人が立ち上がった。
メイドたちを集め、問題解決のために力を貸してほしいと頭を下げた。
これは紅霧異変から続く略奪に終止符を打とうとした、少女たちのドラマである。
(~♪)『計画X 挑戦者たち』

【感想】
NHKプロジェクトXのパロディ作品だが再現度がくそ高い。
脳内であのBGM、ナレーション、演出が再生されること間違いなし。
>完全な、敗北だった。
>呼吸が、止まった。
など、同番組でよく使われた印象的なワードににやり。

【五段階評価】
★★★☆☆(プロジェクトXを知らない人は-1)

ふわふわちゃんの話  超空気作家まるきゅー氏

【作品集】120
【タイトル】ふわふわちゃんの話
【作者】超空気作家まるきゅー氏
【本文容量】20.3KB
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1279832909&log=120

【あらすじ】
ある時、あるところに誰にも愛されない女の子がいた。
誰も彼女を名前で呼んだりはしなかったから、私も彼女の名前を知らない。
だから、私は彼女のことはふわふわちゃんと勝手に呼んでいる。

【感想】
ふわふわちゃんが救われて欲しいと願うのは読者ばかり。
幸せを知らない少女は、幸せを願うことすら知らずに日々を生きていきます。
終盤の鮮烈な光景がどうか彼女の救いとなりますように。

化け傘奇談

【作品集】120
【作品】化け傘奇談
【作者】蛸擬氏
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1279622812&log=120

物語 15点
 原作であまり説明されず曖昧な妖怪である『九十九神』に関しての作品。作者の得意とする昭和風の文体による軽妙な語り口で説明される独自設定(連合とか)もすんなりと入ってくる。特筆すべきはやはり『されこうべ』であろうか。妖の一種として馴染みの深いこの単語を、それと相反するものにあてはめるセンスがすばらしい。

キャラクター 14点
 原作のキャラクターが僅か数人しか出てこないと言う異色な作品。作品全体にただよう空気のせいかもしれないが、個性がキャラクターの描写が希薄であるのは否めない。しかし消化不良になる感じでもなく、オリジナルキャラクターの使い方もうまく違和感が無い。
 小傘ちゃんぺろぺろ。

ストーリー 14点
 九十九神に対する現代的な要素も出てくるのだが、だからと言って無闇にそういった面を皮肉ったり、一方的にどちらかを排除しようとしない点が好印象。一貫してとある人物の語りとしている点も雰囲気が出てて良い。読後感も良好である。
 終盤のパロディとやらは私には元ネタがよくわからなかったが、特にストーリーを壊していないように見えたので気にならなかった。でも誰か教えて。

構成 14点
 前述したが独特な語り口によって作品に引き込まれる。時系列通りに進むストーリーもテンポが良く、全体としてどこか懐かしい昔話のような感じさえ受けるのも良い。まあそのせいで少々物足りなく感じるのも事実ではあるのだが。欲を言えばもっと長編でこの設定を使ってほしかったり。

表現 16点
 やはり目を引くのが文体。どことなく昭和文学風味な言い回しや表現がストーリーに実にマッチしている。特にすらすらと読めるテンポがすばらしい。『夢野久作風味で俺に良し』というコメントがあったが、私もツボである。『~ございます』『~です』の部分はどうせなら統一して欲しかったような気もする。あと『アメン』の使用に違和感がない事もない。あと以前から思ってたが作者の語彙や単語のチョイスはけっこうな高水準だと思う。

総点 73点
 冒頭からうまく引き込まれるすっきりとした良短編。読後感も良く、独自設定も鼻につかない素敵な作品である。小傘が好きな人、さっぱりとした短編が読みたい人におすすめできる。

ピアニッシモのこころ  深山咲氏

【作品集】120
【作品】ピアニッシモのこころ
【作者】深山咲氏
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1279722307&log=120

物語 17点
 夏と地霊殿とピアノ。原作内でも洋風な香りの強い地霊殿の面々、特にさとりこいし姉妹にピアノが絶妙なマッチ。なんでもない事柄にも作者の感性が光り、独自設定も全く気にならないだろう。覚りとピアノ、燐空とさとりの距離、こいしの瞳など数々の原作設定を生かした部分が実に良い。

キャラクター 17点
 さとり、こいし、空。そして語り手の燐と、登場人物が繊細かつ丁寧に描写されており非常に魅力的である。作品の長さとしては短い部類なのだが、一つ一つの文にそれぞれの一面がうまく現れており素晴らしい。個人的には作者の地霊殿組が非常に好きである。

ストーリー 14点
 ある一日、ある一時を切り取っただけのストーリーなのだが、それ以上に想像をかき立てられるような作品。逆に言うと読者が没頭できなければ『やまなしおちなし以下略』になってしまう危険もはらむかもしれない。作品全体に漂うピアニッシモの旋律に酔いしれたい。

構成 13点
 テンポが心地よく、時折回想のようなかたちで挟まれる部分もあまり違和感がない。一人称による作品の長所である繊細な描写が光る。短さ故か内容故か、全体として物語としての発展性に欠けるのが残念である。しかしそれを補って余りある温かさが充実した読後感になると思う。

表現 18点
 『下手になった』『ピアノは覚りなの』『口はなんのためにあるの』。文章で表現が難しいと思われる音楽の話だが、美しい描写や会話の効果ですんなりと入ってくる。読みやすく洗練された文章、瑞々しい感性によって描き出される情景が実に見事。……なんか同じ言葉で誉めてばっかりだな。ごめん。

総点 79点
 温かい気持ちになれる良作。この雰囲気は作者ならではだろう。地霊殿が好きな人、温かい家族の話が読みたい人、ピアノなど音楽が好きな人、『こめいじやばいおれはしぬさとりんこいしたんちゅっちゅお』な人におすすめできる。