作品集37

Last-modified: 2013-03-05 (火) 03:18:31
君が名を呼べば 人比良氏

君が名を呼べば 人比良氏

人比良氏の白い作品の一つ

「君が名を呼べば」
作品集37
作者:人比良氏

あらすじ
ある冬の早朝。八歳の上白沢慧音は、雪の中で倒れている少女を見つける。
おっかなびっくりそれに寄って見ると――腕を掴まれてしまう。
殺される、と慧音は身をすくませるが、意外なことにその少女は腕を掴んだだけで何もしてこない。
そしてその時に、少女の腹部から空腹を知らせる音が鳴った。
――「……お腹、空いてるの?」
少女は――器用にも、倒れ付したまま、こくりと頷いた。(本文より。一部省略)

人比良氏の白い作品の一つ。
いわゆる慧音と妹紅の慣れ初めの話ですが、慧音が紅妹より見かけ的な意味で年下であるというところがポイント。
いやあもう慧音がかわいいかわいい。そしてお姉さん、いや「姉貴」な妹紅がいいのなんの。
情景が浮かび上がるような文章にそれが更に引き立てられています。
ただ惜しむらくは、一部公式設定と違う点があるということですが、
それを加味しても十分にすばらしいSSです。
読了後、とっても暖かい気持ちになれます。寒い今の季節にどうぞ。

発想     ★★★☆☆(わりとよくある話、かも……)
文章力    ★★★★★(いいですねえ、これは)
テンポの良さ ★★★★☆(短い中にも起承転結がはっきりしていて読みやすいです)

妹紅と幼い頃の慧音との出会いと絆の話。萌えて燃える。文字どおり

●君が名を呼べば
妹紅と幼い頃の慧音との出会いと絆の話。萌えて燃える。文字どおり。
淡々としていながら情感の豊かな文章で、好きな人にはたまらない
と思う。小さい慧音が可愛いのはもちろんのこと、妹紅が大変男前。

凍血の冬~紅魔館雪戦争~  或るSS大尉氏

●凍血の冬~紅魔館雪戦争~
タイトルどおり。冬将軍に対し凄惨で絶望的な戦いを余儀なくされる
紅魔館の記録。じわじわと悪化していく戦局。よく訓練された猛者ども
が次々に斃れていく。遠い春を夢見て戦う彼女らに栄光あれ。

それでも妖忌は頑張った  爪影氏

●それでも妖忌は頑張った
妖夢が知る、妖忌の知られざる一面。二振りの刀を置いて去った師匠を
思い、己の未熟に悩む。そんな妖夢をしみじみと描いている。
それだけに、『転』が上手い。妖忌一世一代の頑張りをしんみりと味わおう。

ゆうかりん、ファイト!  haruka氏

●ゆうかりん、ファイト!
妙に可愛らしい幽香と、さりげなく世話焼きでクールなアリスの話。
会話のノリが良くて、二人とも生き生きとしている。軽快なテンポで
さくさく進み、笑いどころもバッチリ。この幽香は応援するしかない。

かざみどり  豆蔵氏

●かざみどり
こちらも幽香が頑張るお話。威厳も実力も十二分の彼女が更なる高みを
目指すのだが、文が絡んだおかげでなにやら雲行きが怪しく。意外に
この二人良い組み合わせ。あと、ひまわりの種をほおばる文は可愛い。

恋の呪い  更待酉氏

●恋の呪い
霖之助と魔理沙の話。清々しいくらいにストレート。だがそれが良い。
ある意味、大変に東方SSらしい。テンプレともいえるお話だが、
それゆえか、キャラが自然にのびのびと描かれている。魔理沙可愛い。

山と女と魚  高瀬みちる氏

●山と女と魚
魚が食べたい。一度そう思うといてもたってもいられない。そんな霊夢の話。
飾らない、読みやすい文章。それがこのほのぼの具合にとてもよく合っている。
ほっこりとした読後感。旨い魚で一杯やりたくなる。

Spam  藤村流氏

●Spam
スーパーで買い物をする蓮子とメリー。ただそれだけだが、それゆえに
締めが際だつ。普段は能天気に漫才してる二人が、ある瞬間、気付きたくも
ない真理に触れる。その切り替えがスムーズで気持ちが良い。

老人と門  凡用人型兵器氏
千年の昔、門を守っていた存在は今や一人門を閉ざす。

【作品集】37
【タイトル】老人と門
【書いた人】凡用人型兵器 さん
【あらすじ&感想】
吹雪の夜、老人の小屋に転がり込んだ妖怪少女。
老人と少女の奇妙な関係が始まった。

千年の昔、門を守っていた存在は今や一人門を閉ざす。

完全な古文・擬古文ではなくどこか古風な文体、
魅力的なキャラの言い回し。
そして最後の〆…は人を選びます。
賛否両論であっても、この終わりを選択した作者さんに敬意を。
自分はとても好きですが。

武道に生きた老剣士と武道に生きる少女の交流

【作品集】37
【作品名】老人と門
【作者】凡用人型兵器氏
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1172250483&log=37

【あらすじ】
ある日、吹雪の妖怪の山、其処に住む隠居した老剣士のもとに紅い髪の少女が迷いこんだ

【感想】
まず目につくのは、堅く味のある文体
卓越した文章力で描くのは、これまた味わい深い、魅力のあるキャラクター
武道に生きた老剣士と武道に生きる少女の交流
その老剣士は、どこまでも不器用で頑固で愚直、だがそれ故に美しい生き様
読み終わった後、私は思わずグレェト!と叫んでしまいました
是非とも多くの人に読んでもらいたいそんな名作です

【五段階評価】★★★★★

森に降る雪、人に積もる時  人比良氏

【作品集】37
【作品】森に降る雪、人に積もる時
【作者】人比良 氏

【導入】
長い冬は終わりかけていた。
窓の向こうでは雪が降っていた。
今冬最後の名残雪。これで、この冬の雪は見納めだ。
昨年もこうして見ていたか。昨々年もそうだったか。

【感想】
この作品全体に流れるしっとりした雰囲気が好き。
日常風景を書いていながら、ちゃんと読ませます。
六話のあの絵を頭に浮かべると更に深い味わいが。

【五段階評価】
文章 ★★★★☆
静穏 ★★★★☆
総合 ★★★★☆

最初の一歩  おやつ氏

【作品集】37
【タイトル】最初の一歩
【書いた人】おやつ氏
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1172754977&log=37
【あらすじ】
冬が近づいたある雨の日、一人の妖精に負けた氷精チルノは森の中で修業をしていた

【感想】
チルノがルーミアや橙と力を合わせて戦うバトル物。
今まで読んだ中でも五指に入るぐらいかっこいいチルノだった。
話の中で語られる妖精の設定はうすら寒いものを感じさせつつもどこか納得できるものだった。
ただ幼さや無邪気さはあまり感じられなく原作のチルノとはかなり違うため、
そういうチルノが好きな人は注意。

剣を持ったお姫様。  宵闇むつき氏
人間の里で流行っている演劇の男形に、とあるきっかけで妖夢は一目ぼれをしてしまう。

【作品集】37
【タイトル】剣を持ったお姫様。   
【書いた人】宵闇むつき氏
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1172556011&log=37
【あらすじ&感想】
 魂魄妖夢の初恋。

 人間の里で流行っている演劇の男形に、とあるきっかけで妖夢は一目ぼれをしてしまう。
 最後で明かされる真相が切ないけれど、なんとなく「運命」というか「因果」というか、
そういう言葉を感じてしまう。妖夢の苦しい感情が痛いほどに伝わってくる作品。
 特に終盤あたりで繰り広げられる演劇シーンの描写は必見。
 
【五段階評価】
★★★★★

少女のはじめての淡い恋模様を、巧みに描いた良作。

【作品集】37
【タイトル】『剣を持ったお姫様。』
【書いた人】宵闇むつき氏
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1172556011&log=37
【あらすじ&感想】
 例え体の半分が幽霊だとしても、そこにある精神は人間や妖怪と同じもの。だから同じように喜怒哀楽があり、そして同じように悩みを抱える事もある。
 兎角その日から私――魂魄・妖夢は、ある一つの事しか考えられなくなり、他の事を思考出来無くなるという事態に陥っていた。
 不安とも緊張とも付かぬ焦燥感に鼓動は乱れ、任されている仕事も思うように進まない。
 だからといって他の事を行って気を紛らわせようとしても、気付けばその事を考え、手が止まってしまっている。このままでは、幽々子様を護衛する事にすら不調をきたしてしまうだろう。
 このままじゃ駄目だ。落ち着け、落ち着くんだ。
(本文序文より)

  1. ++

妖夢が恋に落ちるお話。少女のはじめての淡い恋模様を、巧みに描いた良作。
自分の役目と恋愛の狭間で思い悩む妖夢はとても可愛らしかったです。
オリキャラとの恋愛物かと忌避せずに、最後まで読んでもらえるときっと驚くはず。

【五段階評価】
★★★★★(これめっちゃ好きなので)

庭師とヴァレンチヌス命日  卯月由羽 氏

【作品集】37
【タイトル】庭師とヴァレンチヌス命日
【書いた人】卯月由羽 氏
【得点など】2007年2月・33KB・3750点
【URL】ttp://coolier.sytes.net/sosowa/ssw_l/37/1172441003
【あらすじ&感想】
 バレンタイン当日、例のごとく幽々子にねだられてチョコレート探しの旅へ
 発つことになった妖夢のお話。幻想郷の各地を巡って各勢力のバレンタインの
 模様を描いてゆくという、東方ならではのストーリー構成になっている。
 妖夢は時に笑い時に傷つき、時に突っ込みを入れ時に突っ込みを入れまくる。
 彼女を取り巻く幻想郷の少女達の変態っぷりはむしろ清々しくさえあった。
 この作品は2007年に投稿されただけあって、扱われるネタのことごとくが
 ある種の独特の(つまりはニコニコ動画的な)匂いというか香りを放っている。
 2013年の今の時期に投稿されたら結果は分からないが、この作品のコメント欄では
 みんなが割とノリノリであり、本編以外にも楽しめる要素があると同時に、当時と
 今との創想話の空気感の相違が如実に感じられ、その意味でも興味の尽きない作品だ。

 卯月由羽氏はジェネリック(当時はぷち)にも多数の作品を投稿されている。
 中には真面目な作品もあるので覗いてみるのも好いかもしれない。