作品集201

Last-modified: 2015-04-19 (日) 12:48:20
ライフ・リーヴァ,ライフ・シェイパ  Cabernet氏

【作品集】201
【タイトル】ライフ・リーヴァ,ライフ・シェイパ
【書いた人】Cabernet氏
【あらすじ】
人里は飢饉で荒れ、妖怪達は互いに争っている、今の形になる前の幻想郷。
ふとした気まぐれか、ミスティアが孤児になってしまった子供を引き取った。
厳しい世界は、食べるもの・食べられるものとしての妖怪と人の違いと、
それでも互いに関わり合って少しずつ変わっていく姿を映し出していく。
【感想】
人間と妖怪の立場の違いを真っ直ぐに見つめたシリアスな作品。
ミスティア達妖怪や人を守る立場の慧音、人から逸脱した妹紅、人里の名もない少女、
まだ幻想郷に来る前の紅魔館の人外の中で生きようとする咲夜。
様々なキャラクターがそれぞれの立場を持って描かれているだけでなく、
互いに関わり合って少しずつ影響を受けていく様子の一場面が、繊細な心理描写で映し出されている。

テーマから想像できる通り雰囲気は暗く、静かなトーンで物語が進んでいく。
丁寧な描写で登場人物それぞれを描き出すことが主眼の作品で、
誤解を恐れないで言えば、楽しみ方の方向性としてはいわゆる「文学的な」ものと言えるだろう。
(口に合わない人の視点ならば、「文学を気取った」系統と言えばいいだろうか)
SSに純粋な娯楽を求める人には合わないかも知れないけれど、
じっくりと描写を味わうことに楽しみを見出せる人には、是非読んでもらいたい作品。

この作品の本当のクライマックスはラストシーン、現在の幻想郷を描く場面だと思う。
食べるものと食べられるものの関係でありながら、人間と妖怪が住み分けながらも共存している、
考えてみれば不自然で矛盾を孕んだ幻想郷だが、それでも今の関係になって良かった、という気分にさせてくれる。
どんよりと曇った空に晴れ間を見たような感想を自然に抱けてしまうのが見事。

幻想郷に暮らしている人妖も、今の姿だけを見ればそれぞれ不可思議な生き方をしているが、
(作中にある通り、ミスティアは妖怪なのに人間にも妖怪にも食べられる屋台を出していて、
咲夜は人間なのに悪魔の館で人肉や血を調理している、といったように)
それぞれのキャラクターがそれぞれの歴史を経た上でそうなっているのだ、
ということを納得してしまうような、そんな設定の掘り下げと肉付けが行われている。
(その歴史が全部作中で描かれているわけではなく、主な視点はミスティアに置かれているけれど)

粗を探すならば、少し引っかかってしまいそうな点がいくつか感じられるかも知れない。例えば二つ、
・オリキャラとして火葬場の少女が出てくる。
Cabernet氏の最近の作品には(同一人物かどうかはともかく)続けてできているキャラで、
この物語に必要な「弱い人間」側の視点を提供するには欠かせないのは確かなのだけれど、
特に説明無しに出てくるので驚くかも知れない。
・テーマとしては適切だけれど、紅魔館が本筋から少し浮いているように感じるかも。
それでもラストシーンを見ると、全てが現在の姿に繋がっていることを実感させてくれる。

夕焼けと、鮭と酒  スバル氏

(自薦)
【作品集】201
【タイトル】夕焼けと、鮭と酒
【書いた人】スバル氏
【URL】ttp://coolier.sytes.net/sosowa/ssw_l/201/1415817212
【宣伝】
霊夢さんが焼鮭で一杯やるお話。
台詞はたったの4つだけ。地の文での丁寧な描写を心がけて書きました。
自分なりの全力、かつ満足のいく出来に仕上がっております。楽しく書くことが出来ました。
お時間あったらぜひご一読ください。

『幻想郷閉鎖~タオル編~』  逸勢氏

作品集201
『幻想郷閉鎖~タオル編~』 作:逸勢氏
久々の投稿だけど昔より良くなってる。前から軽妙でコミカルな文章の名手だったが更に良くなった。
こういう硬いでもない軟いでもない文章でリズム良く書くのは難しい。難しさが読み手には伝わりにくいのがもったいない
これ東方でやる必要あるの? あるだろう。幻想郷しか知らない魔理沙だからこそこの観察がある。
加えて読者の見慣れた世界を別の視点から見せることで異界譚と風刺譚をあっさりと組み合わせたプロットも優。
この作品に限らず幻想郷住人が現代世界を覗く系の話には鉱脈が眠っている気がする。
文章プロットともに派手じゃないが渋い上手さにあふれている

すきまンション  烏口泣鳴氏

【作品集】201
【タイトル】すきまンション   【書いた人】烏口泣鳴氏
【URL】ttp://coolier.dip.jp/sosowa/ssw_l/201/1414228520
【あらすじ&感想】
上の階からの足音がうるさくてしょうがない。
こんなときこそ蓮子としゃべって愚痴を言って気を紛らわせたいのに蓮子は電話に出てくれない。
だいたいどこかに出かけるなんて聞いてなかったのに。
まあいい、探しに行こう。外で会って一緒に食事をしよう。
閉まっていくエレベーターのドアをぼんやり見ていると、金髪の女性は左から現れ、右へと消えた。

だいぶ酔っている。メリーに付き合って日付が変わるまで飲んでいたから当然だ。
鍵を開けようとドアのノブに触れると鍵がかかっていかなかった。
私とメリーが住んでいる部屋である筈なのに、明らかに人が住めない量の埃が舞い、生活等感じさせない臭いに満ちている。
私達の部屋の玄関には、メリーの作った手作り表札が掛かっている。そしてこの部屋にはその表札が掛かっていない。
今度は部屋の番号を見ると丁度私達の真上の部屋だった。部屋を間違えただけだったか。

物には思い出が宿る。

 

秘封倶楽部の住んでいた部屋を中心に進んでいくホラー物
ちらちらと映る八雲紫の姿からどんなことが起こっても不思議じゃないという気持ちにさせてくれるも、
紫は話の筋にはほとんど絡まず恐ろしいなにかの存在を感じさせてくれる
前半の部分でこれから起こることへの予兆をしっかり感じさせ不安をあおり、
後半でキャラが冷静になっていくに合わせて期待通りの恐怖をしっかりと感じさせてくれた
またこの作者らしい展開と恐怖もあり短いながらもよくできたホラーだった