Overture

ありしの国家解体戦争、リンクス戦争を経て、この惑星は汚染と破壊に包まれました

武装勢力「DRAK」
所属不明の13機のアーマード・コア ネクストからなる軍団によって
各企業は大きな痛手を受け、半ば痛み分けのような形で戦いは終止符を打ちました

戦いの後、一部の人は、汚染された大地を捨て、清浄なる空へと旅立ち
残された人類は、穢された地上にて生き抜くために戦いを続けます

そして人は空の上の揺りかごにて、緩やかな安息を抱く
あの頃の私も、怠惰をむさぼるだけの日々を送っていました

―コジマ粒子がクレイドルの空を冒すその日まで、そうなる筈でした

―比那名居 天子の回想―

世界移動シナリオ-ARMORED CORE Paradise of Stain編のイベント

Overture

「きゃあ！　痛いじゃない、もう少し丁寧に操縦しなさいよー！」

「やっかましい、この温室育ち！
　まさか興味本位だけで地上に降りるなんてなー……
　……このクラーナさんが通りかからなかったらお前、死んでるぞ？！」

「だから、さっきから謝ってるじゃない！」

「その態度で全部帳消しだ！」

「……」
「……」

「……ワンダフルヘヴン」

「へ？」

「なあ。拾った時にお前、言ったよな。ワンダフルヘヴンに行きたいって」

「……う、うん　クレイドルニュースヘッドラインでいつもスクープになってたし……」

「で、クレイドルに戻る前にそこへ行きたい、と」

「そうよ。クレイドルは退屈だったけど、地上は思ったより空気がひどいし……
　でも、ワンダフルヘヴンを見れるなら、きっと良い話の種にはなるわよね」

「……"To nobles welcome to the earth"」

「えっ？」

「……私の知り合いならそう歌って皮肉ってるよ。
　ここのヘリの窓の景色を見てみな。お望みの光景があるから」

「えっ？　嘘、本当！？」

「ただし、見て、後悔すんなよ」

「……？」

「…
　……
　………

　…………

　…………………」

「…もう離れていいぞ。
　……大丈夫か？　ほら、そっちに携帯飲料があるから、飲め」

「なに、あれは……？　ニュースで見たのと全然違う…」

「ありのままを写したら発禁モノだぜ。
　群列を成す機動兵器、蹂躙するアームズフォート、空飛ぶ山猫と渡り鴉が睨みを利かす、硝煙の坩堝。
　ニュースでやってる、プロパガンダに塗れた勇ましい娯楽映画のような内容とは違う。
　あれこそがお前達がワンダフルヘヴンと呼ぶ「楽園」…利益に飢えた企業の老人共の「漁り場」だ」

「此処は……何処？　楽園じゃ……ないの？」

「……此処か？　此処は戦場だよ」

「首輪の付いた、山猫達の戦場だ」