作品集167

Last-modified: 2012-05-30 (水) 18:07:26
冥土スカーレットロザリオス  早瀬凛氏

【作品集】167
【タイトル】冥土スカーレットロザリオス
【書いた人】早瀬凛氏
【長さ】■■■■■(404.37KB 長編)
【URL】 ttp://coolier-new.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1335694293&log=167
【あらすじ】
空っぽの自分。つまらない世界。生きることも死ぬことも面倒くさい生気の抜けた十六夜咲夜は、ある日突然暮らしている施設の惨殺を目の当たりにする
ひょんなことから紅魔館で働く彼女は、生の意味をレミリアの愛情と依存していく。かたやレミリアは咲夜を受け入れるものの、過去の失敗と咲夜といる日々の中で葛藤を繰り返す
百合からシリアスな心情描写、過去話、バトルまで全て網羅した紅魔館の歴史SS風なファンタジー構成の全五編

【感想】
潔い奈須きのこリスペクト作品。言葉の使い方は作者の個性(それでも語彙の豊富さと詩的な表現の数々は圧倒的)で好みは分かれるかもしれないが、少なくとも内容はケータイ小説と程遠い
前半の咲夜の行動原理も含めた伏線は徐々に明らかになっていくわけだが、何かにすがりつけないと生きていけない人間の強情ともろい部分は、読者に訴えかける部分が多々あるように思った
甘いような甘くない依存的な百合描写、過去のレミリアの苦悩と歴史の数々、刃で決するバトル描写、そして某スペカの解釈など、たくさんの見所がてんこ盛りだけど上記の伏線はきちんと回収されている
シリアスで現代(自分たちの時代)から幻想入り咲夜の作品もめずらしいと思うが、個人的に様々なイベントで発生する、運命を操る能力ってチート性能に対する設定付けや世界観構成がとても面白いと思った

【文章】★★★★★
様々な語彙を用いた描写は過剰な装飾と言われても仕方ないのかもしれないが、文体の好みで切ってしまうような言葉の破綻もないし世界観の構築に貢献していると思う
少しずつ女子高生からメイドに変わっていく咲夜の言葉遣いや、徹底的に中二病を意図してるレミリアの部分は狙ってるんだろうから、くどい文体に文句をつけてもどうしようもない
しかし難しい漢字や語句が使われているわけでもないし、読みやすいようにできるだけくだけた表現にしてある点は書き慣れている印象でとても好感触だった。表現力は物凄いの一言に尽きる

【展開】★★★☆☆
割とイベント自体は多いものの、序盤は心情描写中心多めでテンポは遅め。文章の濃ゆい部分も相成っているのと、個々の内容の積み重ねが最後に爆発する感じなので減点やむなし
4.のバトルシーンはテンポよく書かれているが、ここをメインディッシュにすえる展開の方が面白かったのかもしれない。まあ作者のやりたかったことのひとつでしかなく、メインテーマは違うんだろうけれど……
西尾やきのこ的な中二病言語の掛け合いなので慣れてないとさくさく頭に入ってこない点もマイナス。たぶん語句のニュアンスで感じてくれって程度の読み方をしていれば、差し当たり問題ないかと

【五段階評価】 ★★★★★
あえて創想話で誰もやらないようなテーマや趣向を、ふんだんにこらして盛大にやらかしてる点に敬意を表したい
中二病の東方世界で中二病を正々堂々とぶちまけるというか、ここまでやりきってしまう作品は今までなかったように感じてしまった
余計な色眼鏡を通さずにじっくり本作品の世界観に浸ってみると、あの頃は若かったなあとか久しく忘れていた感情が蘇ってくるような気がする
あとがきのとおりレミ咲主眼の作品だがバトルもあるし、話の筋も小難しいひねりがないし分かりやすく、百合主眼の洋風ファンタジーものとしての出来は素晴らしい

ホロコースト  柚季氏

【作品集】167
【タイトル】ホロコースト
【書いた人】柚季氏
【URL】ttp://coolier-new.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1336757640&log=167
【タグ】村紗水蜜 雲居一輪 百合 求聞口授
【容量】20.28KB
【あらすじ】
初めのうちこそ、人間というだけで殺意を抱くほど一輪を毛嫌いしていた村紗だったが、
接する機会の増えるに従って徐々に好感を抱くようになり、やがて種族の垣根を越えて友情が芽生えた。
それは二人が地底に落とされたあとも変わらなかったのだが――
それは、心奥底から再び這い出てきた殺意も同じだった。

【感想】
まだ人間だった頃の一輪と、妖怪の村紗の昔話。
友人、或いはそれ以上の感情を向け得る対象としてか、はたまた殺意の対象である人間としてか、
無意識の欲望に翻弄されながら、一輪との関係に葛藤する村紗の心情を非常に丹念かつ丁寧に描写していて、
小説的な文体の醸し出す雰囲気が唯の百合で終わらせていない、味わい深い作品。
個人的にはすごくオススメ。★5つ。

オイリーン・ユゴコロ  トローロン氏

【作品集】167
【タイトル】オイリーン・ユゴコロ
【書いた人】トローロン氏
【URL】ttp://coolier-new.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1336766090&log=167
【タグ】永琳 輝夜
【容量】8.48KB
【あらすじ】
久遠の時を生きる蓬莱人にとって、暇つぶしは必要不可欠である。
ボードゲームにカードゲーム、小説やスポーツ用品、および各種スポーツのルールブックまで、
今まで使ってきた暇つぶしツールの入った押入れを、永琳は整理していた。
すると奥の方から出てきたのは――

【感想】
人間誰しも、黒歴史の一つや二つはあるよね・・・
もし他人にばれたりしたら、死ぬほど恥ずかしいよね・・・
でも死ねないのが蓬莱人の宿命です。

かつて私は神だった   白衣氏

【作品集】167
【タイトル】かつて私は神だった
【書いた人】白衣氏
【URL】ttp://coolier-new.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1336752935&log=167
【あらすじ】
「私は神だったんだよ」
今日も今日とて宴会騒ぎの地底でヤマメがこんなことを言い出した。
無論誰もまともに取り合わないが、やる気になったヤマメは神を求めて唯一乗り気のこいしの先導で地上へ向かう。
神やそれに準ずる者たちとの会談、交錯する忘れ去った記憶。その封は旧い因縁により解かれる。
【感想】
長編作家白衣氏の自称短編。74kbで?はははご冗談を。
例によって同一世界観だが、過去作との関わりは本筋には深く食い込んでこないので氏作品の入門としても悪くないかもしれない。
妖怪と民族との土蜘蛛を土着神によってうまく一つにまとめたのに感服。
取り戻した後の悔恨が哀しすぎるけど、それだけに最後の救いが本当に救われる。
個人的にはこんなSSを地霊殿以来待ち望んでた。神霊廟以降尚の事。期待以上のものを見せてくれた理想形の一つ。
文句なく★4つ。大和時代ネタ好きには★プラス。
あと、はやくも口授の危険なキスメを取り扱ったのもポイント。

左端  arca 氏

【作品集】167 【タイトル】左端  【書いた人】arca 氏
【URL】 ttp://coolier-new.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1336102365&log=167
【長さ】☆ (6KB 掌編)
【あらすじ】
 フランドールが地下室を散歩する。
 右端から左端という散歩というにはあまりに短いその距離である。
 もっと先に行きたい。そう思ってフランは壁の端を崩した。
 するとそこにあったのは……
【感想】
 6KBの掌編。1文1行という独特な形式で、詞を彷彿とさせる独特なスタイルの作品。
 詞が思い浮かんだという理由はその体裁の独得さだけではなく、
 短い文章と折り重なるように並べられた豊かな表現から。
 「戻ろうにも戻れない。/ 言うなれば。/ 戻ろうとする私は逆子だ。」
 といった表現は氏ならではの所。
 そんな詩的要素が多い作品だけれども、技巧に全力を振ったという作品ではない。
 フランが地下室を歩き、右端を壊し、壊した先に何か見つける、と
 物語として進み、締まる作品である。
 左端の先にあったのは何か、気になるのならば是非作品を。
【文章】       ★★★★☆
【展開】       ★★★☆☆
【総合評価】   ★★★★☆ (良い話。めちゃくちゃきれいな作品だった。)

幸せの壺  SPII 氏

【作品集】167 【タイトル】幸せの壺  【書いた人】SPII 氏
【URL】 ttp://coolier-new.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1336809909&log=167
【長さ】★ (16KB 短編)
【あらすじ】
 「幸せを欲しいんですが、売っていませんか?」
 「よくぞ聞いてくれたね。この壺は一見ごく普通の壺なんだが、
  なんと持っているわけで幸せが集まってくるという素晴らしいアイテムなんだ」
 夕暮れ時にやってきた鈴仙・優曇華院・イナバは
 物凄く不信感を持った表情で僕と壺とを交互に見ていた。  (本文より)
【感想】
 輝夜の難題を解決しに来た鈴仙と霖之助の話。
 薀蓄を交えて一方的に捲し立てる霖之助と、
 その冗長な解説を律儀に聞く鈴仙がとっても香霖堂らしかった。
 相手を説得できた霖之助、答えを貰った鈴仙と、
 損をした人が誰もいない、登場人物みんなが幸せそうな作品。
【文章】       ★★★★☆
【展開】       ★★★☆☆
【総合評価】   ★★★★☆ (香霖堂らしく淡々と会話が進む作品。)