シナリオ/色なき世界の見る夢のイベント
- 射命丸文
- 「たった一個体で灼熱地獄を作り出すトラジディ……インフェルノと呼ぶのが相応しいでしょう」
- 霊烏路空
- 「無限のエネルギーなら知ってるよ。
それは、未来への希望。
希望こそが、無限のエネルギーだよ」
未来を創る無限のエネルギー ~トラジディ・インフェルノ解放戦
エスカ-地獄の灼熱地獄を作り出しているトラジディ、インフェルノの攻略解説。
攻略手順
- エスカ-地獄の最奥、灼熱地獄と名付けられたエリアに足を踏み入れると、「灼熱の熱波に当てられこれ以上先に進めない!」と表示され、その炎が壁を形成して先に進むことができない。
しかもエリア全域がダメージゾーンになっており、歩くだけでみるみるHPが減っていく。
しかし、炎の壁を調べると、その奥に大きな何らかの影が見える。
その影はだんだんとこっちに近付いてきており、数回調べるとインフェルノが炎の壁を破って出現し、戦闘になる。- インフェルノとの戦闘中は天候が熱波で固定されており、開幕で「獄炎波」という技でスフィアを発生させる。
このスフィアはバーンに加え火属性耐性がダウンする効果があり、火属性の無効・吸収でも半減として扱われるようになってしまう。
インフェルノは「ヘルフレア」で強烈な全体火属性攻撃を連発してくるが、自傷ダメージも受ける。
熱波による毎ターンのスリップダメージを避けられず、敵味方共にHPの減少が激しい戦闘となる。
弱体化バージョンのトラジディに共通してHPは低く、倒すのはそれほど難しくない。
- インフェルノとの戦闘中は天候が熱波で固定されており、開幕で「獄炎波」という技でスフィアを発生させる。
- インフェルノを倒すと熱波が消え、灼熱地獄内を探索可能になり、スリップダメージも発生しなくなる。
灼熱地獄内には「焼け残った灰」と表示されるものが拾える。
これを持った状態でエスカ-博麗神社に戻ると、さとりと神子により、「焼け残った灰」がインフェルノの記憶の欠片であると判る。
これを5個集めるのがクエスト「インフェルノ調査任務」となる。
調査任務開始後は、エスカ-地獄に突入した際に50%の確率でインフェルノが倒れており、その間は灼熱地獄エリア内が探索可能である。
また、インフェルノの有無でエリア内の安全性が変化することから、灼熱地獄が実際には機能しておらず、インフェルノの発する熱波だけで灼熱地獄を形成していること、言い換えればインフェルノさえ対処できれば灼熱地獄は完全に停止することが判る。
なお、インフェルノから逃げた場合でも、エスカ-博麗神社で「インフェルノ調査任務」は開始される。 - 「焼け残った灰」を全て集めた状態でエスカ-博麗神社に戻ると、灰は光を放ちながら宙に浮き、まるで時間が戻るかのように1つの物体へと変化していく。
やがてPCの手元に残ったのは、緑色の日記帳だった。
そして、さとりと神子により、それが別世界の霊烏路空の記憶を象徴する物品であると判明する。
ではインフェルノはお空なのか?
さとりは否定する。
「お空の記憶から不満は感じられるけど、未練と呼べるほど強いものではない」
神子は続ける。
「トラジディが強い未練や無念から生まれるという仮定が正しいという前提に拠るが、あちらの世界の空殿には少なくとも死の経験の記憶はない」
「彼女はおそらく死んでいないはずだ。無論、死んでいないのだから未練もない」
「焼け残った灰」の記憶は、別世界の霊烏路空のものだ。
だが、別世界の霊烏路空は、トラジディになったとは考えられない。
ではインフェルノは結局なんなのだろうか?
それに、死んでいないはずの別世界の霊烏路空の記憶だけが、どうしてエスカに落ちているのか?
お空の肩に乗ったヤタガラスが、ぼそりと呟く。
「……インフェルノは、おそらく私だ」 - ヤタガラスは静かに言葉を紡ぐ。
- ヤタガラス
- 「記憶だけがこの世界に流れ着いたのは、きっとそれが"忘却された"からだろう」
お空がはっとしたようにヤタガラスを見る。
ヤタガラスはかつて、己とお空に起こった出来事を語る。
"彼"とお空と仲間たちの交流から、自分の存在がお空の負担となったため、自ら消滅しようとしたことまで。
- ヤタガラス
- 「推測になるが……インフェルノは"失敗した世界"での私の成れの果て――なのだろう」
「その世界では、日記帳の答え合わせに"失敗した"」
ヤタガラスの推測によれば、こうだ。
途中までの経緯は、先程説明した通りだが、最後に日記帳に記された思い出の内容の答え合わせに、その世界での[PC]は失敗した。
その結果、ヤタガラスは消滅し、お空はダイスキだった[PC]以外の、全ての記憶を失ってしまった。
[PC]とお空はその後も親交があったはずだ。
だが、日記帳の答え合わせの失敗と、それを嘘で隠したお空の心には、常に暗い影が落ちていた。
これまでの埋め合わせをするように二人が交流を重ねようとも、その土台にあるこの"失敗"が、お空が心から喜ぶことを阻害してしまったのだ。
だからお空はまた忘れることにした。
楽しいと思えない我が心を一度消すことで、本当に楽しいとまた思えるようになるために。
そうして忘れられたそれまでの記憶だけが、エスカに流れ着いた。
お空の記憶は、自らを核として、"鎧"を身に纏った。
それは消滅したヤタガラス――失われたもう一人の自分とも呼べる者と結合することで、一体のトラジディが生まれたのだ。
お空の記憶と結び付くことで意識を再び獲得したヤタガラスは、その後のお空に起こった出来事を知った。
そしてその怒りがトラジディを激しく燃え上がらせたのだ。
これが、インフェルノである。
- これで「インフェルノ調査任務」は達成。
以降はエスカ-地獄の灼熱地獄に熱波は発生せず、エリアの中央でインフェルノが待ち受けている。
- インフェルノ
- 「またお前たちか……今度こそ消し炭になりに来たか」
猛烈な熱波の中心で、燃え盛る炎に包み込まれた三つ足の巨大な鴉が、おもむろに顔を上げる。。
- 霊烏路空
- 「怒りの炎で全てを焼き尽くそうと言うの?」
- インフェルノ
- 「そうだ……怒りこそが無限のエネルギーだッ!!」
- 霊烏路空
- 「違うよ」
インフェルノの発する熱波に、皆がひるむ。
しかしお空だけは、身じろぎすらせず、まっすぐインフェルノを見据えていた。
きっぱりと言い放つお空を、インフェルノは訝しむ。
- 霊烏路空
- 「どんなエネルギーにも燃料が要る。
貴方の燃料は、怒り。
過去の記憶から怒りを引き出して、その炎を生み出してる」 - 霊烏路空
- 「過去は無限じゃない。
だから怒りも無限じゃない」 - インフェルノ
- 「知ったような口を……!
同じ顔とて、貴様は"私の空"ではないことなど判っているぞ!
お前が何を言おうとも、我が怒りの炎を鎮めることなど出来ぬ!」 - 霊烏路空
- 「そうかな?
貴方の怒りの炎、火力が落ちてるんじゃない?
貴方が居るのに私たちがここに立っていられる事が証拠だよ」
お空の言葉を聞いて、インフェルノは目を鋭くする。
しかしそれは、お空の言葉が正しいことの証明だ。
確かに、これまでの灼熱地獄はインフェルノが生み出す熱波でまともに立ち入ることすら出来ない場所だった。
だが今は、インフェルノが居るにも関わらず、灼熱地獄内の熱波は生存不可能という程ではなくなっている。
- 霊烏路空
- 「無限のエネルギーなら知ってるよ。
それは、未来への希望。
希望こそが、無限のエネルギーだよ」 - インフェルノ
- 「……希望?
ハッ……何を言い出すかと思えば、児戯に等しい。
希望など、空虚な幻想だ!」 - 霊烏路空
- 「違うよ。空虚なんかじゃない。
希望っていうのはね、今をより良くするために努力しようっていう意思。
文明を次の段階へ押し上げてきた、確かなエネルギーだよ」
インフェルノは明らかに戸惑っている。
それはお空の言葉に正当性があったから……というより、お空に説教されたという状況そのものに対する戸惑いに思えた。
- ヤタガラス
- 「鏡の私よ。この空は確かにお前の知る空ではない。
お前の知る空よりも未来を生きる者だ。
自ら考え、学び、成長する空だ」 - インフェルノ
- 「……妬ましい」
インフェルノの炎が、にわかに盛る。
もう一人の自分とも言えるお空の、自分の知らない成長した姿、思考。
自分では辿り着けなかった可能性。
それを突き付けられ、インフェルノは怒りだけでなく、嫉妬の炎をも燃え上がらせていた。
- インフェルノ
- 「希望が無限のエネルギーだと?
希望が怒りより勝るとほざくのであれば、証明してみせろ!
その前に、我が炎が全てを真っ黒に燃やし尽くしてやる!」 - 霊烏路空
- 「うん。判ってるよ。
貴方の燃料が尽きるまで、耐えてみせるから。
地獄の業火でも燃やし尽くせない想いを見せるから!」
VS.インフェルノ
- BGM::Radiance
攻略√におけるSADEND後のお空の記憶とヤタガラスを核としたトラジディ。
トラジディとしては珍しく1回行動で、スキルによる追加行動もない。HPは20万。火・陽属性吸収。
STRとINTが非常に高いが、それ以外のステータスはいずれも優れてはいない。
水属性が弱点。 - 基本的な要素は弱体化バージョンと同じ。
天候が熱波で固定されており、「獄炎波」でバーンに加え火属性耐性がダウンするスフィアを発生させるため、火属性の無効・吸収でも半減として扱われる。
自傷ダメージのある強力な全体火属性攻撃「ヘルフレア」、ブレイズスパイクを付与する「フレイムヘルズトカマク」、やはり自傷ダメージのある全体陽属性攻撃「太陽を失くした鴉」などの技を使用する。 - トラジディの基準で考えれば、倒すだけならそこまで難しくはない。
耐性ダウン込みで考えても火属性耐性は可能な限り上げておき、水属性で攻めれば良い。
しかし、倒しただけではインフェルノを解放することは出来ない。
この戦闘の目的は倒すことではなく、インフェルノの炎の燃料である怒りが尽きるまで耐えることである。
ただ防御していれば良いという訳ではなく、インフェルノは解除不能のスリップダメージが設定されており、加えて自傷ダメージ付きの技を連発するため、放っておくと勝手に倒れてしまう。
しかし回復させようにもインフェルノは「自責の念が癒やしを拒む!」と表示され、ケアルや回復アイテムは無効化される。
ではどうすれば良いかというと、インフェルノが火・陽属性を吸収することを利用して、これらの属性の攻撃をわざと吸収させるのである。
インフェルノのHPが尽きることなく20ターン経過すれば戦闘は終了する。
戦いの末、怒りという燃料が尽き、インフェルノの身を纏っていた炎は鎮火した。
尚も敵意を示すインフェルノに対し、お空は緑色の日記帳を突きつける。
インフェルノが明らかに戸惑いを見せた。
- インフェルノ
- 「……それ、は」
- 霊烏路空
- 「貴方のものだよね、ヤタガラス様」
- インフェルノ
- 「…………」
何かを考え込むように、インフェルノは答えない。
だが、沈黙は肯定であった。
- 霊烏路空
- 「ヤタガラス様は……怒ってくれたんだよね、私の代わりに」
- ヤタガラス
- 「……そうだ。貴方は優しい子だから、あいつを怒りはしなかった。
だから私が怒りの炎を巻き上げるしかなかったのだ」 - 霊烏路空
- 「そんなの意味ないよ……この世界にその人はいないんだから。
ヤタガラス様の炎が焼いているのは、ヤタガラス様自身だよ」
憐れむように、お空がインフェルノに語りかける。
インフェルノからはもはや怒りは感じられない。
静かに、落ち着いた様子でお空の話に耳を傾けていた。
- インフェルノ
- 「……そうだな。
私が本当に許せなかったのは、他ならぬ私自身だったのかもしれない……。
他の何よりも、私こそを焼き尽くしたかったのだ……」 - 霊烏路空
- 「……忘れていいよ」
- インフェルノ
- 「えっ……?
し、しかしそれは……」
お空がゆっくりとインフェルノに歩み寄り、その羽毛を抱きしめる。
- 霊烏路空
- 「鳥頭は貴重な能力だって、久侘歌さんが言ってた。
辛かったり、許せない過去なら……忘れても、いいんじゃないかな。
忘れるって、多分そんなに悪いことじゃないよ」 - 霊烏路空
- 「過去が足枷になるんなら、捨てちゃってもいいんだよ。
忘れて、身軽になってさ。そうすれば未来に進めるようになるんじゃないかな。
私は……そう思うよ」 - インフェルノ
- 「…………そう、か。
そうかも、しれないな……」
- インフェルノ
- 「私を足枷と思うなら、忘れてくれ。
別の世界の空、そして私……会えて良かった。
さらばだ……」
インフェルノの体が淡い光になって消えていく。
インフェルノが完全に消えた後、彼女を抱きしめていたお空は、いつの間にか灰色の弓を手にしていた。
- 霊烏路空
- 「……忘れないよ。
だってこれは……辛い過去ではないから」 - ヤタガラス
- 「ああ……記憶し続けよう、鏡の私よ。
その怒りも無念も、心に融けて一つになれば良い……」
その日、どこかの世界線で。
ダイスキなキミのことだけを覚えていた一人の少女は、病室でぼんやりと窓を眺めていた。
外の木に一羽のカラスを止まっているのを眺めていた。
そのカラスは、なんだか自分をじっと見つめているようで、ずっと動かないまま。
病室の扉が開かれると、そちらに視線をやる。
入ってきたのは、いつも看病してくれる三人。
思わず名前を呼ぶ。
それは自然で、何を考えて発した言葉でもない。
でも、どうしてか三人は驚いて、嬉しそうにした。
どうしてかは判らない、判らないけど……。
その光景を窓の向こうで見ていたカラスは、しばらくして飛び去っていった。
これで良いとでも言い残すかのように、羽根を落としながら。