100kbレビュー

Last-modified: 2011-04-21 (木) 16:46:55

めちゃめちゃ長い話が読みたい! という方(俺)のために、100kbを超える作品のレビューを
することにしました。例によって、今までにレビューされた作品はレビューしない方向で。
また、初レビューのため、至らない点が数多くあると思いますが、そう思った人は僕のレビューを
どんどん上書きしていってください。
コンペからたどります。基本的に、100kbオーバーは全部。

(レビュアーより)
 

第四回コンペ

Spirited Away  反魂っ!氏

【タイトル】Spirited Away   【書いた人】反魂っ! 氏
【サイズ】109.82KB
【URL】ttp://www10.atpages.jp/thcompe/compe05/?mode=read&key=1179014194&log=0

【あらすじ】
 妖精が徐々に減っている。初めに気付いたのは、チルノだった。
彼女の必死な主張を、ミスティアたちは笑い飛ばす。それは、
今までもそしてこれからも、ずっと続いていくはずの『日常』だった。
 そのころ、秘封倶楽部の二人は、研修旅行と称してアメリカへ。
二人を待ち受けるのは、かつて冒険者を呑み込んだ曰く付きの洞穴。
そこに踏み込んだ彼女たちが見たものとは?

【感想】
 あくまでいつもどおりの幻想郷。違和感の正体にも気付かぬまま、
ごく自然に×××××して(されて)いく彼女らの描写にはぞっとさせられました。
作中でメリーが大体説明してくれているので、読了後に
「誰の望みがこれを引き起こしたのか?」
ゆっくり考えてみてもいいと思います。

【五段階評価】
★★★☆☆(3.5ってどうやってつけるんですか? 大体そのくらい)

現実と幻想の戦  灰次郎氏

【タイトル】現実と幻想の戦   【書いた人】灰次郎 氏
【サイズ】115.54KB
【URL】ttp://www10.atpages.jp/thcompe/compe05/?mode=read&key=1179009925&log=0
【あらすじ】
 外界で開発された対月人用兵器が暴走し、幻想郷に入り込んだ。
高度な人工知能を搭載したそれらは、幻想郷の各地を襲撃する。

【感想】
 冒頭の説明に筋が通っていたためそれなりに期待して読み進めましたが、
肝心の「戦」部分はなんだかなあ、としか思えませんでした。
舞台が幻想郷のあちこちに移るため、一人一人の描写がおろそかになっていて、
いまいち感情移入できませんでした。
 ほとんどの戦闘シーンで、戦闘描写に終始していて心情が書かれていないなど、
全体に淡白な印象を受けました。

【五段階評価】
★★☆☆☆(心のスキマが広い人向け。)

 

第五回コンペ

coma  レグルス氏

【タイトル】coma   【書いた人】レグルス 氏
【サイズ】297.36KB
【URL】ttp://www10.atpages.jp/thcompe/compe06/?mode=read&key=1202687853&log=0

【あらすじ】
 数百年前の外界。河城 にとりは、自らを水神として崇める人々と共に、平和に暮らしていた。
しかしある日村を襲った、突然の増税。いきり立つ村人たち。皆の意見は、急速に一揆に傾いていく。
実はにとりには、この問題を強制的に解決させる方法が合った。
彼らを人殺しにしたくない。しかし、苦しんでいる彼らを見るのも嫌だ。究極の選択の間で揺れ動く彼女が、
最後に選ぶのは。

【感想】
 あらすじで書いた以外に、実は裏で割ととんでもないことが起きていたりするのですが、それに対して
主人公のにとりが直面している問題が軽すぎるような気がします。
といっても、表裏一体の一つの事件を複数の視点で見ているだけですが。

 題材の一つに『竹取物語』がありますが、その名前を連呼している割には内容にあまり触れられていないのが残念でした。
また、「コンセプト」「リードする」などの時代設定にそぐわない単語が(ネタ以外で)ちらほら出てくるのも、
個人的には気になりました。
 話のあちこちに、細かいねたが仕込まれています。こーりんのふんどしネタなど、嫌いな人もいるかもしれないネタが
ありますが、全体にセンスが良いと思いました。

【五段階評価】
★★☆☆☆(暇なら読んでも良いと思う。)

『Alice』  宵闇むつき氏

【タイトル】『Alice』   【書いた人】宵闇むつき 氏
【サイズ】106.84KB
【URL】ttp://www10.atpages.jp/thcompe/compe06/?mode=read&key=1201950311&log=0

【あらすじ】
 ひょんなことからアリスが迷い込んだのは、ありえたかもしれない、もう一つの幻想郷。
一見して何も変わっていないように見えたその世界には、一つだけ大きな違いがあった。

――霧雨 魔理沙が存在していなかったのだ。

【感想】
 こんな煽りを書いておいて恐縮ですが、本筋とはあまり関係がありません。
注目すべきは、魔理沙が存在しなかったことによるいくつかの差異。
これらが引き起こすのは、ある親子の愛情と、一人の少女の成長の物語です。
 やけに簡単に元の世界に戻れたり、ご都合主義な展開がないでもないですが、
それが気にならないほどに格好いいアリスさんでした。

関係ないけど絶対この作家さん40代

【五段階評価】
★★★★☆(旧作が好きなら文句無く★5です)

少如群像  俄雨氏

【タイトル】少如群像   【書いた人】俄雨 氏
【サイズ】173.89KB
【URL】ttp://www10.atpages.jp/thcompe/compe06/?mode=read&key=1202674336&log=0

【あらすじ】
 人が死んでいる。そう通報を受けた慧音達が現場へ急行したときには、死体は消え、
死体が確かにそこにあったことを示す血だまりだけが残っていた。

【感想】
 ここから、二転三転の怒涛の展開が待っています。その中であぶりだされるのは、
人間の弱さ。三分の二ほどを使って表現されたそれは、ラストに圧倒的な説得力を与えています。
 この長さだからこそ書くことができた、秀作と思います。

【五段階評価】
★★★☆☆(鬱っぽい話が好きなら、星4)

おにんぎょうのロンド  綺羅氏

【タイトル】おにんぎょうのロンド   【書いた人】綺羅 氏
【サイズ】134.50KB
【URL】ttp://www10.atpages.jp/thcompe/compe06/?mode=read&key=1202617869&log=0

【あらすじ】
 一人の男に、死期が近づいていた。悪性の腫瘍に蝕まれ、激痛に苦しむ彼の精神は、
彼に度々幻覚を見せた。自分の身体から紫の光が出てきて舞うという、とても綺麗な幻想を。
ある日、普段ならすぐに消える光が収束し、一人の少女が現れる。美しく、どこか懐かしい
気持ちがするその少女は、「雛」と名乗った。雛は告げた。自分は厄神であること、そして、
彼に復讐をしに来た事を。そして彼女は、ある、呪いの人形と呼ばれた一体の人形についての
話を始めるのだった。

【感想】
 主人公は、画家を志し、貿易商だった父の財産を一人で食い潰した、世間的にはどら息子と
呼ばれてもおかしくないような人間です。彼に残ったのは、妻とメイドと一人息子、そして
館と三枚の絵。
 そんな彼の元に現れた雛は、何を語るのか。
 終盤の疾走感を文字のみで表した作者の力量には感服するほかないです。また、それなりに
テンプレートな終わり方ではあるものの、心を揺さぶるラストシーンは必見です。

【五段階評価】
★★★★★(時間のあるときに、味わいながら読みましょう)

 

第六回コンペ

水辺に宿る想いとは~The Riverside story  まりも氏

【タイトル】水辺に宿る想いとは~The Riverside story    【書いた人】まりも 氏
【サイズ】117.39KB
【URL】ttp://www10.atpages.jp/thcompe/compe07/?mode=read&key=1223149214&log=0

【あらすじ】
 パチュリーが頻繁に見るようになった、まるで母親の胎内で
漂っているかのような、不思議な、しかし心地よい夢。
 魔法を通して、自然と密接に関わる彼女だからこそ持つことができた、
なにかが自分を呼んでいるという確信。
 パチュリーと、彼女から話を聞いた魔理沙、アリスの三人は、情報収集のため、
人里に向かう。だが、そこで彼女らを待ち構えていたのは、想像を絶する光景だった。

【感想】
 1章で「ヴワル魔法図書館」の表記を見たときは、割と本気で読むのをやめようかと
悩みましたが、「基本的に全部」と大見得を切った手前そういうわけにも行かず。結局全部読みましたが、
意外と綺麗に纏まっていてよかったと思います。
 わざと抽象的に書いているのか、どうとらえていいのか分からない描写が続きますが、
大事な種明かしの部分の表現が直接的過ぎるように思いました。
 作中で何の説明も無く魔理沙とアリスが「昨夜はお楽しみでしたね」程度の仲になっていたり、
三点リーダが「……」ではなく「…」になっていたり、会話の括弧が「」でなく『』になっていたり、
基本三人称のはずの地の文にキャラクターの独白が度々紛れ込んだりと、マニア心をくすぐる要素は
沢山ありますが、三回以上読み返す時間とその覚悟がある方にしかお勧めしません。

【五段階評価】
☆☆☆☆☆(細かいところを気にせず、雰囲気だけを楽しめる人には星1.5)

ジャパニーズサムライ・ミーツ・ガール1590  ねじ巻き式ウーパールーパー氏

【タイトル】ジャパニーズサムライ・ミーツ・ガール1590    【書いた人】ねじ巻き式ウーパールーパー  氏
【サイズ】146.87KB
【URL】ttp://www10.atpages.jp/thcompe/compe07/?mode=read&key=1223147174&log=0

【あらすじ】
 九州随一の奇山、桜島。その山を一心に登る人物が居た。
名を、東郷藤兵衛重位。島津家の家臣であり、家内屈指の剣客であった。
 修行のために登ったその山で彼は一人の天狗と出会い、その稽古を受けることになる。

【感想】
 これがレビューされていないことを知ったときは、小躍りしました。といってもコンペ
優勝作品、読んだ人も多いとは思いますが、未読の方は一度だけでも開いてみることを薦めます。
冒頭部分から引き込まれるそのつくりは、さすが。長さを気にせず読めてしまいました。
 内容は「オリキャラと東方キャラの恋愛物」になってしまうのでしょうか、そういう要素が
あることは確かです。ただどちらかと言えば、恋愛というよりも、信頼という表現のほうが
しっくりくると思います。

【五段階評価】
★★★★☆(大体星4.5。オリキャラが心底嫌いな人は3)

華燭の春、燐火にて  Id氏

【タイトル】華燭の春、燐火にて   【書いた人】Id 氏
【サイズ】195.50KB
【URL】ttp://www10.atpages.jp/thcompe/compe07/?mode=read&key=1223155009&log=0

【あらすじ】
 幼い頃に水難事故に遭い両親を亡くした少女パルスィは、水橋家に引き取られ、外出こそ
ままならないものの、育ての両親と、それから義兄と仕合せに暮らしていた。月に一度ほどの
義兄との外出を心待ちにしながら。そんな折、義兄に縁談が持ち上がる。自分の気持ちにうっすら
気付きながらも、必死に自制し、祝福するパルスィ。だが、届けられた本の一冊を見た瞬間、
彼女の理性の結界は崩壊した。生きながらにして鬼と化す外法に手を染めた彼女は、ついに
「橋姫」と出会う。橋姫は言った。

 お前が信じている両親は、本当に何の下心も無くお前を育てているのか?

――と。

【感想】
 非常に丁寧な文章で描かれる、パルスィの心情。義兄の優しさ。
善意と悪意が織り成すこの物語は、真実は観測する側によって全く違うものになりうるという
当たり前のことを思い出させてくれます。
 最悪のデッドエンドでもあり、最高のハッピーエンドでもある。壮絶で破滅的な話である一方、
切実な悲恋の話でもあり、一人の英雄を生んだ英雄譚でもある。
【五段階評価】
★★★★★

 

第七回コンペ

ジヴェルニーの妹達の庭  nig29氏

【タイトル】ジヴェルニーの妹達の庭    【書いた人】nig29  氏
【サイズ】137.45KB
【URL】ttp://www10.atpages.jp/thcompe/compe08/?mode=read&key=1241873226&log=0

【あらすじ】
不思議な不思議な入口。
なんだこりゃ。
こいしは思わず頭をぽりぽり掻いた。
        (本文冒頭より)
 魔法の森でさまよっていたこいしが見つけた、ぽつんと建っている一枚の扉。
前から見れば中があるのに、後ろに回ってみても何も無い、不思議な扉。
 その扉をくぐった先にあったのは、美しい箱庭と、狂気を孕んだ吸血鬼の少女だった。
 何度も逢ううちにどんどん仲良くなっていく二人だったが、実はフランには
ある秘密があって……

【感想】
 美しい箱庭は、パチュリーとフランが館の地下に造ったもの。
誰かが遊びに来るかもしれないからとわざわざ外と直結する扉をつけてもらうほど
皆に想われているフランが、それでも外に出られない理由とは? それを知ったとき、
こいしのとる行動とは?
 個人的に一番の見所は、スカーレット姉妹の設定と解釈だと思います。
彼女らの過去はもちろん、あんなことにも説明が付くなんて!
 ただ、本当にご都合主義的な展開があります。また、誰視点か分かりにくい
部分もいくつかありました。

【五段階評価】
★★★☆☆(3.0、北欧神話がすきなら+1.0、雰囲気を楽しめる人なら+0.5)

Hello,my friend ―6つの色が揃うとき―  ぴぃえぬえす氏

【タイトル】Hello, my friend ―6つの色が揃うとき―   【書いた人】ぴぃえぬえす 氏
【サイズ】160.95KB
【URL】ttp://www10.atpages.jp/thcompe/compe08/?mode=read&key=1241872046&log=0

【あらすじ】
 さとりの最近の楽しみは、地上に住む人物「陽子さん」と文通すること。
初めての、心の声が聞こえない他人との会話は、彼女にとって本当に大切だった。
 しかし、そんな幸せな生活に終止符が打たれる。
――彼女が、来る
 さとりの懸命の説得にも応じず、ついに地下へやってくる「陽子さん」。
主のピンチに勇んで迎撃に向かうお空とお燐。
「陽子さん」の、そしてさとりの運命はいかに!

【感想】

子、襲来
 手紙で嘘をついたから、失望させてしまうから、会いたくない。そんな設定の話は、
たしか手塚治虫がブラックジャックでやっていましたが、こちらはもっと深刻。
さとり妖怪である彼女が直接会ってしまえば、嫌われてしまうのは絶対なのだから。
 こいしもさとりも、割と簡単に第三の目を開けたり閉じたりしていますが、
それほど気になりはしませんでした。特にラストシーンは、それが良い方に作用していました。

【五段階評価】
★★★★☆(3.5。地霊殿が大好物なら+0.5)

とうに終わった後の話  yamamo氏

【タイトル】とうに終わった後の話   【書いた人】yamamo 氏
【サイズ】181.47KB
【URL】ttp://www10.atpages.jp/thcompe/compe08/?mode=read&key=1241866500&log=0

【あらすじ】
 妹紅は人里の大通りを一人、歩いていた。ほんの一ヶ月前までは、慧音と二人、
並んで何度も歩いた道。だが今は、隣に誰も居ない。それだけではない。この人里から、
この幻想郷から、全ての生物が姿を消していた――

【感想】
 まさか東方SSでフーダニットが読めるとは。素晴らしい試みと言っても良いと思います。
 しかし、後半が駆け足であること、突然文明の塊が登場すること、犯人と相対
したときに、皆烈火のごとく怒っているはずなのに態度が軽いことなど、人によっては
「興ざめ」と感じることがあるかもしれません。

【五段階評価】
★★★☆☆(妹紅が大好きなら+0.5、細かいところを気にするたちなら-0.5)

東の空の、ゴールデンエイジ  佐藤厚志氏

【タイトル】東の空の、ゴールデンエイジ   【書いた人】佐藤厚志 氏
【サイズ】123.31KB
【URL】ttp://www10.atpages.jp/thcompe/compe08/?mode=read&key=1241856111&log=0

【あらすじ】
 空には新聞よりも早い情報伝達手段が踊り、毒の人形は人形解放戦線の為の資金集め
に奔走する。
 何かが決定的に変わってしまった未来の幻想郷で、人形遣いの少女は失った記憶を求めて
郷中を舞台とする矮小な事件に巻き込まれていく。

【感想】
 冒頭を読んでいるときには、それほど凄い話を読んでいると言う感覚は無く、むしろ、
誤字の多さに辟易するくらいでした。しかし、気付いたときには読み終わっていました。
それだけの力のある作品です。今までに読んだ中では一番二番に入る良作です。

 時代は移り変わっていくものです。ですが、変わるのは環境だけではありません。
世代の交代と共に変わっていく人間と、それに取り残された「妖なるもの」達。
今にも瓦解しそうなほどに歪みきった幻想郷で繰り広げられる、恐怖と狂気の悲劇。

 作者さんが自分の話に振り回されているような印象を受けましたが、それもまた、この作品の
力なんだと思います。

【五段階評価】
★★★★★(自分の中に確固たる幻想郷があって、それが壊れるのが堪らなく嫌な人なら-1.5)

白狼天狗捕物帳  智高氏

【タイトル】白狼天狗捕物帳   【書いた人】智高 氏
【サイズ】126.86KB
【URL】ttp://www10.atpages.jp/thcompe/compe08/?mode=read&key=1241852798&log=0

【あらすじ】
 張り番の夜勤を終え、家路についていた椛が見たのは、天まで届くかと思われるほどの、巨大な火柱。
(火事だ!)
大慌てで同僚を現場へつれてきた椛だったが、そこには山火事はおろか、何かが燃えた後さえなかった。
いたずらに衆を惑わせたとして、一週間の謹慎を命じられてしまう。
 一方、そのころ山ではもう一つの異変が起きていた。

【感想】
 「目ぇ血走ってるよ、椛ぃ」
 「それじゃあ血走椛になっちゃうよ」
(本文冒頭より)
 こんな話といえば大体想像できるでしょうか、細かいギャグが随所にちりばめられており、
長さを感じさせない楽しい作品でした。
 ですが、それだけではありません。膨大なネタのかげにひっそりと隠された伏線の数々は、
読み終わったあなたに驚きを与えてくれることでしょう。
 地底のくだりは、確かに蛇足ではあると思いますが、本当に面白い足です。

【五段階評価】
★★★★☆(メタネタが嫌いな人は-0.5、好きな人は+0.5)

黒き海に紅く  Spheniscidae氏

【タイトル】黒き海に紅く   【書いた人】Spheniscidae 氏
【サイズ】266.24KB
【URL】ttp://www10.atpages.jp/thcompe/compe08/?mode=read&key=1241844919&log=0

【あらすじ】
「凶兆を運ぶもの」としての自らの在り方に苦しんでいた「龍宮の使い」永江衣玖は、
巴という少女の純真さに心を救われ、己の運命を変えるために黒木に付いた。
ある少年の波乱の半生を知った「不死人」藤原妹紅は、己の最善を尽くしてなお、
民を死地へと連れて行かなければならない彼を見かねて田北に付いた。
「悪さをする鬼を人間が力で退治する」という、古い、鬼と人との関係に縋ろうとする
「鬼」星熊勇儀は、鬼と呼ばれる猛将、大友家の道雪に同行する。

 時は天正十二年。一般に、戦国時代と呼ばれる時代である。九州の筑後は、龍造寺家の
黒木を境として、田北が属する大友家との二つに分かれていた。
 哀れな人間達の戦禍は、三人の人外を巻き込みながら、結末へと加速していく。

【感想】
 ボーイ・ミーツ・ガールというジャンルの作品があります。普通の生活を送る少年の
元に異能の力を持つ少女が現れて……とかいう話の総称です。出会った二人は、時に協力し、
時に反発しあいながら、望みを叶えようとしたり目的を達成しようとしたりします。
 この話には、三組の二人が登場します。三者三様の望みは、決して相容れるものでは
ありません。自らの存在をかけた望みがぶつかるとき、何が生まれるのか。ぜひ、
自分の目で確かめてください。
 人によっては、「軽すぎる」と感じるかもしれない文章ですが、それは、のどかでどこか
ほっとする、美しい風景を想像させてくれているように感じました。

【五段階評価】
★★★★☆(人死にが嫌いなら-1.0、いい話が読みたいなら+1.0)

 

第八回コンペ

幻想郷カットインズ:アンブレラ  プラシーボ吹嘘氏

【タイトル】幻想郷カットインズ:アンブレラ   【書いた人】プラシーボ吹嘘 氏
【サイズ】234.64KB
【URL】ttp://www10.atpages.jp/thcompe/compe09/?mode=read&key=1258815184&log=0

【あらすじ】
 私メリー、メリー・ポピンズに傾倒する大学生。今日も愛傘「ポリー」と共に優雅な空中散歩!
のはずだったんだけど……。
 不意の突風にもみくちゃにされて気付いてみると、足元のビル群は綺麗さっぱり消えうせ、
見たことも無い、緑豊かな土地が広がっていた。そこに降り立った私を待ち受けるのは? そして、
私は元いた場所へ帰ることができるのか?

【感想】
 このあらすじ、中身が一人称だったため、ちょっと頑張ってみました。ちなみに僕には、やたらハイテンションな
アニメ声で再生されました。
 それはさておき、外の人間の感覚で語られる幻想郷はとても美しく、楽しいところでした。主人公は
永遠亭や太陽の畑などに迷い込むわけですが、そこには自然体の住人たちの日常が有って、久々の客に
張り切る吸血鬼があれば、ただの日常と受け止める姫様も居て……
 そんな幻想郷を、変な人ながら常識を併せ持つメリーの視点を通して見てみれば、また少し妄想のネタ
が増えるかもしれません。
 ラストシーンで明らかになる、大仕掛けにも注目です。

【五段階評価】
★★★☆☆(オリキャラものが嫌いなら-1.0)

首切り蓬莱人形  智高氏

【タイトル】首切り蓬莱人形    【書いた人】智高 氏
【サイズ】132.38KB
【URL】ttp://www10.atpages.jp/thcompe/compe09/?mode=read&key=1258814047&log=0

【あらすじ】
 蓮台野で発見された、60年前に失踪した天才教授の死体。
 メリーが大学の敷地内で遭遇した、道化師の面を被った少女。
二つの事件に挑む秘封倶楽部の二人が見たものとは。
【感想】
 ネタバレになってしまうので、あらすじはこれ以上書けませんでした。
 死んだ教授の秘密、「西行の呪い」というワード、オカルトサークル、
そして失踪者。
 全てが一点の真実に結びつく様は、よくできた推理小説を読むかのようでした。

 ただ、謎解きはもう少し分かりやすく、量を書けたのではないかとも思います。
時間切れでしょうか?

 ちなみに、オリキャラを駆使しているため、嫌いな人の肌には合わない可能性が高いです。
【五段階評価】
★★★☆☆(個人的には楽しめました。CDを持っている人なら、もっと楽しめるかも?)

隠れ者の小傘  稜乃氏

【タイトル】隠れ者の小傘    【書いた人】稜乃 氏
【サイズ】164.52KB
【URL】ttp://www10.atpages.jp/thcompe/compe09/?mode=read&key=1258812847&log=0

【あらすじ】
 (たぶん)平安末期。ぬえは、帝の風邪を正体不明にして遊んでいた。
 そんな彼女が出会った一体の妖怪。家まで連れてきたその妖怪に、彼女は
「小傘」という名前をつける。そのころ帝は用心棒に源頼政を雇っていた。

【感想】
 時は平安帝は風邪。二人の妖怪新コンタッ(ry

 分かりやすい王道展開です。しかし、それでも楽しく読ませるのは、作者様の実力。
王道展開と言うのは、自然にその展開に持ち込む筆力が必要だと考えていますが、この作品では、
見事にそれを成し遂げています。
 さらにはラストシーン。小傘の服装にふれる、さりげない気配りが素晴らしいです。

【五段階評価】
★★★☆☆(安心して読める、秀作です。)

雨流夢  Spheniscidae氏

【タイトル】雨流夢   【書いた人】Spheniscidae 氏
【サイズ】181.67KB
【URL】ttp://www10.atpages.jp/thcompe/compe09/?mode=read&key=1258641862&log=0

【あらすじ】
  学会という場所はこれまた意地汚いところであった。きちんと実地調査し、それを解析し、検討し、渾身の論文としてまとめたにも関わらず、その調査は"おふざけ"だと断じられ、学界から追い出されることになった。"おふざけ"とされた理由は只一つ。

 ――もう物理の研究なんて、誰もしたくなかったのだ。
(本文冒頭より)
 物理学に「魔力」の考えを取り入れれば、物事をもっと簡単にあらわせる。そう学会で発表した
岡崎 夢美は、教授職を解かれ、学会を追い出されてしまった。しかし、夢美はあきらめなかった。ちゆりと共に研究の場を
幻想郷に移し、日夜研究に励んでいた。
 そんな折、研究所の近くで膨大な魔力が観測される。覚り妖怪が、人里で人間を暴走させようとしたのだ。
 しかし、そのときに起きていた事件はそれだけではなかった。同時刻の人里で、東風谷 早苗が行方不明に
なっていた。現場の状況から、覚り妖怪に誘拐されたものと考えられた。
 夢美とちゆりは、小兎姫から事件の調査を依頼される。

【感想】
 僕が今のようなSSを書きはじめるきっかけになった作品です。これを最後に読んでから半年ほど経過しましたが、
一番記憶に残っているのもこの作品です。
 事件の真実に迫る二人。その過程であぶりだされるのは、今まで見ようとしなかった、幻想郷の裏の部分です。
 知性のある妖怪は、人間よりも人間らしい。そんなことが求聞史紀に書いてあったような気もしますが、
それならこの作品は、正しく幻想郷であると言えると思います。
 純粋に幻想を信じていた夢美の最後の選択は、救いが無く、終わりのない挑戦です。

【五段階評価】
★★★★☆(好き嫌いは間違いなく別れます。暗い話が好きなら、お勧めです。)

Good Bye, Rainy Moon.  零四季氏

【タイトル】Good Bye, Rainy Moon.   【書いた人】零四季 氏
【サイズ】104.40KB
【URL】ttp://www10.atpages.jp/thcompe/compe09/?mode=read&key=1258806703&log=0

【あらすじ】
 見えない敵と戦い続ける仲間の兎達に嫌気がさし、地上へと逃げてきた月兎、鈴仙。
それなりに長い間を地上で過ごしてきた彼女だったが、立て続けに月を思い出すような
出来事が起こったために、ノイローゼ気味になってしまう。そんな彼女を見かねて、
永琳は告げた。
「―――貴女に、一日だけ休暇を与えます。……その中で、貴女の答えを探しなさい」

【感想】
 一度仲間を見捨ててしまった罪悪感からか、幻想郷の住人の輪に入れない鈴仙。
神社で彼らと一緒になった彼女がそこで見つける答えとは。
 一人称で淡々と描かれる、ある一日。美しいラストの流れが印象的でした。
 個人的には、このコンペでもっとも美しい雨の一つだと思います。
【五段階評価】
★★★☆☆(凄く良い)

 

真型・東方創想話

従者たちの夏休み  YDS氏

【作品集31】
【タイトル】従者たちの夏休み   【書いた人】YDS 氏
【サイズ】114.13KB
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1153919872&log=31

【あらすじ】
鈴仙が買い物帰りに福引で引き当てた、温泉の無料招待券。しかし問題は、
三枚という帯に短し襷に長しなその枚数だった。知り合いにあげてしまおうか
という鈴仙の言葉に、永琳は告げた。
「3日程休暇をあげるから、ゆっくり休んできなさい」と。
 唯一の友人である妖夢、偶然居合わせた咲夜、そして休暇で同じ旅館に来ていた小町。
 4人の苦労人達の、騒がしくも温かい一泊二日が今、幕を開ける。

【感想】
 全編が鉄板天丼お約束で構成されている、ギャグ作品です。
しかし、それだけではありません。さりげなくもしっかりと通されているのは、
鈴仙の成長の物語だと思います。鈴仙かつて月の民であったという、一種の「負い目」
のようなものを感じていたんじゃないか等と僕が勝手に邪推してますが、それが様々な
エピソードの中で解消されていく様からは、主達の優しさが垣間見えました。

【五段階評価】
★★★☆☆(ギャグが好きなら+1.5)

さようなら臆病な自分、こんにちは素直な心  暁スバル氏

【作品集34】
【タイトル】さようなら臆病な自分、こんにちは素直な心   【書いた人】暁スバル 氏
【サイズ】190.40KB
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1160798153&log=34

【あらすじ】
いつもさぼってばかりいる小町に、映姫は言った。
「がっかりです、こんなことなら別の死神を雇うべきでした」と。
小町は、いつもより重く冷たいその言葉を受け止めきれず、映姫の元から去ってしまう。

【感想】
 べったべたなえーこまです。テンプレートな展開に、初めからわかりきったオチ。
たったこれだけの内容にどうしてこんな長さが必要になるのか分かりません。
はっきり言って嫌いな話でした。
 「好きになる過程」のようなものが書かれているのならそれは納得できるし評価できますが、
最初から好き合っていて、喧嘩しただけってのはただの痴話喧嘩にしか見えません。

【五段階評価】
★☆☆☆☆(百合百合してるのが好きなら+1.5)

西行あやし(前・中・後)  行先不定 氏

【作品集35】
【タイトル】西行あやし(前・中・後)
【書いた人】行先不定 氏
【サイズ】計270.26KB
【URL】前編:ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1166843323&log=35
    中編:ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1166844177&log=35
    後編:ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1166844870&log=35

【あらすじ】
 富士見の里と呼ばれる土地に、一人の少年と、少女がいた。少女は名を、那枝といった。根に怨気を溜め込み続けてついに妖怪と化した一本の桜を代々守ってきた、西行寺家の娘だった。西行寺家の当主は代々、その桜の花びらを喰らい、死霊を操る力を身に宿して、外敵から桜を、ひいては日の本の国を護ってきたのだ。
 少年の方は、木見彦といった。本家・西行寺家を武力で守護する、いくつかある分家の一つ。近舶家の長男だった。
 数年して西行寺家の当主となった那枝は、「幽々子」という名を新たにもらいうけ、従者である少年と、分家などとの会談に忙殺される毎日を送っていた。
 そんな折、屋敷が一体の鬼の襲撃をうける。それを退けた二人だったが、その事件は、富士見の里全体を巻き込む戦いの予兆に過ぎなかった。

【感想】
 西行妖が死ぬと、溜め込められた怨気が解き放たれ、日本中に災厄が訪れる。それで、富士見の一族は長い間、それを守って暮らしてきました。ですが、人は忘れる生き物です。長い間何事も無く過ごしてこれたという事実は「あんな桜があるからいけないんじゃないか。第一、切り倒したら、本当に悪いことが起きるのか」などと主張する一派を生み出しました。
 全体を通して非常に上品で読みやすい文章、血沸き肉踊る臨場感に溢れた戦闘描写。個人的には最高級の冥界組過去話の一つだと思うのですが、どうしてこんなに評価が低いのやら……
 流血などの「痛い」描写が多いです。それがテーマという訳ではないですが、分量が。
 それでも、ぜひ後編まで読み進めてください。最後の妖忌の描写はもう最高でしたね、本当に。

【五段階評価】
★★★★★(流血が苦手なら、-1.0)

三人目の姉妹  杉氏

【作品集39】
【タイトル】三人目の姉妹   【書いた人】杉 氏
【サイズ】191.20KB
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1175910863&log=39

【あらすじ】
 生まれてはじめての、本当の友達。フランにとって魔理沙は、本当に大事な存在だった。
一緒に過ごしているうちに、二人は愛し合うようになっていた。いや、変な意味じゃなくて。
 しかし、あるときから魔理沙がぱったりと訪ねてこなくなった。実はそれは、レミリアたちの
陰謀だった。真実を知ったとき、フランとレミリアの最悪の姉妹喧嘩が勃発する。

【感想】
 「フランに別れの悲しさを味あわせたくない」というレミリアの配慮に対して、それを受け入れ
ようとしないフランの意固地さ。という図柄だと思ったら、なんか二人しか居ないのに「実は私は~」
「私、お姉ちゃんが隠してること全部知ってるんだから!」みたいな会話が沢山出てきます。
 最終的に両者共にぼろぼろにしなければいけない為に、戦闘シーンを書いていた作者さんが、
「あれ? 吸血鬼ってもっと丈夫じゃね? これくらいじゃ倒れなくね? こいつらの本気って
こんなもんじゃないんじゃね?」という負のスパイラルに落ち込んでしまったような印象を受けました。
 最終的に勝ったのは誰か? それは、誰よりも魔理沙を愛していた彼女です。

【五段階評価】
★★★☆☆(悲恋が好きなら+1.0、ブリーチっぽいノリが好きなら+1.0、嫌いなら-1.5)

From seeing the rough wave  鼠(鑑定済み)氏

【作品集39】
【タイトル】From seeing the rough wave   【書いた人】鼠(鑑定済み) 氏
【サイズ】113.12KB
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1175975635&log=39

【あらすじ】
 深夜に幻想郷を襲った大地震。その影響で落盤が発生し、地下に巨大な洞窟が発見された。
調査のために潜ったアリスが見たのは、大量のモンスターと、貴重な魔石。
 魔石で魔理沙を釣ったアリスは魔理沙との抜群のコンビネーションで妖夢を引き込み、
本格的な調査に乗り出す。

【感想】
 なんかのゲームとのコラボ作品だそうです。知らない僕にはニヤニヤできるポイントが
見つかりませんでしたが、バトルシーンは本当に楽しめました。

【五段階評価】
★★★☆☆(RPGが好きなら+1.5)

Broken doll  杉氏

【作品集42】
【タイトル】Broken doll   【書いた人】杉 氏
【サイズ】131.95KB
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1186262272&log=42

【あらすじ】
 研究に行き詰ったアリスはパチュリーの図書館を訪れ、そこで一冊の本に出会う。その
本には、アリスが作りたかった自立人形を完成できるかもしれないヒントが満載だった。
規則的な生活を投げ打って研究に打ち込むアリス。ついにそれを見かねた霊夢が、力づくで
止めようとするが、それが原因で二人は仲違いをしてしまう。
 アリスにとって、唯一の友人だった霊夢。その霊夢の「絶交よ!」という言葉は、アリスに
甚大な被害を与えた。部屋の隅にうずくまっては、自傷行為に耽る日々。そして彼女は、最悪の
選択をする。

【感想】
 文章がくどいというか面倒くさい。最後まで頑張って読むのに足るラストシーンとは思えない。
 でも、アリスと霊夢が大好きな人の目にはきっと最高のラストに見えるんだと思います。
【五段階評価】
★★★☆☆

猫談義  猫叉氏

【作品集44】
【タイトル】猫談義   【書いた人】猫叉 氏
【サイズ】118.42KB
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1191620518&log=44

【あらすじ】
 ある日お茶の時間にパチェが言った。

「紅魔館の猫度が足りない」
      (本文冒頭より)

猫度が低い原因は、レミリア(蝙蝠。別名天鼠)にあった。親友・パチュリーのためならばと、
レミリアは猫修行に出掛ける。何故か香霖堂へ。

【感想】
 この後、色々あって香霖堂で修行をし続けることになります。主にパチュリーのせいで。
レミリアの首には猫度を測る為の首輪がついており、それに込められた魔力のために、レミリアには
尻尾が生え、猫耳が生えてきます。さらには性格もだんだん猫っぽくなって……
 一度紅魔館に帰ったレミリアの、複雑な気持ち。レミリアはその後香霖堂へ戻りますが、その伏線が
冒頭のシーンにすでに張ってあることには感心しました。

 あとこーりんころす
 
【五段階評価】
★★★★☆(霖之助のハーレム状態が嫌いなら-4.0、可愛いレミリアが読みたいなら+1.0)

リィンカーネーション  レグルス氏

【作品集47】
【タイトル】リィンカーネーション   【書いた人】レグルス 氏
【サイズ】162.99KB
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1199611621&log=47

【あらすじ】
 気付くと、世界が止まっていた。自分以外に動くものが何も無い、いつも通りのはずだった交差点。
呆然とする彼女に、背後から声を掛ける者がいた。
「あなた、メイドとして働く気はないかしら?」
 そうして、「幻想郷」という場所に連れて来られた彼女は、紅魔館でメイドとして働くことになる。
だがある日、彼女は現実を思い知ることになる。
 そう。彼らは、人間を食うのだ。

【感想】
 彼女は、自分の身を守るものを求めて、地下を訪れます。その扉を開けた先で出会ったフランドールに
彼女は縋りました。

 ずっと一人で考える事ばかりしていたのでしょうか。この作品のフランは、大人です。館にいた誰よりも。

 終盤に明らかになる外界での出来事は、ラストシーンをずっしりと重く仕上げています。

【五段階評価】
★★★★☆(ぜひ読んでみてください)

風甘  七氏氏

【作品集49】
【タイトル】風甘   【書いた人】七氏 氏
【サイズ】182.38KB
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1203437625&log=49

【あらすじ】
 二月は主要な行事が無く、新聞のネタが無い。困った文は、最近外から来た守矢神社の面々なら
何か知っているかもしれないと、早苗に尋ねた。そこで文は、「ヴァレンタインデー」というイベントが
あることを知る。
 幻想郷中に特集を組んだ新聞を配り、明日はその盛り上がりを取材しよう。と意気込んでいた矢先、
文に外出禁止令が降りてしまう。

【感想】
 新聞を配る過程が、配っているだけだとはとても思えない面白さ。それだけではもちろん無く、
バレンタインという行事を知った住民の行動が、いちいち「らしく」て良かったです。
 文の外出禁止を知った椛の奮闘にも注目です。

【五段階評価】
★★★★☆

北京の蝶の羽撃きが紐育に嵐を齎す小話  ねじ巻き式ウーパールーパー氏

【作品集57】
【タイトル】北京の蝶の羽撃きが紐育に嵐を齎す小話   【書いた人】ねじ巻き式ウーパールーパー 氏
【サイズ】157.75KB
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1215768254&log=57

【あらすじ】
風が吹けば盲人が増え、三味線の生産量が増えるので猫が減り、鼠が増えるので桶がかじられ、
最終的に桶屋が儲かる。
つまり、

――橙が危ない。

【感想】
 そんな頭の悪い暴走の仕方をした藍は、起こってしまったことを無かったことにするため、桶屋から
つぶすことにした。
 藍はこの後、野球やベースボールの薀蓄と共に幻想郷中を飛び回り、関係者に天誅を下そうとします。
バットで。最後に狙うは風を起こした張本人である文。災難です。
 最後は宴会のシーンです。凄いのは、藍の暴走の被害を受けた者が、そのラストシーンで皆、笑って
いることです。どうやってあれを団円に持ち込んだのか、訳が分かりません。

【五段階評価】
★★★★☆(野球好きなら1.0、興味が無いなら-1.0。良くも悪くも野球メインです)

お元気ですか?  aho氏

【作品集60】
【タイトル】お元気ですか?   【書いた人】aho 氏
【サイズ】118.07KB
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1221980424&log=60

【あらすじ】
 アリスは自宅で一人、頭を抱えていた。目の前には真っ白な便箋。くずかごには大量の書き損じ。
毎週のように魔界神から送られてくる、手紙と手作りクッキー。そのお礼の手紙を書こうとしていたのだ。
 そんな折、魔理沙が訪ねてきた。クッキーを強奪して遁走しようとした魔理沙だが、母から送られてきた
クッキーであることを知ったとたん、つっけんどんに付き返して飛び去ってしまう。
 実は魔理沙の母は……

【感想】
 うなるしかないですね、この設定には。壮絶というかなんと言うか。魔理沙の両親の決断なんか、
本気で鳥肌が立ちましたもん。ちょっと軽すぎるような気もしますが。

 最初のあのシーンから始まってあそこで締める。テンプレートということもできますが、それを巧く
使いこなすのは、やはりahoさんなんだなと。

【五段階評価】
★★★★☆(良い親子愛。食指が動いたならぜひ)

黄昏の郷の黄昏(光・陰・箭)  nig29 氏

【作品集62】
【タイトル】黄昏の郷の黄昏(光・陰・箭)
【書いた人】nig29 氏
【サイズ】計342.33KB
【URL】光:ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1225609814&log=62
    陰:ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1225632227&log=62
    箭:ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1225632416&log=62

【あらすじ】
 リグルは夢の中で、外界に住む少女だった。蟻地獄に落ちた蟻を助けて、見ていた幼馴染に笑われた。
 ミスティアは夢の中で、一人の少女だった。蟻を助けた幼馴染を見て、自然の摂理に背いたとからかった。
 それは、不思議な夢だった。夢から覚めても手触りや音、色彩までが鮮明に思い出された。そしてさらに不思議なことに、幻想郷のほとんど全ての住民が、それぞれの視点で夢を見ていた。毎日少しずつ場面が進行していく夢に、皆の興味は釘付けになっていた。
 そんな時、映姫の元に紫が訪れ、「川に気をつけろ」と一言告げて去っていった。一笑に付した映姫だったが、普段と違う紫の様子が気にかかり、三途の川へと向かう。

【感想】
 前編にあたる「光」は、はっきりいって支離滅裂です。奇妙な夢から始まって、「永人」という弓道部在籍のイケメン男子に「妹子」という名の少女が恋焦がれる話が続き、メリーと蓮子が遭遇した奇妙な人体消失。そして幻想郷でおもむろに始まる例大祭。そう、訳が分かりません。もしかすると、ここで諦めた人も多いかもしれません。ですが、ここで止めるのは勿体ない。一見無駄とも思える全てが、「陰」以降のための大事な伏線にして、大前提。たとえ首をひねりながらでも、読む価値はあります。
 滅亡の危機に瀕した幻想郷。そのなかで物語は、幻想郷の成り立ちに肉薄していきます。――そこは、全ての願いが叶った夢の郷。それを創り出した彼女の願い。そして、彼女たちの願い。
 とかいいつつ、SFだったり、オカルトだったり、いろんな顔があるのもこの作品の魅力です。
 幾つか気になった点もありました。ラストシーンで、なんでこいつがここにいるんだ、とか思ったり、最後のヤマメの立ち位置が気に入らなかったり。
 「箭」の後書きから、作者様の解説のページに飛べます。

【五段階評価】
★★★★☆(好き嫌いは別れると思いますが、+-で表せるものとは思えません。個人的には、多くの人に読んでもらいたい良作です)

夏の日の気まぐれ  Closet 氏

【作品集62】
【タイトル】夏の日の気まぐれ
【書いた人】Closet 氏
【サイズ】113.10KB
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1226224538&log=62

【あらすじ】
 レミリアが神社で留守番をしていると、一人の少女が石段を登ってやってきた。千恵と名乗ったその少女は、里を守る結界の護符が何者かに破られてしまったこと、それを張りなおせるものが霊夢しかおらず、探しにきたことを告げた。話を聞いたレミリアは、千恵と、偶然居合わせた阿求と共に、人里へ向かう。

【感想】
 まず、阿求の登場シーン。何度か読んで、何をしようとしたのかは理解しましたが、作者視点の地の文だったはずの場所に突然阿求の独白を混ぜられても困ります。里の誰かが最初に結界の異常に気付いたシーンと、後の「結界を作る札が、さらに別の札で隠されているため一般人には認識できない」という説明が矛盾しています。既に何体かの妖怪が里に侵入しているという千恵の台詞と、里に向かう三人が会話しながら歩いていくという描写に違和感を覚えます。しかも、里に着くとまだ妖怪は里に侵入していませんでした。ここにも矛盾があります。
 何が言いたいかというと、「ノリと感覚だけで書いているため、前後の整合性が二の次になってしまっている」ということです。プロットをしっかり組むなり、一度読み返すなりすれば、もう少し違っていたかもしれません。
 さて、内容ですが、珍しい組み合わせでありながら、キャラの特徴を上手く捉えて書けていると感じました。人間でありながら妖怪に引けをとらない異能の力を持つ阿求、妖怪でありながら人間の味方をする慧音、そして、どうしようもなく妖怪であるレミリア。三者三様の立ち位置で事件に立ち向かう彼女たち。特に、カリスマ溢れるレミリアと慧音の会話は、良かったです。

【五段階評価】
★★★☆☆(カリスマ溢れるレミリアが読みたいなら+0.5、理屈を重視する人なら-1.0)

カミサマウサギ  超空気作家まるきゅー 氏

【作品集65】
【タイトル】カミサマウサギ
【書いた人】超空気作家まるきゅー 氏
【サイズ】118.73KB
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1229946504&log=65

【あらすじ】
 鈴仙とてゐが師匠から渡されたのは、幸せを探す薬、通称「ラグナ6」だった。それを服用すると「自分の望みが叶っている世界」の自分と交換できるという、正に夢のような薬だった。その薬を、割と無理矢理飲まされた鈴仙がなんか凄いエフェクトから復帰すると、目の前には先ほどと変わらない景色があった。永琳の言動から、そこが「世界B」にあたることを確信した鈴仙。とりあえず帰路を探そうとしていると、永琳に、姫が鈴仙を呼んでいた事を告げられる。
 鈴仙が部屋を訪ねると、波長が「狂気」側に振り切った月のお姫様が待ち受けていた。夜の相手を務めろと迫ってくる姫を宥めすかして、一緒の布団で寝ることに落ち着かせた鈴仙。しかし、翌朝目が覚めてみると、予想もしなかった光景が鈴仙を待ち受けていた。
 ――滅茶苦茶に荒らされた部屋のあちこちに飛び散った血痕。そして、腹部に刃物で刺された痕がある輝夜。蓬莱人であるはずの輝夜が、死んでいる。

【感想】
 犯行当時、部屋は輝夜がきっちりと施錠していた(鈴仙とにゃんにゃんするため)ため、密室状態にありました。状況からは、鈴仙が犯人であるとしか思えません。とにかくここに居てはまずい。そう考えた鈴仙は、人里の慧音の下に身を寄せます。
 設定には、非常にそそられるものがありました。
 しかし、まず、わざわざ懇切丁寧でわざとらしい密室の説明をしているにもかかわらず、拍子抜けするほど陳腐なトリック。せっかく神のごとき力を手に入れたのに、結局解決編は他人任せ。
 さらには「世界B」の登場人物たちの何の説明も無い異常性。博麗の巫女が存在しない理由。というかそれで幻想郷が瓦解しないためには、読者を納得させるだけの説明が必要なはずです。
 流血描写が多いです。あと、何の脈絡も無く永琳が異常です。これを読んで、ぜんぜんOK! 全く気にならないよ! という方は、読んでみてください。

【五段階評価】
★★☆☆☆(流血描写が苦手な人なら-1.0、よく分からなくてもSFっぽいものが好きなら+1.0)

東方闘牌伝  Jiyu 氏

【作品集66】
【タイトル】東方闘牌伝
【書いた人】Jiyu 氏
【サイズ】105.32KB
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1230735658&log=66

【あらすじ】
 香霖堂でめぼしい物を探していた魔理沙と霊夢。魔理沙が偶然見つけた麻雀牌。彼女たちの激闘が今、始まる。

【感想】
 霖之助、アリス、魔理沙、霊夢の四人が麻雀をする。というだけの話。勝ったものは、負けた三人になんでも一つ命令できるというルールで勝負が進みます。

「ルールはアリアリ、ダブロン・トリロンあり、人和なし、四人リーチは続行、13翻以上が数え役満、25000点
持ちの30000点返し、半荘一回終了時でのトップ取り。トビは有りだ」

 魔理沙がこんな事を言い出した時点でなんとなく予想はついていましたが、得点表は表示されるわ手配には画像がつくわの大盤振る舞い。
 試みは確かに面白いのですが、天和やら地和やらがでまくるのに加えて引きが異常、麻雀の醍醐味である頭脳戦が全く無かったことに拍子抜けがしました。
 また、おまけの魔理沙の雀荘での皆の様子などが、少し薄っぺらいように感じました。もちろん、そこがメインでは無い事は分かっていますが、それならいっそ全編カットするか、もっと深く掘り下げるかして欲しかったというのが正直な感想です。

【五段階評価】
★★☆☆☆(小説が読みてぇんだよという方は-1.5、麻雀する同人誌とかが好きなら+2.0)

東方現創郷  Jiyu 氏

【作品集66】
【タイトル】東方現創郷
【書いた人】Jiyu 氏
【サイズ】140.25KB
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1230735676&log=66

【あらすじ】
 最近、外から流れ着くものに、自分たちをモチーフにした絵が描かれているものが多くなった。霖之助によれば「同人誌」という名のそれは、外界から隔離されているはずの幻想郷が外の人間たちにも知られていることを意味していた。しかし、もしかしたら、この世界は「創られた世界」なのではないか? そう考えた者がいた。魔理沙は、「外」が実際にあることを確かめるため、幻想郷を脱出しようとする。

【感想】
 霖之助視点の過去話・霖之助視点の現在・魔理沙視点の現在が交錯して、だんだんと真実に近づいていく過程が良かった。各所に張り巡らされた伏線が隠された真実に収束していく様はもう見事の一言でした。
 内容ですが、他のキャラクターの内面はしっかりと描写されていた割に、魔理沙の決心に至るまでの過程が少々物足りないと感じました。十数年生きてきた幻想郷を、外に出たら己のたった一つの武器である魔法まで使えなくなることを分かっていてなお出ようとするには、もっと葛藤とか苦悩とかがあっても良いんじゃないか。
そう思いました。
 web媒体であることの特徴を活かした、数々の工夫には感心しました。それに関係して。firefoxを使っている方は、この作品だけは他のブラウザで読むことをお勧めします。なんかラストの仕掛けが作動しないので。

【五段階評価】
★★★☆☆(小説が読みてぇんだよという方は-1.0、(中身が)かっこいい霖之助が気になるなら+1.5)

風神葬祭 ~食欲と亡霊の秋  野田文七 氏

【作品集66】
【タイトル】風神葬祭 ~食欲と亡霊の秋
【書いた人】野田文七 氏
【サイズ】144.05KB
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1230565649&log=66

【あらすじ】
  ひもじくて仕方がなかった。
  生前口に入っていたものが、何も受け付けなかった。
               (本文冒頭より)

 幽々子が、突然妖怪の山へ向かうと言い出した。妖夢は、何も聞かず、それに同行した。傍から見れば、それはただの散歩だった。だが、一人だけその意図を把握し、その危険を認識していたものがいた。その名も四季映姫。幽々子の目的を看破した彼女は、部下の小町を連れて妖怪の山へ向かう。

【感想】
 「彼女」との出会いの過去編と、「彼女」との再開の現在編が、巧みに組み合わさっていて、読んでいて楽しい。山の住人たちとのエピソードも、非常に「らしく」て良いと思いました。
 しかし、素晴らしいと思ったのはそこではなく、弾幕による戦闘のシーン。本当に情景が浮かぶような描写に、観戦者を巻き込んだお祭り騒ぎ。かと思えば、なんだかぞわっとするようなラストシーン。
 長さを気にせずに読めました。

【五段階評価】
★★★★☆

正しくない友達との大晦日の過ごし方  福袋 氏

【作品集66】
【タイトル】正しくない友達との大晦日の過ごし方
【書いた人】福袋 氏
【サイズ】112.99KB
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1230744126&log=66

【あらすじ】
 「キャノ子」呼ばわりにショックを受け、鬱病になってしまった神奈子。冬眠と称し、炬燵に引きこもってしまった諏訪子。二柱がこの調子では信仰など得られるはずも無く、守矢神社の生活は困窮し始めていた。
 仕方なく、白玉楼の雇われ散髪師として就職した早苗。はじめは幽々子や亡霊などの髪を切るだけだったが、その噂を聞きつけた人妖が白玉楼に殺到し、早苗は一躍、幻想郷のカリスマ理容師として有名になる。
 そんな折、何匹かの妖怪が白玉楼を訪ねてきた。そのうちの一人、金髪の少女の髪を切ろうとした早苗は、その髪に御札が結び付けられているのに気付き、何の考えも無くそれを取り外してしまう。

【感想】
 もうお気づきとは思いますが、解き放たれたのは古の大妖怪、ルーミア。付近をめちゃめちゃにしたルーミアは、目覚めたばかりで何がなんだかも分からないまま、空腹を満たすために暴れまわります。
 スペルカードも知らない、ただ強大な力を振るうルーミアになすすべも無く倒される霊夢。幻想郷を救うことが出来るのは、残された早苗と、神奈子と文と椛。あと、何とか姉妹。あれ? 結構居る……?
 友情努力勝利の三原則のもと、ぼろぼろになった守矢神社境内で最後の激闘が始まる。
 記憶が戻っていくのか、段々独白の内容が高度になっていくルーミアや、予想外ながら安心感をもたらすオチ
にも注目です。
 スペルカード戦ではないため、わりと痛そうな描写が続きます。

【五段階評価】
★★★☆☆(友情努力勝利の三原則こそが宇宙の摂理! って方には+1.5、そう都合よくいくわけ無いじゃん! って方には-1.0)

紅美鈴と夢の国  yamamo 氏

【作品集69】
【タイトル】紅美鈴と夢の国
【書いた人】yamamo 氏
【サイズ】110.52KB
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1233811107&log=69

【あらすじ】
 いつものように居眠りしていた美鈴がふと気づくと、目の前には

>砂糖菓子で作られたような色とりどりのファンシーな家々が立ち並び、空に浮いている建物や巨大なクマのぬいぐるみが置かれていたりする。
>空はペンキで塗り潰したような派手なピンク色で、小さな三つの太陽が心地良い光をさんさんと降り注いでいた。

こんな風景が待ち受けていた。そして、突然降りかかる「おめでとうございます!」の声。
実はそこは、仕事中に1000回居眠りした人だけが招かれる理想郷だったのだ。
 食事にも居住にも困らず、しかも現実では時間が経過しない。そんな夢の国を丸一日堪能した美鈴だったが、ついに紅魔館に帰りたくなってきた。案内役の少女に帰り方を訪ねると、予想だにしない答えが待ち受けていた。

「え? 帰れませんよ?」

美鈴の奮闘が今、始まる。

【感想】
 最初のシーンと、夢の国のシステムの説明でなんとなくオチが読めてしまったのが残念でした。ですが、全体的な完成度は非常に高く、また、オリキャラメインの話でありながらその人格を分かりやすく書けていると思いました。また、伏線もきちんと張っており、安心して読める作品になっていました。
 個人的には、小町が出てきたら面白かったんじゃないかなあ、なんて思っています

【五段階評価】
★★★☆☆(格闘美鈴が読みたいなら+1.0)

墓参る  プラシーボ吹嘘 氏

【作品集70】
【タイトル】墓参る
【書いた人】プラシーボ吹嘘 氏
【サイズ】121.22KB
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1235824288&log=70

【あらすじ】
 今日はあいつの一回忌。住人たちは、こぞって墓参りへ向かう。手に手に、酒瓶と料理を持って。

【感想】
 短編集のような話でした。永遠亭勢、紅魔館、そして湖の妖精たちまで……皆がその、一人の墓に向かいます。それはもう、にぎやかに。たったそれだけの作品です。ヤマもなく、オチも無い。
 ですが、読み終わってみると、得体の知れない喪失感に胸が締め付けられました。言葉で説明するのは無粋だと思いますので、とりあえず読んできてください。一度に読むことを勧めます。

【五段階評価】
★★★★★(起承転結があってはじめて作品と呼べるという思想の方は-1.0)

八雲の式の式の式(前編・後編)  PNS 氏

【作品集71】
【タイトル】八雲の式の式の式(前編・後編)
【書いた人】PNS 氏
【サイズ】
【URL】前編:ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1236367600&log=71
    後編:ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1236367626&log=71

【あらすじ】
 橙は、仲間と雪遊びをしているときに、変なものを見つけた。真っ青で、手足があって、丸顔の。どうやら記憶を記憶を失くしているらしいその妖怪(?)に、橙は「青」という名前をつけ、自分の式神にすることにした。

【感想】
 ドラえもんとのクロスオーバー作品です。子供らしく純粋なバカルテットに、優しく包容力のあるドラえもん。まるで本当に、映画ドラえもんを観ているかのような気分になりました。というか、構成がドラえもんの映画そのものでした。
 そして、ラスボスの×××××。わかりやすい黒幕に、ドラえもん寄りの戦闘描写。クロスオーバー作品と
は思えない安定感、違和感のなさ。なんか、いいなあ、こういうの。

【五段階評価】
★★★★☆(ドラえもんが好きなら+1.0)

拳・魂・一・擲  ネコ輔 氏

【作品集72】
【タイトル】拳・魂・一・擲
【書いた人】ネコ輔 氏
【サイズ】146.16KB
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1237826185&log=72

【あらすじ】
「たまには洋酒も飲みたいわね」

 ことの始まりはその一言だった。
          (本文冒頭より)

 幽々子にそう頼まれた妖夢だったが、洋酒を手に入れる術など知らなかった。自分の知るもので、唯一西洋のもの紅魔館に思い当たった妖夢は、紅魔館へ向かう。
 そこでレミリアに事の次第を話し、洋酒を譲ってくれないかと頼む。快諾したレミリアだったが、一つ、条件があった。それは、紅 美鈴と格闘戦で勝利すること。

【感想】
 格闘のシーンで八割ほど埋められているようで、ストーリー的なものは特にありませんでした。ですが、その戦闘シーンが良かった。情景が克明に想像できる上に、なんか格好良い。
 一つだけ言わせてもらえれば、刀を捨てた美鈴の強さが分かりにくかったかなと思いました。

【五段階評価】
★★★☆☆(格闘シーンが好きなら+1.5)

ツッコみ浪漫飛行  すなふきん 氏

【作品集72】
【タイトル】ツッコみ浪漫飛行
【書いた人】すなふきん 氏
【サイズ】125.41KB
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1237186951&log=72

【あらすじ】
 川岸に行けば軍服姿の小町が待ちうけ、裁判を始めようとすればちょうちょ結びになった幽霊が入室してくる。そう、彼らは皆、映姫のツッコみを今か今かと心待ちにしているのだ。
 そんな状況に堪忍袋の緒が切れた映姫は差し入れの三輪車で是非曲直庁中を暴走し、職を失ってしまう。路頭に迷い、今にも飢え死にしそうになっていた映姫は紅魔館に雇われ、メイドとして働くことになる。

【感想】
 「もう絶対にツッコみなんてしてたまるか!」という決意の元に紅魔館で働き始めた映姫だったが、そこにも
小町が現れ、ボケをかまします。
 確かに設定は面白かったのですが、ツッコみがワンパターンになってしまっており、小町の必死のボケが死んでしまっているように感じました。また、その小町にしても、元上司の今の職場まで押しかける強引さ。その「ウザさ」を最後まで払拭できないまま、物語が終了しているところも気になりました。
 ツッコみというのはそもそもボケの新鮮さが残っているうちにするからこそ、そのテンポで読者を引き付けるものだと僕は考えています。この作品のように「ツッコまないぞツッコまないぞツッコまないぞ……ああもう我慢できねぇえええ!」とまとめてツッコむには、もっと勢いと、個々のボケに対する独創的なツッコみが必要なのではないかと思いました。

【五段階評価】
★★☆☆☆(お馬鹿なギャグが好きなら+1.0)

桜舞い散る世界(前編・後編)  Taku 氏

【作品集73】
【タイトル】桜舞い散る世界(前編・後編)
【書いた人】Taku 氏
【サイズ】計104.74KB
【URL】前編:ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1239200774&log=73
    後編:ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1239207627&log=73
【あらすじ】
 「死を操る少女」幽々子に興味を持ち、ずっと観察していた紫は、ある日ついに我慢できなくなり、幽々子の前に姿を現す。幽々子にとって紫は、近づいても大丈夫な唯一の友人となった。次第に仲良くなっていく二人。そして紫は、幽々子を救おうとして、西行妖に挑みかかる。

【感想】
 ラストが少々尻切れとんぼに思えます。また、西行妖や紫の能力についての説明が、他の人の解釈ありきというか、「みんな分かってると思うから説明は簡単で良いよね」という作者様の考えが透けて見えるような気がしました。穿ち過ぎかもしれませんが。
 いくつか、描写上の矛盾点があったことも気になりました。

 しかし、日常のシーンと非日常のシーンでの文体の使い分けが非常に上手く、情景が浮かぶような文章でした。ラストに疑問を持つ方もいるかもしれませんが、むしろあそこで終わるのがベストだったと個人的には、思います。

【五段階評価】
★★☆☆☆(幽々子と紫のほのぼのに興味があるなら+1.5、妖々夢過去話が好きなら+1.0、軽すぎる文章が嫌いなら-1.5)

ろくでなし  胡椒中豆茶 氏

【作品集73】
【タイトル】ろくでなし
【書いた人】胡椒中豆茶 氏
【サイズ】125.88KB
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1238424962&log=73

【あらすじ】
 鈴仙は、永琳からある箱を妖怪の山に届けるように頼まれる。その箱の中身は、河童と共同開発した、それが散布された空間内での全ての事象をコントロールするための触媒。
 しかしその箱が、ノリで「義賊」を名乗る魔理沙に盗まれてしまう。

【感想】
 鈴仙の一人称で、物語は進行します。つまり、ろくでなしの内面を通して物語を読み進めるわけですが、この兎がうざいことうざいこと。まあストーリーは山あり谷ありで楽しめましたが、全体を通して生理的に嫌な描写が続くため、最初の五十行で少しでも嫌悪感を感じた方にはお勧めしません。

【五段階評価】
★★☆☆☆(潔癖症寄りの方なら-2.0)

おぜうがデレた日  ネコ輔 氏

【作品集75】
【タイトル】おぜうがデレた日
【書いた人】ネコ輔 氏
【サイズ】132.33KB
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1241542555&log=75

【あらすじ】
「なんでも、地底には核融合炉で作った温泉卵なんてものがあるらしいじゃない。
なかなかどうして興味深いわ。どうかしら美鈴? 気分転換に行ってみる気はない?」
                      (本文冒頭より)

「こないだの宴会に遅刻して行ったら地底の人たちが持ってきてくれた温泉卵が
他の参加者に全部食べられちゃって悔しいから私も食べたい。美鈴、貰って来て!」
                      (日本語訳)

 仕方なく地底に向かった美鈴。そして、「出来立ては自分も行かないと食べられない」ということに思い当たったレミリアも同行する。
 レミリアのおかげで雑魚妖怪に絡まれることも無く、旧都までたどり着いた二人だったが、そこには二人の
鬼が待ち構えていて……

【感想】
 この人の格闘は凄いな……。ただ、美鈴・勇儀の戦闘に重きを置きすぎて、レミリア・萃香の格闘がおざなりになっているような印象を受けました。美鈴・勇儀の方は休み無しで戦っているというのに、美鈴が吹っ飛ばされる度に手を止めて解説役を担うレミリア・萃香組。少し興が殺がれました。

【五段階評価】
★★★☆☆(格闘が好きなら+1.5)

乱れ咲き  twin 氏

【作品集76】
【タイトル】乱れ咲き
【書いた人】twin 氏
【サイズ】107.46KB
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1241994557&log=76

【あらすじ】
 どこに居ても、何をしていても、幽々子は言い知れない喪失感を感じていた。自分は確かに何か、とても大切な何かを喪っている。そういう、焦燥感にも似た感覚を。
 ある日、彼女は立ち入った古い蔵で、数冊の古書に出会う――

【感想】
 紫と会う度、あの桜を見る度、何かが脳裏をよぎる。その答えを求めて、幽々子はその書を開きました。そしてそこには、彼女の想像を絶する真実がありました。
 全編を通して非常に格調高い、美しい比喩が散りばめられた文が並んでいます。読んでいると確かに疲れますが、一文一文を味わい尽くしたいものです。
 書を読んでいる幽々子の心中に触れられていないこと、作者様にとっては必要だったのかもしれませんが、花見のシーンがやや冗長に感じられたことが気になりました。また、書を読み始めてから話が終わるまでがやけに急ぎ足に感じました。
 しかし、文だけでも一見(一読?)の価値ありです。

【五段階評価】
★★★☆☆

スカーレットデビル  無在氏

【作品集73】
【タイトル】スカーレットデビル   【書いた人】無在 氏
【サイズ】307.22KB
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1239119535&log=73

【あらすじ】
 フランドールは、姉のレミリアの部屋へ向かっていた。優しい姉だったが、妹のドロワーズを盗むのはいただけない。
大方、頭にでも被っているのだろう。そう思いながらレミリアの部屋のドアを開けたフランドールを、彼女の
想像を絶する光景が待ち受けていた。
 部屋の中には、咲夜と美鈴、レミリア、そして、夥しい血痕と、一人の女性。後ろ手に縛られ、ぼろぼろに
なった女性を見下ろすレミリアは、フランが見たことも無い、冷徹な表情をしていた。
 その表情こそ、ふらんに500年間隠し続けた、『スカーレットデビル』の表の顔だった。

【感想】
 戦乱のなか、『スカーレットデビル』としてあることがどうしても必要だったレミリア。敵には恐れられ、
味方であるパチュリーや美鈴でさえも、人を殺すレミリアを知っていました。その中で一人だけ、姉として
在るレミリアしか知らない存在。それが、フランドールでした。彼女の存在は、きっとレミリアの支えになって
いたはずです。彼女の前でだけ『スカーレットデビル』は、『レミリア・スカーレット』で在れたのです。
 そのうち、紅魔館は幻想郷へ移住しました。その理想郷でスペルカードルールが制定されたとき、彼女たちは
本当の安息を手に入れたはずでした。その理想郷に突如として現れたハンターたち。彼女たちに最後の試練が
おとずれます。
 保護と庇護との関係にあった二人が、姉妹の関係になっていくさま。それは、どちらの成長だったのでしょうか。
歩み寄るというのも違う、『二人』の成長は、しかし、最悪の現実を再確認するということでもあります。

 基本的にフランの一人称で展開される物語。知らなかった姉の一面や、自分たちの宿命に直面した彼女の、
それらを必死に飲み込もうとするフランの年(見た目)相応の苦悩は、読むものの心を揺さぶります。

【五段階評価】
★★★★★

桜の下でいつまでも  桐生氏

【作品集74・75】
【タイトル】桜の下でいつまでも(上・中・下)   【書いた人】桐生 氏
【サイズ】計345.64KB
【URL】上:ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1240856312&log=74
    中:ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1240856826&log=74
    下:ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1240857806&log=75

【あらすじ】
 人里で、葬儀が行われていた。死んだのは、鈴という名の、七歳余りの少女だった。親が少し、ほんの少し目を
離した隙の出来事。風呂場で溺れ死んだのだ。
 通夜が終わり、その翌日。鈴の死体が、部屋から消えているのが、両親によって発見された。
「あの子は、天人になったのです!」と狂喜する母親、
「火車に連れ去られたんだ」と悲嘆にくれる父親。
消えた愛娘を積極的に探そうという気概は、彼らにはなかった。
 だが、その事件の後から、人里に妙な噂が流れ始める。それは、人魂が夜な夜な、神社の裏山に入っていく
というものだった。

【感想】
 妖怪の仕業か、はたまた人間が持ち去ったのか。謎が謎を呼ぶ展開に、スクロールが止まりませんでした。
 ジャンルとしてはミステリに当たるのでしょうか、よく作り込まれており、また、葬儀を担当した坊主の良寛
や、庭師の惣七などのオリキャラも非常に人間らしかったと思います。
 ミステリにネタバレは禁忌だと思うので、もう一言だけ。

 ラストシーンの救われっぷりは、最高でした。

【五段階評価】
★★★☆☆(ミステリが好きなら+1.5)

真夏の夜のリングドリーム  七々原白夜氏

【作品集75】
【タイトル】真夏の夜のリングドリーム   【書いた人】七々原白夜 氏
【サイズ】101.34KB
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1241162180&log=75

【あらすじ】
 八雲紫が、萃香の元に持ち込んできた古びたブラウン管とベータのビデオデッキ。
 そうして二人で、盃をかわしながらプロレスの試合を見ていたのが、すべての始まりだった。
                         (本文より)

 『幻想郷プロレスリング 夏のビックマッチ!』が開催されることと相成った。主催者は
幻想郷の賢者、八雲紫。人里近くの空き地に設営された巨大な会場で、今! 幻想郷最高の
エンターテイナーを決める闘いが、幕を開ける。

【感想】
 プロレスなんて「キン肉マン」でしか知らない僕ですので、作中に登場する技は全く分かりませんでした。
ですが、それは会場で観戦している霊夢も一緒。霊夢と試合を見ている魔理沙と霖之助や地の文が、懇切丁寧に
解説をしてくれるので、非常に楽しめました。
 トリである紫と萃香の対戦を除いて、少し描写が薄味だったようにも思えますが、その分は全て二人の対戦に
回されており、技の内容にも軽くではあるが触れられているなど、作者さんは本当にプロレスが好きなんだなあ
と感心しました。
 はじめは興味薄げだった霊夢が段々とのめりこんでいく様はとても微笑ましく、上で引用したシーンなどは
目頭が熱くなるほどの強烈な懐かしさを感じました。
 プロレスを知らない方も、読んでみて損はないはずです。

【五段階評価】
★★★★☆(プロレスが好きなら+1.0)

東方狂魔館 Completed  michisato氏

【作品集14】
【タイトル】東方狂魔館 Completed(前・後)   【書いた人】michisato 氏
【サイズ】計116.37KB
【URL】前:ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1116199041&log=14
    後:ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1116199365&log=14
【あらすじ】
 冥界に異変が起きていた。最近やってきた数人の霊が、「吸血鬼に殺された」と口を揃えて言うのだ。幽々子に
命じられた妖夢、天性の勘で異変に感づいていた霊夢、そして何故か知っていた魔理沙の三人はその異変を解決するため、
紅魔館へと向かう。

【感想】
 永遠亭直後のお話です。月の魔力によって、元から『陰』の気質しか持っていなかったレミリアの心は、さらに
『陰』の側に傾いてしまいました。すなわち、吸血鬼性の暴走。しかし、いくつかの異変を経て人間たちと触れ合う
ようになった彼女の理性は、吸血行動を否定します。
 紅魔館に乗り込んだ三人と、主人に従う住人たちのバトル。格好良いレミリアさんでした。

【五段階評価】
★★★★☆(弾幕無しのバトルものです。嫌いなら-1.0)

霧雨邸掃除大作戦!  東雲氏

【作品集23】

【タイトル】霧雨邸掃除大作戦!(一日目・二日目)   【書いた人】東雲 氏
【サイズ】計137.00KB
【URL】一日目:ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1135877454&log=23
    二日目:ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1135877648&log=23
【あらすじ】
 年明けの数日前。例年通りに大掃除も終えた霊夢がくつろいでいると、魔理沙が訪れた。「大掃除を手伝って欲しい」
との要請に話を詳しく聞くと、「物が増えすぎて生活できなくなった」とのことだった。自分で何とかしろと
突っぱねた霊夢だったがしつこく食い下がられ、結局、『霧雨邸ご招待・二泊三日 お土産(米五合 キノコ
詰め合わせ500g)』の報酬で大掃除を手伝うことになる。

【感想】
 随所にちりばめられたギャグが楽しい作品です。また、捨てたくない魔理沙と、魔法を知らないからか容赦なく
廃棄処分にしようとする霊夢の対比が上手で、思わず「あるある」と頷きたくなってしまいます。
 お泊まりすることで、親友の新しい一面を発見する霊夢の心情描写はとても微笑ましく感じました。
 最後の戦闘シーンについては、個人的には蛇足ではないかとも思うのですが、それまでの共同作業によって生まれた
信頼というものを、よく表現できていました。
 いくつかの伏線が後で驚きと共ににやにやさせてくれるのも、気が利いていて良いです。

【五段階評価】
★★★★☆

おぺれーしょん・かうんとだうん  日間氏

【作品集21・22・23・24】
【タイトル】おぺれーしょん・かうんとだうん (1・2・3・4・ぜろ)   【書いた人】日間 氏
【サイズ】計200.82KB
【URL】1:ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1130671436&log=21
    2:ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1133319320&log=22
    3:ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1135012322&log=23
    4:ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1137426001&log=24
   ぜろ:ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1137427222&log=24

【あらすじ】
 満月の夜。紅魔館の中庭に、ロケットがそびえ立っていた。レミリアの悲願である月旅行が、ついに叶おうと
していたのだ。しかし、その計画を邪魔しようとする勢力があった。事情で月から隠れなくてはならない、永遠亭
の面々だ。
 今、幻想郷始まって以来の大規模な空戦の火蓋が、湖の上空で切って落とされた。

【感想】
 永遠亭側には妖夢、紅魔館側には魔理沙が加わり、熱い戦いを繰り広げます。鈴仙、てゐ、永琳、輝夜、副隊長、
妖夢、レミリア、フラン、パチュリー、小悪魔、美鈴、咲夜、大妖精、チルノ、チェンバー4……これだけの
登場人物が、活き活きと動き回る様にはただただ圧倒されました。ネタバレになるのであんまりかけないんですが、
特に魔理沙と妖夢の一騎討ち。しかも、その結果があれだけ戦局を左右することになろうとは……!
 極限状態に置かれた登場人物たちの一瞬の判断。それが複雑に絡まりあい、誰にも予想できない結末へと収束して
いきます。
 普通ならただのモブキャラにしかならないような妖精メイドのうちの一体も、あれだけ丁寧に描写されれば、
愛着も湧くというものです。男前な魔理沙と共闘するチェンバー4の格好良いことといったら。今作品最萌の称号は
伊達じゃない!
 それに反して、非常に拍子抜けのオチが待ち構えています。個人的には、1~4での皆の頑張りが全て否定された
ような気持ちになって釈然としない思いを今でも感じていますが、まあ、\月の頭脳すげえ/と思っておく事にします。

【五段階評価】
★★★★★(戦争物が好きでないなら-0.5)

紅い日々  翔菜氏

【作品集24】
【タイトル】紅い日々(1・2・3)   【書いた人】翔菜 氏
【サイズ】計
【URL】1:ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1137537038&log=24
    2:ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1137537106&log=24
    3:ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1137537754&log=24
【あらすじ】
 倫敦に、一人の少女がいた。人間でありながら人間を殺すその少女は、自らを「ジャック・ザ・リッパー」と
呼んだ。まるで、己に言い聞かせるように。人を殺すのが当たり前だと、自分に言い聞かせるように。
 面白半分にその少女を襲ったレミリアは、目の前からその少女が忽然と姿を消したことをきっかけに彼女に
興味を持ち、館へと招く。どうやら時を操っているらしいその異能の研究をする間、その少女は館でメイドとして
働くことになる。

【感想】
 そうして数週間が経過した頃、館はハンターの集団に襲われます。戦いの中で、少女は人に乞われて他人を殺す
こと、人を守るために全力を尽くすことの素晴らしさを知っていきます。いままで人に厭われ続けた少女にとって
人に頼られるというのは、心地よく、また、命に代えても遂行すべきものでした。例え、頼みというのが人殺しで
あっても。

 詰め込みすぎとは言いませんが、咲夜の成長物語と呼ぶには、事件が余りにも大きすぎる気がします。その事件の
中で時間を操る能力が開化したとしても、それは事件の中核をなすキーではなく、事件の副産物になってしまって
います。だからこの話は、咲夜の成長物語と呼ぶよりも、レミリア・スカーレットが咲夜に出会うまでを描いた
過去話と捉えると、楽しく読めると思います。

【五段階評価】
★★★★☆