SS/【祭作品】フランの日記

Last-modified: 2013-11-12 (火) 09:22:01

【祭作品】 フランの日記
名無し
【注意!】
・陰陽鉄学園モノの設定を使用したSSです。
・残念な内容。文法とか日本語がおかしい。
・勝手な解釈、独自設定の雨嵐。
・コレジャナイ感満載、産廃要素の数え厄満。

これらの一つでも見て「あ、これは許されないな・・・」と思った方はプラウザの戻るをクリックしてください。
「まぁ、ありじゃないか貴様」という方はこのままどうぞ。

 
 
 
 
 
 
 
 
 

『フランの日記』

 
 
 
 
 
 
 
 
 

今から半年以上ほど前の事になる。

201⑨年の秋のこと。

陰陽鉄学園のど真ん中に、突如手作り感丸出しの古臭い機会に乗った少年が『前触れもなく』現れた。

突如、学校に現れた怪しい機械に搭乗した怪しい人物。

当初は不審者一歩手前となるところだったが、奇しくもその少年の姿に見覚えのある者が少なからずいたことで難を逃れる。
少なくとも、10年前、ファイナル幼稚園に通っていた少女達はその少年の事をよく知っていた。
なにせ、幼少の頃、よく遊んでくれた人物に瓜二つ……というよりそのものだったからだ。
まるで薄れかかった記憶からそのまま抜け出した様な少年の姿に、少女達や教員となった10年前の学生は困惑を禁じえなかったのは今でも記憶に新しい。

少年は、自分はタイムマシンに乗って10年前の過去からこの時代にやってきたと言った。

……そして過去に戻る機能が故障して、元の時代に帰還する方法がわからないとも。

ウラシマ状態となってしまった少年だったが、帰る方法自体は然程時間をかけることなく、あっさり見つかった。
10年前、件のタイムマシンを製作した生徒……河城にとりが教師として陰陽鉄学園に勤めていたのである。
彼女の話曰く、時間こそかかるがタイムマシンを修復すれば時間遡行は可能だという。
マシンが修復し終わるには、どんなに早くても三か月程度。それまではこの時代で我慢してもらうことになる。

しかし完成する間、何処で衣食住を整えればいいのか。再び悩む少年に声をかけた者がいた。
レミリア・スカーレット。10年前の幼稚園児で彼と特に仲が良かった姉妹の片割れだ。

「行くあてがないなら、私の屋敷を貸してあげましょうか? 空き部屋なら沢山あるしね」

レミリアは少年を自分の下に誘い、彼はこれに喜んで快諾。
……かくして少年はタイムマシンが修復するまでのしばらくの間、この時代に留まる事になったのである。

三か月にも満たない同居生活。
その間に少年は知る。
レミリアや彼女の妹、フランドール・スカーレット。それが取り巻く周囲との溝を。
幼稚園で特に可愛がっていた少女達の未来を目の当たりにし、少年は関係の修復を決意する。

レミリアとの衝突、園児だった少女達とのいざこざなど、多くの困難があったが、少年の必死の尽力の甲斐あって全ては元の鞘に収まった。

結果として、過去から来た少年の来訪は少女達の間に大きな影響をもたらした。
それは幼稚園時代から抱いていた親愛、憧れ。恋慕の情へと変わるほどに大きく。

されど

光陰矢の如し、とはいうが、時の流れは無情であった。
三か月はあっという間に過ぎ去ってしまう。
タイムマシンが完成し、少年は別れを惜しむ声に見送られ、過去へと帰還したのだ。

それから冬が明けて、桜が散って……

某月某日
その日はレミリアの誕生日、彼女の邸宅でちょっとしたパーティがあるらしい。

サニーミルク、ルナチャイルド、スターサファイアこと三月精の3りはフランドールから誘いを受け、スカーレット邸を訪れていた。

「ひゃー。相変わらず、すごい家ねぇ……」

ニコニコ県・ネ実市のきっとどこかにあるスカーレット邸。
玄関を抜けた先の、エントランスの内装を見たサニーミルクは思わず声を漏らした。

屋敷に入って最初に目の当たりにする天然石の床は目も眩むほどピカピカに磨き上げられ、鏡の様に光に反射して美しく輝き、部屋を飾る調度品は必要以上の自己主張をせず、しかしどれほど審美眼に劣っていようとも一目で価値あるものだと理解できる雰囲気を漂わせる。
一般家庭では到底想像もつかない、それこそ旅行の観光地かテレビの中でしかお目にかかれない様な立派な屋敷だ。
舌を巻くサニーミルクの後をスターサファイアとルナチャイルドが続いた。

「ほんと、掃除とか大変そうよね……ルナ、滑らないでよ?」
「どうやって私が滑るって証拠よ?」

軽口を叩きながらも屋敷の内装に感嘆の声を漏らす。
この家に来たのはこれが決して初めてではない、初めてではないのだが何度見ても驚きが鬼なる。
そして若干遅れて、フランドール・スカーレットが苦笑しながら三人の後ろから現れた。

「……それでも学校の方がずっと大きいよ?」
「あ、嫌味かー! 嫌味なのかこいつー!」
「ぁわっ」

フランの言い草を聞いたサニーはぴょんぴょん跳ねながらフランの首にヘッドロックをかける。
固め方こそ本格的だが、力の入れ方が明らかに甘い。
本気ではなく、じゃれあいのようなものである。

「パーティするとは聞いたけど……やっぱり気圧されちゃうわね」
「制服姿だけど、やっぱりおめかしするべき気だったかしら」

ルナとスターは二人を微笑ましそうに見ながら、若干不安そうに自身の格好を見る。
陰陽鉄学園の制服はデザインに定評があるが…

「だ、大丈夫、パーティって言ってもそんな格式張ったものじゃないから。
……ねぇサニー、そろそろ離してよ。苦しいってば……」

体をねじらせ、ようやく拘束から解放される。
息を荒げるフランにサニーが素朴な疑問を投げかけてきた。

「ところで、他の連中は? 誘ったんだっけ?」
「……うん、サニー達以外に幼稚園のみんなや知り合いにも声をかけたから、結構来ると思うわ。
咲夜が食事の材料足りるか不安がってたけど」

「「「……食事?」」」
「ええ、食事。お姉様の誕生パーティだからって今朝から結構張り切ってたの」
「「「もしかして食べ放題?」」」
「そうなると思うけど…………え、と……みんなどうしたの?」

「ちょっと家からタッパー持ってくる!」
「じゃあ私はお鍋ね!」
「だったら私は台車を持参するわ!」
「いや、それだけはルナに任せておけない」
「なぬ!?」

「……で、それで料理を一体どうするつもりなのかしら?」

「「「テイクオフ一択!」」」
「限度ってものがあるでしょ!?」

一時間経過……

「……何故ここに放り込まれたかおわかりでしょうか」
「……私のログには何もない」

場所と時間が切り替わり、フランの一室。
三月精は彼女のベッドの上にて、半分不満げ、半分申し訳なさそうな表情で座っている。

「ほら、屋敷を回るのはいいけど、あんまりいつものノリだとさ……」

あの後、彼女達はフランに許可を貰って屋敷のあちこちを探検していた。しかし性根が悪戯好きな妖精ゆえかそれとも単に運が悪かったのか。
屋敷のあちこちでドタバタ騒ぎを起こしてしまい、見兼ねたフランによって、彼女の部屋へと押し込められてしまったのであった。

「屋敷のあちこちを探し回ってただけなのにねぇ」
「ルナがずっこけて花瓶割ったからじゃない?」
「そういうサニーだって、猫を捕まえようとして大ポカしたじゃないのさー」

「うぐっ」
「うぐっ」

ちなみにルナが言った猫とは、10年ほど前にフランが幼稚園の遠足で拾い、以降屋敷で飼っている猫のことである。
拾ってきた当時は痩せ細った子猫だったが、10年の歳月を経て今や頬やお腹に肉がたぷたぷと溜まり、年相応の貫録を見せている。
……あの肉厚なお腹と首周りに抗いがたい魅力を感じるのは筆者だけであろうか。

ともあれ、三月精らは部屋を軽く見渡す。そういえば彼女の部屋に入るのは初めてだ。

スカーレット邸の一室、それも主の妹の部屋にしては若干小さめな気がするが、それでも普通の一室に比べれば広い。
たとえ三人が部屋の真ん中を駆けまわっても狭苦しく感じることはないだろう。
座っているベッドも清潔。勉強机やブックシェルフも完備。
強いて興味をそそる事と言えば……

「そういえば、窓がないのねこの部屋」

何と無しに零したルナチャイルドの言葉にフランは少し苦い表情を浮かべる。

「う、うん……ちょっと、ね」
「?」
「そ、それより私玄関の様子見てくるわ! もう誰か来てるかもしれないし」
「え、あ、ちょっとー!?」

慌てて声をかけるも、フランは部屋の外へと姿を消してしまった。

「……どうする? この後」
「部屋の中で待つしかないんじゃない? また何かやったら大目玉じゃ済まないわ」

部屋の主不在の中、ルナの疑問にスターが首を傾げながら答える。生憎ゲーム機器の類はこの場に持ち合わせていない。
彼女が帰ってくるまで部屋の内装や修飾を観察して時間を潰すしかない。

そう思っていたのだが……

「おーい!」

部屋のあちこちを観察していたサニーが大声を上げた。
勉強机の前に立って、机上を注視しながら後ろに向かって手を振っていた。

「どうしたの?」

彼女の視線の向こうにあったものは一冊の本だった。
ワイン色のハードカバーの一冊の本。
その表紙には『Diary』と表題がつづられている。……もしかしなくても日記である。

「……おい馬鹿やめなさい、プライバシーの侵害は犯罪よ!?」

なんとなくサニーの言わんことを理解したルナが思わず制止の声をあげた。

クラスメイトの日記。それも幼稚園の頃からの付き合いであるフランドールの。
好奇心旺盛かつ悪戯好きな悪友がそんなアイテムを目の前にして、果たして黙っていられるだろうか。
否、断じて否。んなわきゃない。
退屈に飢えた猫の眼前に猫じゃらしをくれてやるようなものである。

「いや、でもポっと置いたままにしておいたフランも悪くないかしら」
「や、理由になってないし。それに日記呼んでいる最中に見つかったらどうするの?」
「9……5分くらいでぱぱーっと!」
「……えー」
「もしかしたら未来が見える系の日記かもしれないじゃない?」
「それって、十中八九殺し合いに巻き込まれるパターンよね」

渋る二名に対し半目で鼻を鳴らすと、サニーは真面目な顔で尋ねた。

「ルナやスターは気にならないの? 少し前まで引き篭もりだったフランに何があったのか」
「……」
「……」

「……レミリアの『事情』は知ったけど」

この『事情』とはレミリアが学校生活と疎遠になった理由……彼女達の両親が急逝、レミリアが彼らの後を継ぐことになり多忙になってしまったことである。
要らぬ心配をかけたくないと、周囲にこの事は知らせておらず、結果レミリアと学友の間に徐々に溝ができてしまっていた。

それからしばらく、今まで通り学校に通っていた筈のフランドールが陰陽鉄学園に登校しなくなった。
今こうやって普通に友人として関わっているが、引き篭もってから社会復帰を果たすまでの間に彼女に何があったのかサニー達には知らされていない。
ただ、「あいつ」が自分たちの目の前に現れてから、全ての事態が好転してきたように思える。

「少しでもいいから私は知りたい。なんでフランが学校に引きこもったのか」

「そう言って、日記の中身が白紙だったらどうするの?」
「その時はその時!」
「おいィ……」

「で、どうする? 付き合う? 付き合わない?」

「……」
「……」

対する二名は神妙な表情でサニーの傍に寄った。

「言葉は、不要か……」

悪友二名の反応を確認したサニーは某ジョージの声を真似て呟いた。
本人は真剣なつもりなのだろうが、悲しい事に全然似ていない。
ともあれ悪戯妖精達は部屋の隅で体を屈ませて円を囲み、言い出しっぺのサニーが日記の表紙にゆっくりと手をかける。

表紙を捲ると、可愛らしい文体で書き綴られた文章が目に飛び込んできた。

乙月 樽日
誕生日のお祝いにと、お姉様から日記を貰いました。
「毎日の事柄を書き綴って自分の糧にしなさい」だそうです。
授業のノート以外に何かに書きとめるといった習慣はありませんでしたが、貰ったからには出来る限り書いていこうと思います。

日記を書くのは初めてだから、どう書けばいいのかわからないけど……こんな感じでいいのかしら。

「結構、奥ゆかしい内容なのね」
「日記だからといって赤裸々に語る訳じゃないからね」
「それ、実体験?」

「……続けるわよ」

(*0M月 0I日
今日は体育の授業がありました。内容は水泳、泳ぎは得意な方ではないので何回か水の中でじたばたしてしまいました。
水着はなんだか胸が締め付けられるから動きづらいし、水泳はあまり好きじゃないな。体を動かすのは好きだけど。
授業中、男子の視線が少し気になったのでこの事をお姉様に話したら「ちょっとあいつらにジャベリンプレゼントしてくる」と言って咲夜から制止を受けてしまいました。
お姉様ったら、地対地ミサイルなんて贈ってどうするのかしら? ビシージの時に使ってもらうのかな?

「何で地対地ミサイルの名称をまるで一般常識の様に知ってるのよ!?」
「こいつ狙い澄ました様な天然だ! あと姉怖い!」

「……でもいるわよね。水泳中に女子の方をいちいち盗み見する男子って」
「締め付けられる、か(ボソッ」
「ルナ?」

「……何でもないわ、続けましょう」
「あ、うん」

(*´ω`*)月 (*´ω`*)日
今日はこれといってなにもありませんでした。
あ、でもいい知らせがありました。明後日にお父様とお母様が仕事から帰ってくるんだって!
ここしばらく仕事続きで全く顔を合わせていないから、帰ってきたらどう甘えようか考えておかなきゃ。
お姉さまも澄まし顔だけど、いつもよりソワソワしてるから本当は嬉しいんだと思う。相変わらず素直じゃないんだから。

「幸せそうねー」
「次のページは? はやくwはやくw」
「はいはい、進むわよ」

(´鍋`)月 ガチターン>(´神`)日
予定の日になったけど、二人は帰ってきません。今日は学校に戻ってから寝るまで、咲夜と一緒にぶーたれるお姉様を宥めてばかりでした。
……多分、仕事が忙しくなっただけだよね。

「……ねぇ、この先って」
「……嫌な予感しかしないんだけど」
「…………」

○月 ▼日
あれから三日になりますが、お父様とお母様は帰ってきません。
お姉様はお父様の会社の人と電話で話していました。とても、とても暗くて……泣きそうな表情でした。

あんなお姉様……初めてみた。

「「「……」」」

苦月 鬱日
お姉様が私に言いました。
お父様とお母様がしんじゃった。乗っていた航空機がトラブルで海上に激突して……

ぜんいんしんじゃったって。
嘘、嘘よ。そんなの。嘘、そんな、嘘……

(#0w0)月 (0H0;)日
お父様達の御葬式が終わりました。お父様達の仕事はお姉様が引き継ぐそうです。
当のお姉様は仕事の話でパチュリーと付きっきりなので咲夜が代わりに私に言った。
これから学校に顔を出すことは難しいかもしれない、でもみんなには言わないでほしい。
心配だけはさせたくないから……って。

……なんで、なんでそんなことをお姉様じゃなくて咲夜が言うのさ。

糸色月 望日
久々にお姉様と一緒に食事をする機会があった。
お姉様は食事の合間にパチュリーと仕事の話をしていた。横顔は何処か疲れてて、暗い。……当り前だよね。
気のせいかな、お姉様の顔を見るのも随分と昔の事みたいに思う。
結局、一言も話しかけられないまま終わっちゃった。

……こんな静かで会話の無い食事は初めてだよ。

 月  日
お姉様と喧嘩した。きっかけは夕食の時に勉強でどうしても解らないところがあったから聞いてみただけだった。
内容はよく覚えてない。気が付いたらベッドの中で泣いてた。

昔から泣かせてばかりだったから、お姉様に喧嘩で泣かされるのって初めてかも。は、あははは。
そういえば、今日は何日だっけ。なんだか日付覚えるのも億劫になってきた。

 月  日
気付いたら、部屋が物凄い勢いで散らかってた。今月に入って、五回目。でも今日は特にひどかった。
呆然とする私にパチュリー達がやってきて言った……これ、私がやったんだって。

……翌日から違う部屋に移される事になった。部屋の窓ガラスを割ったみたいで、その時に怪我をしていたから。
みんな、私は昔から、感情をコントロールするのが苦手だとかストレスがたまっているだとか宥めたけど、そんなのどうでもいい。

粉々に割れた窓。
引き裂かれて綿がはみ出たぬいぐるみ。
針を逆さまにねじられた時計。
倒されて、中身がみんなしっちゃかめっちゃかになった本棚。

……これをみんな、私がやったの?

 月  日
なんだかあたまのなかがぐちゃぐちゃする。
でも、学校だけはいかなくちゃ。
他のみんなに心配かけたくないもの……

 月  日
学校でぼうっとしてたらクラスメイトのきつい言い方で何かを言われた。
私が、彼女になにかわるいことしてしまったみたいだ。
どうしてこうなったのか、それすら記憶から抜け落ちてしまった。ただ頭と胸がずきずき痛む。
私を見るみんなの目が、どこか疎ましげに思えて。
無味乾燥な私の周りに、茨の囲いのみたいに内容も覚えていない罵声が覆いかぶさってくる。

もう、学校にも居場所はない。
もう、どこにもいきたくない。
もう、考えることも、感じることも辛い。

……なにも感じられなければ。
心を閉ざして生きられればどれくらい生きやすいだろう。
飼われた籠の中の鳥みたいに、ずっと空虚のままでいられたら。

いっそ、狂気に身を委ねてしまいたい。
そうすれば、きっとなんにも感じなくなるのに。

そこから先、日記は白紙だった。
真っ白なページが連続して続いている。

「「「…………」」」

誰とも知れない溜息が零れ、室内がやるせない空気で満ちた。
サニーは、時間の経過によるものなのか、若干痛んだ紙面に頭指を当てて線になぞる。

「フランにも色々あったのね……」

そのまま線から曲線に、曲線から円になぞり、ぱしんと掌で面を打つ。

「決めたわ」

そして、その行動を導火線としたかのように、サニーは眉を引き締め宣言する。

「私、今日からいつもよりフランとレミリアに悪戯を仕掛ける!」

聞いた他の二人が勢いよくずっこけた。ルナはついげきの尻餅をつき、腰をさする。
しかしサニーの言葉はまだ終わってはいない。

「その代わり、いつもより世話を焼く。困ってたら横からちょっかい出して一緒に困ってみる! 悩んでいたなら一緒に悩んでみる!」

「えーっと、つまり……?」

「いつもよりあの二人に構うってこと!」

もしまた似たような事があって、関係がおかしくなったなら。
その時は過去からやってきた「あいつ」の代わりに自分達がどうにかする。

つまりはそういうことらしい。

「というわけでっ」

サニーはにっこりと笑い、日記を閉じる。

「日記を元の場所に戻して証拠を隠滅しましょうか。そして何食わぬ顔でパーティにいそいそと参加する!
サーロイン! 炸醤麺! スィーツ! その他諸々ッ! 料理という名のサムワンズ・グロウリーが私達を待っているわ!」

「……ねぇ、最後くらいは綺麗に締めましょうよ、サニー」
「今の状況がフランにバレたらとっても恐ろしいことになるけどさー……」

彼女の怒りが有頂天になった時が、いかにおっかないか。それは長い付き合いの中でよく知っている。
だから今は何事もなかったかのように済ませよう。それで大団円。
顔を見合わせ、早速行動に移そうとした直前のことである。

がちゃり、と

背後でドアが開く音が聞こえた。

「「「………………っっ!?」」」

続けて響く軋むような音が部屋の中を不気味に木霊し、脳内イメージに某岩男X風の警告音が鳴り響く。
しかし、それ以降は全てが死に絶えたかのような重々しい沈黙が続くのみ。

背中がZUNと重くなったような錯覚を感じた。冷や汗が止まらず、SAN値が急転直下でガリガリ減少。
そうなった原因を三人は現在進行形で理解している。
扉の向こう、音源の彼方から凄絶極まりない殺意の波動がなだれ込んでいるのだ。
豪鬼さんがこんな場所にわざわざ来るとは思えないのだが、これは一体どういうことなのか。

(半ば確定している)正体を探るべく三人は襲いかかるプレッシャーに必死に逆らいながら、ぎこちなく首を振り向く。

振り向いた視線の先に映った風景。半開きになった扉。

そこには

「ィ ッ タ ィ ナ ニ ヲ ャ ッ テ ル ノ ?」

案の定、口元にどす黒い下弦の月を浮かべた、悪魔の妹がいた。

・・・・・・・・。

閑話休題。
神妙な表情でベッドに腰を下ろすフランの目の前には部屋の隅でガタガタ震える悪戯妖精三名の姿があった。

曰く
「私はこんな恐ろしい敵を作りたくないので謝りますごめんなさい!;;」
曰く
「hai! ほんの好奇心だったんでうs! 悪気はなかったんです!;;」
曰く
「ごめんなしあ;;」

プリケツを見せる3りを横目で見、フランは大きなため息を晒す。回避率が上昇した。

「……本当に悪いと思ってる?」
「「「勿論! 勿論です!」」」

涙目の三月精の言い分に対して口先を尖がらせ、問いかける。

「本当の本当に?」
「本当! 本当に悪いと思ってる!」

(最悪、サニーをスケープゴートに出す必要があるかもね……)
(……ちょっと待てスター、何恐ろしい考え漏らしてるわけ!?)
(だって、元々はサニーが言い出しっぺだし!)
(連帯責任って言葉があるでしょう! あの時の桃園の誓いを忘れたとは言わせないわ! 一人が私の為に、みんなが私の為に!)
(え、何その変則的ジャイアニズム。というか桃園の誓いって何よ!?)
(桃○のキムチ的な何か!)
(うちでご飯と言ったら永○園の御茶漬け一択でしょjk)
(はー? ふうきみそに決まってますしおすしー)

フランは小声のコントをしばらくジト目で見ていたが、やがて小さく噴いて

「じゃあ、ふうきみそ」

「は?」
「ひ?」
「ふ?」

きょうきょ単語が飛び出た。虚を突かれる三月精をくすくす笑いながら

「今度、ふうきみその作り方教えてくれる? それで帳消しにしてあげる」

ふうきみそ。ルナがたまに作る眠気を吹き飛ばす一品。サニーが苦手な料理である。

「お姉様、低血圧だから。あと料理の練習もしたいし」

「……それだけでいいの?」
「それだけでいいよ」

あっけからんとした言質を聞き、頭に思い浮かぶことは一つ。

「……もしかして、許された?」
「次からは一回休みだからね?」

その言葉を聞いて三人は深い安堵の一息をついた。
痛い目に会うかと思いきや、特段御咎めもなく済んだので万々歳。

「友人を犠牲にせずに済んで何よりだわ……」
「……どの口が言うのかしら?^^#」

\もしかしてわちきも許される?/ \許しません、絶対に許しませんよ!/

「「「「……」」」」

唐突に隣の壁の向こうから変な声が聞こえてきた。
なんだあれ。

「ね、ねぇ、フラン」

あれに触れてはいけない。そう思い、サニーはフランに話しかけ、話題を切り替えることにする。

「え、な、なに?」
「どうして日記をあんな目立つところに置いてたの? 結構放置されてたみたいだけど」
(あ、こら、地雷もう一度踏んでどうするのよ!?)

問いを聞いた瞬間、フランが少し困ったような顔を浮かべた。
若干の溜めの後、恥ずかしそうに口を開く。

「……あー、うん。実は……」
「実は?」

「日記、もう一度続けようと思ってたの…… 今日はお姉様の誕生日だから、日記を書くにはいい機会かなって」

だから、机の上に置いていたということなのか。
三月精の表情の推移を見ると、眉尻を落とし、目を少しだけ伏せて、

「……あとはね、今までの自分を見直すつもりもある。
あの頃は自分だけが辛いって思っていて……その、本当にひどかったから」

だから目を逸らさずに、自分自身の今までを一から見返したい。
姉の気持ちを知っている今だからこそ、自分の愚かしさがわかるから。
見つめ返して、それを全部受け止めて、初めて前の自分とは違う。そう言い切れるように。

「随分前にお兄さんから『自分に整理が付いたらもう一度やりなおしてみたらどうか』って言われたのがきっかけなんだけどね。あれこれ考えてるうちに、ちょっと、遅くなっちゃった」

お兄さん……タイムマシンに乗って10年前からやってきた少年、昔は自分たちの世話を、半年くらい前までは学友以上の関係で対等に関わって、
……今は此処にはいない人物。サニー達にとっての「あいつ」。その呼称を聞いて、三人は一様に複雑な感覚を得る。

「……あのさ、フラン」
「?」

しまった、内心でサニーは苦々しく感じた。気が付けば口から勝手に言葉が出ていた。

「あの時、あいつを引き止めなくて……今でも本当に良かったって思ってる?」

12月24日の夜、タイムマシンが完成した日。
フランは涙を必死に堪えながら「あいつ」を下手くそな笑顔で見送った。
タイムマシンが目の前から消えた後、レミリアに抱きついて、一緒にえんえんと大泣きした事は今でもよく覚えている。

彼が居なくなった後、レミリアは「彼が居るべきなのは未来(いま)じゃなく現代(かこ)だった。だから、これでよかった」と気丈な振舞いで述べた。
ではあの時、フランはどう思っていたのか。

スカーレット姉妹は彼女達と、取り巻く者達の関係を修復したあの少年に、思慕の情を抱いていた。
自分も幼い頃から遊び相手として構ってくれた「あいつ」に対して少なからず意識していたから、素振りでなんとなく解った。
だから重ねてしまったのだ。「あいつ」に対する今の自分の心境と、彼女の心境を。
先程の発言がそこから口に漏れ出たものだと理解して、嫌になってくる。

そして答えはあっさりと返ってきた。

「後悔してる」

一瞬、サニーの心臓が冷え切った。しかしフランは、

「でもね、そんなことよりも楽しみなんだ」

にこにこと微笑んで、楽しそうに語った。

「だって、また『逢おう』って約束したから。よく考えれば過去に帰るだけなんだもん、今の時代のお兄さんがまた逢いに来てくれるかもしれないでしょう?」

以前引き篭もっていたとは思えないほどのポジティブさで、朗らかに捲し立てる。

「もしどうしても顔見たいなら、過去に行くって言うのも一つの手だし。
食堂のおじさんが赤いカブトムシのタイムマシン持ってるって聞いたから……案外何とかなるかも?」

や、その赤いカブトムシだけでは時間を遡れない。
それよりも、何とかなるって一体どうするつもりなんだってばよ。
若干引いた目線で彼女の話を聞いていた三月精であった。
フランも変な方向に暴走していると思ったのか、軽く首を振って結論着ける。

「まぁ、結局お兄さんともう一度会えるっていうのは確定的に明らかな訳でして。だから、もう一度逢ったらどうしようか、考えてるの!」

「まずは手作りの料理……クッキー、うんクッキーがいい。
クッキーを食べてもらって……あ、でも今は料理修行中だから来てほしくないなぁ。
あと半年、半年くらい待ってくれると助かるかな。
もう一度会うなら花嫁修業とかキチンと済ませて、公園の噴水でぐるぐる回ってるところを……」

「「「……」」」

なんというか……うん、大丈夫だな。

目の前でもじもじしてるフランを見ていると自然とそう思えた。
思った途端、先程変に心配していた自分がアホくさくなって、溜息をついて、変に笑いがこみあげてきて

「まったく……」

そういった訳で……

「黙ってれば延々とのろけやがって、こいつー!」

早速、悪戯で構うことにした。先の宣言は未だに有効である。
言うが早いかサニーはフランにヘッドロックをかましてぎゅうぎゅうとホールドをかける。

「きゃあ!?」

サニーの豊満な一部分が頬に押し付けられ、フランは目を白黒させた。

「……む?」

フランに密着していたサニーだったが、やがてフランのある一部分に注目する。

「……結構大きいわね」

そしておもむろにそれを両の手で掴んだ。

「ふゃあぁ!?」

その際にフランから上擦ったような声を上がるが、知った事ではないとばかりにサニーはフランの一部分を持ち上げたりする。

「え、ちょ、なにコレ、まロくてマシュマロみたいにやわらか!? ……ベネ。ディモールト・ベネ!」
「ちょ、サニ……ひ、ぁうっ」

「あ、サニーばかりずるいわ。私にもやらせて!」
「わ、私も!」

先程のお返しのつもりなのか、それを見たスターやルナも面白そうにフランいじりに参加する。
いじられているフラン本人としては先の反省の色はどうしたのだと思ったが、その内そんなことを考える余裕もなくなってきた。

「ひゃわ、やめ、ひゃああああ~~!?」

3りによるコンビネーションばつ牛ンのくすぐりの刑を受け、フランは思わず愉快な悲鳴を上げる。
結局、くすぐりの刑は喧騒に気付いたレミリアと咲夜とパーティに訪れた賓客達が部屋に来るまで続いたそうな。
余談であるが咲夜はその光景を見て思わず鼻を押さえたとか押えていないとか。

某月 某日
本当に久しぶりに、日記をやり直すことにしました。
久々に内容を見返したけど、色々と恥ずかしいことばかり書き殴ってて、あやうく日記をバラバラにすることが何回か。

それでも何とか全部見返して、こうやって日記を書いています。

今日は、お姉様の誕生日パーティがありました。
幼稚園の頃からの知り合いやクラスの友達を家に招待して、お祝いしながら咲夜が作った料理を召し上がる事になったのです。
(その間に色々あったけど書きません。残したくない記憶ということで葬り去る予定)

……食事の間はみんな料理に夢中。
なんで呼ばれていない霊夢さん達がいるのかしら……?
当のお姉様は、その有様を見て涙目になってました。
料理が食べ終わったら他のみんなからキチンと祝福されているし、別にぞんざいに思われてるわけじゃないとは思うのだけど。
いたたまれなくなったので咲夜達と一緒にクラッカー引っ張ってあげたら無言で抱きしめてきたところを見ると、やっぱりお姉さまは甘えん坊なんだろう。

と、そんな感じで、今日は一際楽しい一日に終わりました。

  届かないと思う、でも。
  
  やっと日記かけたよ。
期限から大幅に遅れる形での投稿となってしまい、本当に、本当に申し訳ありません。

今回の話はフラン√の主人公が現代に帰ったその後を描いたものなのですが、書いているうちにgdgdかつ意味不明な内容となってしまいました。重ね重ね申し訳ありません。

このような駄文ですが、ここまで読んで頂き、本当にありがとうございました。
少しでも楽しんで頂ければ幸いでございます。
m(__)m
名無し
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1.50点2011/12/07 07:40:30削除

   やるじゃない(ニコリ
   未来系のお兄さんは空気読んでしばらく他所に行ってたりするんだろうか…いやネ実市に今も住んでいるとしたらだけど