100kbレビュー(2)

Last-modified: 2010-07-14 (水) 12:29:33

真型・東方創想話

西行幽々夢(前・中・後)  Mya 氏

【作品集25】
【タイトル】西行幽々夢(前・中・後)
【書いた人】Mya 氏
【サイズ】計123.72KB
【URL】前:ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1138592865&log=25
    中:ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1138593061&log=25
    後:ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1138593669&log=25

【あらすじ】
 退魔師の家に生まれた幽々子はあるとき、近くの村へ仕事に行く。妖怪を殲滅した幽々子だったが、彼女はそこで、異常な光景を目の当たりにする。

【感想】
 幽々子達の周囲で起こる事件に必然性が欠けているように思われます。作中で説明されていないだけの話かも知れませんが、紫が幽々子に興味を持ったきっかけ、妖怪が村を襲うのに戦術を用いた理由、そして肝心要の、西行妖が目覚めた理由などが不足しているように思いました。つまり、物語を成立させる為の軸のようなものが無いということです。物事に因果関係がないと言いますか、つまりはそういうことです。
 後は、折角幽々子の軽妙な一人称で始まるのにも関わらず、中~終盤にかけてがほとんど妖忌の視点で進行する事、また、合間に挿入される西行妖の独白、これも単体で見れば雰囲気があって良かったのに、本編と別行動を取ってしまっている事などが気になりました。
 戦闘描写の緻密さなど見所もあっただけに、あと80kbくらい費やしていればもっと良い作品になったのではないかと、少し勿体なく思いました。

【五段階評価】
★★☆☆☆(2.5。冥界組が好きなら+1.5、戦闘シーンが読みたいなら+1.0)

罪の花(1・2・3・4・5)  四条あや 氏

【作品集25】
【タイトル】罪の花(1・2・3・4・5)
【書いた人】四条あや 氏
【サイズ】計101.53KB
【URL】1:ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1139260491&log=25
    2:ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1139260498&log=25
    3:ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1139260505&log=25
    4:ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1139260510&log=25
    5:ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1139260513&log=25

【あらすじ】
 幻想郷に花が咲き乱れたときのこと。師匠にてゐを連れて来るよう命じられた鈴仙は、竹林へと繰り出して行く。ようやくのことでてゐを見つけた彼女は、怒りに任せててゐを弾幕で攻撃する。それは、いつも通りの他愛無い戯れのはずだった。しかし、追い詰められたてゐの不用意な一言が、鈴仙の心を粉々にしてしまう。

「や、やっぱり嘘吐きだよ鈴仙は! そんな風にして――」

「――遠い仲間を裏切ったの?」

【感想】
 直視すると心が壊れてしまうため、無意識で思い出すことを止めていた鈴仙でしたが、今回強制的に思い出すにあたり、やっぱり心がぶっ壊れそうになりました。自分の心が選んだ自衛の方法は、心が一番強靭だった頃に戻すこと。『鈴仙』は姿を消し、『レイセン』が戻ってくる。そしてレイセンは、自分に害を与えようとしたてゐに襲い掛かって……
 そんなこんなで、地球に来て初めて自分の罪を見つめる機会が与えられたわけです。過去の罪と、そして、今も犯し続けている罪と……
 罪を認めることが、贖うことの第一歩。

「私の罪は、赦されるのでしょうか?」

 レイセンが鈴仙になるまでの物語。SSを読んだら色々考え込みたい人にはお勧めです。

【五段階評価】
★★★★☆

月まで届け、秋水の炎(1・2・3・4・5・6・7・最終章)  月影蓮哉 氏

【作品集25】

【タイトル】月まで届け、秋水の炎(1・2・3・4・5・6・7・最終章)
【書いた人】月影蓮哉 氏

【サイズ】計157.93K
【URL】1~3:ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1139403564&log=25
    4~6:ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1139403997&log=25
      7:ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1139404113&log=25
    最終章:ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1139404824&log=25
【あらすじ】
 第百二十二期の夏。幻想郷に、一機の飛行機が墜落した。慧音によると、その機体は「秋水」と呼ばれる、日本で作られた、ロケットエンジン搭載型局地戦闘機だった。奇跡的に一命を取り留めたパイロットによると、操縦していて突然迷い込んだとのことだった。

【感想】
 機体を紅魔館で修理する間、パイロットは慧音の家で静養することになりました。人間ですし。でもあれですね、ロケットエンジンってのは夢があって。理論上は月に行くことも出来る代物を飛行機に付ける日本軍は優秀なのか何なのか。軍事には明るくない僕などにはオーバーキル気味に思えて仕方ないですが。月に行くという野望のために飛行機の修理を引き受けた紅魔館組はすがすがしいほどにまっすぐで良いです。上記の薀蓄は大体作中の説明で構成されています。しかしそのために、肝心のストーリーがおろそかになっているという印象を受けました。話の筋はきちんと出来ていて、その通りに書けているように見えるのに、肉付けする部分を間違っているような。もっとこう、周囲の人物、特に慧音の心情とか。せめて恋仲になる過程はもう少し丁寧に書かないと、他のカップルとの差別化が出来ません。

【五段階評価】
★★☆☆☆(2.5。軍事が好きなら+1.0)

『東方朱月譚』シリーズ(第一~七章)  Zug-Guy 氏

【作品集25・26】

【タイトル】『東方朱月譚』シリーズ(第一~七章)
【書いた人】Zug-Guy 氏
【サイズ】計185.42KB
【URL】第一章:ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1140438145&log=25
    第二章:ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1140909750&log=26
    第三章:ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1141575597&log=26
    第四章:ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1141575748&log=26
    第五章:ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1141575901&log=26
    第六章:ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1141576045&log=26
    最終章:ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1141576229&log=26
【あらすじ】
 富士の樹海を駆けていた郁未がふと気づくと、周囲の空気が変質していた。血腥い、どろどろした異様な空間。自分が何処にいるのかも分からないいまま探索を続けていると、「あら、人間発見。」正面の頭上から、のんきな声が届いた。

【感想】
 MOONのキャラクターである郁未( ttp://ja.wikipedia.org/wiki/MOON. )が幻想郷で冒険を繰り広げる話です。文章のレベルは決して低くなかったのですが、如何せん、僕にMOONの知識がない。もともとクロスオーバーとはそういうものなのかもしれませんが、キャラクターの人格を捉えられないまま終わってしまったように感じました。特に、主題が。郁未と月と月の民との関連も分からないまま、郁未が永琳と戦うシーンに突入したときのこの疎外感。文章が小粋で読んでいて楽しかっただけに、惜しい。まあ、それは受け手の問題なのでここに書いても仕方ないですが。
 また、郁未が特に魔理沙と親密な関係になっているような描写がラストシーンで見られましたが、そこにいたる過程、また、それが二人の共通認識になっている理由を詳しく書いて欲しいとも思いました。

【五段階評価】
★★☆☆☆(2.5。MOONを知っているなら+0.5)

=Marvelous Life=  遼魔 氏

【作品集26】

【タイトル】=Marvelous Life=(前・中・後)
【書いた人】遼魔 氏
【サイズ】計160.01KB
【URL】前編:ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1141594043&log=26
    中編:ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1141594106&log=26
    後編:ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1141594304&log=26

【あらすじ】
 何十年も前のこと。年を取らないことで恐れられ、疎まれ、疎外され、一人放浪していた妹紅は人里の守護者をしていた慧音に出会い、竹林の奥深くで二人で暮らしていた。
 朝になれば慧音は人里へ、妹紅は洞窟で一人でお留守番。ある日のこと、ついに我慢できなくなった妹紅は、人里へとついて行ってしまう。

【感想】
 妹紅が蓬莱人であるという設定が、冒頭でしつこいほどに描写されていたわりにはあまり活かされていないように感じました。また、オリキャラである少年と慧音の恋物語であるはずが、妹紅と子供たちの交流や、妖怪との戦闘などに出番を奪われ、主題が曖昧になっている感も否めません。

【五段階評価】
★☆☆☆☆(1.5。オリキャラとの恋愛物につき、嫌いな人にはお勧めしません。でも、間違っても作者さんにクズとか言わないように。)

小児用ナイトメア  冬扇 氏

【作品集32】

【タイトル】小児用ナイトメア
【書いた人】冬扇 氏
【サイズ】計116.49KB
【URL】前:ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1156455598&log=32
    後:ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1156463330&log=32

【あらすじ】
 紅魔館で盛大な宴が催されていた。それもそのはず、今日はハロウィン。
――悪魔の日だ。

【感想】
 宴も一段落し、メインイベントが幕を開けます。六人の住人が、設けられた六つのチェックポイントを回り収穫を競う、血沸き肉踊る闘争の始まりです。
「トリック・オア・トリート!」の合言葉と共に幻想郷中を駆け巡る悪魔の館の住人たち。笑いあり、笑いありの大騒ぎを絶妙な筆致で描くギャグ作品です。
 しかし、それだけでなく、さりげなく描かれる人と人とのつながりと暖かさこそが、この作品の芯。僕はこの小悪魔のエピソードが好きで好きで……。
 時間を忘れて読んでしまいました。

【五段階評価】
★★★★☆(4.5。ギャグが好きなら+0.5)

最強の氷精  翔鶴 氏

【作品集78】

【タイトル】最強の氷精
【書いた人】翔鶴 氏
【サイズ】116.00KB
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1244257716&log=78

【あらすじ】
 去りし日の紅魔館。働かない妖精メイドの罰にナイフやらを用いていることを聞きつけたチルノが、紅魔館へ闘いを仕掛けた。「たかが妖精」そう甘く見ていたレミリアだったが、部屋を一歩出たとたん、そこには氷付けにされた住人たちの姿があった。
 スペルカードルールが導入される以前の話。最強の怪異である吸血鬼と、最弱の存在妖精の壮絶な戦闘が幕を開ける。

【感想】
 レミリア視点、つまり、絶対的強者の視点で描かれる訳ですから、何が起こるのかは言わずもがなでしょうが、とりあえずはネタバレ無しの方向で。でもそうすると書くことがなくなってしまうので、終わります。
 二転三転する熱い展開から目が離せなくなる良作です。とだけ。

【五段階評価】
★★★☆☆(3.5。肉体的に痛い描写が苦手なら-1.0、バトルが好きなら+1.5)

屋台マックス  翔鶴 氏

【作品集79】

【タイトル】屋台マックス
【書いた人】翔鶴 氏
【サイズ】123.03KB
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1245168781&log=79

【あらすじ】
 「屋台」が流行し、多くの人妖が屋台を活用する幻想郷。
 あるとき、ミスティアは酔客同士の喧嘩に巻き込まれ、屋台を壊されてしまう。にとりの工場まで修理してもらいに行くが、中古の屋台を買うのと同じ程の値段がすると告げられる。途方にくれるミスティアを見かねて、にとりはミスティアにある噂を話す。
 それによると、ある洞窟に「伝説の屋台」があるという……

【感想】
 いや、面白かったです。クロスオーバーに特有の違和感、疎外感を感じさせない親切な構成に、随所に仕込まれた小ネタ。ヤマらしいヤマもオチらしいオチも無いといえば無いですが、続きが気になる構成力が素晴らしい。ぜひ続きも読みたいものです。

【五段階評価】
★★★★☆

ねえ紫、それってもしかして単にアンタが  アルサ 氏

【作品集79】

【タイトル】ねえ紫、それってもしかして単にアンタが
【書いた人】アルサ 氏
【サイズ】151.09KB
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1245884618&log=79

【あらすじ】
 八雲紫はスキマにつまっていた。

【感想】
 霊夢と、神社を訪れた魔理沙、下半身がいつまでたっても出掛けないのを不審に思った藍の三人で、紫を助け出そうとします。難航する救出作業の中であぶりだされる、大妖怪の意外な脆さ。自分に解けない事などあるはずがなかったが為の恐怖は、紫を攻撃的にし、その矛先はついに魔理沙に向いて……

 場の流れ、空気というものを弁えている(としか思えない)四人が織り成すコントは抱腹絶倒物です。しかしそれだけでなく、魔理沙の人間であるが為の、力を持つ妖怪に対するコンプレックスなど考えさせる要素も十分あり、楽しめる作品です。

【五段階評価】
★★★★☆(4.0。ギャグが好きなら+1.0)

青空の星  聾唖の空 氏

【作品集83】
【タイトル】青空の星
【書いた人】聾唖の空 氏
【サイズ】121.10KB
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1249826767&log=83

【あらすじ】
「好きだ。付き合ってくれ」
「答えは……ノーよ」
69回目の告白、69回目の失恋。
69回繰り返された儀式。

【感想】
 その儀式のきっかけは、ある事故でした。魔理沙のミスをカバーしようとしたアリスは、目に大怪我をしてしまいました。左目を縦に裂くように残った傷が、二人の間に常に横たわる大きな溝になってしまったのです。物事が上手くいかないときには自分を責めてしまうのも仕方ないことですが、魔理沙の自己分析には胸が苦しくなりました。告白して断られるのは自分の所業のせいかだろうか? 魔理沙の葛藤はそのうち、自分は本当にアリスが好きなんだろうか?そんな疑問に変わっていきます。
 周囲の人妖たちの暖かく見守る姿勢にも好感が持てる、良い作品になっていると思います。

【五段階評価】
★★★☆☆(マリアリが好きなら+1.5、世界は恋する男女を中心に回っているのだよ的な思想の方も+0.5)

幻想の終わるとき  Jiyu 氏

【作品集83】

【タイトル】幻想の終わるとき
【書いた人】Jiyu 氏
【サイズ】218.82KB
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1250318694&log=83

【あらすじ】
 蓮子とメリーは、とあるレストランでもう一人の部員を待っていた。名を、霧雨魔理沙。小さな小さな超能力が使えるだけの、普通の大学生。今日もまた、秘封倶楽部の活動が始まる。

【感想】
 Jiyu氏の幻想郷は、厳密かつ不安定な認識の上に成り立っているような印象を受けます。認識する者があって初めて、それは現実に存在できる、というような。もちろん、現実にあるもの(質量を持つもの)は観測者の有無に関わらず存在しますが、実体がないものについてはどうでしょうか。実体がないことは、観測者の認識に全てが委ねられるということ。そして、彼らが幻想の里で生きるためには、「幻想」であると「認識」されなくてはならない。現実に存在することを信じた瞬間に消滅するような、不安定な世界。
 まさに、夢の世界なのだと思います。

 何言ってるかわからねーと思うが俺も分からん。

 紫の発表の後、きっとみんなパニックになったんだろうな、「まだ死にたくない」と泣き叫んだり、回避する方法を躍起になって探したり……
 その意味で、この作品に書かれているのは「終わり」ではなく、「終わったあと」であり、「始まり」であるなんてことを考えながら読んでました。

【五段階評価】
★★★★☆(Jiyuさんの幻想郷が好きなら+1.0)

幽香と東方地霊殿  暇人KZ 氏

【作品集86】

【タイトル】幽香と東方地霊殿
【書いた人】暇人KZ 氏
【サイズ】139.20KB
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1252733364&log=86

【あらすじ】
 突如噴出した熱湯は、幽香の向日葵畑に甚大な被害をもたらした。

 さて、誰を殺そうか。

 最高の笑顔で物騒なことを考えている幽香の前に、紫が現れた。犯人が地底にいることを知った幽香は単身、地底を幻想郷から抹消すべく乗り込んでいく。

【感想】
「最強」のイメージが強い幽香さんですが、二次創作では意外と良い勝負をするんです。自身の能力を存分に発揮し、並み居る強豪を自力と経験、そして知恵で倒していく様はもう格好良いの一言です。
 また、あんまり言うとあれですが、紫も意外と熱いところを見せてくれ、僕はもう満足です。

 ただ、ラストシーンは賛否両論が別れるかもしれません。個人的には蛇足と思える描写で、嫌いな人はとことん気分を害する可能性もあります。

【五段階評価】
★★★☆☆(3.5。戦闘描写が好きなら+0.5、弾幕による戦闘が好きなら+1.0、心底正義感に溢れる人なら-0.5)

花嫁と武者  ネコ輔 氏

【作品集86】

【タイトル】花嫁と武者
【書いた人】ネコ輔 氏
【サイズ】136.15KB
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1252858650&log=86

【あらすじ】
 山の中腹付近に、鋭い掛け声が響き渡った。そこでは、二つの人影が打ち合っていた。片や、半人半霊の庭師。片や、紅い長髪の紅魔館の門番。
 美鈴は幽々子に酒で釣られたレミリアの命令で、妖夢に稽古を付けていたのだ。

【感想】
 タグにもありますが、『真面目な人って息抜きが下手だよね』という話です。いつも気を張り続けていると、心の休め方を忘れてしまうとでも言いますか、もはや「怖くて立ち止まれない」みたいな事態になることも。
 で、たった今そんな状態に陥っている妖夢ですが、気づいてないのは本人だけ。美鈴は妖夢にそれを、その楽しさを教えるべく、色々なイベントを用意します。
 途中参加の文も加えて三人の息抜き。特に事件が起こるわけではありませんでしたが、読んだ後、なんとなく救われたような気分になりました。
 美しい大自然の描写。普段忙しくて息抜きが出来ない人も、読めば癒されることがあるかもしれません。まあ、全てをほっぽり出して山に篭りたくなっても責任は持ちませんが。
 ……もしかしたら幽々子様、初めからこれが目的で前作の行動を取ったのか?

【五段階評価】
★★★☆☆(3.5。アウトドアが好きなら+1.5)

わたしは、ゆっくりになりたい  じんのじ 氏

【作品集87】

【タイトル】わたしは、ゆっくりになりたい
【書いた人】じんのじ 氏
【サイズ】157.50KB
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1253624762&log=87

【あらすじ】
 どこかにある、もう一つの幻想郷。そこの住人たちは、みな「ゆっくり」過ごしていた。そんな折、ふと紫が漏らした一言が、れいむを動かした。
『あちらさんは皆、忙しなくしてたっけ』
──何てこと。早く、早くもう一人の私をゆっくりさせてあげないと!

【感想】
 僕は、他人には他人の価値観があることを想像できず、自分の考えこそが世界の心理だと思い込んでいる人間が嫌いです。文字になっていようと、絵になっていようと、映像になっていようと、そういう人物が出てくると無性に荒んだ気分になります。そんな人間の書いたレビューですので、どうか生暖かくスルーしてやって下さい。

 「ゆかり」「紫」、「れいむ」「霊夢」の二つの表記があることが、二つの幻想郷が存在することを読者に納得させるための舞台装置として良く動作していました。また、「何か」が起こったことを察知した幻想郷の住民たちの行動にも、説得力がありました。得体の知れないものを拾った霊夢の焦燥、紫に「霊夢そっくり」と言われ、口では否定しつつも内心はそう感じる部分があったからこそ家に匿ったという内面を上手く表現できていると感じました。疎ましく思いながらも、やっぱり自分に似ているとどこかで思っているからついつい世話を焼いてしまう。そういう複雑な心の動きが読者にも伝わる文章力に感心しました。
 出会い→反目→別離→仲直りといういわば王道でありながら、霊夢の内面を丁寧に描写することで説得力に溢れる展開になっていて良いとも思います。

【五段階評価】
★★☆☆☆(しつこいようですが、主観で付けました)

東方ヤングガン~おぜうが現代入り~  七誌紗難 氏

【作品集98】
【タイトル】東方ヤングガン~おぜうが現代入り~
【書いた人】七誌紗難 氏
【サイズ】139.10KB
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1264716714&log=98

【あらすじ】
 紅霧異変を映姫に咎められ、その命令で紫に”別の世界”へと飛ばされてしまったレミリアは、そこで別の世界の咲夜たちと出会う。彼女たちはその世界のある非合法組織で、暗殺者として働いていた。レミリアは彼女たちの仕事中、すなわちヤクザとのドンパチの真っ最中に飛ばされてきたため、そのまま組織に匿われることになる。
 視力が良いだけの普通の少女となったレミリア。彼女は無事に、元の世界、幻想郷へ戻ることが出来るのか?

【感想】
 タイトルで避けた方もいるかも知れませんが、それは勿体ない。設定は確かにぶっ飛んでるほうですが、それを上手く抑えつける構成と配役の妙によって、素晴らしい活劇、ドラマに仕上がっています。
 また、キャラクター一人一人の背景や人格も細かく創りこまれており、原作設定と照らし合わせても違和感の無い程でした。そして、物語は最高のラストへ。
 戦闘シーンがおざなりな印象を受けましたが、戦闘における個々の動きはきちんと再現されており、良かったです。
 未読の方は、是非読んでみることをお勧めします。

【五段階評価】
★★★★★(東方学園モノ同人誌とかが嫌いなら-2.0)

無人島だよ早苗さん!  イムス 氏

【作品集99】

【タイトル】無人島だよ早苗さん!
【書いた人】イムス 氏
【サイズ】173.45KB
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1265407335&log=99

【あらすじ】
ある朝、目が覚めたら砂浜だった。
        (本文冒頭より)

 突如として無人島に来てしまった早苗。その島に居たのは、咲夜、霊夢、魔理沙、妹紅、妖夢……。全員が『人間』だった。
 これは十五少年漂流記のような展開が待ち受けているはずという早苗の期待とは裏腹に、皆てんでばらばらに行動を起こす。その中でただ一人取り残された、我らが現代っ子早苗。サバイバル経験なんてあるはずもなく、途方にくれる早苗だったが……

【感想】
 何だかんだで他の人間たちにすがって、何とか状況に適応し始めた早苗。妹紅と全裸で水浴びをしたり、葉っぱビキニで闊歩したり。しかもそれを素晴らしい筆力で描写してくれるものだから、もう最高でした。
 しかし、それだけの作品だと思ってかかったら、どうしようもないトラウマを植えつけられる羽目になります。
人間たちに襲い掛かる、謎の怪物。一人ずつ犠牲になっていく過程を、上記の素晴らしい筆力を駆使して伝えてくれます。プレデターとかエイリアンとかが好きなら、読んで損は無いです。
 オチについてですが、僕個人としては腹が立ってしょうがなかったです。お前ら何様だ、と。

……あれ? 阿求は?

【五段階評価】
★★★☆☆(上記のような映画が好きなら+1.5、嫌いなら-1.0)

かくて賽は組み上げられた  Spheniscidae 氏

【作品集88】

【タイトル】かくて賽は組み上げられた
【書いた人】Spheniscidae 氏
【サイズ】
【URL】ttp://coolier.sytes.net:8080/sosowa/ssw_l/?mode=read&key=1254667049&log=88

【あらすじ】
 理香子は悩んでいた。どうしても解決策が見つからない問題が、研究の過程で発見されたのだ。行き詰った理香子は手がかりを求めて、幻想郷を散策することにした。

【感想】
 科学より魔法、論理より夢を選んだ幻想郷で、ただ一人科学の研究をする理香子。魔術の分野に類稀なる才を持つ彼女がこうも科学に傾倒するのには、ある理由がありました。それは、持てる者ならではの考え方なのでしょうか、持たざるものからはともすれば、贅沢、と思われるほどの崇高な目標。
 自分の信じるものに向けて邁進する理香子、そして、それぞれが個々の「芯」を持ちながら、決して他人を、人の考え方を否定することなく過ごす住人たち。

 今我々が最も必要としているのは、こういう柔軟さではないか。そんなことを考えさせられる作品でした。

――今日も幻想郷は通常運行。
穏やかに流れる景色の中で貴方もきっと、いつの間にか失ってしまった「何か」を見つけることが出来るでしょう。

【五段階評価】
★★★☆☆(3.5。普段の幻想郷が好きなら+0.5、現代社会に不満があるなら+1.0)