作品集143

Last-modified: 2014-09-30 (火) 22:15:48
このバカ犬と言わないで  すねいく氏

【作品集】143
【作品名】このバカ犬と言わないで
【作者名】すねいく氏
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1302872614&log=143
【あらすじ】
 朝の訪れを報せる凛と良く響く彼女の声が、微睡みの中を漂う意識に染み込む。
 まだぼんやりと霞む視界の端に映る彼女の姿は、白銀の意匠を呈して雄々しくも美しい。
 目覚めて間もない気怠い肢体に、彼女はそっと手を伸ばす。恋い慕い、ただ愛しむように。
 そうして彼女は微笑み、語る。見る者を魅了して止まない佳麗な笑顔で、「私」に触れるその訳を。
 「胸が見たかったからです。あと、寝間着を私の物にしようかと」「このバカ犬!」
 それは今日の始まりを告げる相も変わらないどうしようもなくありふれた日常の挨拶であった。
【感想】
 ここから感想。開始数行でキャラ崩壊ものか? と一瞬身構えたが、そんなことはなかったぜ。
 いや、実際そこらの定義に個人差があるだろうことを鑑みれば一概にそうではないとも言えないが。
 文に対する椛のキャラクターを崩壊と取るか、愛情過多と取るかは読者次第。
 何れにせよ、常軌をあっちかこっちかに軽く逸っちゃってることは否めない、
 が、まだ戻るな、落ち着け、いいな? ここに至るまでは云わば序詞に過ぎない。
 先駆け、端書、プロローグ。開幕なんてしちゃいねぇ。今から始まる愛憎活劇武侠譚、これを見ずして何を見る。
 うん、最後は冗談。実際あったらめっちゃ読みたいけど。茶化したのはこれ以上話すとネタがバレてしまうから。
 つまり、物語自体は非常に簡潔な作りをしている。正直なところ、描写に少々物足りなさを感じた。
 初めから気持ちが揺るがず、本心が決まっていたからそれ以上の進展を望めなかったと言ったところか。
 最初はこうだったけど、段々とそうなりました、であったならば山場ももう一つ、二つは作れたかしら。
 尤も、出来が悪いかと言えば勿論そんなことはなく、充分読ませる力はある。
 所々に鏤めたコメディチックな会話や描写がなだらかな日常の中に起伏を作りテンポよく物語を読み進めさせてくれる。
 一人称だから仕方ないところもあるかもしれないが、もう少し地の文による情景描写があればもっと良かった。
 それでなくとも、一読の価値は充分にある。さっくり読める程度の文量なので、是非目を通してみては如何だろう。

文章力  ★★★☆☆(充分なレベル。特筆すべき点はないが、素直に読みやすい文章)
構成力  ★★★☆☆(良くも悪くも普通。癖がなく多くの人が読みやすい)
読み易さ ★★★★☆(とっつき難い部分がなく素直に読みやすいありがたさ)
バカ犬.  ★★★★☆(ヨッシーアイランドを真っ先に思い浮かべた人がいたらお友達)
総合点  ★★★☆☆(読んで損はない。これを愛情と取るか友情と取るかで浸透率が測れる。何のって? さあ。)

バカとメイドは虚空に踊る  コーラの王冠氏

【作品集】143
【タイトル】バカとメイドは虚空に踊る
【書いた人】コーラの王冠氏
【あらすじ】
「あたいは、神になったのさ」

チルノ、襲来。

「どうして……貴方が、時の止まった世界で動けるの?」

愕然としながら呟く咲夜。氷漬けになった紅魔館。

「この世に最強は二人も要らない! 時を操る事が出来るのは、あたい一人で十分だ!」

時を操る二人の争い。

「私、参上」
 
土着神の頂点、洩矢諏訪子。幻想の光、チェレンコフ光。全てを知る者、ラプラスの悪魔。

「あたいの野望、それは──」 
 
チルノの目的とは? その結末は? 
――全ての答えは↓に
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1302851971&log=143

【感想】
 量子力学をテーマにした作品。超自然的な存在の「能力」と我々の知る物である「科学」の交錯、融合には心を引かれるものがあります。
 また、科学の事柄が頻出しますが、それに関しての説明も丁寧で、物理学の知識が無い方でも安心して読めます。
 ですが、ここに落とし穴が。約170kbと言うボリューム、その大半が「説明」とチルノと咲夜のバトルに割かれています。そして、「説明」が「説明」で止まり、物語性に寄与していない、と言う印象を持ちました。
 また、バトルに関しても正直冗長かつ単調な印象を感じました。そもそも、バトルシーン自体も、バトルと言うよりも、物理的な概念を話し合う、と言った様に見えます。
 さらなる欠点はキャラクターの描き方。とにかく説明的な作風と相まって、全体的に作者の代弁者でしかなく、魅力に欠けると私は感じました。コメントで「オリキャラ」と揶揄されるのも仕方ないのかな、と思います。
 
【評価】
 ★★★☆☆

個人的には大変好みの作品でした。設定と作風は実に魅力的です。一読者としては文句なしに今作品集ベストと言えます。ただ、物語やキャラクターの魅力にはやはり欠けると感じたので、人に勧めるとなればこの点で。

地底都市ブルース  ぶゃるゅーょ氏

【作品集】143
【タイトル】地底都市ブルース
【書いた人】ぶゃるゅーょ氏
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1302891641&log=143
【あらすじ】
地上との交流が少しずつ始まった地底。
陽気な土蜘蛛、黒谷ヤマメは友人のパルスィと別れた後、地上からやってきた妖怪と出会う。
花にしか興味を示さないその妖怪は地下世界へ『散歩』に来たのだという。
ヤマメは地底はまだ危ぶないと止めるが、本人はまったく気にしていない様子。
興味が沸いてきたヤマメはその『散歩』に同伴することにした。

【感想】
幽香とヤマメという奇妙なコンビが織り成す地底散歩劇。
作者のぶゃるゅーょ氏は幽香のミステリアスな部分を抽出しようとしたとのことだが、その試みは成功しているように思える。
ヤマメとの会話は一言で表すなら、幽香らしさが際立つものだった。
花屋の奥でひっそりと咲いている名も分からぬ花、そんな不思議さがある。
その幽香らしさを引き出した陽気な相棒もまた魅力的。
最後に幽香が送った招待状は何とも粋であった。
ちょっと不思議な幽香に出会うことができる作品だ。

首尾  司馬漬け氏

【作品集】143
【タイトル】首尾
【書いた人】司馬漬け氏
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1303045613&log=143
【あらすじ】
ぬえは夜、聖と一緒に寝ていた。
聖が夜中に突然、目が覚めて寂しがってはいけないと一輪に頼まれたからだったが、ぬえは訝しがっていた。
聖が猫を含め、生き物は何でも好きなのは確かだが、寂しがるようなことがあるのか、と。
そして、紫がある動物を連れて命蓮寺へやってきた。その動物とは虎であった…

【感想】
渋く、上品に淹れたお茶、と表現したら良いのだろうか。
実に濃厚な命蓮寺と聖である。
特にぬえの最後の言葉にはこの話の全てが凝縮されているように感じた。
短いながらも命蓮寺の魅力がたっぷりと書かれた逸品である。
あと、聖が虎の性別を手で触って確認する貴重なシーンも。

あっ!里も神社も廃墟になった!!  緑黄色野菜王 氏

【作品集】143
【タイトル】あっ!里も神社も廃墟になった!!
【書いた人】緑黄色野菜王 氏
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1303391024&log=143
【あらすじ】
ふとした出来心から、幻想郷を抜け出して外の世界を見物しに行った藍と早苗。
一時間にも満たない観光から帰ってきた二人を迎えたのは、無人の廃墟と化した幻想郷だった……。
人間も妖怪も誰もいなくなり、あらゆる建物が崩壊した世界。
それは即ち、八雲紫も八坂神奈子・洩矢諏訪子もいないということである。
主人を失った式神と巫女の二人は、その現実に打ち拉がれながらも、異変の調査に乗り出した。

【感想】
タイトルがウルトラマン80最終話「あっ!キリンも象も氷になった!!」のパロディだと分かる人はどれぐらいいるのか……。
(作者は以前にもウルトラマンレオのタイトルをパロっていたことがあり、その時良くも悪くも内容に衝撃を受けたので覚えていた)
あらすじとしては上に書いたようにシリアスで重い感じがあるが、実際にはキャラの掛け合いが楽しく、安心して読める。
100kbを越える長編作品だが、続きの気になる展開とテンポの良さで、それ程気にならず読み進められた。
ちょいと気になったのが、キャラの口調。
キャラ崩壊とまではいかないけど、イメージから離れている、という人は多少いるかもしれない。
ただ、それを差し引いても終盤の別れのシーンが綺麗だった印象。
らんさなというのは初めて見た組み合わせだが、中々良い物だった。

鎖  半妖氏

【作品集】143
【タイトル・作者】『鎖』 半妖氏
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1302710458&log=143
【あらすじ&感想】
タグにあるのは紫と永琳。そしてもう一つゆかれいむ。
死に瀕し、残して行く者と置いて行かれる者の関係を「鎖」を用いて表した短編。
内容は、重いと言わざるを得ない。冒頭からしてゆかりんは死にかけているし、霊夢は一行目で死んだ。
しかし読後は清涼感が漂う良作。最後の締めは中々上手いと思う。

【評価】★★★★☆
点数は現時点で2660点。妥当だと思う。質が、ではなく個人的な点数帯の印象として。
こう言った良作短編や良作中編はこの辺りの点数が多い気がする。だから本当に個人的な感想。
読んで損は無い。何か死にネタで上手いの無い?って聞かれたら挙げるレベル。

鼠は死んで何残す?  猫井はかま氏

【作品集】143
【タイトル・作者】『鼠は死んで何残す?』 猫井はかま氏
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1302750722&log=143
【あらすじ】
もしも星さんがもう少しだけ弱かったら
白蓮さんを待つ千年の間に訪れたかもしれない破綻
それに伴うナズーリンの想いを書いてみました
(後書きより抜粋)

 顔が、どんどん熱くなる。
「ご、ご主人、さま、あの」
「え?」
「わ、わたしはその、あのあの、ほら、妖怪だから、蛇の毒なんか、あの」
「あ……」
「こ、こんなもの舐めておけば平気だよ」
(本文より抜粋)

【感想・ここが面白い・私的評価】
ナズーリンと星の過去話。割と暗めの恋愛もので、私的には大好物です。
タグにもダークとあるので「思ってたのとまったく違う!」という心配はないでしょう。しかし、予想していたものよりも重い結末が待っていて、なにか胸にずんとくるものがありました。
冒頭の「虎は死んで皮残す ならば鼠は何残す?」の問いかけの答えは特に味わい深いですね。
構成もよくまとまっていて、読むのが苦になりません。
ただ、フェードアウトするような終わり方だったのが少し残念に思いました。終盤のナズーリンと読者が受ける衝撃はなかなかのものですが、その後の展開が短めであっさりしているように感じました。ナズーリンは葛藤し、なんとか答えを出そうとしていますが、その部分をもっとねちっこくやってほしかったというのが本音です。まあ、そこはあくまで私の好み。ご馳走様でした。
★★★☆☆(なにか読みたいときにぜひ)

【こんな人におすすめ】
純愛ものが好きな人、
暗めの話が読みたい人、
ナズーリンが好きな人、におすすめです。

トリックイナバ  みずあめ。氏

【作品集】143
【タイトル・作者】『トリックイナバ』 みずあめ。氏
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1303276073&log=143
【あらすじ】
妖怪の山にサイレンの音が響き渡った。なんらかの異常事態が起きたのだ。
サイレンを聞き、千里眼で事件が湖で起きていることを知った椛と居合わせたにとりは急ぎ、現場へと向かった。そこで椛が見たのは、ピンク色のワンピースを着た黒髪の妖怪兎と、白い鱗を持つ巨大な龍が争う光景であった。そして、兎も龍も湖の中へ消えうせた。椛はにとりとその場にいた文に今起きた事態を確認するが、にとりは龍などではなく蜂の大群が妖怪兎と争っていたと言い、文は大鷲だと言った。
一方、鈴仙は人里に向かい妹紅を探していた。てゐが二週間前から行方不明で、その二週間前にてゐは妹紅と酒を呑んでいたと輝夜から聞いたからだった。
妹紅はてゐが以前から幻想郷全体を幸福の絶頂に祭り上げる計画を進めていると言った。

「あと……そうそう、変わったところっていうか、これは酒呑むたびにあいつが言ってたことだけど」
「なに?」
「幻想郷全体を幸福の絶頂に祭り上げる計画が進行中なんだってさ」
「はぁ?……なにそれ」
「私に訊くなよ。あいつが言ってたことなんだから。一字一句違わずにね」
(本文より抜粋)

【感想・ここが面白い・私的評価】
てゐの事件ものならぬ異変ものと言うべきですかね。いろいろな人物が登場するのでいかにもな異変っぽいですし。主役は鈴仙。
てゐはいったい何をする気なのか?という冒頭からの謎で読み手の興味をつかみ、ほかの人物たちのさまざまなエピソードをつないでいくことで、最後まで中だるみすることなく終わりました。おかげで容量的にも大分長い話ですが一気に読むことができました。構成が実に上手いと思えます。
ただ、事件となると主犯と主人公と敵が必要で、今回主犯が敵ではないので別に敵を作らなければならず、その敵を無理に作ったなという印象がありました。展開としては無理がないんですが、そこのところが引っかかってちょっと残念だなと。
しかし、各キャラクターの描き方がはっきりしていてこの話ひとつでいろいろ楽しめるのが嬉しいですね。面白いと言い切れる作品でした。
★★★★☆(読んでおきたい佳作です)

【こんな人におすすめ】
異変ものが好きな人、
てゐと鈴仙が好きな人、におすすめです。

忘れずの歳月  zenteki氏

【作品集】143
【タイトル・作者】『忘れずの歳月』 zenteki氏
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1302771446&log=143
【あらすじ】
店内で豆撒きをされたせいで、香霖堂は客を迎えるには不向きな状態にあった。
それでも、やってきた客はなんとか席についた。客、上白沢慧音はある問題を抱えていた。

「昨日は、白澤になれなかったそうだね」
「ああ、こんなことは生まれて初めてだ。夜空を見上げるとどうだ。私が見ていたはずの満月は何処にも無かった」
(本文より抜粋)

【感想・ここが面白い・私的評価】
砕月の解釈を語る霖之助と慧音の一こまを書いたお話。
妖怪と人間の立ち位置、幻想郷の歴史を語る霖之助と慧音の二人がよく描かれています。半人半妖の二人だからこそ幻想郷の両面を語ることができるんでしょうかね。
ところどころにある霖之助の薀蓄が嬉しい考察小品。反面、面白みが地味であるため読み始めるための気力が必要になるかと思います。
★★★☆☆(なにか読みたいときにぜひ)

【こんな人におすすめ】
霖之助が好きな人、
考察ものが読みたい人、におすすめです。

閃光少女  即奏 氏
死にたい、としつこく言ってる奴ほど、自分の人生に意味を求めたりもする。

【作品集】143
【タイトル】閃光少女   
【書いた人】即奏 氏
【URL】
   閃光少女↓ ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1303541703&log=143
   閃光少女↑ ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1303541852&log=143 

【あらすじ】

死にたい、としつこく言ってる奴ほど、自分の人生に意味を求めたりもする。
そんなモノが本当にあるのかどうか、ろくに想像力を働かせもせず、強烈に求めてしまうのが、姫海棠はたて、という奴で。
生きている意味が見つけらず、自らをクズ天狗と評し、絶賛死にたがり中。
死ぬ気になれば、なんでも出来る。
本当に?

姫海棠はたての場合は本当だった。
幻想郷をひっくり返してしまうほどの、超特大スクープをゲット。
こいつをばらまけば、どえらいことになる。自分の人生に意味を見いだせるかも知れない。
だけど、本当にやるのか、幻想郷の平和を乱して、知り合い全部敵に回して、故郷を危機に陥れても?

姫海棠はたての答えはイエスだった。
これが
誰よりも死にたがり、誰よりも生きる意味を求め、今日死ぬ気全開で、理想の自分の明日を夢見る、そんな奴の不器用で鮮烈な生き様。

【感想】

この作品への読者諸氏の印象は、はたての一人称を読んでみて、どう感じるか、にほぼ集約されるんじゃないだろうか
はたては、常に目の前の出来事を、一歩引いたような視点から眺めて、それら事象に子供みたいに素直すぎる、あるいは子供みたいに屈折させた感想・感慨を付加して解釈しちゃう奴
この子供みたいにすぎる、はたての視点が、平面的な作り物っぽい大げさなだけの感情表現、みたいに読めてしまったりもして
これが原因で、最初、自分はどうも物語に感情をついて行かせるのが難しかった

でも、読み進めていって、はたてに対する理解が深まってくると、これが逆転
はたての、子供みたいな内面の感情表現が、彼女のナイーブ過ぎる心を守るための防衛機能であったり、真っ直ぐな性格の現れであったりと
なんだか、はたてがかわいくなっちゃったんです!

しかしこれ、そこまで読み込まないと、あるいは読者個人が持ってる萌属性に触れないと、いまいちこの一人称の魅力がわかりにくい、という事でもありそうで
誰でも、はたてがかわいく思えてこれるものじゃなさそうなのが、残念なところ

お話自体は、もうちょい最後まで魅せてほしい部分もあるにはあるけど、基本的に熱くて、青臭くて、良い
天狗同士の高速バトルも、独自の天狗スペックに基づいたものながらも、相応の説得力もあり、格好いい
だが、上記の文体のせいで、それらが曇って見えてしまう人も多そうなのが、やはり氏の一ファンとしては残念に感じる部分でもある

なんだけど
自分が即奏氏に感じる最大の魅力は、VSOPで見せてくれたような、作品を最大多数の読者へ一般化させるこよりも、
ひたすら、やりたいことを、容赦なくやりました的な、徹底的ゴーイングマイウェイさ
今回も、はたてというキャラクターをこのような表現で読ませてくれた事に、個人的には感謝したい

【五段階評価】
客観的には★★☆☆☆
序盤の犯人捜しを楽しめる人は、どれくらい居るだろうかと考えると、ちょっと不安
この容量をこれから読ませようって部分には、ちょっと厳しいかな、というのはいなめない
文が現れてからの展開は、誰でもおすすめできそうなのだが

主観的には★★★★☆
はたて、というキャラがいまいちピンと来なかったけど
この作品での解釈はとても魅力的だった
これから、はたてタグを積極的に読んで見たくなった

「博麗大結界の抜け穴……、実在していたなんて」

【作品集】143
【タイトル】閃光少女 (↓↑の前後篇)
【書いた人】即奏 氏
【長さ】■■■■■ (165KB がっつりボリュームのある大長編)
【あらすじ】
「博麗大結界の抜け穴……、実在していたなんて」
 ある日、はたては念写により妖怪の山と外界との写真を見つけてしまう。
早速新聞のネタにしてやろうと思ったその時、河童の工場で爆発が!
【感想】
 妖怪の山には外の世界への抜け穴があるのでは、という記述は求聞史紀にあるものの、
それについて扱った作品は驚くほど少ない。この作品はその、天狗の山―外界のルートを
幻想郷全体に対する隠蔽だと憤り新聞で告知すようとするはたて達と、
幻想郷に欠かせないシステムだとして公表を阻む文達とが正面から激突する話である。
 最大の見所は後半。はたての未熟な部分、内にも外にも幼く激しい感情と
後ろ向きなインドアらしさが押し出された青臭い描写は、この作品ならでは。
前半も前半で、V.S.O.Pの時のようにとりとめもない会話で終始しているという訳でなく、
事件の発生、事実の発覚、そして戦闘と見所十分。これからどうなるんだ!?
という所で後半に移るという手に汗握る展開で、それからの部分は一気に読んでしまった。
 惜しむらくは、キャラが突っ走りすぎて展開が振り回されてしまっている所。
とりわけ、後半開始時点と終盤は勢いに任せた急展開になってしまってる感があった。
 最後に、題名からして東京事変の同名の曲を意識していると思うけれど、
この曲を作品と絡めるならば、物語が全部終わった後、エンディングの部分じゃないかなと思う。
章番号がカウントダウンになっているように、最後の展開を見ての通り、
この物語ははたてのクライマックスではなくて、スタート地点に立つまでの話なのだろう。
【文章】       ★★★★★ (勢いが凄い即奏氏らしい文章)
【構成】       ★★★☆☆ (ベースは★4、急展開な所が所々あるので-1)
【読み易さ】     ★★★★☆ (文章の勢いに一度乗ってしまうと最後まで一気に行ける)
【総合評価】   ★★★★☆ (お勧め。最初から最後までエネルギー全開な即奏ワールドを楽しんでほしい)

秘封B食倶楽部  お嬢様 氏

【作品集】143
【タイトル】秘封B食倶楽部
【書いた人】お嬢様 氏
【長さ】■■□□□ (32KB 中編)
【あらすじ】
 活動の新分野として身の回りにあるスキマを探すことになった、
というか、蓮子の趣味で怪しい飲食店巡りをすることになった秘封倶楽部。
今回は、国道沿いにある外見がぶっ飛んでいるラーメン屋に行くことに。
【感想】
 一見どころか二見も三見もお断りしそうなオーラを出している飲食店は、探してみると結構存在する。
開いているのか分からないような店、奇抜な内装の店、ぶっ飛んだメニューのある店、
そういう、いかにもな店の雰囲気がビシビシと伝わってくる。
そして、秘封がただ怪しい店に行くだけでなく、しっかり東方と交差させている点が好評価。
ラストの締め方が秘封っぽくて良い感じだった。
【文章】       ★★★☆☆
【展開】       ★★★★☆
【総合評価】   ★★★★☆ (こういう店巡りは大学生までじゃないとなかなか出来ないよね)

何事もなかった一日  村人。氏

【作品集】143
【タイトル】何事もなかった一日 【書いた人】村人。氏
【分類タグ】魔理沙 にとり 早苗 輝夜 レミリア アリス
【URL】ttp://coolier.sytes.net/sosowa/ssw_l/143/1303569845
【POINT】22300 (2014/09/13時点) 【容量】27.79KB
【あらすじ】
魔理沙がアリスにクッキー☆をもらってからのわらしべ長者、と思わせといて…
【感想】
蒲公英コーヒー氏の「中秋」、アイ氏の「スワン」、最近では東方特許許可局氏の「みんな大好きぬえドリンク」、そしてこのSS。
これらがなぜ面白いのか、首をかしげていた時期がある。
面白くないというわけではない。普通に面白い。いや、かなり面白い。
だが、劇的なドラマがあるわけでもなく、オチはオチとしてちゃんとあるが、果たしてそれだけで自分と他の評価はこれほど高いものになるのだろうか。それが疑問として長らく残っていた。同じような面白さを感じていながら、正体がぬえのようにつかめなかった。
最近ようやく疑問が晴れた。それまでそれがわからなかったのは、ごく自然体でそれが為されていたからだ。
すなわち、東方世界の多くのキャラクターが個性を発揮しているということだ。
キャラを少数で描き直した場合、面白さは半減する。逆に言えば、多数のキャラを活躍させているから面白さが倍増しているのだ。
しかし、これはそう簡単なことではない。単純に多くの登場人物を出せばいいわけではないのだ。
それぞれの個性を理解し、そのキャラならではの言行を取らせる。しかも、多数。
キャラ被りを避けて、生き生きと全員を描くなんてのはなかなかに難しいはずだ。それを書き手らは成し遂げた。
おかげで色鮮やかな絵を見たような読後感をもらった。この場を借りて感謝を述べたい。