シナリオ/真月

Last-modified: 2023-07-25 (火) 13:59:59

イベント名

真月

概要

シナリオ傾向:シリアス[有] コミカル[薄] ほのぼの[薄] 恋愛[] 欝、人死に[有] 百合、大統領ネタ[]

登場人物関係:登場人物の制限[] キーキャラクター[依姫、豊姫、ゴルベーザ] 敵対キャラクター[マイナス、クリエイター]

攻略関係:イベント発生時期[] 総所要日数[] 他シナリオとの平行[不可] 戦闘難易度[有頂天] 攻略中ヒロインの関与[]


突如として消えた召喚獣たち。
それは幻獣たちのプライム(原初)が奪われたからであった。
幻獣たちを奪い去った謎の少女、マイナス。その目的とは?

発生条件

  1. 二週目以降である。
  2. 召喚士のレベルが75以上である。
  3. 契約した召喚獣の数が6体以上である。
  4. 以上の条件を満たすと発生する「カーバンクルの声」の選択肢で「耳を傾ける」を選択する。

攻略

月の帰還

全国各地で、召喚獣が消えるという噂が広がっていた。
召喚士として一定の実力を得ていたPCは、カーバンクルからその異変について聞いていたのだが、これといった対策も打てぬまま召喚獣たちの力が消えていくのを歯痒く感じていた。
そしてカーバンクルもまた、遂に消えた。

 

「月の都に、何かがある」

 

そう言い残して。

 
 
 

夜、月の都。
そこは今まさに戦場と化していた。
どこからともなく現れた魔物たちの襲撃を受けていたのだ。
十分な迎撃の準備があれば容易く撃退できただろうが、多くの者が睡眠中であった時間帯ということもあり、街中が混乱に陥っていた。
豊姫と依姫の綿月姉妹は魔物たちを次々と撃破していったが、気に掛かることがあった。

 

空に月が二つある。

 

いつか月の民が帰るべき穢れ無き星が、もう一つ。信じられない光景ではあったが、今は放って置くしかなかった。
今は反撃の準備を整える時間が必要だ。
そのために、豊姫は自身の能力で早々に住民たちを安全な場所へ運び、依姫は一人殿を務めることにした。

 

その時、満天の星空を切り裂くように巨大な翼が空を駆けた。
「バハムート……?」
竜王バハムート。彼もまた、消えた幻獣たちの一角だったはずなのだが……。
しかし、依姫にとって更なる驚きは、その背に乗っていた者だった。
「マイナス?」
それは、同じ月光女学院の生徒である少女、マイナスだった。必要最低限の事しか喋らない、機械的な人物だと思っていた。今、彼女がバハムート含む魔物たちを統率しているように見えた。
「マイナス、これは何事か知っていますか?」
しかしマイナスは依姫の問い掛けには答えず、いきなりバハムートをけしかけるのだった。
依姫は持ち前の判断力から状況を分析し、適切な神霊を降ろそうとした、しかし。

 

「……いない?」

 

どうしたことか、いつもは瞬時に応えてくれる神々が、今は全く反応を示さない。まるで、突然消えてしまったかのような……。
そして思い出す、幻獣消失異変の事を。
もしや、神霊たちも……?
しかし、バハムートは依姫に考える隙を与えず、メガフレアを放つ。
依姫はメガフレアの火の中で、「何か」が自分の中に入ってくるような嫌悪感を感じていた……。

巫女、月の都へ

月の都で起きた襲撃事件の話は、瞬く間に広がった。
PCはカーバンクルの言葉を思い出し、大きな異変を悟った。
ひとまずは専門家……博麗の巫女、霊夢を頼る事に。

 

「依姫が行方不明だって聞いたわ。幻獣だけじゃなくて、どうやら神霊も消えたみたいね」
「そう、その通り。でなければ依姫が負けるはずないもの」
「驚かさないでよ」
「あんまり驚いているように見えないのだけど」
神出鬼没に現れた豊姫にも大きな反応を見せなかった霊夢。多分、紫で慣れてるからか。
「わざわざあんたが来たってことは……大きな異変みたいね」

 

月の都襲撃事件とほぼ同時に、別の噂も広がっていた。
「月の都を襲撃した魔物を統率していたのは空色の髪の少女だった」と。
そしてその少女とは、他ならぬ月光女学院の生徒なのではないか、と。

 

「私が考えるに、自分の学校を襲って得する事って無いと思うんだけど」
「ある訳無いでしょ、そんなの」
つまり、その少女が月光の生徒である事は考慮しなくても問題無いということか。
「最大の問題は、依姫が負けたという事。私が何を言いたいか判る?」
「今回の異変じゃ召喚士は役に立たないって事でしょ?」
相変わらず、霊夢の受け答えは何処かずれている。最も、PC自身が既に召喚獣を呼べないという事を証明してしまっているのだが。

 

「豊姫も知ってることは少なそうだし、ここは実際に現場に行ってみるのがいいと思うわ」
豊姫は?
「私は他にやることがあるので……後でね」

失われた星月の加護

PCを引き連れて月都へ向かった霊夢だったが、案の定門前払いを食らっていた。
「ここから先は月の都。許可の無い一般人を入れるわけにはいかない」
「私は幻獣が消える異変の解決に来たの。この先にヒントがあるかもしれないのよ」
「巫女だろうと通す訳にはいかないんだ」
「頑固ね、もう!」
仕方なく出直そうとした、その時。

 

突如として、周囲が暗闇に包まれた。
「え?」
「な、なんだ?」
見上げた空には、二つの月。
いつの間に夜に? というか、何で月が二つもあるのだろう。
そんな疑問を浮かべたPCの耳に、四足の獣の咆哮が響く。
同時に、巨大な銀色の狼が現れ、門番を襲った。
「うわっ」
情けない声を出しながらも手にした剣(ライトセーバーだった。羨ましい)を振り、狼を追い払う。
銀狼は門番を飛び越え月都に侵入する。
「追いかけるわよ!」
「ま、待て!」
霊夢の声に、反射的に反応して門番を押しのけ銀狼を追って月都へ。

 

銀狼は月都を走り回りながら、手当たり次第に周囲に攻撃していた。暴走しているようだ。
しかし銀狼の姿は、よく見れば星月の加護を与える幻獣、フェンリルそのものだった。
どうなってるんだ……?
また新たな疑問が生まれたが、とにかく今は銀狼を止めなればならない。

  • vsフェンリル
    奪われた幻獣たち
    フェンリルは闇属性耐性が高く、闇属性の攻撃や状態異常は全く通用しない。
    その代わり、闇以外の属性には耐性が無い。
    攻撃力が高く、暗闇や麻痺の追加効果を与える技を使う。3回攻撃の「エクリプスバイト」はナイトですら即死しかねない威力なので、霊夢にブリンクやストンキトンを張って貰ったり空蝉で回避したい。
    HPが20%以下になるとラストスペル「ハウリングムーン」で闇属性の大ダメージを与えてくる。闇属性耐性は上げておいて損は無いだろう。

「……グゥウウウ!!」
「どう? 目が覚めたんじゃない?」
「人間……?」
どうやら、フェンリルは正気を取り戻したようだ。それと同時に、夜が消え太陽が顔を出した。
余り月の都に長居するのは不味いと思ったが、先ほどの門番に「月の都のピンチを救った礼に、見逃してやるから早く帰りな」と言われたのでお言葉に甘えることにした。

 

フェンリルは、空色の髪の少女に操られていた、と話した。
魔物を操っていたという話もある。その少女には何らかの特別な力があるのか。
とにかく、正気に戻ったフェンリルは再び召喚獣として、各地の召喚士たちの元へ帰還した。

 

「操られている幻獣を倒せば、正気に戻って召喚獣も戻るようね。原理は判らないけど、方法が判れば実践は出来るわ」
各地を回って、暴走している幻獣たちを正気に戻せば、召喚獣も元に戻るようだ。
ひとまず当面の目標は出来たのだった。
「どこにいるか判らないし、ここは一端手分けして捜しましょう。私も一人の方がやりやすいし」
ナチュラルに冷たい奴め……。

少女マイナス

霊夢を含め仲間たちに片っ端連絡を取り、協力してもらう事にした。
流石、自慢の仲間たちだけあって、既に数体の召喚獣を解放した旨の連絡が入っていた。
負けてはいられないと、PCも一人で幻獣の捜索を続けていたのだが。

 

「おまえがPCか?」

 

突然、見知らぬ少女に話しかけられた。
質素なローブ、空色の髪、感情を読み取れない機械的な表情。
嫌な予感がした。
とりあえず、何故自分の名前を知っているか訊いてみたが、少女は答えることなく襲い掛かってきた。
しかも、傍らにはどうしたことか、依姫が一緒ではないか。
しかし、依姫の目には光がなく、どうやら魔物や幻獣と同様、操られているようだった。

  • vs謎の少女&綿月依姫
    依姫は神降ろしこそしないが万能のステータスはそのままなので普通に強敵。謎の少女はこちらの様子を見るだけで何もしない。
    何よりも、PCが一人で味方の協力を得られない状態なので、勝機は極めて薄い。
    3ターン依姫の攻撃に耐えるとイベント発生。

依姫の太刀が閃き、肌に触れる剣圧に汗が滲む。
神降ろしが無いから今は耐えられているが、謎の少女が攻撃に参加すればひとたまりも無いだろう。
どうにか逃げる算段を考えていたが、間抜けなことに小石につまづき体勢を崩してしまった。
しまった!
そう思い、覚悟を決めたが……。

 

「伏せなさい!」
耳に届いた声に、反射的に言われた通りに身を屈めた。
「ファイガ!」
上位の火属性魔法が依姫を直撃し、動きを止めた。
な、何事?

 

「間に合ったようね」
「無事か?」
豊姫と、ゴルベーザだった。豊姫の用事とはゴルベーザと会うことだったのか。
「おまえたちか」
感情の篭らない声で、少女が口を開く。
「マイナス、覚悟してもらうわ」
謎の少女の名前は、マイナスというらしい。
体勢を建て直し、豊姫とゴルベーザを加え、再度戦闘へ。
「依姫、今正気に戻してあげるからね」

  • vsマイナス&綿月依姫
    豊姫とゴルベーザを加えての再戦。
    今度はマイナスもファイガ、ブリザガ、サンダガの三属性魔法を連発してくる。
    ゴルベーザのHPと防御力が高めで、スペルカード「ひきつける」で攻撃を一手に引き受けさせることが出来る。PCが盾向きの性能でない場合は彼に任せよう。
    豊姫のスペルカード「五色甲羅の亀」は全属性への耐性を上げる効果があり、マイナスの魔法の威力を半減させられる。
    基本的には属性耐性の上がったゴルベーザかPCに盾役をしてもらいながら、踊り子の豊姫には回復・補助を、ゴルベーザかPCの内盾役にならなかった方を攻撃の主軸にしよう。

「う……」
「依姫!」
戦いの末、マイナスが倒れるのと同時に、依姫の洗脳も解けた。
「お姉様? 大変です、神霊たちが居なくなって!」
「それは判ってるわよ。今は自分の身体を心配しなさい」

 

ゴルベーザはどうしてここに?
「豊姫に頼まれたのだ。それに、私も月の民だ。月の異変を放ってはおけぬ」
ゴルベーザは穏やかにそう言った。

追憶の青

戦闘はあるがPCが介入しないため、全てイベント進行する。
霊夢とPCが月都へ向かっていたその間、豊姫はゴルベーザと接触していた。ゴルベーザは豊姫が知る限り最強の助っ人だったからだ。永琳に会わなかったのは、師匠ならこちらから接触せずとも既に動き出しているだろうと思ったからだ。
二つに増えた月に不安を覚えていたゴルベーザも、豊姫の頼みを快く引き受け、調査に乗り出した。
先日、魔物の襲撃を受けた地区は、謎の腐食を受け人の住めない土地へと変貌していた。
驚きながらも歩を進める二人。
奥には、マイナスがいた。

 

「何者だ?」
豊姫はともかく、ゴルベーザはマイナスを知らなかった。
マイナスは質問に答える事はなく、シヴァを召喚し、言った。

 

「おまえの黒竜を寄越せ」

 

シヴァを制し、マイナスを倒した二人は、少女が召喚獣を使役していることに不安を抱き、竜王バハムートの居るドラゴンの洞窟へと足を踏み入れた。
そこにいたバハムートは、既に石化していた。
豊姫が言うには、肉体も精神も別次元に囚われてしまっているらしい。
上位の召喚獣であるバハムートがやられた以上、恐らくは他の召喚獣たちも同様だろう。

 

帰り道、二人は再度マイナスの襲撃を受けた。
今度はリヴァイアサンを召喚するマイナスをどうにか撃破する。

 

マイナスの言動から、豊姫は彼女が幻獣狙うのは何故か推察しようとするが、情報が足りなさ過ぎた。
「いつも後手に回ってばっかりじゃねえ」
「先手を打つことは出来ぬのか?」
「……月の民はいつだって、月に帰る準備を整えてあります。『魔導船』の封印を解きましょう」
「あのもう一つの月に直接乗り込む気か」

 

そう会話した二人は、マイナスの方を見やって驚いた。
倒れたマイナスの傍らにもう一人、マイナスに瓜二つの少女が立っていたのだ。
いや、それは間違いなくマイナス本人に他ならなかった。マイナスとは個人名のことではなかったのだ。
「幻獣もお前たちも役目は終わりだ」
そう言い残し、マイナスは瞬時に姿を消したのだった。

 
 
 
 
 

現在。
いくえ不明だった依姫は戻ってきたが、幻獣同様に消えてしまった神霊は戻ってこなかった。
数日経つ頃には、仲間達の活躍によって多くの奪われた幻獣が解放されていた。それでも、全てとは行かなかったが。
謎の少女、マイナスが姿を現す回数も日に日に少なくなっていた。ひょっとしたら、既に目的を達成しつつあるのだろうか。
このまま手をこまねいている訳にはいかない。何とかこちらから手を打つことは出来ないだろうか。
そう考えていると、ゴルベーザから連絡があった。
「月へ向かう魔導船の封印が解けた」と。

真月

月へ向かう準備を整え、魔導船の元へ集った一行は、そこで永琳と出会った。
「八意様!? どうしてここへ?」
「まず勘違いしないで欲しいのは、私には月都には何の義理も無いってこと」
「え?」
一瞬綿月姉妹が目を輝かせたが、永琳の返事を聴いて不安げになる。
「月の民や月がどうなろうと、私の知ったことではないの」
「や、八意様……」

 

「でも、弟子達の困り事は別」

 

姉妹を見ながら、永琳はふっと柔らかい笑みを浮かべた。
「月に用は無いけど、貴方達には協力するわ」
「あ、ありがとうございます」
相変わらず掴み所の無い人だ。

 

「魔導船に乗りもう一つの月へ向かったとしても、豊姫の力を借りれば、再びこの青き星に帰ることが出来るだろう。だが、我々にはどれほどの時間が残されているかは判らぬ。余り猶予があると思わないことだ」
ゴルベーザに釘を刺され、一同はコクリと頷いた。
続々と魔導船に乗り込む。
これから戦場に向かうのだと判っていても、宇宙へ飛び出す興奮は隠し切れるものではなかった。

 

船は想像以上の速度で空を駆け上り、大気の層を抜け、煌々と空に浮かぶ月へと進路を向けるのだった。

 
 
 

もう一つの月へ到着すると、早速マイナスが彼らを出迎えた。
すわ戦いか、そう身構える一行とは裏腹に、マイナスは感情の篭らない声で告げた。

 

「おまえたちが『真月』まで来るとは思わなかった」

 

「真月?」
それが、この月の名前なのだろうか。
「後悔することになる……」
そう言い残し、マイナスは姿を掻き消した。

 

「後悔か。ここで逃げ帰った方が、よっぽど後悔するでしょうね」
霊夢の言葉に同意しつつ、一同はもう一つの月……『真月』へと挑むのだった。

  • ダンジョン「真月」
    ここから長いダンジョン攻略の始まり。
    パーティには霊夢、豊姫、ゴルベーザ、依姫、永琳に加え、PCが連れてきたメンバーで結成される。
    ただ、依姫は最大の武器である神降ろしを奪われたままなので、侍の動きしか出来ない(それでも能力が高水準なので普通に強いが)。
    また、拠点と呼べるのは魔導船だけだが、豊姫の能力によっていつでも行き帰り可能。魔導船ではパーティメンバーの入れ替えの他、永琳が消耗品を売ってくれるため、建て直しも容易。
    無理はせず、少しずつ奥へと足を踏み入れていこう。

神霊の依り憑く月の姫

真月の攻略を始めてしばらく経つと、ふと人影が立ちはだかる。
マイナスかと思ったが、その相手は……。

 

「依姫!?」
「私が、もう一人……」

 

依姫と瓜二つの人型だった。
「偽者かしら?」
「いえ、神霊の気配を強く感じます。恐らく、私から奪った神霊たちの集合体として、綿月依姫の姿を象っているに過ぎないのでしょう」
つまり、全力依姫-味方依姫=敵依姫か。
「なんだか楽勝そうね」
「……。『綿月依姫』と戦うことは、八百万の神々の軍勢を敵に回すことに等しい。決して油断しないように……」

  • vs神霊の依り憑く月の姫
    綿月のスペルカード
    戦闘開始と同時にラストワード「天照大御神」を使用するのだが、これがこちらのパーティメンバーによっては問答無用で全滅→ゲームオーバーにする技という初見殺し。
    ゲームオーバーを防ぐためにはパーティに依姫、豊姫、永琳を入れておく必要がある。
    最初の攻撃を豊姫が捨て身で受け止め、それを永琳が素早く回復し、体勢を立て直す。
    依姫の呼びかけにより神霊たちが依姫に戻り、敵が弱体化する。
    以降、依姫がラストスペル、ラストワードに限り神降ろしを使用可能になり、逆に敵の神降ろしが不可能になる。
    後は両手刀WSを連発するステータスの高い侍というだけなので、残りのメンバーに盾役を用意してあれば倒せない相手ではないはずだ。

倒れた偽依姫が消え数多の神霊へと戻り、それらは全て依姫に依り憑き元に戻った。
「手間が掛かったけど、これで綿月依姫完全復活ね」

 

ふと、マイナスがこちらを見ていた。
「あくまで抵抗するか。だが、どう死ぬかはおまえたちの自由だ」
そう言って、また姿を消すのだった。

星喰

マイナスを追って真月の深層部へ突入する一行。
そこは、明らかに人の手が加わった、それも次世代を感じさせる不思議な空間だった。
だが、長い永い間放置されていたのか、廃墟の様に閑散としていた。

 

謎めいた空間。
捨てられた高度な技術。
未知の魔物の気配。
そして、豊姫は言った。

 

穢れを感じる。
数え切れぬ生命、文明、歴史を喰らい尽くしてきた者の穢れ。
この先に、この計り知れない穢れの持ち主がいる。

 
 
 
 
 

居住区のようなフロアを抜けると、そこにはマイナスがいた。

 

「ようやく現れたわね」
ここまで、奪われたはずのバハムートは見なかった。つまり、相手はまだ切り札を残しているということだ……。
「ここまでやってくるとは想定外だった」
どうやら彼女にとっても彼らがここまで来ること予想していなかったようで、今度こそ戦う気になったようだ。
「だが、ここから先はおまえたちとは無縁の世界。消えてもらおう、おまえたちのよく知る最強の力で……!」
マイナスが手を上げると、真月の虚空の彼方から夜色の翼をはためかせ、それは現れた。

 

「バハムート!」

 

「竜王様と言えど、あの時と同じようにはいかないわ」
「消し去るのだバハムート!」

  • vsマイナス&バハムート
    The Ruler of the Skies
    バハムートは開幕でメガフレアを放つ。偽依姫と同様、パーティに特定のキャラが居なければ即ゲームオーバーになってしまう。
    これは、依姫をパーティに組んでおくと天津甕星で相殺してくれる。しかし、ここを耐えてもまた後のイベントがあるため、PCもちゃんと入れておこう。
    マイナスはガ系魔法に加えTP技としてメテオも放ってくるようになり危険度が増している。
    バハムートは攻撃力が高いが、幸いメガフレアはイベントでしか使用しない。また攻撃も対象が単体のものばかりなので危険度はそれほどでもない。
    バハムートのHPを半分まで減らすとイベント。

「竜王様! 目を覚まして下さい!」
「……」
依姫の呼びかけにもバハムートは耳を貸さない。
それなら、とPCはカーバンクルを呼び出した。バハムートとは長い付き合いがあるカーバンクルなら説得できるのではと考えたのだ。
「バハムート! お願いだ、目を覚まして!」
「無駄だ!」
それでもバハムートは、メガフレアを構え。
「バハムート……!」
容赦なくカーバンクルの小さい身体を吹き飛ばそうとするのを、銀狼が庇った。
「フェンリル!」
「バハムート! 支配が解けぬとあれば……止むを得ん!」
フェンリルのハウリングムーンに合わせて、バハムートはメガフレアで応戦する。
しかし、フェンリルの全力もバハムートには及ばず、押し負ける。巨大な炎の中でフェンリルが悶える。

 

「とどめだ……!」
やはり、駄目か……!?
マイナスがバハムートに最後の攻撃を命令する。
「……」
しかし、何故か竜王は、身動ぎしなかった。
「どうした……?」
バハムートは突如振り返り、マイナスへ向けてメガフレアを放った。

 

「ば、バカな……!」
炎に焼かれながら、マイナスは驚いた。
彼女が始めて見せた、感情を持った表情だった。
「我らを支配下に置いたつもりか?」
「何?」
「我らは力のみにあらず!」

 

「真の光が宿っているか、最後の審判は……この竜王バハムートが下す!」

 

「リ、リフレ……」
「無駄だ!」
バハムートが放ったメガフレアは少女の華奢な身体をいとも容易く消し飛ばした。

 

「竜王様……」
「そなた達は、死なせるには惜しい」
「さっきまで操られていたのを偉そうに」
言っちゃ駄目だって。

幼きマイナス

バハムートを取り戻した以降、マイナスが普通にエンカウントするようになる。
疑問に思いながらも、豊姫とゴルベーザは知っていた様子だった。
更に進むと、謎の装置の中に入れられた大量のマイナデス(マイナスたち)を見た。

 

「どういうことなの? 影分身?」
「マイナスとは、人工の生命だったということだろう」
「ふーん」
自分から訊いておいて興味なさ気な霊夢は、どうやらある一点を見ていたようだ。
彼女の視線を辿ると、そこには他のマイナデスと同様に装置の中に眠るマイナスがいた。ただ、その姿は今まで見たマイナデスと違って幼い。マイナデスが人工生命体だとしても、普通の人間のように成長するのだろうか。
霊夢が興味本位で近付くと、装置が勝手に開き、幼いマイナスは目を覚ました。

 

「おまえは……?」
「博麗霊夢。巫女兼妖怪退治屋」
「指示を……」
素っ気なく対応する霊夢と、素っ気なく順応するマイナス。奇妙な光景だった。
ひょっとして、鳥の雛みたいに刷り込んじゃったのかも。
「えー?」
霊夢は困ったような、別に何とも思ってないような顔をするも、自分を見る純粋な瞳と目が合うと流石に気が引けたのか、こう命令した。

 

「ここで待ってなさい。大人しくね」
「待っていればよいのか? ここで……」
「そうそう。いい子で居られる?」
「理解した……」
幼いマイナスは霊夢の指示を疑うこともなく、従った。

進化の迷走

最奥部は近い。
「そんな気がする」
と呟く霊夢の言葉を、しかし疑う者はいなかった。
この先から放たれる異常な感覚は、PCも感じていたのだ……。

 

そして、見つけたのは巨大な機械に包まれた、シェルターのような物体。ここが一番奥の様だ。
「これが、マイナデスの主?」
「この異常な静けさは……」
ふと、霊夢が霊撃札を構え、投げつけた。
シェルターはそれを弾いたが、僅かながら傷つける事が出来た。彼女に習って、他も次々と攻撃を加える。
シェルターは時折、魔法で反撃をする事もあったが、大した抵抗ではなかった。

 

やがて、シェルターは脆くも崩れ去り、内部にいた者が姿を現した。
それは人間に似た姿だったが、全身が淡く青く発光していた。さながら宇宙人のようだと思ったが、そういえば宇宙人だった。
「何よ? どんな怪物が現れるのかと思ったら」
「いえ……見られているわ。心の中まで」

 

「……試してみよう。理解できるかどうか、この私の言葉を……」

 

喋りだしたそいつは、なるほど永琳が言うように心を探られているかのような不快感を感じさせた。さとりと似たようなものだが、相手が人間ではない以上、警戒心は自然と強まる。
「勝ち目がないから、話し合おうって魂胆かしら」

 

「気付いているだろうが、私がマイナデスの主だ。生命の進化の実験のため、と言えば理解してもらえるだろうか? 私はマイナスを君たちの星に送り、君たちの進化の過程を記録させていた」

 

進化を記録?
「……なるほどね。月読命と同じことを考えていた訳ね」
永琳は一人で勝手に納得していたが、今は彼女に詳しく訊く気にはなれなかった。

 

「彼女たちマイナデスも、多くの記録から私が創り出した最新の実験体だ」

 

お前が我々の星を観察していたことは判った。では、何故マイナデスに攻撃させた?

 

「残念だが、時間だ。やはり、君たちでは私を満足させることは出来なかったようだ。進化に失敗した劣等種が世界にはびこるなど私は決して許すことができない」

 

「その辺は月の民とは違うか」
「冗談じゃないわ、そんな勝手がある!?」
霊夢の激昂にも、彼は涼しげだった。
「マイナデスや真月の創造主……クリエイターとでも呼びましょうか。貴方は、何故私たちの星の観察を始めたの?」
永琳の問いに、彼……クリエイターはゆっくりと答えた。

 

「遠い遠い昔……君たちの星とよく似た青き星に私は生まれた。
 我々は繁栄の限りを尽くした。その大地を蝕み、貪り尽くすまで……。
 一部の識者が気付いた時には、もう後戻りできなかった。
 我らは故郷の星を捨て、他の星に安住の地を求めたのだ……」

 

「で、私たちの星に目星を付けたって訳ね」

 

「そうだ。だが、その頃には長い永い年月が過ぎ、世代交代を繰り返していた。
 だが、人工的に作り出した環境では、我々の生命力は劣化の一途を辿るしかなかった……。
 この真月は、その成れ果て……。そして私は、その最後の生き残りだ」

 

「…………」
言葉も出なかった。
クリエイターの経験してきた事の壮絶さは、せいぜい数十年しか生きられない我々人間には、想像も出来なかった。

 

「我らは、どのような文明を築き、どのように進化すべきだったのか……。
 私は答えを求め、実験を繰り返し、その過程や結果を記録するためにマイナデスを生み出した。
 それを生命の存在する可能性のある多くの星々へと送り出した……」

 
 
 

「う……」

 

突然、クリエイターは呻き、苦しみだした。

 

「残念だが……もはや限界のようだ……」

 

えっ!?

 

「外骨格で制御していた化学変化が……!
 私の脳にも……へんかが……ハジマ……タ……!

 

「待ちなさい! あんたにはまだ聞かなきゃいけないことが残ってるのよ!」

 

「オシ……エテ、クレ……
 ワレワレハ……ドウ……! イキルベキダッタノ……ドゥワアアア……!!」

 

その声色に、最初の冷静さは微塵も感じられなかった。
狂ったのだ。押し潰されたのだ。
時間という名の重力に。

 

「トメテクレ……ワタシヲ……」

 

その切実な願いに、青き星の戦士たちは、無言で武器を構えた。

  • vsクリエイター
    生命の戦い
    全体ディスペルの「ブラックホール」やHPを大きく回復させる「再生」、全体ドレインの「融合」、単体大ダメージの「分裂」など多彩な技を使う。
    更にTP技として全体大ダメージの「炸裂」も絡めてくる。
    ただ、意味もなくブラックホールを連発したり、単なる自爆ダメージだけの「転移」を使ったりと隙も多い。
    殆どの状態異常は効かないが、スロウは通用する。

「ホウカイガ、ハジマル……。ワタシモ、コノシンゲツモ……。ニゲ……ロ……!」

 

それが、クリエイターの最期の言葉だった。
クリエイターは死んだ。
だが、彼が残した災禍は死んでいなかった。

 

「こいつ……見境なく増殖してるわ」
「ここにいれば、我々も飲み込まれるぞ!」
クリエイターは次々と増殖を繰り返し、空間を埋め尽くそうとしていた。
「お姉様!」
「駄目よ! ここと他の空間を繋げたら、クリエイターがそっちの空間まで侵食するわ!」
つまり……。
「自分の足で逃げろってことよ!」

 

仕方なく、走って真月を脱出することになった。
少しでも足を止めれば、すぐに増殖を続けるクリエイターが道を塞ぐ。
だが、それは既に崩壊を始めたものだ。
まともな攻撃が出来ず、自ずから瓦解してゆく。
「創造主も哀れなものだ……」

 

脱出する途中、あの幼いマイナスを見つけた。
「あんた、まだ居たの!?」
「指示通り、ここで待っていた……」
「そんな暢気なこと言ってると……!」
すぐに、クリエイターが追いかけてくる。
数回攻撃するとあっさりと崩壊するが、そう何度も相手にしていられない。
すると、マイナスが一行とクリエイターを分断するように立ちはだかった。

 

「その子供を頼む」

 

マイナスはそう言ってケアルガを唱えこちらの傷を治すと、崩れ落ちていくクリエイターに飲み込まれた。
「……ああっもう!」
霊夢は幼マイナスを抱きかかえようとして、案外重かったらしくよろけた。
「ゴルベーザ!」
「いいですとも!」
咄嗟の判断で、一行の中で最もガタイの良いゴルベーザに幼マイナスを抱かせ、逃走を再開する。

 

その途中で何度もクリエイターに追いつかれ、その度にマイナデスがクリエイターを抑えた。
「その子供は私たちだ」
「その子供は私たちの未来……」
「創造主、貴方は……」
「貴方は、我らの父……!」
そう言って、次々とクリエイターの崩壊に巻き込まれるマイナデス。
そんなことを幾度か繰り返すと、クリエイターの声がもう一度聞こえてきた。

 

「ア……
 アリ……
 ガ……
 トウ……」

 

それでもう、悔いが無いとでも言いたげに。
増殖した全てのクリエイターが、完全に崩壊していった。

 
 
 

魔導船。
クリエイターの増殖が止まったことで、豊姫の能力を安全に行使できた。
既に真月を脱出した一行は、青き星から遠ざかる真月を見た。
「消えてしまうのかしら、あの月……」
「最後の最後で遠ざけてくれたのかもね、あいつ……」

クオレ

「クオレー!」
「なんだ?」
チルノの呼びかけに空色の髪の少女は、外見からは想像できないくらい、ぶっきらぼうに応えた。
「なんだ? じゃないよ。なーに? って言わなきゃ!」
「な……に?」
「そうそう! そっちの方がいい感じよ」
サニーにたしなめられ、クオレは僅かに困惑しながらも口調を改めた。

 

あの幼いマイナスは、「クオレ」と名付けられ、ファイナル幼稚園に預けられることになった。
最初は感情に乏しかった彼女も、個性豊かな園児に囲まれたせいか、徐々に明るくなっていった。

 

「ブロント!」
「ヤバイ! 真月の忘れ形見(クオレ)だ!」
目ざとくブロントさんを見つけたクオレは、嬉しそうに彼の元に駆け寄った。

 

「遅い!」
「捏造するなよとんずらでいつもなら着かない時間できょうきょ駆けつけたでしょう?」
「じー」
「……すいまえんでした;;」
「なら今日はたくさん遊んでくれ」
「いいぞ」
「封印が解けられた!」
「だが幼女が魔法を使うのはずるい」
「わかった。魔法は使わない」

 

そんな微笑ましいやり取りの末、ブロントさんはクオレと遊んであげるのだった。
別にロリコンとかそういうのは関係なくて。

 

それが(クオレ)だから。

報酬/称号

  • 召喚獣「バハムート零式」
  • 召喚石「クオレ」
  • 腰装備「秋月のベルト」
  • 肩装備「天衣無縫」