シナリオ/色なき世界の見る夢のイベント
- 古明地さとり
- 「あ、ぁ……こ、いし?」
- 古明地こいし
- 「――遊びましょう、ラブコール」
「あなたの心に『アイ』を一杯あげる」
- ニャルラトホテプ
- 「実際、彼女は何に焦がれていたのかな? ここではないどこかの彼か、それとも恋に恋していたのか?」
「違う、何もかもが違うとも。心を閉ざしたものは、何一つ感じることはない! 言葉なく声なき、惨めなる昏く拉げたサブタレイニアン・ローズ!!」
「いや、妖怪である以上、そして、結末を思うなら――暴力に焦がれていたのだろう、恋い焦がれるような殺戮を、実行するための標的に!」
「――彼女を救って何になる、次の犠牲者が生まれるだけだ。それに――彼女は、既に戻れないほどの罪を重ねているというのに! 無意識を救う無意味を為すのか!?」
- ???
- 「開いた目の先には、先がある。戻り道なんて、どこにもない」
「報いも、罰も、受け入れる。もしかして、隣に誰もいない明日が待ってても」
「――また目を閉じたら、昔はあった、たしかにいた、大切な人達との思い出だって見えなくなるんだから」
最高の「ラブ・コール」を~トラジディ・ラブコール浄化戦
エスカ-ゴールドソーサーを支配するトラジディ、ラブコールの攻略解説。
攻略手順
- ラブコールはエスカ-ゴールドソーサーの各所を彷徨しており、こちらの姿を捉えるとゆっくり接近し、一定の距離に入った途端凄まじい勢いで接触してくる。
この行動ルーチンがプレイヤーの心臓にダイレクトアタックを与えてくる。ラブコールは至近距離=襲い掛かる距離まで近づかないと姿を知覚できないからだ。
幸い、ハンツマンが活動している場合はハンツマンがいるエリアには出現してこない。その場合はハンツマンの狙撃に逃げながら探索する羽目になるのだが。 - ハンツマンとの攻防が「だるまさんが転んだをしながらのかくれんぼ」なら、ラブコールとの戦いは「見えない鬼との一方的な鬼ごっこ」である。
- トラジディを本当の意味で倒すには、その正体と晴らすべき無念を探る必要があるのだが……ラブコールは遭遇さえすればすぐにわかる。
返り血に塗れて、第三の瞳から血涙を垂れ流していることさえ除けば、古明地こいしそのままの姿をしているためである。
この時、さとりがPTにいるとショックのあまりに複数の状態異常を受けて行動不能になってしまう。精神スキルがどれだけ高くても「怯み」だけはレジストできない。
くわえて、ラブコールの調査に関しては動揺のあまり関与できなくなってしまう*1。
ただし「ラブコール調査任務」の進捗にはさとりかこいしを加えてラブコールと戦闘する必要がある。
……姉妹に辛い思いをどうしてもさせてしまう。涙を呑もう。 - 「ラブコール調査任務」はラブコール自身の調査と、彼女から抜け落ちた「心」を集める2段階に分かれている。
ラブコール自身の調査はさとり、こいし、神子のいずれかを入れて戦闘を行なえばよい。さとりに関しては前述の通り。
戦闘を終え、ラブコールを撃退すると彼女から「心(欲)」が抜け落ちており――エスカ-ゴールドソーサーのあちこちからこいしのか細い悲鳴のようなものが聞こえることがわかる。
その後、エスカ-ゴールドソーサーの各所で破片となって散らばった「ラブコールの心」を探すことになる。
……ラブコールとのドッキリ系鬼ごっこにつき合いながら、である。加えて「解放」していないならハンツマンの狙撃の魔手を潜らねばならない。
エスカ-ゴールドソーサーの空気も相まって下手なホラーゲーム顔負けと大不好評。
ちなみにてゐを入れたPTをエスカ-ゴールドソーサーに滞在させた状態で違うエリアへ移動すると、てゐたちはそのエリアにある「心」をひとりでに回収してしまう。
このため「本隊がエリアを探索する→てゐ入りPTをエリア移動→次のエリアを探索と同時にてゐ入りPTを別のエリアに移動させる」を繰り返せば「心」集めはあっという間。幸運の白兎は伊達ではない。
- ラブコールの「心」の破片を全て集めると、一旦エスカ-博麗神社への帰還を促されるので戻ると彼女の心を介して「彼女に何が起きたかわかる」。
「ラブコール」――最悪の結末を辿った古明地こいしの独白のかたちで綴られるそれは出会いの記憶。
ぼやけたフィルムのように幽かな記憶の中、そのひとだけは鮮烈に色づいていた。
いつものように話しかける"私"。驚くあなた。
なあんにも考えていない何時もの日常のかたすみに、"あなた"をみつけるたび
私は、声をかけて "あなた"も喜んでくれて
それで それで それで ね
押さえつけられるココロの下から、はしゃぐように紡がれる歓び。
"彼"から少しずつ教えてもらう、『人』らしさ。
それを知るたび"彼女"の閉じかけた瞳、その瞼が少しずつ震える。
教えてくれるアナタに、私のことを教えたい。
もっと知ってもらいたくて、"彼女"は"彼"に自分の過去を語った。
――そして、その日から彼は心を開きかけた"彼女"を遠ざけた。
何故だろう、と薄っすら開きかけた心が"彼女"を燻る。
それを知りたくて、彼女は行動を起こした。
そして、その人の隣に自分ではない女性の姿をみて。
………
……
…
ぐちゃぐちゃになって読めなくなった心を前に、こいしは努めて冷静に告げる。
- 古明地こいし
- 「あの時……私が私のことを教えたのは……」
「私がその時には、もう、"お兄さん"のことが好きだったから、なのね」
――無意識を操る力は、覚の読心能力を制御することができる。
そして、読み取るそれが自分の「心」でもあるからこそ、こいしはそれを真正面から見つめ続けた。
- 古明地さとり
- 「こいし……」
- 古明地こいし
- 「心が閉じかけで未完成なのに……悩んで、苦しんで」
「そっか……壊れちゃったんだね、私」
- 「ラブコール調査任務」を達成後、エスカ-ゴールドソーサーの中央広場にラブコールが佇むようになる。
こいしをPTに入れ、話しかけることで戦闘になる。
また、調査任務を経てさとりも気持ちを振り絞り、ラブコールとの戦闘に参加してくれる。
ラブコールは、手持ち無沙汰に立っていた。
そしてあなたたちを見つけて、にんまりと笑いながら手を広げた。
- ラブコール
- 「♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪」
最早声にもならない、輪唱めいた童女の笑い声の洪水。
それを呼び水に、広間は暴走する無意識の狂乱に包まれた。
自分の帽子の鍔を少しだけ下ろすと――こいしは、ゆったりと歩み寄って笑いかける。
- 古明地こいし
- 「ええ、もちろん」
- ラブコール
- 「♪♪♪♪♪♪♪♪♪??」
差し出したのは、ラブコールが捨てた「心」。
それは音を立てず、血涙を垂れ流すラブコールの第三の瞳に吸い込まれると……
――ラブコールその人の見開かれた瞳から、泪がとめどなく溢れた。
- ラブコール
- 「……――♪♪♪♪♪♪♪♪♪」
泪を流しながら、裂けんばかりに笑みを深くするラブコールに、こいしは手を差し伸べた。
- 古明地こいし
- 「――辛かったんだね」
「だから、心なんていらないってバラバラにして捨てちゃったんだ」
こいしは最悪の結末を辿った自分自身を見て……
- 古明地こいし
- 「……それでも、見てほしいの」
「瞳を開いた先は、酷い景色だけじゃないってことを」
――華やかに笑んだ。
この世界はあまりにも寂しいけど……
だったら、色付かせましょう。あなたと私たちで。
- 古明地こいし
- 「――遊びましょう、ラブコール」
「あなたの心に『アイ』を一杯あげる」
VS.ラブコール
- BGM:NeGa/PoSi*ラブ/コール
攻略√におけるDEADEND後のこいしを核としたトラジディ。
単体への強力な物理攻撃『「********」』と様々なバッドステータスを与える範囲魔法攻撃『「███████████」』を使い分ける。
常時2回行動。HPは15万前後。DEXが異常に高く、生半可な回避盾では普通に当てられてしまう。空蝉が使えるなら保険として切っておこう。
回避力もそこそこあるが、回避ダウンのデバフを1回使用すれば問題ない。ただし、HPが半減すると挟み込むようにSPアビリティ「絶対回避」を使ってくるので注意。 - また、「心」を取り戻したラブコールは能力が暴走しており、周辺の無意識を操って狂気に陥れるスフィア「無意識の狂乱」を発生させている。
「無意識の狂乱」が齎すのはアムネジア・混乱・狂戦士の三重苦。精神スキル「不屈の心」以上ならば無効化できる。
精神スキルが低いキャラは舞台にすら立てないのだが、それまでの周回全てで育成を怠ってない限りはそのような極端な事態にはなっていないはず。 - ラブコールの「心」と向き合った結果、こいしのスキル「無意識」が強化され、戦闘時の隠密スキルと精神スキルの下限値が「隠密LV10」「鋼の魂」に変化する。このためこいしは「無意識の狂乱」を含めてラブコールの搦め手を一切受けない。
こいしの他、戦友であるこころも感情を切り替える度にラブコールの与える悪影響をリセット可能。更に『憑依「喜怒哀楽ポゼッション」』に特攻効果が付与し、たまにラブコールをスタンできる。
- ラブコール
- 「……――あ」
――呆然とした面持ちで、ラブコールが膝から頽れた。
血塗れの手を眺めるその瞳からはとめどなく落涙が零れ落ち、頬の血化粧を落とす。
血涙を流しながら限界まで見開かれた第三の瞳は、泣き疲れたように少しだけ瞼を下ろした。
だけど。
――脳裏ニ浮かブ、鮮血のコウケイ。
おママごト デ ばラばら ニした"お兄さん"――。
- ラブコール
- 「あ、ぁ」
至高の「ラブ・コール」が齎した結末に、心が再び悲鳴をあげそうになる。
その震える背中を、誰かが抱きしめる。
- 古明地こいし
- 「……辛かったね」
こいしとラブコール。同じ"古明地こいし"でも真逆の結末を辿ってしまった二人。
同じ"人"に恋焦がれ、同じ"人"に心を触れてもらったはずなのに。
どこを間違えて、何がおかしかったのだろうか。
ボタンのかけ間違えがあったのだろうか。
- 古明地こいし
- 「お兄さんは……」
「足踏み、しちゃったんだね」
わからない。
無意識に描いていた恋物語は、ゴミクズになった。
恋愛小説のような甘酸っぱい願いは、ボロクズになった。
仄かに胸に広がっていた多幸感は、ガラクタになった。
ラブコールを待っていた美しい世界は、ラブコールが自分の手で終わらせてしまった。
誰が悪かったのだろうか? "お兄さん"? ラブコール?
わからない。
ぐず、とこいしが鼻をすする。
後ろから抱きしめるこいしの涙がラブコールの頬を伝って濡らす。
- 古明地こいし
- 「いっぱい、泣いたよね」
「疲れちゃったよね」
「……もう、寝てもいいんだよ」
抱きしめるこいしの手に、血塗れの手を添えて。
- ラブコール
- 「うん……疲れちゃった」
こくん、と"こいし"は頷いた。
遠くから、泣き崩れる姉の姿が見えた。
そうだ、もう……ずっと会っていない気がする。
- ラブコール
- 「おねえちゃん……おりん……」
「おくう……」
「おにいさん……」
脳裏を巡るのは、笑う自分を中心に広がる団欒。
"こいし"の隣には、"彼"がいて。
- ラブコール
- 「また……一緒に……いたいな……」
ラブコールの姿が無数の青い薔薇の花びらとなって散華する。
――こいしの胸には、ラブコールが使っていた灰色の短剣が抱えられていた。
震える肩を、ぽんと叩く手がある。
- 秦こころ
- 「……泣くな、我が好敵手」
- 古明地こいし
- 「泣いてないもん……泣いてるのは、お姉ちゃんだもん……」
眉尻を少しだけ落としながら――能面ような口元を僅かに笑みのかたちに作る。
- 秦こころ
- 「……頑張ったな」
- 古明地こいし
- 「そうだよ、こいしは頑張ったんだよ」
- 古明地さとり
- 「こいし……無理しなくてもいいのよ……?」
- 古明地こいし
- 「ううん――笑わなきゃ」
血が移ったのを気にせず、服の裾で目元を拭う。
そして、何時ものように咲くような笑顔を頑張って浮かべる。
何時もより不格好だけど、気にはしない。
- 古明地こいし
- 「その方が……私たちの見ている世界は美しくなるもん」
その日、どこかの世界線で。
少女はうっすらと瞳を開いた。
大の字で血の海の中心に身を投げだす少女は、夢を見ていた。
――思い出す。
夢の中で、"自分"が私の代わりに笑って、泣いて、
愛を、哀をいっぱい分けてくれたのを。
ずっと忘れていた泣き方を。
ずっと忘れていた心からの笑い方を。
――瞼が重たい。
さっきまで夢から覚めた筈なのに、ちょっと恥ずかしい。
心地よい浮遊感に負けてしまい、ちょっとだけ笑ってしまう。
――起きたら、言わなきゃ。
お姉ちゃんたちに。
お兄さんに。
ありがとう。
ごめんなさい。