イベント/Remember Of Judas -裏切り者の黙示録-

Last-modified: 2013-02-16 (土) 20:32:05

カラードランク1位 汚い忍者・ダーティストライダー。

 

彼を語るための言葉は少なくないよ。
『栄光ある最強の戦士』『カラードの最高戦力』『究極の合理主義者』
『オーメルの傀儡』『傲慢かつ狡猾な帝王』『信念無き戦士』

 

そして、『DRAK戦役の英雄』。

 

リンクス戦争直後に発生したDRAK戦役において現れ、オーメル本社攻防戦で活躍、
戦後疲弊した統治企業連盟・企業連の前身、企業連合と13機というネクストを擁した反動勢力DRAKとの戦局を企業側へと引き寄せたことで知られる。

 

けれども、本当に彼は英雄たる人物だと思うかい?
自らを下劣な卑怯者、傲慢かつ狡猾な者と謗る、自分を讃えられない者と嘯く彼を。

 

これから語るのは
地獄の底を這い擦り回った憐れな裏切り者が
あの戦役で垣間見た世界の終わり。

 

そして、僕にとっては
孤独に戦った戦士の英雄譚だ。

 
 
 
 

世界移動シナリオ-ARMORED CORE Paradise of Stain編のイベント

REMEMBER OF JUDAS-裏切り者の黙示録-

 
 

ミッション解放条件
オーダーマッチでランク1 ダーティストライダーを撃破

THE HANGED MAN-首を吊った男-(レイレナード急襲部隊撃破)

 

俺はかつてレイレナードのオリジナルのリンクスだった。
当時の資料のNo.23が空いてるだろ?俺はそこに収まってた。

 

だが、リンクス戦争初期に捕虜としてとっ捕まった。
それが俺が連中と関わったきっかけってわけだ。間抜けな上に最悪窮まりねぇだろ?

 

そして、俺は実験対象としてアスピナの研究機関に流された。
そこはネクストを動かす最新技術の集う場所と言いつつも、地獄の釜の底と喩えても足りねぇ場所だった。

 

虚ろな目のガキの首に大層な装置を繋げて訳のわかんねぇことしてるわ、
培養液に浮いた脳味噌を並べてに訳のわかんねぇ結果集計してるわ、
AMS研究所の近くを通ると遠くから悲鳴が、なんざザラだった。

 

荒廃した世界で最高の力を得ることができる栄光のリンクス養成所、
その試験に振り落とされたものが、その最中で死んだ奴が行き着く先、それがこの白い壁で覆われた地獄だ。
まぁ、実験材料には困らなかっただろうな。
パックス・エコノミカと宣う奴隷制度の中で最高の、栄光をつかめるンだからよ。

 

そこで俺は死にたくないばかりに色々な実験に手を貸し、奴らも貴重な資料故に無茶な実験はさせなかった。
皮肉なことにそこでの実験の類で俺の腕は今のレベルにまで飛躍的に上がっていった。

 

だが、それ故に、ただ死にたくないが故に
俺は手にしたその力を用いて、最悪の過ちを犯した。

 

……そしてあの時、レイレナードの最後の一人は死んだ。
自らの手でかつての主を裏切り、自らの手で首をくくってな。

 
 
 

 

[OMER Operater]
ミッションを説明する。
目的は旧ピース・シティエリアを通過するレイレナードグループのネクスト急襲部隊の撃破だ。

 

敵はレイレナード中量二脚主力No.1シュープリスを筆頭に、同社逆接前衛機No.12ラフカット、
BFF重量四脚狙撃支援機No.15レッドキャップ、アクアビット軽量二脚支援攻撃機No.21ヒラリエスの4機
これらによって編成された最精鋭部隊となっている。

 

いずれもお前の知らない相手ではないだろう?
だから、この戦局でお前に白羽の矢が立った、という訳だ。
当方はNo.4ノブリス・オブリージュ、No.30ナルおよびにアナトリアの傭兵の4機で対応にあたる。
この戦力と共に彼の敵を撃破するように。

 

説明は以上だ。
捕虜として捕らえ、五体満足でここまで生かしてやったんだ。

 

その恩には報いろ。

 

 
  [このミッションを受諾しますか?]  
 [  OK  ]  [CANCEL] 
作戦エリア旧ピース・シティエリア
作戦目標敵ネクスト部隊撃破
 

 

[No Kemono]
やあ、ノブオ。僕だ、野獣だよ
今回のミッションで、オペレーターとしての有用性を示せと言われて連れてこられたんだ
ま、君にはどうでもいいか。まもなくネクスト四機編成がそこを通過するよ

 

[Mido Auriel]
こちら、ナル
準備はできています
よろしくお願いします

 

[Frederica]
....こちら、ノブリス・オブリージュ
....よろしく

 

[Kasamatu Nobuo]
....

 

[No Kemono]
こちら、シュースィ、オペレーター 幸運を祈ります

 

アナトリアの傭兵は地理的な事情でまだ来れていないみたいだけど彼も間もなく到着するみたいだ
戦況はこちらから逐次報告するよ

 
 
 
 

Overture

[No Kemono]
....っ
広域レーダーに感あり、北東からくるよ

 

[Berlioz]
....待ち伏せか、レッドキャップ

 

[Unseal]
レーダーには3機、見たところが1機がノブレス・オブリージュ
....はっ、オーメルの機体が2機か、お前らん家の襲撃のお礼参りか、え?

 

[No Kemono]
状況を開始する、いくよ

 

このミッションはAC4における最難関ミッション「MARCHE AU SUPPLICE」の再現となっている。

 

搭乗機は軽量二脚機「TYPE-JUDITH」をベースとした「ハングドマン」。
装備はジョシュアグリントと酷似しているが、レーダーがついており、内装のほとんどが「ALLIYHA」になっている。

 

なお、ネクストの機動はACfAなので敵の機動力も上がっているもののAC4の時ほど絶望的な戦いにはならないだろう。
敵は優先的に最高戦力であるノブリスを集中的に攻撃してゆくのでそれを囮にして着実に相手を削って行こう。

 

そして、味方の何れかが撃破、もしくは敵の何れかのAPを50%以下に削るとムービーが挿入される。

 

 

主戦力 ノブリス・オブリージュが集中砲火を受け、地に伏した。
あの動き、シュミレーターで腐るほど見たものとはまるで違う。

 

使えない、その羽根は傀儡共の戯言と同じ飾りなのか?
駒が減ったことに、内心で吐き捨てる。囮が減れば減るほど、こちらの被弾率は上昇する。
タダでさえ窮地だというに、破壊天使が笑わせる。

 

死ぬのだけは、死んでも御免だ。

 

[Unseal]
貴族被れ共のお飾りに、恥知らずの裏切り者
姉妹揃ってどうしようもねえなぁ
ケッ、屑が……さっさと死に腐れ

 

忌々しげに歯を食い縛っていると、
レッドキャップがノブリスのリンクスを遠距離から嬲りながら、何事か罵った。

 

[Unseal]
テメエNo.11の妹なんだろ
聞いたぜ。あいつ、レイレナードに叛逆したそうじゃねえか

 

どうでもいい情報だ。

 

それを拡散することに夢中で隙だらけだが、後衛であるヤツとは距離がある。
今接近しようものなら、他のネクストに背から袋叩きにされるのがオチだ。

 

主力が落ちたことにより、今はナルがラフカット、こちらはシュープリスの相手、
油断をしているとヒラリエスの支援砲火が飛んでくる。集中を切らすと一瞬で消し炭だ。

 

[Unseal]
碌でもない阿婆擦れを姉貴を持つと大変だなぁ
無様に死ぬのはお前ら両方ともだけどな!

 

……事情は知らんが耳障りな悪態だ。
こちらを見ないでいるのならばどうでもいいが。

 
 
 
 

[Unseal]
……あん?

 

[Zanni]
アンシール、何をしている!

 

[Unseal]
チッ まだ動きやがる……
化物だけにしぶてえ
胴体を念入りにブチ抜かねえと死なねえの……

 

ラフカットが叫び、レッドキャップが気がついた時には既に遅かった。
半ば戦闘不能状態だったノブリス・オブリージュがレッドキャップに肉薄した。

 

[Unseal]
か……!?

 

レッドキャップはバックのクイックブーストで距離を引き離そうとするが、
ノブリスはそれ以上のスピードで接近する。

 

[Unseal]
な……どうなってるんだよ、おい…!

[P Dam]
ベルリオーズ、不味い…!

[Berlioz]
距離を離せ! そちらに向かう!

 

[Unseal]
クソがっ! 俺のせいだっていうのかよ!?
図に乗るんじゃねえ! この貴族被れの化物が……!』

 

[Frederica]
…やかましいんだよ、銀朱臭い餓鬼が

 

半ば自棄に振り回されたレーザーブレードは虚しく空を切る。
その隙を逃さず、ノブリス・オブリージュが背のレーザーキャノンを撃ち放った。
破壊天使御自慢のレーザーが、赤頭のネクストのPAを吹き飛ばす。

 

間を入れずに、ノブリスがレーザーブレードを斜め下から振り上げる様に振るい、
レッドキャップの前脚を引き裂いた。返す一刀で腕部を両断する。

 

[Unseal]
がああっ!?

 

[Frederica]
臓物真赤に吐き散らして
……さっさと死に腐れ

 
 
 
 
 
 

ノブリスのリンクスが哄笑を上げ、レッドキャップを鱠斬りに刻む。
何も載せていない俎板に、包丁を、何度も、何度も、叩きつける様に。

[Frederica]
はっ、あははははははは、ははははははははッ!!!

 

[Berlioz]
くっ…!

 

シュープリスが破壊天使目掛け、オーバードブーストをかける。

 

[No Kemono]
敵がノブリスに接近
……止めないとまずい

いや、これは好機だ。
仲間をなぶり殺され、こちらの主戦力が隙を見せているのだ。あいつらも集中せざるを得まい。

 

アレに目を取られて奴は背を向ける。
その背をブレードで刺し貫けばいいのだ。

 
 
 

かつて最強に憧れて、追いかけていたあの背中を

 
 
 

シュープリスが、グレネードキャノンを発射した。
榴弾はノブリス・オブリージュの目の前で炸裂し、爆炎と噴煙を上げる。
噴煙を振り払うように、薄汚れたノブリス・オブリージュが姿を現す。

 

『敵の位置を目測 オーバードブースト巡航速度で5秒』

 

[Berlioz]
……何をしている、破壊天使

 

『オーバードブースト展開 コジマ粒子充填 点火』

 

殺意を滲ませたシュープリスの言葉に、
破壊天使は自虐的な笑いを零し、吐き捨てる。

 

『対G姿勢 亜音速巡航速度まで噴射から1.2秒
水銀の鉄砲水を被ったような強力なGに歯を食い縛りながら突っ込む』

 

[Frederica]
ご覧の有様だ、ベルリオーズ

 

『アクチュエータ複雑系へ情報伝達 推進系と左腕にのみ集中 その他の機体制御をIRSに譲渡
黒い機体の背に目掛けて、この得物をただ真っ直ぐ突き立てる』

 

[P Dam]
っ!後ろだ!

 

『メインブースターフルブースト 機体音速突破 目標捕捉 ブレード展開 攻撃誘導開始
気づかれたが知ったことか。もう遅い、お互いに。敵が回避する前に、その背を刺し貫くだけだ』

 
 

その瞬間と交錯するように、目の前の黒い機体は大きく翻り、
その勢いのまま左手の得物をそのまま繰り出す。

 
 
 
 

「....狙ったか、貴様」

 

一瞬の交錯の後に、互いに退く二機。

 

それに遅れるように空に舞い上がっていた残骸が砂原の上に落ちる。

 

片や焼き切れた榴弾砲の砲身と空気に触れて燃え上がるフレア、片や突き刺されて砕けたレーダーの残骸。

 

それに一瞥もくれず使い物にならない情報を寄こすレーダーをパージ、ライフルを構えレーザーキャノンを展開、
ノブリスもブースターを吹き上げ、連装レーザーから放った白い光が唸りをあげて黒い影を追う。

 

しかし、その影は一瞬でFCSの射撃誘導を振り切り、視覚素子から流れてくる情報から消える。

 

グレネードという重量装備を外して身軽となった死神のような黒い影。
かつて憧れた英雄の影を、FCSから脳へと届くレーダー情報で追う。

 
 
 

その時、自分の失策に気づいた。

 

[Berlioz]
ラフカット!ヒラリエス!

[No Kemono]
…っ
ナルが孤立、早急に救援を

ラフカットとヒラリエスがナルを包囲、
ヒラリエスは既にコジマキャノンの充填を完了している。
あれにライフルも届かない、レーザーの照準も間に合うまい。

 

もう間に合わない、ならば。

 

[Berlioz]
....っ!

発射されたレーザーは、シュープリスの掻き消えていた薄いプライマルアーマーを貫き、右肩の装甲を焼く。
それに次ぐようにライフルの引き金を引くが、その照準はクイックブーストによって容易に引き剥がされる。

 

[Berlioz]
....よい戦士だ
侮ってすまなかったな

 

違う形で聞きたかった称賛の言葉。
その余韻を残酷な事実が奪う。

 

[Mido Auriel]
....くっ、すみません
機体限界突破しました

[No Kemono]
ナル、大破
そのままノブリスから離れるな
彼女まで倒れたら不味い

敵は3機、頭目・シュープリスは小破したが、主力・ラフカットと支援機・ヒラリエスは健在。
こちらは主力が中破、万全と言い切れるのは俺だけ。

 

ひたりひたりと死の影が忍び寄ってくる。
背筋が凍り、口が渇き、歯の奥が鳴り、四肢が震える。
が、頭は異様に冷めている。操縦の障りにならないのが幸いだ。

 

その身を引きつらせる恐怖と空虚なまでの静寂の中で聞こえたのは
聞き覚えのない女の声。

 

[Rumia Jarnefelt]
こちらアナトリア・グラットン、オペレーターです!
只今より、当機をそちらに降下します!

[No Kemono]
こちら、オーメル・シュースィ、オペレーター、了解

 

戦況を報告
ナル大破、ノブリス・オブリージュ中破、シュースィ小破
敵レッドキャップ沈黙、シュープリス小破

 

当方劣勢、早急に支援を開始してください

 

[Rumia Jarnefelt]
....っ!わかりました!

 

[No Kemono]
ノブオ、増援が来た
頑張ろう

 
 

Fall

 

アリーヤベースの近距離戦向き中量二脚機・グラットンの到着より戦闘を開始。実質的に3対3の戦闘になる。
自機のレーダーがパージされ、ノブリスがAP50%、シュープリスが(一切攻撃を加えていなかった場合)AP70%、ラフカット・ヒラリエスが(同じ場合)AP80%の状態から戦闘再開。
戦闘は乱戦となるが敵機はノブリスを優先的に狙って行き、そちらが落ちると今度はこちらを優先的に狙ってくる。
ノブリスが落ちる前に1機(ヒラリエスを推奨)を落としておき、2対2に持ち込むのがオススメである。

 
 
 

[P Dam]
……戦場だ、覚悟はできている

[No Kemono]
2機目撃破、残り2機


……

 
 
 

[Zanni]
……これは、匹敵するか

[No Kemono]
3機目撃破、残り1機


……ぐっ

 
 
 

[Berlioz]
……限界、か
……感傷だが別の形で出会いたかったぞ

[No Kemono]
残存戦力撃破
ターゲットオールクリア、ミッションコンプリート

 
 
 
 

 

戦闘は、終わった。

 
 
 

震え続けた手足を落ち着け、鳴り続けた歯の根を抑え、浅く続けていた息を深く吸った。

 
 
 

落ち着きを取り戻し、辺りを見回す。

 

その視界のなかに見えたのは、
夕闇に暮れる荒涼とした砂漠、そこに伸びるいくつかの影

 
 

手に浮かんでくる感触 耳に響いてくる残響
そして、目の前に横たわる思い出の残骸

 
 
 

斬り捨てた感覚が残る手を握り締め
惨めに鳴っていた歯を食いしばり

 

情けなく嗚咽を吐き出した

 
 
 

「……許しは請わねぇ

 

……だから、恨んでくれ
……恨んでくれよ、頼むからさ

 
 

かつての思い出と、皆の声と、
残酷な現実が胸を押し潰す

 
 

『死にたくない』
その願いの末 俺はこの手で全てを切り捨ててしまった

 
 
 

俺は泣くことしかできなかった

 

惨めに涙と鼻水を垂らし、情けなく震える嗚咽を吐き散らし、
醜く歪んだ顔を握り締めた手で覆って

 

どうしていいのかわからずに泣き続ける
無力な幼子のように

 
 
 

「……お疲れ様
君が無事で本当に、本当によかった

 

帰ろう
皆、待ってるからさ」

 

 
 
 
 

あの時、レイレナードの生き残りは誰もいなくなった。

 

ある奴らは、肉親の情、主従の忠を求めて去り、
ある奴らは、自身の主のため、故郷のために戦って死に、

 

そして最後の一人は裏切って、後悔して、
首を吊って、そして誰もいなくなった。

 

……そこに残っていたのは
全てを奪われ、全てを自分の手で斬り捨てて、
陰謀屋の首輪に繋がれた惨めな卑怯者だった。

 
 
 
 

COUNTDRVALUE OF SHEKEL-銀貨の対価-(オーメル本社襲撃部隊撃破)

 

……DRAK戦役。

 

レイレナードとアクアビットの壊滅、単機で企業を滅ぼしうるイレギュラーたる存在のアスピナの傭兵の人柱で終えたリンクス戦争。
その後に現れたネクスト13機による反動勢力DRAKとリンクス戦争で疲弊した企業連合との戦争の事よ。

 

彼等は企業による支配体制への反目を唱え、企業は彼等を世界の崩壊を目論む最悪の反動勢力と声を上げた。
その戦役の最中で現体制に反目し、彼等に賛同するものは少なくはなかった。
……けど結局、あの戦争で疲弊して傷ついた世界は変革よりも安定を望んだのよ。

 

そして『支配体制の打破』そのあまりにも人間的かつ直情的な理想と共に拡がったのは戦火と汚染、残ったのは荒野だけ。
……どんな崇高な理想でもただ漫然と唱えて力を振るうだけでは何も変わらなかったのよ。

 

そしてあの戦争で自分の全てを、かつて最強と謳われた憧れを、自分の手で切り捨てた彼にとって、それは憎悪の対象だった。
煤けた世界に再び火を投げ込んだ愚か者、聞こえの良い曖昧な理想を力のままに掲げた煽動家、彼はそう嘯いた。

 

……けども彼がDRAKを憎んだ理由はきっと
現体制と世界の荒廃を憎みながらも、自分は企業の尖兵として戦うことしか出来なかったから。

 

……理想もなく、信念もなく、ただ生きるためだけに戦っていた彼の姿は、酷く惨めだった。
けど、ただ死にたくないがため、戦って、生き残って、戦って、生き残って、その結果上げた多くの戦果が彼を英雄として担ぎ上げた。

 

そんな惨めな臆病者を英雄と呼ぶことは出来ない、きっとそう思うでしょう?

 

……けれども彼の裏切りの対価に救われた私達にとって、彼は確かに英雄だったの。

 
 
 
 

 

[Ois Sublimen]
忍者、緊急ミッションを説明するよ。

 

目的はアデン湾より上陸、イブアルハリ砂漠を北上し、僕達のいる本社を急襲するであろう武装勢力DRAKのネクスト部隊3機の撃退。
情報によると敵はBFF 047ANベースにした青い狙撃機、レイレナード 03-AALIYAHベースの白い近接戦機、イクバール SALAFベースの紫色の近接戦機。
どうやら前衛機の強力な近接戦闘とそれを陽動とした高空からの狙撃を得意としているようだね。

 

それに対して砂漠を縦断されないように、ジャルジーとイクバール社からの救援機 斬鉄と一緒に迎撃して欲しい。

 

僕らもようやく人並みの扱いをして貰えるようになったんだ。死にたくないさ。
僕も頑張るから、だから君達も無事に帰ってきて。
待ってるよ、親友!

 

 
  [このミッションを受諾しますか?]  
 [  OK  ]  [CANCEL] 
作戦エリアイブアルハリ砂漠
作戦目標敵ネクスト部隊撃破
 

 

[Ois Sublimen]
ミッション開始
南南東から北上してくるDRAKネクスト部隊を迎撃するよ

 

[Jalousie Waterbridge]
……こちらレヴィアタン……よろしくね

 

[Mr Shi=han]
イクバール社、斬鉄だ
……よろしく頼む

 
 
 

[Ois Sublimen]
……っ
レーダーに反応、機影3、移動速度 亜音速
……来るよ!

 

[Jalousie Waterbridge]
……戦闘モード……起動するわ
……オイス……こっちからの回線を……切って
……ウウッ………―――!!―――……   !!!

 

[Mr Shi=han]
……斬鉄、参る

 
 
 
 

[Ryusan]
見えた!
オーメル社、ハングドマン・リヴィアタン
及びイクバール社、斬鉄だ!

 

[Kitanai Ninjya]
煽動家共が、革命家気取りも今日までだ
……貴様らは砂に沈むのが似合いだ

 

[Hakurou]
……退いてください
貴方達を相手にする理由は此方にはありませんから

 

[Ibuki Suika]
……といって退く相手じゃあ無さそうだねぇ、これは。

 

うおっと!

 

[Mr Shi=han]
そいやっ!

 

うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!

 

[Jalousie Waterbridge]
――?!――――!!
――――――――!!!

 

[Hakurou]
くっ、やっぱりやるしかないのか!

 
 

[Kitanai Ninjya]
人の寝床に物騒な物を下げて押し入ろうってンだ
覚悟は出来てるだろうな、狂犬共

 

じゃあ、やろうか

 

 

Change Gears

 

戦闘はだだっ広い砂漠でのガチンコ三対三
敵は03-AALIYAHの二刀流機「スピリットブロッサム」
SALAFベースの射突型ブレード・ショットガン・連装ロケット装備の「ミッシングパープル」
047ANベースのスナライ・ライフル・レーダー装備の「ブルーゲイル」の3機。

 

味方はTYPE-JUDITHベースのアサルトライフル・ショット・散布ミサイル・レーダー装備の「レヴィヤタン」、
SALAFベースの射突型ブレード・アサルトライフル・散布ミサイル・大型ロケット装備の「斬鉄」の構成。

 

戦闘はミッシングパープルと斬鉄が殴り合い、スピリットブロッサムをレヴィヤタンが対応する形になる。
僚機は両方とも引き撃ち・回避を念頭に置いて有利に戦闘を進めるが、軽量機であることと相手の武器の都合上、いつ一撃で切り捨てられるかわからない。
更にブルーゲイルは二機を倒すまで常に領域外ギリギリにいるので彼を相手にするのではなく、
背中を気にしつつ二対一で各個撃破して行き、一気に畳み掛けるのが有効な攻略法である。
軽量のミッシングパープル、スピリットブロッサムの順に早急に倒して行き、それからブルーゲイルを畳み掛けよう。
僚機は機能停止まで残るが、敵機はAPが30%を切ると撤退するためアドバンテージになるだろう。

 

[Ibuki Suika]
……これ以上食らうと帰れなくなるね
ごめん、撤退するよ

[Hakurou]
……くっ、すみません!撤退します!

 

 
 

「ぐうっ!」
頭上からの狙撃と爆撃を掻い潜り、
左肩から放ったレーザーキャノンが青い機体の左手にある狙撃銃を焼き潰す。

 

勝負は決まった。
狙撃戦を重視した中量二脚の得物を奪い
こちらの軽量二脚に至近距離戦を挑めばあちらにもはや勝ち目はない。

 

「……くっ、何故だ!何故それだけの腕で企業の番犬となる!」
「奴等の支配の下にあるのは搾取と陰謀しかないのに!」

 

……搾取?陰謀?

 

ああ、俺がいるのはあいつらの陰謀の真っただ中ってことか。

 

……目の前の敵を討ち取って、帰るだけの日々だったから忘れてた。

 
 

敵の問いかけに、レーザーキャノンを戻して左腕を構え、右手の銃を下す。

 
 
 

「……『企業の支配からの自由』?」
「はっ、いい言葉だ、感動的だな
……だが無意味だ」

 

思わず乾いた笑いが漏れる。

 

ああ、そうか。俺は結局は

 

「……っ!何を!」

 
 
 

「支配って寄る辺無しで生きられる
そんな奴はほんの一握りしかいないのさ」
「……ましてや、今の、この世界では」

 

俺は恐怖で繋がれたあいつらの猟犬だった

 

死ぬことに怯えた惨めな犬だった

 
 
 

「……っ、君もそうだというのか…?」
通信回線から届く同情めいた言葉。
そして目の前にあるのは、かつて味方として見たことがある機体。

 

「……帰れ」
「俺の目的はお前らの撃退で
お前らを掃討するだけの武装はもう残っちゃいねぇからよ」

 

「……出来るのなら違う形で出会いたかった」

 

「……ああ、そうだな……あばよ」

 
 
 

「……同胞」

 
 
 

[Ois Sublimen]
……ミッション完了、お疲れ様

 

レヴィヤタンも斬鉄も無事だ、安心して

 

[Mr Shi=han]
……任務完了か

 

・・・・すごい漢だ。
お前とは、また肩を並べたいものだ

 

[Jalousie Waterbridge]
……ケホッコホッ
……お疲れ様、三人ともありがとう

 
 
 

[Kitanai Ninjya]
……ああ

 

 

……彼は企業攻防戦の中でも苛烈な攻撃があった
オーメル本社攻防戦で私たちと共に幾度DRAKの部隊を退けた。

 

……だけど、彼は戦えば、戦うほど精神的に追い詰められていった。
声望と戦況につれて苛烈になる戦闘、かつての味方と敵が入り混じる相手。

 

……なのに彼は独りを望んでいた。
自分の命が惜しいばかりに自分の全てをその手で斬り捨ててしまったから。

 

私に、私たちにできることはただ彼の傍にいてあげること

 

それしか、できなかった。

 
 
 
 

COCYTUS-嘆きの川-(大規模コジマ施設占拠部隊排除)

 

救いの御子は最後の晩餐において裏切り者にこう言った

 

『その者は生まれてこなかった方が、彼のためにもよかったであろう』 と

 

救いの御子よ
裏切り者が生きることさえ罪だと言うのなら
彼を罰してみろ、彼を殺してみなさい

 

僕は、私は、彼を守りぬく
ずっと信じているのだから

 

いくら祈っても、いくら望んでも
誰も救いはしなかったお前よりも

 

 

[Ois Sublimen]
ミッションを説明するよ。
目的はDRAK本隊によって占拠された北極圏の旧核実験場北セヴェルヌィにあるイクバールの大規模コジマ施設奪還だ。

 

相手はネクスト4機の舞台によってプラントを占拠しているみたい。
機体は「ホワイト・グリント」のコピーである機動戦用軽量機、レオーネのY01-TELLUSをベースとした赤い中距離機、
GAのGAN01-SUNSHINE-Eをベースとした黒い高火力武装機、そして、オーメルのTYPE-HOLOFERNESをベースとした黄色い高機動戦特化機の編成だ。

 

あれを陽動として企業への襲撃が想定されるためネクスト戦力は裂けないみたいだ。
それ故に君にはネクストとしては単機で彼らに挑んでもらうことになる。
正直かなりの苦戦を強いられると思う。

 

その代り、企業はできる限りの大規模支援部隊を展開する予定だ。
盟友ローゼンタールとイクバールからはノーマル部隊に加えて精鋭 バーラット・アサド、
GAからは攻勢部隊に大型多脚兵器、吸収されたBFFからは氷原の猟兵 サイレント・アバランチ、
インテリオルからは飛行要塞フェルミの編隊、うちは飛行型ノーマルにプロキオン砲部隊、
更にはレイレナードから鹵獲した自律型ネクストさえも出すつもりらしい。
どうやら旧六大企業がそろい踏みの大部隊が出るみたいだね。

 

あの悲惨な戦争で疲弊した企業群もこれを機に本気で潰しにかかるつもりなんだろう。
この戦いが終わればあの戦争の後に起きたこの騒動もきっと落ち着きを見せ始めるさ。

 

だから、生きて帰ってきてよ。ジャルジーと一緒に、待ってるからさ。

 

 
  [このミッションを受諾しますか?]  
 [  OK  ]  [CANCEL] 
作戦エリア北セヴェルヌィ コジマ施設
作戦目標敵ネクスト部隊撃破
 

 

[Ois Sublimen]
忍者、その機体は?

 

[Kitanai Ninjya]
……鬼哭、昔の機体だ
精鋭4体を相手にすんだ、好きな武装くらいさせろ

 

[Ois Sublimen]
わかったよ
まもなく、コジマプラントが見えてくるころだ

 

衛星からの映像だとまだ4機で占拠してる
もうすぐ投下するよ

 

[Kitanai Ninjya]
……その前にやることがある
オイス、アバランチの隊長だけに回線を繋いでくれ

 

 

俺の『策』にアバランチの隊長は動揺していた。

 

そりゃあそうだ。
今まで『こんなこと』を脅迫目的以外でしようとした奴はいない。
だが、こうでもしなければ俺たちは勝てやしない、生き残れやしない。

 

結局、奴は了承した。
切羽詰ってるのはお互い様だからか、責任は俺が負うといったからかは知らねぇが、
奴は指示した『頃合い』か攻勢部隊の侵攻開始と同時に侵透させていた部隊が『策』を成すと通達してきた。

 
 
 

最終ブリーフィングと策の準備を終えて機体の動作・構造に問題がないか、AMSを通じて確認する。
自分の体ではこんな事はできないというのに、すっかり慣れたものだと軽薄な笑みが頬を歪める。

 

そして、その動作を確認できた場所から伝達系を通して制御系へ干渉、自身と機体を重ねる。
ネクスト輸送のために施された処理による極低温が情報として伝わり、青白く霞む鋼鉄の扉が実際の視界と被るように目の前に現れる。

 

「システムオールグリーン、投下準備完了した 開けろ」
「……幸運を」

 

鉄の扉が鈍い音を立てて開く。
目下を臨むのは暗雲が立ち込める下界と、そこから垣間見える無機質な白に染まった氷河。

 

外に、その凍てついた嘆きの川に身を投げる。
それと共に動力系に伝達し、コジマ粒子を生成、プライマルアーマーを展開する。

 

ネクストの戦術レーダーが反応しない高高度からの降下。
だが、極低温処理コーティングがコジマ粒子と干渉して白い雲を生む。天候が悪いとはいえ気づかれるであろう。

 

目の前には空を覆う灰色の雲の陰が駆け抜けてゆき、
降下姿勢を整え、機体の足先から惹かれる白い霧が視界を覆っていた。

 
 
 
 

その中で俺はそれを、自分の策を、その答えを機体の目を介して確かに見た。

 
 
 
 

緑の閃光で染まった地平線を。

 

 

後悔がないといえば嘘になる
だが、死んでしまえば元も子もない

 

これは策だ
生き残るための策だ

 

生き残るためならばどんな姑息な真似でもしよう
勝つためならばどんな卑怯な手段でもしよう
死んでしまえば元も子もないのだから

 

[Kitanai Ninjya]
鬼哭、降下完了
これより作戦行動に入る

 

[Ois Sublimen]
……忍者、通信だ
上層部がそっちに回線を繋げって

 

[Kitanai Ninjya]
……あ?

 
 
 

[Sinki]
……忍者、貴方何をしたのかしら

 

吐息を聴くだけでも怖気が走る忌々しい女の声
だが、その端に見える苛立ちがどす黒く濁った胸を透く

 

[Kitanai Ninjya]
何だオーナー?

 

俺が戦術的な理由で部隊に指示しただけだ
『一番厄介な黄色い機体側のプラントを一個、派手にぶち抜け』ってな

 

一番厄介な相手
粗製が無理して動いている煽動家共の頭目よりも厄介な相手

 

ありゃ、たしかあんたの娘だろう?
なあ、オーナー

 

[Sinki]
……っ!
……何故、護衛対象にそんなことをしたのかしら?

 

[Kitanai Ninjya]
『護衛対象』?んなこと言ったか?
言ったよな『アイツらを潰せ』と、そのための『布石』だ。

 

それが何の問題か?施設もまだ大部残ってンだろう?

 

ああ、布石だとも
あんたの事情なんぞ知ったことか

 

俺がすることはあんたに言われたことだけを遂行するだけだ
俺はそこまで賢い番犬じゃあないぞ

 

[Sinki]
……私への当て付けのつもりか?

 

[Kitanai Ninjya]
うるせぇ、戦場に私情を持ち込むな
早くも呆けたか?奴等を潰せと言ったのはお前らだろう?黙ってそこで見ていろ
オイス、回線を切れ

 

[Sinki]
待て!きさ

 
 
 

誰が貴様の望みのために戦うものか
血濡れの靴と、血濡れの手のひら
お前と俺、お互い違うのはそれだけだろうに

 

お互いに、幸福になることなんざ許されねェよ
いいや、お前が幸福を望もうと俺が絶対に許さねェ

 

[Ois Sublimen]
……往くのかい?

 

[Kitanai Ninjya]
今更退けねぇって言っただろ
後衛部隊にこう伝えろ

 

『俺が前に出て奴等を引き寄せてくる、進攻はそれからだ』ってな

 

往くぞ

 

[Ois Sublimen]
……うん

 

ミッション 開始

 

 

[Rumia Jarnefelt]
……っ!
機影が近づいてきます!

 

あれは……レイレナードの?
所属不明機、来ます!

 

[Ois Sublimen]
……こちら鬼哭、オペレーター
企業連合より、占拠部隊に最後通達

 

これより10分以内に当施設領域から撤退しなければ
企業連合による攻勢部隊により、貴方達を蹂躙する

 

[Rumia Jarnefelt]
……っ?!……貴方は!

 

[Kitanai Ninjya]
まあ、そう言うこった

 

戦争末期のピース・シティ以来か?
あの時は世話になったな、ルーミア・イェルネフェルト

 

…アナトリア失陥の元凶共

 

先の戦争の英雄
それが今では反動勢力の頭目

 

奪われた物は帰ってこないのに、何故お前は戦うのか
‘’何故だ、何故お前はまた戦わなければいけなかった?’’

 

[Kirisame Marisa]
亡霊の中身はハングドマンか!
よりにもよって一番鬱陶しいのが来やがった!

 

[Alice Margatroid]
……プラントを撃ったのは……あの人の命令かしら?

 

[Kitanai Ninjya]
…………いいや、お前らを弱らせるための俺の独断だ

 

あの賢しい女はさっきまで俺にがなりたてていたよ
一番厄介なお前を吹き飛ばしたのをな

 

[Alice Margatroid]
……独断?
……貴方、一個人の意思でアレを爆発させたの?

 

……汚染の拡散を……知っての上で?

 

[Kirisame Marisa]
……正気かお前は!
何故お前らは私達を阻むんだ!
まだ続けるつもりなのか?!この不毛な争いを!

 

[Kitanai Ninjya]
笑わせるな、俺と貴様らと何が違うってンだ、え?
アスピナのオブライエンの人柱で終えたあの戦争にまた火を投げ込んだのは、
あの戦争で荒んだ世界に俺達の様な災厄の塊を蠢かせたのは何処のどいつだ?

 

お前らは、現れて何をした?
あの戦争で煤けた世界にまた戦いの火を放っただけじゃねェか
聞こえのいい理想だけ振りまいて、残ったのは焼け野原と砂漠だけじゃねェか

 
 
 

結局、何も変わりゃしねェじゃねェか

 
 
 

[Kirisame Marisa]
……その火種を生みだしたのは、誰だ
お前達だろう

 

[Rumia Jarnefelt]
……

 

編隊の後方で光るのを捉え、瞬間身を翻す。

 

[Kitanai Ninjya]
…っ

 

超高速の弾丸がプライマルアーマーをえぐり、飛んで行く
そちらを睨むと、赤い機体がこちらにレールガンを向けていた

 

[Hakurei Reimu]
……そこまでよ
陰謀屋の飼い犬がよく吠えるじゃないの

 

元はといえばアンタらが始めたことでしょう
あの戦争も、その末路も

 

[Kitanai Ninjya]
……あ゛?

 

[Ois Sublimen]
……交渉決裂か
攻勢部隊、起動を開始してください

 

……脅して退くとも、わかりあえるとも思っていなかったさ
けど、僕達も君達も、結局は『小さな存在』なのさ

 
 
 

その一言の後、
氷原から擬装したノーマル部隊がクレバスより姿を現し、
遠方で大型多脚兵器や飛行要塞がプライマルアーマーを展開した燐光が揺らめく。

 

無機質な氷原から、鋼の影が浮き上がり、
それは暗雲と吹雪で視界を阻まれた地表を覆い尽くし、
その陰は鋼鉄の波のようにゆっくりとこちらを目指して押し寄せ始めた。

 
 
 

[Kirisame Marisa]
っ?!
……何だアレ!
地面が、埋まってやがる!

 

[Rumia Jarnefelt]
……何で、どうして

 

[Kitanai Ninjya]
……何故か?何故かって?

 

わからねぇのか?やり過ぎたんだよテメェラはな!

 

笑わせるな
結局、お前らがばら撒いたのは
聞こえのいい理想とその代償の災厄だけで
それを上書きするために更なる災厄がやってきた

 

それだけだろうに

 

争うために、また戦うしかねェ
何も変わらねェ、変えられねェんだ

 

[Kirisame Marisa]
チイッ、本当に面倒なことになってきやがった!

 

[Alice Margatroid]
……くっ、今の私は足手まといにしかならないわね

 

[Rumia Jarnefelt]
…っ
貴方、哭いて、いるの?

 

[Hakurei Reimu]
アンタ達はどうしてでも全てを縛り、全てが欲しいとでもいうの?
世界を汚染し尽くしてでも!人類が堕落してでも!

 

そのための走狗でいることを恥じないのか貴様は!!

 

[Ois Sublimen]
っ!いけない!

 
 
 

走狗?恥?
生きるために気にしてられるか

 
 

汚染だ? 堕落だ?

 
 

大業な御託だけを並べて自由であるのに何も変えられなかった貴様らが

 
 

『アイツラ』のように大義名分を持つが如く振る舞って
世界を戦争で焼き尽くして恥じることがない貴様らが

 
 
 
 

俺ヲ見下シ ソレヲ吠エルカ

 
 
 

[Kitanai Ninjya]
あ"あ"?!
厚顔無恥の同族が偉そうにほざくな!

 

何が汚染だ!何が堕落だ!
殺すしか能のない狂犬が吠えるな!!
革命家気取りの戦争屋風情が!!!

 

[Hakurei Reimu]
っ?!

 

[Ois Sublimen]
駄目だ忍者!落ち着いて!

 

攻勢部隊、ネクスト・オペレーターより!
陽動失敗!進攻を急いで下さい!

 

[Unknown]
……言葉、不要……

 

[Rumia Jarnefelt]
やめてっ!どうしてっ!

 

[Kitanai Ninjya]
テメェら全員この氷原で腐り落ちろ!

 

消えろイレギュラー!!!!!

 

 

Remember on your memory

 

武装勢力DRAK本隊、「ホワイト・グリント」、シュラインメイデン、ブレイジングスターとの戦闘。
場所はACfAのBFFコジマ施設・スフィアとほぼ同じ地理状況である。

 

敵機はジョシュア搭乗機と全く同じの「ホワイト・グリント」
Y01-TELLUSをベースにパルスガン・レーザー・レールガンを装備した「シュラインメイデン」
GAN01-SUNSHINE-Eをベースにバズーカとガトリング、分裂ミサイル、多連装ミサイルを装備した「ブレイジングスター」の3機。

 

この戦闘のみ機体がTYPE-JUDITHベースの「ハングドマン」ではなく、03-AALIYAHベースの「鬼哭」となる。
内装は一部がエネルギー効率のいいユディトの物に換装されており、武装はアサライ・ブレード・プラズマ・PMミサイル。
継戦性能はネクスト3体を相手にするには明らかに不足しているが、プロキオンやフェルミ、自律ネクストで構成される支援部隊の攻撃はかなり強力な上、相手は開始の時点でAPが90、80、70%でホワイトグリントは以外はAPが30%を下回ると戦線を離脱するため、シビアな戦闘になるが無理な戦いではないだろう。
ホワイトグリント以外の機体を撃破するとムービーが挿入される。

 

[Kirisame Marisa]
....ごめん!これ以上は無理だぜ!
撤退する!

 

……このままあいつらの意のままになんてなってたまるか

 

[Hakurei Reimu]
くっ…私もあんたと同じ穴の狢ってこと…?
結局、私達のしてきた事は…

 

…けど、まだ戦わなくちゃいけない
まだ、何も変えられえてないんだから

 

[Rumia Jarnefelt]
....考えてください
何のために、戦うのか

 

[Kitanai Ninjya]
生きるため!
…それしかねぇよ畜生が!

 

[Rumia Jarnefelt]
........っ!

 

 

最精鋭を相手にして軋んだ機体が火花を上げ、
伝達系が混線とショートを起こして、ノイズの掛かった不快な情報が頭をよぎる。
逼迫する戦況、急激な上下移動、潰れるような急速移動で
目の血管が破れて視界は赤く染まり、ヘドは何度吐き散らしたか覚えてはいない。

 

だがそれを気にしている余裕はない。

 

赤く染まった視界に浮かぶ映像を整え、制御系の回路が混線・切断されてゆく中で
不快で乱雑な情報を統合して機体を制御し、ただ武器を構える。
鋼の波の中で白く瞬く閃光に、弾を撃ち込むためにだけに。

 

戦わなければ、勝たなければ。
''死にたくない、死にたくない。'

 
 
 

「....小さな存在だな....俺もお前らも
結局....何も変えられやしねぇ」

 

「....変える....ことな、ない」

 

「....っ」

 

「....大事な....を守るため
....それ....けで....いい、だが」

 

「....なあ、お前ら
....俺も....そんな風に生きれたんなら
....よかったんだろうか?」

 

「....さようなら
....縛られた....リンクス
....ごめんなさい」

 
 
 

赤く歪んだ視界、霞む意識の中で
女のか細い掠れた声が耳に響く

 

プラズマキャノンも、ミサイルも撃ち尽くした
アサルトライフルも残弾は殆どない

 

映像に浮かぶ白い閃光が此方を睨み、くすんだ白い影が燐光を噴き上げる
それを見てバックブーストを噴き上げ、地面をけり上げようと足をたわめる

 

だが、たわめた関節は伸びることなく、悲鳴と火花を上げ、機体は無様に崩れ落ちる
脳を引き裂く様なもはや情報ですらない電流と、やかましいアラートを畳み掛けて、
悲鳴とも怒号ともつかない声を上げながら、各種ブースターを噴き上げて無理矢理立ち上がる

 

接近する機体の情報を乱雑に交錯する情報から探り当て
点々と消えかけた複眼の視覚素子からそちらを睨み、弾を放つ
その閃光は狙撃砲の高速弾を、高エネルギー砲の熱線を、霧霞の様なミサイルを振り切り
ぼやけた視界でFCSだけを頼りにこちらが放つ弾を弾きながらこちらへ突っ込んでくる

 

「逃げて!お願いだから!」

 

聴き馴染んでいたのに、聴いたことのないような女の声が、響く。
赤黒く染まっていた視界に浮かぶ、酷く乱れた映像を睨み、白い閃光の影を捉える。
だが、闇雲に撃った銃からは弾薬もセルも尽き果てた。

 

「忍者!諦めるな!」

 

普段はおどけた様に軽い奴の檄が、響く。
ノイズで酷く乱れた乱れた映像を鮮明にし、相手の姿を確かに捉える。
左腕のブレードを振りかぶり、アサルトライフルを眼前に構える。

 

眼前に汚れた白い死神が高熱の刃を引き下げ、光をまといながら迫る
それに向かい合いながら崩れ落ちそうな腕でライフルを銃剣の様に構え、途切れかけたブレードを展開する。

 
 
 
 

....死にたく....ねぇなぁ

 

血涙と血ヘドで濡れた頬を歪め
情けなく鳴る歯を気にすることなく
そう 呟いた

 
 
 
 
 
 
 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」

 

けたたましい雄叫びと共に、ノイズで歪んだ画面が唐突に白く染まる。

 

それに次いで現れたのは、炎に包まれて身を仰け反らせる白い死神。

 

[Ois Sublimen]
救援!イクバール社・斬鉄到着!

 

ノーマル部隊!お願いだ!彼を守って!

 

[commander]
了解した!

 

全軍!我らの英雄を守れ!

 

 

暗転した視界 混濁した意識から 聞こえる声で
自分の役目は 終わったことを 覚った

 
 

また 生き残った

 
 

嗚咽か 咳か
口から漏れる

 
 

何が英雄だ

 
 

例え かつての大事な者を目の前にしても
例え 将来人類が壊死しようとも
例え どんな高尚な理想を掲げようとも
兵士に出来ることは たった一つだけだ

 
 

返り血で穢れながら 汚物にまみれながら
生きるために戦うことしか出来ない

 
 

結局
何も変わりはしない
変えられはしないというのに

 
 

だが

 
 
 

....クククッ

 
 

....ハハハッ!

 
 

ヒャアハハハハハハ!!ハハハハ!
ハアアアアアアアアハハハハハ!!!!

 
 
 

 

記憶には残っていないが
俺の気を違えた様な笑いは、あの戦場の味方を奮い立たせ、敵を凍てつかせたらしい。

 
 

世界の終わりを垣間見る様な戦争で、
あの戦いの果てで、俺は一つ、答えを得た。

 

それまで俺は「生きたい」がために戦っていたってのに
その「生きたい理由」を見つけていなかったってわけだ

 

まるで兵卒か獣が戦う理由
最悪の茶番のオチのようだろう?

 
 
 

あの時の叫びが何だったのか、今でははっきりと思い出せない。

 

最悪の茶番に対する嘲笑か、変わらない世界に絶望した慟哭か、
それとも、ようやく生きる意味を見つけられた安堵か。

 
 
 

....だが

 

ここに来るまでに俺は
あまりにも失い過ぎた、それ以上に奪い過ぎた。
....その後悔だけは、確かに覚えている。

 

 
 

....

 
 
NEXT MISSION
・・・?

 
クリア報酬EB-O700SYS
腕部兵装
汚い忍者機「ダーティストライダー」が装備する格納レーザーブレード「EB-O700」のカスタムタイプ。
ブレードのエフェクトが橙から白に変更されている他、衝撃力・威力が向上している