【作品集】16
【タイトル】番傘
【書いた人】司馬漬け氏
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1119083530&log=16
【あらすじ&感想】
梅雨。竹林の奥のオンボロ小屋に、妹紅を訪ねる慧音。
一歩間違えれば原始人のような彼女の生活ぶりを心配した慧音は、人里近くへの移住を勧めるが、
異能者の苦労を知る彼女に一旦は断られる。
しかし不慮の事故に遭って小屋はあえなく倒壊し、妹紅は暫く慧音の家に滞在することに。
そんなある日に出会った一人の少年に、妹紅は話をしようとしてみたが……
※※※
私はあまり名前読みというものをしない人間なのですが、
数少ない例外の一人が本作の作者である司馬漬け氏だったりします。
オリキャラの少年が登場しますが、彼は幼い頃の病気が原因で言葉を話せない唖者です。
不老不死という特殊な事情を抱える妹紅と比べれば些細に見えるかもしれませんが、
彼もまた特殊さを抱える子です。それでも、人里の中で受け入れられ、生きている。
妹紅のように独りで生き抜く力を持たない彼にとって、そこでしか生きられないからです。
こうした構図は、後半において更に広げられます。
幻想郷に住んでいても決して逃れられない、自然災害。豪雨の度に水害が起こる場所で、
何故人は生きようとするのか。それは少年と同じく「そこでしか生きられないから」なのです。
しかし人間も無抵抗に自然に流されてはいません。生きるための答えの一つ、川の堤防を
めぐる話を挟みつつ、物語はクライマックスへと突入していきます。
妹紅の視点を通して映される、自然と人間、健常者と障碍者の対比的構図。
両者が共に生きるための「親和」を描いた傑作だと思いました。
>>340(「羯諦羯諦」作品集72)と同じく、私が推す皆さんに読んで戴きたい作品の一つでございます。