作品集153

Last-modified: 2013-03-05 (火) 03:17:40
駆けて落ちるその向こう  ビーン氏

ビーン氏の『駆けて落ちるその向こう』は恥ずかしい
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このSSは読むと悶えるとか2828が止まらないとか言うより、何か猛烈に恥ずかしくなる
前スレぐらいでこの作品を「中学生の時の妄想みたいで恥ずかしくなっちゃうよね」と言ってる人がいたが
なるほどその通りだと俺も思う。たしかにコレは恥ずかしい。しかし悪い意味でなく本当に恥ずかしいからいい
何か設定だけでも恥ずかしいのに、わざわざ雷という要素を使ってもっと恥ずかしくしているのがまた偉い

新キャラを使って早速百合というチャレンジ根性も買いたいし、この恥ずかしい妄想たっぷりの妄想を
SSという形に残るものに落とし込んだそのほとばしる若さ・後先考えなさを俺は高く高く評価したい

ぷにれいむ  I・B氏
何イイ話投稿してくれてんだ

I・B氏の『ぷにれいむ』は読まなくてもいい
ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1314928156&log=153

これは読まなくてもいい
もう涙で前が見えん。ずるいだろこれは。何イイ話投稿してくれてんだ

成り行き上霊夢を育てることになった文の奮闘と母性の獲得、別れと再会。

【作品集】153
【タイトル】ぷにれいむ   【書いた人】 I・B氏
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1314928156&log=153

【あらすじ】
 気紛れから博麗神社に降り立った射命丸文は先代巫女が死んで一人になった直後の霊夢を見つける。
 成り行き上霊夢を育てることになった文の奮闘と母性の獲得、別れと再会。

【感想】
 あらすじ以上のことは何もなくて、170kbあるうちの2kbくらい読んだらそれはわかる。
 文章は一文一文が短く、基本的にまるがあればすべてそこで改行するため
 普段まともに本を読まない人にも優しい親切設計で、テンポが良く読みやすい。
 しかし多少なりとも「ラノベ以外にも僕ちん本を読むのよ」という自意識を持った方々からは
 物足りなく、稚拙にうつるだろう。あとセンスがない。
 けっこう大事なところで

あり得ない出逢いから紡がれる短い日々の物語が、風と共に舞い降りた――。

 などの恥ずかしい文が出てくるため、読者としては赤面しつつブラウザバックするか
 そそわなのでしかたないと割りきって読み続けるかの二択を迫られることになる。
 割りきって読んでいくと、そういうものであるので流し読みになるが
 文と文とのつながりがわりと不明瞭なときがあるので、ときどき戻って「今何が起きているのか」
 と確認しなくてはいけないこともある。なので170kbが実質10kbだが余分に5kbぶんくらいの
 労力がかかる。
 テンポは良いものの、手垢のついた表現を多用するためなんとなく作品のすべてが
 言葉が吟味されていない、ぞんざいなものに感じられるのもマイナスポイント。
 ストーリーは上述の通りだが、主に文の心情変化を説明ではなくギャルゲのごとく
 イベントの積み重ねで段階を重ねて描いていくのは好評価。しかしそのイベントの内容も
 やはりありきたりであり、登場人物が作者の都合のいいようにしか動かない。
 文の愛情を受ける役である霊夢がいかにもこのロリコンどもめ萌えろと言わんばかりの
 キャラ立ちで、小憎たらしいところのひとつもないのが不満であるが
 機能は果たしているのでそこはないものねだりとも言える。
 まとめると、何も考えないで読んで何も考えないで感動する喜びに満ちたコストの低い
 良質な作品であるが、なにぶんセンスがないので自意識の高い連中には耐えられない
 凡作でもある。

R.I.P  昌幸氏
魔理沙と様々なキャラの交流を描いたオムニバス。

【タイトル】 R.I.P  【書いた人】 昌幸氏
【URL】 ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1314973145&log=153
【あらすじ&感想】
魔理沙と様々なキャラの交流を描いたオムニバス。登場するキャラは概ねタグのとおり。オムニバスだけど読み進めていくうちに一つのテーマが
浮かび上がってきて、ただ短編を集めただけではないことが見えてくる構造。
感情を揺さぶるような派手な展開も息を呑むような詩的な表現もなく、ただ過不足の無い文章が淡々と流れていくような展開はなかなか心地良い。
キャラの過去話やエピソード等は作者さん独自のオリジナル設定なわけだけど、それらが地に足の付いた、らしい物なので、抵抗感なく受け入れられる。
個人的には小説版儚月抄の感覚に近いものを覚えた。

百合要素は無い。

幻想郷の住人それぞれと魔理沙の短い交流話をまとめて、全体として魔理沙の人生をふり返る。

【作品集】153

【タイトル】R.I.P   【書いた人】昌幸
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1314973145&log=153
【あらすじ&感想】
 幻想郷の住人それぞれと魔理沙の短い交流話をまとめて、全体として魔理沙の人生をふり返る。

 一つ一つのエピソードの繋がりが弱いせいか、途中に余談じみた話が混ざっている気がしてしまうのが残念。
 順調に成長していたと思いきや、前触れもなく過去話に突入したりするから、ひょっとすると設計の時点で、それぞれのエピソードの繋がりを意識しづらいネックがあったのかも。
 個人的には、魅魔編の前あたりで、一つ区切りがあればと思った。その前後で、オムニバス形式にしても、話の質がかなり変わると思った。ここから変わりますと、前触れがあった方が全体を眺めるうえでも親切だと思った。 
 話そのものは、設定はよく考えられているけれど、それを十分に活かし切れていない感じがした。この話の中で完結している設定だから、きっちり使いきらない事には作品の魅力につながらないと思った。
 もう、それぞれの設定下の完全に独立した短編をいくつも書いて、読む側が勝手にオムニバス化するような形にした方が良かったのでは、とまで思った。

 魔理沙の人生を振り返るという一本道の話に、無駄にわかれ道(しかも行き止まり)が設けられたみたいで、設定がもったいなく思った。

ギャザー  アン・シャーリー氏

【作品集】153
【タイトル】ギャザー 1,2,3,4   【書いた人】アン・シャーリー氏
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1314625140&log=153
ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1314625221&log=153
ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1314625299&log=153
ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1314625455&log=153

【あらすじ】
 河城にとりが魔理沙と吸血鬼姉妹とともに魔法の森の池から少女の死体を見つける。
 八雲藍と八雲紫が現れて「その死体は自分たちの娘だ」と宣言する。やがて、霊夢や
 アリス、早苗、パチュリーなどを巻き込んだ異変へと発展。

【感想】
 奇を衒っているうちに終わってしまった作品。章ごとが細切れで、登場人物が多く
 くるくると視点が切り替わるので、ついていくのが面倒くさい。
 また章ごとにいろいろと仕掛けがしてあって、読者を驚かせようとしているのはわかるが
 そこまで気合を入れて読むほどの魅力はないので最後までつるっと読んだあと思い返すと
 なんだか出落ちの連続を見せられていたようでもある。
 最終的に八雲紫の秘密に向けて物語は収束していくわけだが、その秘密がしょぼい
 というよりは書ききれていないので、やはりこけおどしでしかないものを300kbも
 読ませられた感がある。
 文章は読めば読みやすい。しかしテンポのよいところとそうでないところの差が顕著で
 駄目なところはだらだらしているだけでストレスが溜まる。時折挿入されるギャグも
 面白いというよりはうざったく、装飾過多でだらだら感に拍車をかけている。
 ようするにメインの話ではない個々の動きや小ネタに振り回されてしまって長編に
 求められるテーマや筋がおざなりに済まされているので、結局のところ何がなんだか
 わからない雰囲気作品になってしまっている。
 ロンドンの救貧院の話や魔女の姿の部分がハッタリにしかなっていないのもいただけない。
 総じて皮を向いて皮を向いて皮を向いていったら中身がなかったというタマネギのような作品である。

新聞供養  這い寄る妖怪氏

【作品集】153
【タイトル】新聞供養    【書いた人】這い寄る妖怪氏
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1315102359&log=153

【あらすじ】
 妖怪の山に通り魔が出没する。天魔の命を受けた文は椛、はたてとともに
 犯人探しに乗り出すが、はたての目撃証言ではその犯人はずっと昔に死んだ文の恩人であるという。

【感想】
 上ふたつに比べるとかなり出来上がっている作品。文のプロモーション作品としては申し分ない。
 悪いところとしてはオリキャラで謎の根幹である男の魅力があまり伝わってこない。
 地の文でいろいろと説明されていたり文の受けた印象を書いていたりはするが、
 男が実際に発する少ない台詞や行動がどうもどこかで見たようなテンプレどおりで安っぽい。
 なのでそこから導き出される文の新聞に対する情熱や葛藤も実は安っぽい。
 椛がやたらと文を持ち上げるのもいただけない。前作で何か書いているのかもしれないが、
 これだけ読むと不自然で作者がヨイショしてるだけのようにしか見えない。
 文章はやたら大げさな表現を使うところが気持ち悪いが、このくらいがそそわでは
 ちょうどいいのかもしれない。
 また行あけを多用して読みやすくしているのは嫌いな人もいるだろうが、
 読みやすいに越したことはないので親切でよいし集客力にも貢献していると思う。
 天狗の社会や歴史を設定してわかるように書いているのは偉い。そのおかげで
 上述の文の安っぽさや椛のごますりも多少緩和されて見えるが、
 整理してみると作者が文ちゃん大好きということだけがわかる作品である。

かあさんの歌  がま口氏

【作品集】153
【タイトル】かあさんの歌
【書いた人】がま口氏
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1314630889&log=153
【あらすじ】
 霊夢が魔理沙の子供を出産しました。
 だから顔見せに、人里の霧雨の家に挨拶に行きます。
【感想】
 まず、とんでもない設定を前提に持って来ているので、即ブラウザバックする人が多いと思う。
 しかし、読み進めるほどに、これは良い意味で自分の世界を持っているなと思わされた。
 女同士で子供が作れるか云々なんて、この作品の中では細かい事だ。
 それより良い親子、良い夫婦について、こんな風にやさしく丁寧に扱った作品はみたことが無いので、こわい物見たさでも一読してみてほしい。
 自分は一つ、己の世界の狭さを思い知った。

地下室をつがいが歩く  タノモウス氏
フランドールの一人称で話が進む。

【作品集】153
【タイトル】地下室をつがいが歩く    【書いた人】タノモウス氏
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1315402534&log=153

【あらすじ】
 フランドールのいる地下室に美鈴がやってくる。フランドールは美鈴に自作の物語を聞かせ、
 そのお話を美鈴が好きだといえばフランドールがビスケットを食べ、気に食わないといえば美鈴がお菓子を食べる。
 美鈴は残酷な悲劇が好きみたいだ、とフランドールは考える。

【感想】
 フランドールの一人称で話が進む。フランのつくる話は「幸せでした。まる」で終わるものの、
 とても残酷な話ばかりで、ピントがずれていると言わざるをえない。
 けれどそれを聞く美鈴もずれている。フランの残酷な話に、自分の好みの展開をくっつけて、
 さらにおっかない話にしてしまう始末。タイトルの「つがい」とはフランドールの話に出てくるつがいであり、
 またこの変なお話しをしあって遊ぶずれたふたりのことでもある(とにおわせるように書いてある)。
 ちょっとずれたふたりがお互いにお話しをしあうことで、自分自身のことや、相手のことについて、
 またフランがそもそもこの遊びをする目的にも気づいていくんだけど、その展開が秀逸。
 フランの一人称の文章を読みながら読者もそれを追体験して少しづつ気づきが広がり、世界がひらけていく感じがする。
 大げさなものいいだけど、文学ってそもそもこういう、ふつうになんとなく暮らしていては見落としてしまうような、
 ちょっとした(世間からみればどうでもいいような、個人的な/繊細な/内面でとどまりがちな)題材を取り上げて
 顕在化するための装置であるんだよね、とかそんなことまで思ってしまいました。
 文章もかっこいい。静かな雰囲気だけど、フランが自分の物語に秘められた自分の望みに気づくとこなんか
 見事の一言。読んでて大興奮してしまいました。
 またふつう幼いフランドールに対して大人の、お姉さんの位置に配置されがちな美鈴が、フランと同じではないけれど
 やはりひとりの少女として書かれているのもいい。においたつような色気がある。
 おかしな話しだし、Happyなものではぜんぜんないけれど、とてもおすすめ。こういうのも

フランちゃんと美鈴が、お互いに向けて怖く、美しい話をつくりあう。

【作品集】153
【タイトル】地下室をつがいが歩く   【書いた人】タノモウス氏
【URL】ttp://coolier-new.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1315402534&log=153

【あらすじ】
フランちゃんと美鈴が、お互いに向けて怖く、美しい話をつくりあう。

【感想】
今日はめーりんタグレビューの予定。ugigiで検索し、レート順にすると、上から長すぎ・続き物・直近で
レビューされ済みなどで、一番はじめにこちらの条件を満たしたのがこちら。私はウレシイ。
個人的にそそわで、一二を争う大好きな作品です。
地下室に訪れる美鈴に向けて、フランちゃんが物語を創作し、口で伝える。つがいになったうさぎと
男の話で、男は大変に腹をすかせていたから、うさぎを食べてしまおうと考えるけど、思いとどまる。
かわりにうさぎと子供をつくって、その子供を食べるのでした。そうして末永く幸せに暮らしました。おしまい。
という酷い話で、次にする話も同じように酷い。でも、美鈴は、フランドールが作る話を好きだという。
どこがどのように好きなのか、気になるけど、フランちゃんは尋ねない。

二次創作であれなんであれ、「お話」を作ったことがある人は、きっと誰でもグッと来るような作品。
その意味で、私たちはこの地下室と陸続きの場所にいる。
自分がお話をつくるのはどうしてだろう。お話は、どこからやってくるんだろう。
そしてそれを、美鈴に伝えたいと思うのはなぜだろう?
自分の心や、思い出に潜るような問いをフランちゃんは繰り返す。何度も書かれる、「なぜだろう」の
言葉は、とてもスリリングで、甘美な響きを持っている。そしてその問いは、ずっと先にもつながっている。

Call of Destiny ~War of Memories~ (Ⅰ)  カミソリの値札 氏
いつも夢に見る謎の少女。それは――

【作品集】153
【タイトル】     Call of Destiny        ~War of Memories~ (Ⅰ)
【書いた人】カミソリの値札 氏
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1315625875&log=153
【あらすじ】

いつも夢に見る謎の少女。それは――

ヴァチカン教会の異端狩りであるオリヴィアは、教会の最討滅対象「レミリア・スカーレット」に関する
情報を持つ者を保護するよう任務を受け、ベトナムのサイゴンへ赴いた。
米軍と共にターゲットのいる市庁舎へ乗り込み、情報を手に入れると、
――――この論文は、ニコライ・ヴィノグラードフ博士による【祖国を守る槍作戦】の研究資料を元に作成された。
と書かれていた。
それを目にした途端、夢に出てくる少女が思い起こされた。背中には蝙蝠の羽、口元から覗く鋭い犬歯。
その少女こそが、レミリア・スカーレット。
彼女に会いたい。オリヴィアの心はレミリアを求めて止まなかった。
ベトコンとの激戦の末、オリヴィアは帰還し、レミリアに会うため情報屋に「ニコライ・ヴィノグラードフ博士」
「祖国を守る槍作戦」の情報を求めた。そして更なる手がかりを求め、香港の九龍城へと向かう・・・

【感想】
咲夜の過去の話。オリヴィア=咲夜。タイトルからも分かるように「Call of Duty」のオマージュ作品。
二挺拳銃の咲夜はブラックラグーンのレヴィに近いかもしらん。現時点では時止めは出来ない様子。
まだ序章なので深く言及できないものの、アメリカの軍事映画そのままの雰囲気と銃撃戦は見もの。
「祖国を守る槍作戦」とは何なのか? レミリアとオリヴィアの関係は? 
読めば続きが気になってくること請け合い。
あと、グロ注意。

★★★★☆(続きの期待込みで)

とりあえず言っておきたいことは、ここぞというシーンで描写をハショってるのはいただけない。

カミソリの値札氏の『Call of Destiny ~War of Memories~ (Ⅰ)』はアレな作品
ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1315625875&log=153

ここのところチャットに出現してはやけに馴れ馴れしく会話しているのを目撃していた氏
しかしてその新作たるや、とりあえず意気込みだけは買いたいぐらいの力作作品に仕上がった

とりあえず言っておきたいことは、ここぞというシーンで描写をハショってるのはいただけない。もっとギチギチ丁寧に書くべきだ
描写は巧く、戦場の書き方も堂に入ってるので、これは正直に長編書くのが面倒だから手を抜いている感じがしていただけない
この一章だけではどうしても評価がしにくいが、今後続編がもし出て、なおかつちゃんと完結できるなら評価も変わってこよう

邪仙式縦四方だいしゅきホールド  KASA氏
芳香はご主人様のことがとっても大好きだけど、お脳が弱いせいでときどきご主人様の顔を忘れちゃう。

【作品集】153

【タイトル】邪仙式縦四方だいしゅきホールド   【書いた人】KASA氏
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1315744508&log=153

【あらすじ】
芳香はご主人様のことがとっても大好きだけど、お脳が弱いせいでときどきご主人様の顔を忘れちゃう。
けれどご主人様は怒らない。ぱーぷりんな芳香が主人の顔を思い出すまでの間、そばにいてじっと優しく待ってくれるのだ。
なぜならご主人様こと霍青娥もまた、そんなお馬鹿な芳香のことがとっても大好きなのだから――

(本文より)

【感想】
一言で言えばあらすじ通り。もう一言付け加えるならエログロ。誤解を恐れず敢えて言うと、それだけの話である。
だがペラペラでは断じて無い。ほのぼのエログロ百合がみっちりと、高い密度で詰まった作品なのである。

エログロそのものを追求する作品としてのレベルは高いと思う。ほんのりエグめのエロエロにもとれなくもない描写が綺麗に、延々と続くその様には感動すら覚える。
この手の作品としてはグロはヌルめと言えなくもないが、まあそっちを強く追求する意味は余りあるまい。
青娥の異常性や芳香の「だいしゅきほーるどのための準備」の狂気、エロティックな描写とほのぼの百合的な空気がなんかすごく見事に調和していて得も言われぬ雰囲気を醸し出している。
仮に、これをネチョ前提で書いていたとしたらエログロが強くなりすぎて、多分あんまり楽しめなかっただろう。

KASA氏作品全般を楽しむための個人的なコツだが、この人の作品には「酔っ払う」べきであると思う。
普段の倫理観は脇に置いて、すこしばかり異様な箱庭の世界の常識に身を委ねてギリギリエロスと微かな違和感に酩酊するべき。我に返った時の何とも言えない引っ掛かりもそのうち快感になる。
そういう視点で見ると今作は「KASA氏初心者向け」でもあると思う。ネクロフィリアと死体、という「異常性」が際立っているので逆に倫理観をかなぐり捨てやすい。
ほら、東方だと百合作品自体は結構あるから普段の感覚で見てしまいやすいのよ。

死体とその死体を作った邪仙のイチャラブなので、ネクロフィリア風味でグロイ。

【作品集】153
【タイトル】邪仙式縦四方だいしゅきホールド    【書いた人】KASA氏
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1315744508&log=153

【あらすじ】
 いつものように墓守をしている宮古芳香のところにご主人様がやってくる。けれど芳香は死体なので
 ご主人様のことを忘れていて、侵入者と勘違いして襲って噛み付いてしまう。口の中に流れこむ血が
 記憶を呼び戻し、ご主人様のことを思い出させてくれた。謝る芳香。ご主人様は優しくそれを許す。
 そのあといっしょにお風呂に入ったり、添い寝したりする。

【感想】
 死体とその死体を作った邪仙のイチャラブなので、ネクロフィリア風味でグロイ。でもやり過ぎなほどグロくはない。
 牙で肌を破って血を飲んだり、関節が硬いのでご主人様を抱きしめられない芳香が自分で手足の骨を折って
 なんとかぎごちなく抱く格好になってみたりとか、そんな感じ。
 死体なので脳が腐っていて頭の悪い芳香は盲目的にご主人様を慕っており、ご主人様のほうでも
 自ら作った死体人形にフェティッシュと言えばいいのかやっぱりネクロフィリアと言えばいいのか

>「宮古は、人間になんかならなくてもいい。死体のままでいい」

 こんな感じの愛情をそそいでいる。いわゆるこのふたりがどういう関係の百合カップリングなのかの
 KASA氏的解釈を書いたSSである。だから合う人は合うだろうし、だめな人はだめである。以上、で終わってしまってもいい。
 でももう少し突っ込んで書くと、正直血を飲んでその味でご主人様のことを思い出すとか、関節が動かないので
 手足の骨を折ってむりやり曲げるとかは、ちょっとキャラが動けば容易に出てくる話なので
 驚くにはあたらない。だからそれほどグロくはない。
 もっと注目すべきなのはふたりがお風呂に入るシーンで、芳香が自分の体の臭いを気にするところで

>自分のお尻にも同じ溝がついていて、青娥が言うには、風呂に入らず日を置くと、自分のそこはひどく臭いらしい。

 こういうのが書ける人はあんまりいない。ちょっとそれいらねーよと思うくらい生臭い。このあと芳香は
 ご主人様のお尻の割れ目に顔を突っ込んで臭いを嗅ぐ。

>くんくんと香りを確かめたが、湯気の湿った感じがあるばかりで、匂いらしいものはなかった。

 だそうである。このあたりがエロイと言われるところであるし、やりすぎともグレイズ狙いといわれるところであるし
 氏をして氏たらしめているところではないかと私は思います。
 弱点は文章がぎごちないところ。誤字もちょこちょこあるし、ちょっと長い文章になるとどことなくてにおはがおかしかったり
 主述があやふやになっててうまく伝わらなかったり、リズム感がおかしいのでつっかえてしまったり
 比喩のたとえが変で首をかしげてしまったりと、うるさがたの文章屋先生たちからドヤ顔でつっこまれそうな
 感じではある。あんまり細かいことを言いたくはないが、直すべきところではあるので
 気合入れて何度も推敲するか、または長い文章とか適切かつ雰囲気のある比喩とかは自分には書けないと割りきって
 シンプルで直截な表現のみでやったほうがいいんじゃないかと大きなお世話ながら思う。武器のある人なんだし。
 大まかに言って、ドロチラやらオパーイやらのパーツでエロを刺激するようなそのへんのきゃーえっちなSSと比べて
 KASA氏のは氏なりの解釈でだけどちゃんと東方キャラを生き物として描いているのが偉い。そのへんが
 反感を買うところでもあるし、点数の入る理由でもあると思う。

時を刻む黄金の乳  I・B氏

【作品集】153

【タイトル】時を刻む黄金の乳  【書いた人】I・B氏
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1315608393&log=153

【あらすじ】

幻想郷を突如異変が襲う。内容は『幻想郷中の乳が奪われる』などといったとてつもなくシュールなもの。
今やぺったんこになってしまった大好きな美鈴の、幻想郷中の乳を取り戻すため、「悪魔の妹」フランドール・スカーレットは「おっぱいソムリエール」霧雨魔理沙と共に駆け回る。

【感想】
今作品集中で圧倒的な評価を誇る「ぷにれいむ」後の氏の作品。否が応にも期待を高め過ぎて読んでしまったという人は少なくないはず。
何度も言われている氏の特徴「一文が短い」は好き嫌いとして置いておく。
今作品のコンセプトは「お馬鹿な内容をクソ真面目に書く」といったシュールさ、某漫画の言葉を借りるならシリアスな笑いであるように思える。しかし、どうも中途半端な気がしてならない。これは個人的なものかもしれないがとあるキャラとの最終決戦部分の描写がどうも合わなかったようだ。
ここは乳なんて言葉は抜いてどこまでも真剣勝負の描写をするべきだったと思う。目的はもう分かっているわけだし、ここでギャグ描写を入れないほうがかえってシュールになるはず。
悪くないんだけどやっぱり「ぷにれいむ」と比べたら・・・。なんて人が多かった(であろう)のも点数が伸び悩んだ理由ではないだろうか?今回は期待に沿うほどの作品では無かったといった感じ。

二つ名ってどっちかというと厨二病気味な方がいいよね  羽ばたく目玉焼き氏

【作品集】153

【タイトル】二つ名ってどっちかというと厨二病気味な方がいいよね   【書いた人】羽ばたく目玉焼き氏
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1315563206&log=153

【あらすじ】

霧雨魔理沙は幼い頃“風”に出逢う。その姿に憧れた彼女は魔法使いになり、一歩でもその姿に近づこうと霊夢と共に異変解決に意気込むのであった。

【感想】
少々短すぎるかと思ったが初投稿ならばこんなものだろうか。
三人称で話が進み魔理沙が憧れたのは文だったという事実が語られていくのだが、やはり短い。もう少し肉付けが欲しかった。
コメントにも在るように非常に(努力家)魔理沙というキャラ像を作るのが上手い。なんとなく原作に近い雰囲気を醸し出す会話。しかし短い。
よく纏まってはいたが、ぼろが出ないように見えるのは結局「短いから」、そこに収束するかもしれない。

ぎぶみーとろーち  虎氏

【作品集】153

【タイトル】ぎぶみーとろーち   【書いた人】虎氏
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1315813687&log=153

【あらすじ】

ある日、魔理沙が神社にやって来る。特別なことではないただの日常。
しかしいつもと違って彼女のおみやげにはどこからどう見ても怪しすぎる液体(?)が・・・。

【感想】
まず読みにくい。ぎっしりと詰まりすぎ。高評価でなければブラバしていたかもしれないくらい改行を有効利用出来てない気がする。
読み進めていくと霊夢が魔理沙に好感を持っているようなことを読み取れるがあまりくどくなくて良い。タグの通りほのぼのレベルである。
喋れない、といったSSを書いてやろうとするくらいには状況描写が上手い。話としては小奇麗に纏まっており割と好み。でも読みにくい。

こいし恋し  晩飯トマト氏

【作品集】153
【タイトル】こいし恋し    【書いた人】晩飯トマト氏
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1315639430&log=153

【あらすじ】
 無意識に他人とは距離を空け、なるべく関わらないようにしてきたこいし。
 そんなある日、気紛れに訪れたのは紅魔館近くにある向かう湖だった。
 天気も良くて、普段は無意識なこいしが珍しく、ドキドキと大冒険でもするかの様に気持ちを高揚させていた――

【感想】
 最近意欲的に投稿されている氏の処女作品である。
 まず伝わってきたのは、氏の「こいしちゃんへの愛」だ。冒頭から寒いギャグを放っているのには少々不安を駆られたが、
蓋を開けてみれば文章表現も童話を読んでいるみたいに柔らかく、かと思ったらやや猟奇的な戦闘シーンも垣間見せてくれ、
全体を通してジャンルに囚われない作品となっているぞ。文章表現も偏っておらず、悪くない。どちらかと言えば日常描写に長
けている感じなので、戦闘シーンが若干浮いているのが気になるところか……?
 氏自ら言っているようにリスペクトも多く、その手の作品を知っている読者には受けそうなネタも随所随所に散りばめられている。
 ただ、後半になるにつれて超展開になっていき、長所に転じるはずのオマージュも、ややネタ切れを補完しようと必死になってい
っているのが残念だ。会話も工夫が凝らされているが、やはりパロネタや地の文に埋もれ気味なのが惜しいな……!
 文体の「味」や話の雰囲気を重要視している読者にはオススメできそうだ。
 登場キャラも、チルノ、フランなどの「大御所」との絡みが中心となっているため、キャラ自体による安定感もあるぞ。
 私は未読だが長めの続編もあるので、世界観が気に入ったなら十分に楽しめるだろう。

【五段階評価】★★☆☆☆
 余計な一言になると思うが、氏は才能が感じられるので、焦って作品乱発するのではなくじっくりと作品を熟成させるべきかな。
 もっと重厚なこいしちゃん愛を見せてくれ!

舞踊独楽  酒虎 氏

【作品集】153
【タイトル】舞踊独楽
【書いた人】酒虎 氏
【URL】ttp://coolier.sytes.net/sosowa/ssw_l/153/1316192548
【あらすじ&感想】
 厄神・雛がある人間の厄を払ってあげる話。タグには雛とにとりの名前があるが
 カップリング作品ではない。結末は殆どの人に予測がつくかもしれないが、
 最後の厄神としての雛の生き方を象徴するパラグラフには云い知れない気持ちにさせられ、
 16KBという短さながら余韻に浸りたくなる作品に仕上がっている。
 ポイントは750点、コメントは4件。コメントに「後の展開まで見たかった」とある通り、
 丁寧ながらも簡潔な山の季節の描写が好い味を出していて、この叙情的な文体で
 中編を読んでみたくなる。タイトルも内容とマッチしていて過不足がない。
 この作品は2011年9月に投稿された。その10日ほど前に発表された『Talk about』を
 含めた2作を除いて酒虎氏の作品は見当たらず、個人的には次作を期待したいところだ。