作品集198

Last-modified: 2014-08-16 (土) 13:55:38
箱の中の胎児  inuatama氏
過去を持たない霊夢と過去を捨てた早苗の対比が見事

【タイトル】箱の中の胎児 【書いた人】inuatama
【URL】ttp://coolier.sytes.net/sosowa/ssw_l/198/1405064920
話は現代社会の胡散臭い宗教を敵視する早苗が
幻想郷に広まる水子信仰を一掃してしまおうと思い立つ所からはじまる
宗教に大金を使う是非や水子に祟られるとはどういう事なのか等どろどろした話が続いて
水子の話は親子とは何かに移り、過去とは何かというところまで行く

原作で過去を語られない霊夢を「過去を持たない人間」
早苗を幻想入りのために「過去を捨てた人間」と対比させた設定が見事
そこから幻想郷とはどんな場所なのか
博麗の巫女とはどんな存在なのかが浮かび上がってくる作品

読もうと言う人は概要も読むのを忘れないように
この1文が無いとわかり難いと思う(有ってもわかりにくいかもしれない)

ここからネタバレ

いくつか混乱したコメントが付いてる通り一読ですんなりわかるという話じゃない
作者は前半中盤ではよく説明しているから終盤で突然何も説明しなくなくなるのは故意だとおもうんだが
ここら辺もうちょっと書きようが無かったかという気はする

中盤まで過去に非常に拘る早苗が、最終段で突然豹変して両親の写真を燃やしてしまうが
これを早苗が自分の意思でやっていると考えると紫の登場が意味不明になる。
自分は
霊夢が幻想郷の巫女として公正さを保つには「過去を持たない」ことが必要で
そのために紫は奇跡を起こして霊夢に過去を取り戻させようとする早苗を邪魔する
と読んだけど正しいかどうかはわからない

生々しくも切ない

【タイトル】箱の中の胎児   【書いた人】inuatama
【URL】ttp://coolier.sytes.net/sosowa/ssw_l/198/1405064920
【あらすじ】
盛夏のある日。外の世界に住んでいたこともあってか、水子供養に否定的な感情を持つ早苗は、同業者である霊夢に意見を聞こうと博麗神社に足を運ぶのだが・・・
【感想】
少し上でも語られているけど、水子供養の話から過去の話、子と親の繋がり、供養に対するそれぞれの考え方に向かう生々しくも切ないお話。概要の一文を踏まえれば、霊夢は過去、つまり親との繋がりを持たないから平等でいられるのか、と考えさせられる。最後の紫との会話から早苗の行動は意見が分かれるが、個人的にはあの行動を取ることで早苗は霊夢と同じ立場に立とうとして、けれど早苗には神様が二柱も側にいるから、そう考えると結局は霊夢は一人なのかもしれないと思うと、切ない。水子供養を通して霊夢という存在を鋭く抉る一本。
過去を持たないものは子ではない、っていうのはすなわち霊夢の事なんじゃないかな
【五段階評価】
★★★★★

魔理沙という名の少女・記憶編 ~ Marisa's Lifes in Wonderland.  烏口泣鳴氏

【タイトル】魔理沙という名の少女・記憶編 ~ Marisa's Lifes in Wonderland. 【書いた人】烏口泣鳴氏
【URL】ttp://coolier.dip.jp/sosowa/ssw_l/198/1405216430
吸血鬼騒動時点までの子供だった霊夢魔理沙アリスの話
でも途中で事件が起きて魔理沙が死んでしまって霊夢がショックで病んでアリスを魔理沙と思い込んでしまう
アリスは勿論魔理沙に成り代わることを拒絶するが、そうすると霊夢が錯乱状態になってしまう
そのせいで吸血鬼騒動で霊夢が機能せずアリスが魔理沙に成り代わるよう幻想郷の連中に要求される

魔理沙が死んでしまうなどからわかるように結構欝ダークっぽい幻想郷
この作品はシリーズもので前の作品魔理沙という名の少女・魔導書編 ~ The Grimoire of Marisaが
の続編 
でもこっちを先に読んだ方がわかりやすいと思う
前作は謎かけ編というか烏口氏特有の錯乱的な演出が炸裂してるので.

烏口氏の作品は他もダークっぽかったり狂気というか錯乱を題材にした作品が多くて
独特な作品が多いと思う
妙な催眠術か幻術をかけられた気分になるというかある種の理不尽というか
個人的にかなり独特な作風だと思うから
そういうのに興味がある人は一度は読んでみたらいいかも

みんな大好きぬえドリンク  東方特許許可局氏

【タイトル】みんな大好きぬえドリンク【書いた人】東方特許許可局
【URL】ttp://coolier.sytes.net/sosowa/ssw_l/198/1405184340
【あらすじ】
八雲紫と封獣ぬえのという胡散臭さ全開のコンビが開発した、飲む人によって味が自在に変わるドリンクは大人気。その味の秘密に興味を持ち、自分の分だけでなく他の客のドリンクも飲む魔理沙だが・・・
【感想】
タグの通りのブラックジョークSS。ある種の天丼ネタとも言えるオチは、分かっていてもゾッとする。魔理沙を始めとした東方キャラ達の飲むドリンクの味も個性が出ていてそれらしく、対する魔理沙の突っ込みも小気味良い一本。
【五段階評価】
★★★

星見酒  門司柿家氏

【タイトル】星見酒【書いた人】門司柿家
【URL】ttp://coolier.sytes.net/sosowa/ssw_l/198/1405332968
【あらすじ】
ある夏の夜。霊夢と魔理沙は、妖怪の山の麓に夜釣りに出掛ける。しかし、彼女たちが釣るのは魚ではなかった。
【感想】
とにかく雰囲気の良い、ロマンチックなお話。そのままでも十分楽しめるが、同氏の過去作品(※別作品)のことを知っているとより楽しめる一本。短いお話だけど、情景描写なども美しい。
【五段階評価】
★★★★

幻想妖恋談『少女残響』  片隅氏

【タイトル】幻想妖恋談『少女残響』【書いた人】片隅
【URL】ttp://coolier.sytes.net/sosowa/ssw_l/198/1405339900
【あらすじ】
稗田阿求が姿を消して七年。店仕舞いを終え、いつも通りの日課をして過ごす中で過去を回想していた小鈴は、ふと、一枚の奇妙なレコードを見つける。そこに記録されていたのは、居なくなってしまった、阿求の声だった。
【感想】
静かに静かに進められていく一本。阿求を置いて少し大人になってしまった小鈴と、阿求の声がレコードのお話。
反転で表れる文章が隠されていたりするなど、細かい細工が多い。というか細かすぎて伝わらない。個人的な考えだけど、前半の小鈴の言葉は半角鍵括弧なのに対して最後の方の会話文の小鈴の鍵括弧が全角で阿求の鍵括弧と並べられているのは多分二人の距離感を表しているのかな。
【五段階評価】
★★★★

ひななゐロック  はまちや氏

【タイトル】ひななゐロック(全5話) 【書いた人】はまちや
【URL】ttp://coolier.dip.jp/sosowa/ssw_l/198/1406278129
【あらすじ】
天界に嫌気がさした天子が、地底へと降りた。それを発端に、地底と幻想郷を揺るがす大異変が始まる。
【感想】
全編1.3MB超という大ボリュームのシリアス長編。
怨霊による大異変と崩壊していく地底を縦糸に、登場人物それぞれの葛藤や因縁を横糸に、残酷な世界に立ち向かう皆の姿を描く。
地底という舞台で納得できる要素ではあるものの、スペルカードルール抜きのガチバトルが展開されたり、
粗暴な男の妖怪が敵役として現れたりと、幻想郷を舞台にした普通のSSから見ればやや逸脱したシリアスさの方向性。
各キャラクターが持つ過去や因縁にも悲惨なものや壮絶なものがあり、同様の作品例は過去にいくつもあるとはいえ、人を選ぶジャンルの作品と言える。

そういった前提を受け入れて読むのであれば、十分高評価に値する作品。
まず特筆すべきなのは、この作品なりに登場人物の背景を深く掘り下げ、各キャラクターが独自に魅力を主張する味付けに成功していること。
きちんと原作に繋がる要素を持ちながら、変えるところは大胆に変更し、独自の解釈を付け加えるところは大きく膨らませている。
個人的に設定が一番印象的なのは妖忌。剣客として見事に描いた作品は多くとも、ここまで狂気に染まり、なおかつその根源が剣の道でない、という妖忌は初めてとすら思える。
さとりの過去の悲しさや傷跡、幻想郷の管理者としての紫の抱える葛藤、幽々子と妖忌の関係なども独自の領域に踏み込んでいるし、
とある事情で見事に母役を演じてくれるパルスィやマイペースな衣玖など、どのキャラをとっても魅力的に描かれていると思う。
さらに、所々飛んでいるところはあるものの、次第に加速して激しさを増していく動乱と、それに翻弄されるキャラクター達の展開がめまぐるしく、飽きさせない。

全編を通して目立つのはやはり主役の天子。彼女が演じた役回りの壮絶さでは過去作でも一・二位を争うのではないだろうか。
天子の葛藤が主題の1つである以上、どうしても思想的に過ぎる気がしないでもないが、内容はともかくそういう主人公らしさがしっくり来るのは彼女の魅力だろう。

文章は独自の形にまとまっている。唐突なギャグ(しかも元ネタ有り)や、独特に過ぎる比喩などの要素はあるものの、
これも勢いを保つ1つの要素として見るべきだろう。後半、シリアスさが増すにつれて極端なギャグは減っている気がする。
このあたりが目に付いてしまうなら、おそらくこの作品は合わないかも。

総評すると、人を選ぶものの、「これが俺のアレンジした幻想郷だ」というのを本気で見せつけてくれる、
そういうのに出会えるのも創想話のSSの魅力だと再確認させてくれる作品。
ここに共感してくれる人なら、少しずつでも手に取ってみて欲しいと思う。
【五段階評価】
★★★★

WANTED!! - おぜうさまとの戦い -  怪人二十HNさん

【タイトル】WANTED!! - おぜうさまとの戦い - 【書いた人】怪人二十HNさん

【URL】 ttp://coolier.dip.jp/sosowa/ssw_l/198/1406354247

【あらすじ】
吸血鬼レミリアの物語。
街の住人達を吸血し続けるレミリアだったが……。
ついに、賞金をかけられ、おたずねものにされてしまう。

【感想】
レミリアのタグに惹かれ読んでみた。
内容は、パロディだらけだったが、中々上手く混ぜられており、
また、〇〇との弾幕ごっこで、思わずふいてしまった。

文章もそこそこ上手く、食傷気味の題材の作品よりは面白みがあった。
パロディは、比較的メジャーなものが多かった。
この作品の評価を一言で表せば、「掘り出し物」。

【五段階評価】
★★★

【作品集】198

木偶の坊と呼ばれても  ピノ吉氏

【作品集】198
【タイトル】木偶の坊と呼ばれても
【書いた人】ピノ吉氏
【URL】ttp://coolier.sytes.net/sosowa/ssw_l/198/1405347059
【あらすじ&感想】
オリ主というタグを頭に持ってきているから敬遠している人も多いかもしれないこの作品。
そのタグ通り「デク坊」というオリジナルキャラが主人公だが、メアリ・スーとはかけ離れているから安心して欲しい。
あらすじは概要にある通り、デク坊がとある目的のために人里から博麗神社に向けて旅をして、様々な妖怪たちに遊ばれるという話。
ていうかむしろ、デク坊という「脇役」が妖怪たちを引き立てるために旅をするという感じ。
珍道中と、ビビりなデク坊の人柄は見ていて飽きなかった。幽香がかっこいい。
最初は流し読みしたから気づかなかったが、冒頭には三人いた。読んでもらえればこの意味がわかると思う。
至る所に種が仕込まれ、それが芽吹いていく面白い作品だ。
あと、針妙丸ぺろぺろ。
ただ、セリフと地の文を分けようとしたのであろうスペースが場面転換などをわかりづらくしているのが残念。
【五段階評価】
★★★★☆