作品集33

Last-modified: 2010-01-31 (日) 17:03:40
「幻想郷調査部隊」 復路鵜氏
妖怪達が非常に「らしい」

「幻想郷調査部隊」作品集33~34
作者:復路鵜氏

あらすじ
ある受刑者の霧島は、その日も毎日の仕事を終わらせていつものようにメモ帳にシャーペンを走らせていた。
ところがその時、突然やってきた刑務官に拉致も同然にとあるところへと連れて行かれる。
そこは自衛隊のキャンプ。そして霧島に降りかかる、とんでもないこと。
――「お前たちにはこの中に潜ってもらい、”向こう”を調査してきてもらう」(本文より抜粋)

(序)から(終)まで全九章という復路鵜氏の大長編。
ある意味では「幻想入り」ですが、その感じで読むと驚かれるかと思います。
「外の世界」の人間から見た「幻想郷」が如何に狂っているかというのがよく分かる作品です。
妖怪達が非常に「らしい」ため、戦慄することこの上なし。
かなり長いですが(特に一~三辺り)圧倒されてしまう描写力でぐいぐい作者様の世界に引き込まれていきます。
オリキャラがバリバリ出ますが、それが気にならない方は最高に楽しめるかと。

星評価(最高五つ星)
発想     ★★★★☆(こんな話を待っていた!)
シリアス度  ★★★★★(ギャグはほぼ皆無です)
テンポの良さ ★★★☆☆(最初のほうが冗長すぎるかも……)
文章力    ★★★★★(個人的に更に+αしたいくらいです)
カリスマ度  ★★★★★(誰かは読んでみてからのお楽しみということで)

ほのぼのとは無縁

【作品集】33~34

【タイトル】幻想郷調査部隊
【書いた人】復路鵜氏
【あらすじ】
「お前たちにはこの中に潜ってもらい、”向こう”を調査してきてもらう」

それが刑務所から移送された霧島達に下された命令だった。
穴の先には未知の領域が広がっていると予想されるが、調査に向かった先発隊は行方不明。
非公開の調査、危険度など諸々を考慮した結果、上層部は犯罪者、傭兵などを新たな調査隊として
派遣する決定を下したのだった。

【感想】
幻想郷を純粋に未知の世界として位置づけ、現実的な視点から調査を行っていくと言う話。
ほのぼのとは無縁、グロテスクな表現も散見されるが、本来未知の領域と言うものは
危険や恐怖が付きまとうものであり、幻想郷を題材にしながらもかなりのリアリティを持った作品に思えた。
前半の大半をオリキャラの背景描写に費やしているためやや冗長なきらいはあるが、
結果的にその存在感が増し、話に説得力を与えている。
全八話とかなり長いが、後半は緊迫感溢れる展開に引き込まれていくため時間のあるときに読んでみて欲しい。
シリアス ★★★★★
戦争 ★★★★★
グロ ★★★☆☆
レミリアのカリスマ ★★★★★
慧音のお人好し Priceless

博麗 霊夢  上泉涼氏

【作品集】33
【タイトル】博麗 霊夢   【書いた人】上泉涼氏
【あらすじ】
 逢魔が時。霊夢は見回りをして帰宅する途中、血の臭いを拾ってしまう。
 案の定、既にして妖怪は人間を喰らっており、霊夢は博霊の務めとして妖怪を退治する。
 慧音に里の人間の死を伝えて帰ると、魔理沙と紫が待っていた。
 胸の痞えが取れぬまま彼らを応対する霊夢だが―― 
【感想】
 幻想郷というものを描くにあたって、回避されがちな「妖怪は人肉を食うこと」「そして主人公らは捕食者らと仲良くしていること」という矛盾に真っ向から取り組んだ作品。
 淡々とした霊夢の心理描写と、しかし隠しきれぬ苛立ち、矛盾の挟間で立ち位置を決めあぐねている描写には、簡単で穏当な救いを与えようとしない作者の誠実さを感じた。
 すっきりしないが、それでも一度は考えてみるべきものを扱ったことに賛意を送りたい。

【5段階評価】
文章★★★★☆
構成★★★☆☆
総合評価★★★★☆
主題★★★★★

血に染まる月  月読氏

【作品集】33
【タイトル】血に染まる月   【書いた人】月読氏
【あらすじ】
 電子音が鳴り響き真っ白な密室の中で私は目を覚ました。回診の時間。
 いつものように声が近づいてくる。
『……マテリアル382気分は?……マテリアル385、顔色が悪いな。
 …マテリアル391…391? …死亡、直ちに廃棄を』
 抑揚のない声の主がコツコツと足音をたてて私の前までやってきた。
 しわの浮かんだ顔が笑みに歪んだ。醜い。
「おはよう『姫』、気分はいかがかな?」
(本文より)
【感想】
読み始めは、へぇ。な作品だが、だんだんと募る違和感の正体に気付いて、あっ、と言わされる作品。

とにかく表現の仕方や伏線のはりかたが上手い。特に構成の仕方は後で思わず卑怯だと叫んでしまいたくなるほど。特に序盤の構成が卑怯。途中で視点が別のキャラに変わることでだんだんと見えてなかったものが見えてくるのが心地よい。
途中途中挿入されるギャグもテンポを崩さず力を抜いてくれてよい。
序盤でオリジナル要素が非常に多く見えるので敬遠してる人も多いかもしれないが、万点越えに相応しい作品で是非読んでいただきたい。

幻想遠野郷  新角氏

【作品集】33
【タイトル】幻想遠野郷
【書いた人】新角氏
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1160014273&log=33
【あらすじ&感想】
 時は明治。一人の紳士が古地図を手に山道を進んで行く。
 奇妙な鳴き声を聴いて異常事態に襲われる彼だったが、提灯を携えた少女に助けられる。
 夜道の危険を説かれ彼女の家へと案内された彼は、そこで不思議な体験をすることに……
     ※※※
 主人公の正体については、知ってる人はすぐピンと来るかと思います。
 東方とも関係深い、とある有名な実在の人物を視点に据えた一種の「幻想入り」物です。
 といっても彼は全国の山村を巡っては「風習逸話怪談について研究している」変わり者なので、
 ロマンスなんかとは縁遠い話が展開されていきます。
 吉里吉里などマニアックな地名や固有名詞が時々出てきたりしますが、ストーリーを読む上では
 分からなくても大丈夫。文章そのものは全く平易で読みやすく、風景が瞼に浮かんできそうな
 情景描写が素敵です。明治という時代の雰囲気もよくにじみ出ててイイ感じ。
 個人的には、ラストであの名著が出てきたシーンが非常に嬉しかったり。
 本作のレビューではありませんが、あの本は日本人なら一度は読んで置くべきと思います。
 特に、外国に住んでたり、これから外国へ出かけると言う人にはぜひ。