作品集137

Last-modified: 2013-03-05 (火) 03:19:12
科学世紀の魔法少女  赤錆びたトタン屋根

【作品集】137

【タイトル】科学世紀の魔法少女
【書いた人】赤錆びたトタン屋根
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1296482012&log=137
【あらすじ&感想】
自分達のちょっとした能力から、世間にいくらかの疎外感を感じている秘封倶楽部
の二人は、不思議な能力を持った人間が遭うという神隠しについて、それぞれの能
力と倶楽部活動を通して、いくつかの事実を知っていく。
そんな二人のエピソードの一つで、蓮子が出会った、赤く光りながら空を飛ぶ魔法
少女についてのお話。

幻想郷の気配など全く臭わない、現代風の世界で生きる秘封倶楽部の二人の様子が
執拗なまでに描写されていて、何も不思議なことがないとされる現代という舞台を
簡単に想像することができた。
魔法少女だといって空を自由に飛び回っているオリキャラがその世界でどうして安
穏としていられるのかは、秘封倶楽部の二人でなくとも気になるところだろう。ち
ょっとした能力などではなく、魔法少女という異物感たっぷりの人間がどうして現
代社会に存在するのか、個人的には気になってしかたなかった。
魔法少女が神隠しに遭わないように気遣う秘封倶楽部の二人と、現代社会から排除
されてしまった感じのオリキャラが、独特な雰囲気を醸していると思った。
かなり中二的な題材で、雰囲気も中二だけど、世界観や設定が個人的にツボだった。

【五段階評価】
★★★☆☆(中二気味な秘封もこれはこれで)

ラヴ・アトモスフィア  蛮天丸 氏
私はお姉ちゃんが大好きだ。

【作品集】137 【タイトル】ラヴ・アトモスフィア 【書いた人】蛮天丸 氏
【長さ】■□□□□(13KB 短編) 【注意事項】 嘔吐描写あり
【あらすじ】
 私はお姉ちゃんが大好きだ。この大好きって気持ちを伝える為にはどうしたらいいんだろう?
【感想】
 良くも悪くも表現がストレートな作品。ダッシュが多用されている所や
ポエムのように英単語入っている所が読んでいてやや引っ掛かった。
しかし、後半の描写は逆にそのストレートな表現が生きたと思う。
嘔吐のシーン描写は生々しく、胃からこみ上げてくる様をリアルに表現している。
また、カッコ付きの台詞として心を読んでいる描写は創想話ではそこまで多くなく、
自分は目新しさを感じながら読んだ。

【展開】     ★★★☆☆ (普通)
【文章】     ★★★☆☆ (描写は★4。英語とダッシュに引っ掛かり-1)
【生々しさ】.  ★★★★☆ (吐いた人なら分かるリアルさ。おえっぷ。)
【総合評価】 ★★★☆☆ (表現重視の作品)

「……恋の病だな、本当に」

【作品集】137
【タイトル・作者】『ラヴ・アトモスフィア』 蛮天丸氏
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1296482533&log=137
【あらすじ】
こいしはさとりのことが好きだった。さとりもまた、こいしのことを好きだと言ってくれる。
けれど、それが本当の気持ちなのかわからないし、自分の気持ちだってうまく伝わってるかわからない。
不安になったこいしは魔理沙に相談するのだが……。

「だって、おねえちゃんがあんな顔するから。つらいの、苦しいの……」
「……恋の病だな、本当に」
「魔理沙、私、どうすればいいの?」
「その瞳を開けばいいんじゃないか?」
(本文より抜粋)

【感想・ここが面白い・私的評価】
さとりとこいしがお互いに向きあう話。
覚りならではの苦痛を嘔吐という形で表したのは読んでいて実にわかりやすかったです。
嘔吐の描写もそこまで濃密でもなく、いい加減に省略しているのでもなく、適度に書いているのがいいですね。
タイトルのアトモスフィアは空気や雰囲気、ムードの意。テーマはムードのある恋愛かと思いましたが、読み終わってあらためて考えると空気の方がしっくりきました。と言いますか、後書きにも書いてありました。ですが、ムードの方でもいけますね。英語で愛を語るとか、いかにも形から入ってる感じで。
気になったのは納豆卵焼きの単語です。一度目に出てきたときはただの食事のメニューとしか思ってませんでしたが、その後も何度か出てくるのでこの話のキーワードなのでしょう。しかし、何故に納豆卵焼きを選んだのかがわかりません。前述したとおり、せっかくのムードがこの単語が出てくるたびに台無しにされてしまいました。
もちろん、納豆卵焼きを比喩表現の材料として使っているので役割は果たしていますが、もっと馴染むものなんていくらでもあったでしょうに……。ちょっと、そこだけ不可解でした。
★★★☆☆(なにか読みたいときに是非)

【こんな人におすすめ】
納豆が好きな人、
古明地姉妹が好きな人、におすすめです。

垂線  センテンス氏

【作品集】137
【タイトル・作者】『垂線』 センテンス氏
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1296707353&log=137
【あらすじ】
幼い頃から剣の修業を強いられた妖夢はずっと剣が嫌いだった。
それでも剣を持ち続ける理由は妖忌とのあるできごとがきっかけで……。

「握りがあまいからだ」
 祖父はわたしに刀を握らせました。もっと強く握れと言いながら、柄を持つわたしの手を覆い隠し、握力をこめてきました。
「刀は武人の魂……魂を離してどうする。しっかりつかんでいなければならない。魂を落としたら、死と同じではないか」
(本文より抜粋)

【感想・ここが面白い・私的評価】
妖夢成長譚。一言でまとめると、なにこれカッコいい。
妖夢がカッコいいキャラクター、というか言い回しがカッコいい。抜群にカッコいい。でも妖忌はもっとカッコいい。さすが師匠は格が違った。
祖父の老いを間近に感じてしまった子の後ろめたさ、陰り、焦燥がリアルに感じられて面白い。
ぱっと見た瞬間は文体が割と硬度のある方だと思ってましたが、読んでみると不思議なくらい読みやすかったです。妖夢の語り口調と間の取り方がそうさせているのかもしれません。それによくまとまっていて、読み手の呼吸を意識しているようにも思います。
ラストでは壁を乗り越えた妖夢も主人の前ではまだまだ、といった俺たちの戦いはこれからだ的な完結していない雰囲気もあっていいですね。成長が終わったらそこで終わってしまいますもの。
派手さはないものの、落ち着いてじっくり味わえばなかなか楽しめる短編です。
★★★☆☆(なにか読みたいときに是非)

【こんな人におすすめ】
妖夢が好きな人、
妖夢と妖忌の師匠と弟子の関係が見たい人、におすすめです。

魔理沙のキノコ事情  今野氏
魔理沙と茸の怪奇小説。

【作品集】137
【タイトル・作者】『魔理沙のキノコ事情』 今野氏
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1296639348&log=137
【あらすじ】
茸狩りでもしようと思っていた魔理沙は森で喋る茸と出会った。
茸は魔理沙を「マーガトロイドさん」と呼んだ。
人違いをしているようだったが訂正せずに話を聞いてみると、今日は茸の記念日でお祝いをするからあなたも来てくださいとのことだった。
魔理沙は好奇心に駆られ、その茸の後をついていくことにしたのだが……。

「ああ、それはまあ言うまでもないことだが、質問とあれば答えなければなるまい。霧雨魔理沙という人間は、ふだん魔法使いのような姿をしている。黒いとんがり帽子をかぶっていて、黒と白のエプロンドレスを着こなす。実は今ここにいるマーガトロイドさんと極めてそっくりなわけなんだよ。けれどみんな早まってはいけない。マーガトロイドさんは今日はおめかしをしているから、こんな姿をしているだけで、魔理沙は霧雨魔理沙では決してない。あと、特徴としてはいつも箒にのっている。口調はなんだかヘンテコだ。総合すると、マーガトロイドさんのような人間が霧雨魔理沙なわけだ」
(本文より抜粋)

【感想・ここが面白い・私的評価】
魔理沙と茸の怪奇小説。
茸が突然話しかけてきて、という冒頭からゴシックホラーの印象を受けました。
言葉のひとつひとつに恐怖の演出が埋め込まれていて、ホラーの書き方がよくわかっていると思わせます。
タグに『オチなし』とありますが、面白みのない話ということではありません。
と言いますか、十分にオチにはなっていると思います。結の部分がしっかり書かれています。解説文のように正体もなにもかもすべて書くことをオチと言うのであれば違いますが。
そもそもホラーの結末は(変な、というか誤解を招きそうな言い方になりますが)投げっぱなしにするくらいが丁度いいようにも思います。そうすることで未知の余韻を生み出すことができます。これから先、どうなってしまうのか……というところで終わらせるくらいでいいんです。
作者が恐怖の土台作りと演出を担当し、読者が想像を担当する。作者あっての読者あっての話。いや、本当に面白い作品です。
あと、コメントで他の方が言ってましたが、確かに海外のホラーに通じるものがありますね、文体含めて。外国チックなホラーが読みたいという人にもおすすめです。
★★★★☆(読んでおきたい佳作です)

【こんな人におすすめ】
ホラーが好きな人、におすすめです。

不思議の国の魔理沙。

【作品集】137
【タイトル】魔理沙のキノコ事情
【書いた人】今野氏
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1296639348&log=137
【あらすじ】
不思議の国の魔理沙。
と思いきや不思議の国のアリスと見せかけてやっぱり魔理沙。
ぼんやりとした朝、魔理沙は不思議な茸に出会った……

【感想】
ファンタジーから始まる物語ねぇん。 乙女心がビンビンしちゃう♪
物語の構成としては、起承転結がしっかりしているわ。
でも、語彙のチョイスがちょっと微妙かしら、そこにその言葉? という構成がいくつか気になったわぁ。
ホラーの演出としてはお上品に仕上がっているけど、悪く言えばそれまでね、ひねりが足りないの。
恐怖の導入とその後の疾走感は上手く表現できていたけど、描写はもっと具体的にしないと臨場感が足りないと思う、かな?
オチをもっと頑張ったら★4はあげられたかも☆ミ

【五段階評価】
★★★☆☆(オチの弱さと、ホラーの面白さで±0よぉん)

藤花の祈り  雲井唯縁氏

【作品集】137
【タイトル・作者】『藤花の祈り』 雲井唯縁氏
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1296770100&log=137
【あらすじ】
川に流れ着いた玩具を見つけて、やれ誰か落としてしまったかと思ったにとり。
しかし、その数の多いこと。
川に玩具を捨てる不届きものがいるではないかと怒った彼女は里へ向かった。

「なんだ、ふてぇ奴だなぁ。こりゃ、落としたんじゃない。捨てやがったんだ。」
 そうしてぷんすか怒りながら、玩具を全て拾い上げますと、玩具は合計で五つありました。古いものから新しいものまで、色々です。
「全く。なってない人間もいるものだな。これは、先生に是非叱ってもらわないといけないや。」
(本文より抜粋)

【感想・ここが面白い・私的評価】
川に捨てられた玩具を持って慧音に会いにいったにとりはそこで玩具の捨てられた理由を知る、というお話です。
突然ですが、私は道徳の教科書というものが好きなのです。山場もなければ落ちもないくせに意味だけはきっちり伝えてくる、あの味わい深さがたまらないのです。落ちがない話こそ読後の余韻が深まるのではないかと思っているくらいです。
さて、この話もまた道徳のそれです。しかし、こういうジャンルを何というべきか、説話ほど(話自体に)面白みがあるわけでもないし、童話ほどふわふわしてない。そうなると、まさしく道徳の話と言うしかありません。
そして、昔を感じさせる文体がなにより好みでした。なんだか落ち着きを払っている空気があり、話の中にじっくり浸っているような気分になります。
ただ残念ながら、東方分をあまり感じることはできませんでした。にとりが必要な要素ではない構成です。
これがたとえば、妖怪が原因で子供が、という話であれば妖怪の登場も納得のいくものになるでしょう。
個人的に作者の方はSSよりも、詩の方が得意そうな気がします。
★★☆☆☆(人を選ぶ作品かもしれませんね)

【こんな人におすすめ】
綺麗な話を読みたい人、におすすめです。

夜道、メリーさんのうしろで  半妖氏

【作品集】137
【タイトル・作者】『夜道、メリーさんのうしろで』 半妖氏
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1296719649&log=137
【あらすじ】
夜のコンビニから一人帰るメリー。
道に人気はなく、時折道を走る車とどこかの貯水池にいる蛙だけがその静寂の中にいた。
そこに、ふと後ろからハイヒールの音がした。自分よりも速い歩調の音だ。
どう考えても普通の女性が自分と同じように帰りを急いでいるだけ。そう思ってもどこかで、追いつかれてはいけないという予感がメリーにはあった。

 なんでもない、良くあること。いくら自分に言い聞かせてみても、先の違和感がよみがえり、得体の知れない恐れとして襲いかかってきた。
 それは、あるべきものが、さるべき場所にない恐怖。
 例えば、ベビーカーを押して歩く母親があったとして、子供の顔を想像しつつベビーカーをのぞくと、中に誰もいなかった時のような。
(本文より抜粋)

【感想・ここが面白い・私的評価】
夜道の恐怖を味わうメリーのお話。ジャンルは言わずもがな、ホラー。
内容自体が恐ろしいものよりも、なんてことはないことを表現でもって怖いように感じさせるホラーの方が好みです。そして、この話もまた好きなものでした。
夜道は辺りがよく見えずなかなか怖いものですが、そこに暗さなど関係なくこちらに伝わるハイヒールの音を組み合わせてきたのでもう大満足です。久しぶりにホラーの王道を読んで気がします。
そして、雰囲気の醸成が実に巧い。表現も豊かですし、メリーの理性もよく働くので恐怖がどんどん膨らんでいくのが実感できます。わかりやすく、読みやすい。
逆にメリーや蓮子の秘封倶楽部成分を期待して読む人がいたら物足りなく感じるかもしれませんね。冒頭くらいでしかありませんし。まあ、そもそもテーマが人物に関するものではないのだから仕方ない。
でもこんなホラーらしいホラーもそこまで見ないものですし。その辺の需要をきっちり分けたのはかしこいと言える。
それだけにラストは、今までの空気がぶち壊されているのでちょっと蛇足のようにも感じますね。まあ、恐怖の演出より話の完成度を取ったんでしょうけど。しかし、年齢……うん………ホラーとも言えますね……。
★★★☆☆(なにか読みたいときに是非)

【こんな人におすすめ】
ホラーが好きな人、におすすめです。

ひきこもり探偵はたて  urlさん

【作品集】137
【タイトル】ひきこもり探偵はたて
【書いた人】urlさん
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?log=137

人の死なないミステリ とタグであるように、いわゆる「日常系ミステリ」。
ひきこもりで家から出たく無いはたてとが、チャット仲間である絢爛と輝く夜に起きた事件を解き明かす話となっている。
比較的短く、するすると読める文体になってるのでさらりと見れて面白い。
途中にあるミステリ蘊蓄を飛ばせばさらに短くなるので、時間が無い人にもオススメ。
まぁ私的には東方っぽい緩さであったけど、幻想郷っぽくない舞台だったかなぁ。
でもミステリ好きってのは作品の空気から伝わってくる。ひきこもりっていうはたてのキャラも上手く用いられているしね。
(どうでもいいけど、個人的に国名シリーズより学生アリスシリーズのほうが好き)

てんにんさまのおひなさま/やくじんさまのおひなさま  蛸擬氏

【作品集】137
【タイトル】てんにんさまのおひなさま/やくじんさまのおひなさま
【書いた人】蛸擬氏
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1296998035&log=137
【あらすじ】
妖怪の山へ探索に出かけた天子。
さっそく白狼天狗に戦いを挑まれて力を消耗してしまうが、落下した山の中で鍵山雛と名乗る厄神に出会う。
どこか不気味な厄神に興味を持った天子は後日、再び会いに行くが……

【感想】
一言で表せば不気味。
読んでいる間中、首がとれかけた雛人形にじっとこちらを見られているような感じだった、と表現したらいいのかもしれない。
この話は別にホラーではないし、はっきり言ってそれほど大きな動きがあるわけではない。
一見おかしいところはないが、やはりどこか不気味な雛。魅力はこれに尽きるのではないだろうか。
暗い森という舞台でひたすら踊る厄神を見たいのなら、ぜひどうぞ。

20XX年、世界はラーメンに包まれた!  電動ドリル氏

【作品集】137
【タイトル】20XX年、世界はラーメンに包まれた!
【書いた人】電動ドリル氏
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1296538659&log=137
【あらすじ】
ラーメン食いたいお……
中国に作ってもらうお!
妹可愛いお……

【感想】
ラーメン♪ ラーメン♪
響き自体に魅力のあるこの食べ物、物語は終始ラーメンが主役になっちゃうの。
このお話の一番の武器はテンポね。 ジャンルはぶっとびギャグとでも言うのかしら?
う~ん……パロネタがふんだんに使われてるのはいいけど、問題はメリとハリかなぁ。
タグにもある通りキャラがことごとくカオスなんだけど、使い古されたネタが多いから、テンションが低い時に読んでも笑えないかもしれないわぁ。
そこを疾走感でカヴァーしているので、飽きがこない、けど逆にそこを斬新だらけにすれば混沌度が増してもっともっと化けたと思うの♪
ラーメンは伸びちゃダメだけど、この作品の点数は伸びなきゃ、ね(はぁと

【五段階評価】
★★★★☆(面白かったけど、私としては腹八分目かしら? 美容にはい・い・け・ど)

たまには酒でも飲んで  モノクロッカス 氏

【作品集】137
【タイトル】たまには酒でも飲んで
【書いた人】モノクロッカス 氏
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1296996402&log=137
【あらすじ】
普段は殺し合っている妹紅と輝夜はその日、連れ立って人里の居酒屋へ飲みに行った。
酒と話が進む、蓬莱人二人の居酒屋紀行。

【感想】
どこかトムとジェリーの仲良しな回を思わせるお話。
個人的にはこの二人が飲みに行くとこんな風になりそう、というイメージにぴたりと合った。
ある意味、普段とのギャップ萌が楽しめる作品である。
最後は少しかっこつけ過ぎかと思ったが、これはこれで。
殺し合う妹紅と輝夜とはちょっと違った話を読みたい人にお勧め。

めいりんちゃんのブラック企業での正しい生き方  ミヤネ マキ(麻宮)氏

【作品集】137

【タイトル】めいりんちゃんのブラック企業での正しい生き方   
【書いた人】ミヤネ マキ(麻宮)氏
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1297287320&log=137
【あらすじ】

 べにみすずさんがブラック企業について解説してくれます。

【感想】

 Wikipediaやニコ生と言う単語がメタなギャグと言うわけでもなく登場する、と言う点には東方でやる必然性を疑わせ、お年玉が五百円玉なのは少ない、と美鈴に言わせる様には原作への理解の浅さを感じさせます(二円は大金。現在でも一円札が流通などの公式設定を踏まえると)

 ですが、それ以上に問題なのはありきたり過ぎる点ではないでしょうか? ブラック企業をネタにしたギャグは、世の中に氾濫しています。それだけに、どうしても新規性が薄くなるのは否めないでしょう。
 それを踏まえて、この作品に興味を持てるか? それは残念ながら否でした。何百回とネット上で、その他で、目にしたネタ以上の物は見いだせません。

 そんなありきたりのネタで埋め尽くされた作品の、どこに作者が面白みを見いだそうとしたか? と言う事を考えると、一に東方と掛け合わせること。二は解説形式にした事だと思います。しかし、どちらも上手く書けたとは感じられません。

 まず後者ですが、例えば「日本におけるブラック企業の割合」と言う章において、「ちなみに日本におけるブラック企業の割合というのは約90%です」とありますが、その数字を導き出した論拠は作中に見あたりません。これでは後者としての面白さを表現することは難しいでしょう。
 例えば「空想科学読本」と言う作品が一時期ヒットしましたが。あの作品の面白みは、ふざけた事を真面目に考察する、という点にあったと思います。非現実的なことを、論理的に考察し、計算し、その結果の不条理さが面白みを醸し出すと。
 それが出来ているかは否と思いました。そして、東方との掛け合わせもまた成功したとは言えません。

 東方と相性が悪い物を組み合わせる、それ故の面白さはあります。ですが、この作品にそれは感じられません。
 例えばエピソードの一つ一つを、「東方らしい」かつ「ブラック企業らしい」物にすれば、それが面白さに繋がるのでしょうが、あいにくそれはありません。実質唯一の登場人物である美鈴が、ただただ現実の日本の事を語るだけの形式故に、東方と相性が悪い物が組み合わさっているのではなく、相性の悪い物だけが存在する作品となっていますから。

 【五段階評価】★☆☆☆☆

火焔猫  雲井唯縁 氏

【作品集】137
【タイトル】火焔猫
【書いた人】雲井唯縁 氏
【長さ】■■□□□(22KB 短めの中編)
【あらすじ】
 寺子屋が作られるまでの経緯を尋ねた所、其処には或親子と黒猫の物語が有ったのでした。
【感想】
 戦前の小説を意識したのか、固い文学調で書かれた中編。長さよりも長く感じられ、読むのに凄く体力が必要だった。
何でそこまで読んで疲れたかというと、それは読んでも読んでも、幻想郷が姿を現してこなかったからじゃないかと。
オリジナルのキャラクターや幻想郷外の世界を扱った創想話の作品は多く、
中には幻想郷の外で東方キャラ全然出て来ないような作品もある。
しかし、そういった作品でも、巧妙に東方を想起するような単語が仕込まれていたり、
幻想郷入りしそうな疎外感が漂っていたりと、東方のSSという事を感じられる要素がある。
ところが、この作品にはそれが非常に薄く感じた。東方の露出が余りに少な過ぎる。
「どこら辺から東方キャラ出るのかな、まだかな、まだかな、出ないなぁ……」
みたいな感じで読んだので、長さ以上に疲れを感じたんだと思う。
 もう一つ抱いた感想は、「これって結局何のSSなんだろうか」ということ。
寺子屋設立の経緯は終盤手前で終わってる。親子の話にしては描写が薄く、飛躍が目立つ。
タイトル通り火焔猫なのかというと、それにしては中盤の描写が親子に寄り過ぎている。
作品の基礎部分が安定していないために、かなり固い文章であるにもかかわらず、
非常にぼやけた作品となってしまっていると感じた。
【文章】       ★★★☆☆ (緻密な文学調の文章。水準程度。)
【構成】       ★★☆☆☆ (猫か親子か寺子屋か、いずれにせよテーマをもっと押し出して欲しかった。)
【読み易さ】     ★★☆☆☆ (苦手な人が多そうな文体。)
【面白さ】       ★☆☆☆☆ (面白さという事を考えるとこの評価に。)
【総合評価】   ★★☆☆☆ (綺麗な文章だけど、内容と捻りが足りないと思った。)

再びG Freeの空へ  おつもつ 氏

【作品集】137
【タイトル】再びG Freeの空へ
【書いた人】おつもつ 氏
【長さ】■■■■□(87KB 長編)
【あらすじ】
 霊夢が突然飛べなくなった。最初は飛べなくても弾幕は打てると、悠然と構えていた霊夢だったが、
ふとした切っ掛けで昔のことを思い出し、不安で仕方が無くなってしまう。
それは霊夢がまだ博麗の巫女ではなく、人里に住む女の子だった頃の事――
【感想】
 飛べなくなってしまった霊夢の話。思い出を思い出してからは序盤の悠然とした霊夢はどこへやら。
もう不安で不安で仕方ないといった様子で、涙を流すことすらある状態。
でも、自分の大事な能力を失った上に、失った原因が原因だから仕方ないと思う。
自分の能力と他人との関係というものは、両立して欲しいと思うものの、実際は背反しがちなもの。
この狭間で悩んでいる人を周囲で見る機会が最近多いためか、中盤の部分は結構心に来た。
 個人的に好みだったのは、母親が健在だったり、慧音が恩師だったりする霊夢周辺の設定。
厚かましくも、この設定を使った作品を他にも読んでみたい!と、思ってしまった。
【構成】     ★★★☆☆ (後半が駆け足な印象。もう少し膨らましても良いかなと思った。)
【文章】     ★★★★☆ (読みやすい霊夢の一人称。)
【総合評価】 ★★★☆☆ (自分は楽しめた。この得点はもったいない。)

桃味レインはもうやんだ  シンフー 氏

【作品集】137
【タイトル】桃味レインはもうやんだ
【書いた人】シンフー 氏
【得点など】2011年2月・13KB・1370点
【URL】ttp://coolier.sytes.net/sosowa/ssw_l/137/1296915371
【あらすじ&感想】
 あるとんでもないものを食べる天子とそれをいぶかしむ衣玖のお話。
 その食べるわけと二人の繋がりをワンシーンで描いており、雲の上という
 舞台設定も相まって清々しく初々しい、見守りたくなるような作品だ。
 天子がなりたくて食べているものが彼女の背景をふまえて効果的に
 表現されており、結末部とタイトルがしかりとリンクしているところは
 物書きの参考になると思われる。結論を云うと天子ちゃんマジ天使。

 シンフー氏の作品には他にも『黒髪少女のコンプレックス』や
 『ポケットのなかの博麗英雄譚』がある。登場人物の気持ちを
 丁寧に追いかけるスタイルには惚れてしまうところが多い。
 短編作品が中心で読みやすいので読了にも時間はかからないだろう。

【追記】
 上記のお話を気に入った人は、同じシンフー氏のいくてん作品である
 『頭の上には宝物』もお勧めする。甘酸っぱ過ぎて悶える逸品。