SS/妄想SS レイセンルート十三章

Last-modified: 2013-11-12 (火) 09:26:04

妄想SS レイセンルート十三章
倫理
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ちくしょう、うどんげめ容赦無く鉛玉叩きこみやがって……痛いったらないわ。
おかげさまで帰るのは楽だったけど。ホームポイント様々だ。
お、メールが来てる……レイセン?

『Title:わるいこと
 From:レイセン

 ああいうのはいけないと思います!
 いけないんです!
 ほんとに思ってますからね!

 …だけど、ちょっとだけ、楽しかったかなー、なんて…』

堕落の道へようこそ! もとい、楽しんでいただけて何より、っと。
しかしなぁ……いかんよなあ……自分も楽しかったけど、楽しんでどうすると言うか。
冷静に考えたら何普通にデートしてるんだって話だしな…………楽しかったけどなあ。

ごろんごろん

いかんよなあ……綿月姉妹とくっつけるのが目的の筈なのになあ……ああでも、もう一回くらいデートしたいなあ……いやいや。

ばったんばったん

どーすっかなー……どーにもなんねーよなー……うまくいかねーよなあー……

どすん、ごろごろ、どすん

あん時安請け合いしなけりゃ……でもあれが無かったら縁もゆかりもない他人のままだったろうし……

寝床でのたうち回る少年の姿。一言で言えば無様である。
布団にくるまったその様は、さながら芋虫のごとし。つぶやく声は小さいが、その動きは正直うるさい。
直に近所、或いは家族からカミナリを落とされることだろう。
本当にサンダーを撃ち込まれなければツイている方かもしれない。

そして幾日か過ぎた!

レイセンルート13章 ~学園祭の喧騒~

学園祭
近隣他校とも合同で開かれる大規模な催し。体育祭やら音楽祭やらは選択制なのに文化祭相応のこれだけ優遇されてるよね。
三日間続けて開催され、一日目は生徒やその家族など、二・三日目は一般客を呼び込んで行う。特に二日目は客寄せのための派手な出し物が飛び交い、あらゆる意味で危険なので皆何も起こらないよう願っている。
他校とも合同とは言ったものの、一箇所に集まって行うという意味ではないため、他所の出し物が見たければ目当ての学校まで行く必要がある。

現在は一日目、レイセンの劇も一日目に行われる。外向きの行事ではないようだ。
当然気にならない訳が無いのだが、PCにもそれなりの役割というものがあった。

「いらっしゃいませご主人様!」

「ご注文は何になさいますか?」

「一番テーブル、ハートオムライス入りまーす!」

当クラスの出し物はコスプレ喫茶に決定した。そしてPCのスキルには燦然と輝くメイド(執事)の文字が(4章より)。
執事ともなればこの手の環境に適応出来て当然! という空気に呑まれ、中々に忙しい状況に置かれたのであった。
コスプレ姿で全身を舐めまわすような視線に耐えながら給仕するのとどちらが大変かは定かでないが。
一応男衆もコスプレ姿であるが、大抵露出が少ないので、羞恥心は刺激されない。

しかし、冷静に考えてみれば、この手の時勢に乗った企画はどこも手を付けたいわけで。
他クラスとのネタかぶりがそれなりに見受けられた。ので、時々は余裕があるものだ。
ちょうど今はその時。小休憩がてら、メールを受信したらしいケータイを確認する……うむ?

『Title:無題
 From:レイセン
 
 し
 ぬ』

……なにこれこわい。
大体、わざわざ改行してる辺り余裕が伺えるじゃないか。
『やればできる』……もとい、『やったからできる』だな。ホイ送信。

waitress<オーダー入りまーす!

かしこまりましたー!
全く賑やかったらありゃしない。皆もっとメイドスキルを取るべきそうすべき。
皆が奉仕の精神を身に着けていれば、もっと世界は平和になるはずなんだ。

フロアではコスプレ嬢とコスプレ野郎があくせくと働いている。
フロアと言っても、料理を用意する場を机と幕で分けた程度の代物でしかないが。
それにしても……コスプレはコスプレなりにいいものだなあ、とPCは思った。

例えば霧雨魔理沙・ドレス装備。
普段はやんちゃが目立つ小娘といった印象の彼女だが、中々どうしてドレスがサマになっている。
衣装もさることながら、その仕草も意外なほどハマっている。ひょっとしたら、それなりにいい所の出身なのかもしれない。
いつもの砕けた口調を抑え、スカートを翻さないように歩くその様は、紛れもなく正統派美少女。
日常とのギャップが高評価を得ているようで、本人も驚きの様子。

今のお気持ちは?

「こんな時だけ評価が高くても嬉しくないぜ」

そうですかありがとう注文すごいですね。

「それほどでもありませんわ……ハッ!?」

例えば東風谷早苗・メイド装備。
このコスプレ喫茶の発案者たる彼女は、それだけに衣装もノリノリで着こなしている。
ちょっと際どいスカートと、重厚な胸部装甲が男どもの視線を集めている。メイドとしてはコスプレと呼ぶのもおこがましいレベル(スキル未所持)だが、そんなことはどうでもいいんだ、重要じゃない。
やや照れが見えるが、言い出しっぺの責任感とコスプレの楽しさがそれに勝っている様子。

今のお気持ちは?

「ちょっとしたアイドル気分ですっ♪」

そうですかありがとう人気者ですね。

「それほどでもあります!(ムフーッ)」

チラチラとコスプレ生徒を見ている内に、ふと妄想が浮かぶ……
例えば……そう、メイドレイセンとか……うん、いけるんじゃないの!?

『お帰りなさいませ、ご主人様!』

いいね……かなりキテる……
フリフリのスカートから自前の尻尾が飛び出してるのは間違いない。とてもいい。
カチューシャとウサミミの組み合わせも目にやさしい。すごくいい。
メイドスキルは持っていなかったと思うので、きっと拙い仕事ぶりになるだろう。

『申し訳ありませんご主人様! すぐにお拭きします!』

だがそれがいい……!
そしてこんな事考えてる自分すげえきめえ。激しく反省。

それにしても……大丈夫かなあ、レイセンのやつ。
やっぱり見に行った方がいいんじゃないかなあ。いやいや、仕事を投げ出すなんて許されざる。
そんな事をすれば赤巫女のニードルによって人間剣山まちがいなしだ。
いや、しかし……やはりダメだろう。
大体レイセンもレイセンだ。地獄の、と言うほどではないが特訓はしたのだから、もう少し自分に自信を持つべきである!

色々考えつつもPCの手は止まっていない顔にも出ていない。
何故ならば必要に応じて意識と肉体を切り離すのもまた、メイドに求められる技能だからだ。
この程度こなせなければ見習いとして認める訳にはいかない。かの十六夜咲夜女史も、己の主人の愛らしい仕草に対し、心の中では鼻血を流しながらも、表情には全く表さず仕事をこなすと言われている。
まこと修羅の道である。どんな道も深入りすれば似たような面を覗かせるものであるが。

waitress<オーダー入りまーす!

またしても客が釣られたようだ。
再び忙しい時間を過ごすことになるのだった……

『午前の部が終了しました』

「それでは失礼しまーす! 待ってなさいよ私のスクープ!!」

午前シフトだった自称最速の天狗は、午後前半シフト組と交代するや否や、その異名に恥じぬ高速で飛び出していった……
きっと新聞のネタを探しに行ったのだろう。聞けば新聞部は部員同士でシフトを調整し、常に情報収集が出来るよう人員を配置しているらしい。
その上今年の記事作りは三日間をまとめたものではなく、一日目のニュースは明日にも発行するのだとか……作業が深夜に及ぶことは想像に難くない。
死人が出なければいいが。
……そう言えば、今月の新聞部のスローガンは『命よりスクープを』だったような。先に合掌しておこう。

そんな天狗の様子は置いといて、自分も交代である。
新たな面子がコスプレ衣装を纏い、戦場へと赴くのだ。人気者の博麗の巫女や、口の悪い夜雀などがメンバーとなっている。
ところで、我等がメイド長も午後前半の筈であるが、姿が見えないのはどうしたことか。

ピンポンパンポ~ン……

『迷子のお知らせをいたします。
 陰陽鉄学園2年○組、十六夜咲夜さん。レミリア・スカーレットちゃんが迷子センターでお待ちです。
 繰り返し、お伝えいたします……』

……ああ、迷子のお嬢様を探してたのね。
見つかった以上はすぐにこっちに来るだろ、

「遅れてごめんなさい!」

はやっ!?
いや、時間を止めてカカッと駆けつけたのか! これで勝つる!
ところでお嬢様は大丈夫なんですかねぇ……

「平気よ。元々午後からは他の人に預ける手筈だったから」

流石でございます。
それでは、現在特に問題など起きていないので、引き継ぎをお願いします。

「ええ、お疲れ様」

お先に失礼します。

ようやく開放された。すなわち今度は自分が文化祭を楽しむ番だ。
実に賑やかな校舎を歩く。これでも生徒やその家族などしか客が来ていないと言うのだから驚きである。
外部客も呼び込む二日目は一体どうなってしまうのか。今から恐ろしい。
自分も他人事ではいられないだろう。安全に細心の注意を払いはするが……明日は朝一で神社に行っておこうか。こんな時くらい露骨にご利益があってもいいと思うの。

それにしても腹が減ってきた。働いた後の飯はさぞ美味かろうと、出店を探る事にした。
校庭にはずらりと出店が並んでいるので、眺めている内にどれか一つくらい食べたいのが見つかるだろう。
ついでに誰か話し相手も見つかればいい……べっ別にぼっちとかそんなんじゃないんだからねっ!

焼きそば……却下。
たこ焼き……除外。
ありきたりなのは悪い事ではないのだが、今はそういう気分じゃない。
珍しいものではなくてもいいが、屋台では見慣れないものが欲しい。このワガママな腹に収まるモノが中々ない。
妥協するのも悪くはないけど……む? 視線を感じる。

「よってらっしゃい」

「焼きたてのたい焼きはいかがっスか!!」

声をかけられたのは自分のようだ。声の主が視線の発生源でもある様子。
たい焼きの屋台だ……古明地さとりと、何と言うか、作画が昭和っぽい男がこちらを見ている。
ううむ、今の腹にはあまり好ましくはないが、これも何かの縁だろうか。
いや、待て。男の方の顔もよくよく見れば覚えがあるぞ。奴は……まさか!

せっかくですがお断りだっ。

「なんでだ!」

その顔、たい焼き屋の無法松の弟分、アキラと見たり! 兄貴分の悪行知らぬと思うてか!
どうせ買おうとすると急に値上がりするんだろう、お前の兄貴分と同じように!

「くっ!?」

「心配はいりませんよ」

古明地が割って入る。庇い立てするつもりか!

「これ以上追い詰める気もないのでしょうに。
 それより、値段が変わったりはしません。そのための私ですから」

さりげなく図星を突きながら受け答える古明地。ちがうもんもっといじめるつもりだったもんその見透かした目をやめてください。
……脱線。そうかストッパーの役割なのか。確かに心を読まれながらでは何かとやりにくいだろう。
つまり安心して買えるということ。スミカ・ユーティライ、ハッ!? い、今、自分は何を!

「妙に混乱されているようですが、疲れているときには甘いものが一番ですよ。おひとついかがですか?」

「今なら1つたったの100ギルだ!」

「今じゃなくても100ギルですが、今なら出来立てのアツアツです」

むむむ……

甘いものっていいよね、それが温かいものだと心まで柔らかくなるよ。
結局たい焼き5つ買ってしまった訳ですが、そんなに後悔はしてない。
確かな甘さをもった餡は、それでいてしつこくなく、後味まで楽しめる。そして餡を包む皮の確かさよ。柔らかく、歯ごたえがあり、餡との相性も抜群だ。尻尾が硬めに焼きあがってる点もありがたい。この他とは違う食感が飽きを寄せ付けないのだ。つまり、うんまいのだわ。
古明地でも話し相手に、とも思ったが、屋台やってる奴を連れ出す訳にもいかないし、何より談笑するほど仲良くない……ちげーし! ぼっちじゃねーし!!
ルートが他校生の奴だから鉄学園のキャラと絡ませにくいだけだし!!!

ふう……
時刻は0時と、40分くらい。空腹が癒されたせいか、少し暇を感じる。
このまま校庭を眺めていてもいいし、体育館を覗きに行ってもいい。部室棟まで足を運ぶのもアリだろう。
どこに行っても騒ぎには事欠かないのは間違いない。

『メールですよー! メールが来てますよー!』

……リリーホワイトの着ボイス、100ギル。ウチの購買部は何でも売りすぎだと思った。
仕事中はマナーモードだったが、ここでは遠慮する必要もない。さて誰から……

『Title:無題
 From:レイセン
 
 もうだめ』

………………はぁ。
ダメですかそうですか。自分にどうしろと。
そんな見ただけで元気が出るような気の利いたメールなんて打てませんし、励ましに行こうにも学園祭とは言え一日目の今日は他校生は入れないし。
でも、放って置けないよなぁ……腹くくるか。

その時、そんな能力もないのに一つの未来が見えた。
颯爽と駆けつけた綿月姉妹。二人に励まされるレイセン。円満解決の未来。

何もしなければ。何もしなければ逆に上手くいくのではないか。
いや、きっと上手くいくのだろう。自分の立場を考えてもそれが相応しい振る舞いというものだ。

「何をためらうことがある奪い取れ! 今は悪魔が微笑む時代なんだ!」

ジャギ様は黙って、いや、向こうで手刀で野菜を刻んでる南斗人形趣味にでも言ってあげて。
ついでに言うと唐突に出てこないでびっくりするの。

これでいい。一番効率的だ。
あくまでも協力者でしかない、友達でしかない自分がどうしてここで出番を得られようか。
脇役は大人しく隅にいればいい。後は主役のターンなのだから……

お前、それでいいのか?

いいわけねえよ!

何が出番か何が脇役か! これは劇ではないし、筋書きもないんだ!
さっきの幻視が現実になるかどうかさえ分かりはしないのに! 馬鹿だ自分は馬鹿だ!!
大体だ、レイセンは誰にメールを送ったと思ってるんだ! 自分にだぞ! 綿月姉妹にも送ってるかもしれないがそんな事はどうでもいい!
自分に向けてSOSコールを出したんだ! 行くしかねえよ、行かねえ言い訳はドブに捨てる!
後悔は後ですればいい、今自分の、一番したいことを、全力でやらなけりゃ……後悔じゃ済まない!!

そう、あえて劇になぞらえるなら。出番は奪い取るものだ!

月光女学院・学園祭一日目

くどいようだが、一日目は生徒やその家族など、身内向けの日である。他校生は基本的に入れない。
それでも潜入する必要があるのならば、インビジ、スニーク、デオードは常時発動・維持出来る体勢を整えておこう。
それも魔法ではなくアイテムによる効果が望ましい。トゥー・リア全域には警備のドール族・エレメンタル族が多数配置されており、両者とも魔法を探知するため、魔法を使うと即座に見つかってしまうのだ。
女学院内部は大量の生徒らを避けつつ進まなければならないため、なるべく身のこなしが軽い方が良い。
例え姿が見えなくとも、接触すれば不審に思われてしまう。一度や二度なら誤魔化しがきくかもしれないが……

そんな訳で、やってきました女学院内部。
こんな形で中を拝むハメになるとは考えもしなかったが……いい機会とでも捉えておこう。
それよりもレイセンを見つけなくては。自分が見つかったらタダでは済まないので迅速に、かつ慎重に行動しなくてはならない。
……そう、レイセンの居場所わかんない。
カッコつけてメール返信せずに来るんじゃなかった。場所聞いておけば良かったのに。
一応、劇は体育館でやると以前に聞いたことがあるので、その周辺にいるのではないかと思われる。
急がねば……!

とりあえず見取り図を……!

レイセンの様子がおかしい。
どうも、名も無き女学院生Aです。現状の説明を行います。
私が現在注目しているのは、同級生にして友達であり、あの綿月依姫お姉さま・豊姫お姉さまのお付きをしている女の子、レイセン。
それがさっきからどうにも落ち着かないようなのだ。

彼女はこれから学園祭の出し物の劇に出演することになっているのだが、どうも激しく緊張しているらしい。
私や他の娘もどうにか解そうとしたのだが、どんな言葉も右から左に抜けているようで、ろくな返事が返ってこない。
ケータイを開いたり閉じたりしてるのは何かのまじないなのだろうか……
とにかく、このままだと不味い。けれど私達にはどうすることも出来そうにない。
困った……以上、説明を終わります。

体育館に到着、レイセンの姿は見えず。ここにいるようなら手遅れかもしれないので安堵する。
ここを起点に周辺を捜索することになるか……おっと。
血相変えて生徒が駆け抜けていった。何かのアクシデントだろうか。

情けない話だけど、私達じゃ役者が不足している様子。
一応何人かが、レイセンの愛しのお姉さまこと、綿月先輩方を呼びに行ったが……あの二人は学園祭の運営で忙しいだろうし、時間が取れるかどうか。
諦め悪く声をかけたり、肩を揺すったりしてみるものの、やっぱり無駄。
重い空気が漂い、レイセンがケータイを開け閉めする音だけが響く……パカパカうるさい。
! お姉さま方を呼びに行ってた友達が戻って来た! どう!? ……ダメ? そう……

迂闊に扉を開けることの出来ない辛さよ。
ひとりでにドアが開いたら心霊現象か不審者かという話だ。そーっと覗くのが精一杯である。
湯水のように隠密アイテムを消費してるので、お財布にも大ダメージ。鉄学園を飛び出す前に購買部で大量に買い込んでおいて正解だった。
……この財布のダメージをレイセンに請求出来ないものだろうか。発想がせこいと言われるとちょっと胸が痛い。
っと。また生徒が血相変えて通り抜けていっ、待て、今レイセンて言ってたか?

お通夜ムードとはこのことか。
レイセンはアッチ側から戻ってきそうにない。詰んだ。もうおしまいだ……
いや、まだだ。
今まで優しく接し過ぎたのだ。少し痛いかもしれないけど、叩けば正気に戻るかもしれないじゃないか。
これだけ面倒かけてくれたのだがら……憂さ晴らしじゃないよ? ホントだよ?
ちょっとだけ私達の気持ちを込めた愛のムチを叩きこむだけだもの。
劇の成功のためなら、多少の犠牲は許される筈。一瞬のアイコンタクト、この場のレイセン以外の全員の意志が一つになった。

そう決意し、私が立ち上がったその時。

ドアが開いた。

しかし誰も入ってこない。
ならば何故開いたのか。不気味すぎる……念のため外を確認してみても、誰もいない。イタズラだろうか?
ポルターガイスト!? と騒ぐ者までいる。アレは重苦しい空気に毒されたのだろう。
レイセンは動じない。人間(?)緊張がピークになると却って図太くなるのだろうか? 良く分からない。
とにかく事態を落ち着けねば、

そして、レイセンが飛んだ。

何かの衝撃音と同時に、前のめりに吹っ飛んだのだ。
あまりにも奇っ怪、あまりにもホラー。恐怖のあまり錯乱しそうだ。私が正気を失わないのは、何より顔面から着地しかけて踏みとどまったレイセンが気になったからだ。
痛そうに呻きながら背中を押さえ(叩かれた?)、勢い良く振り向いて――そのまま止まった。

彼女は虚空の一点を凝視していた。
まるでそこに誰か何かがいるかのように……私の目には壁しか見えないのだが。
怪現象は結局それきりで、そこから彼女は息を吹き返した。見る間に血色を取り戻し、いつものレイセンに戻ったのだ。

――後日、あの時何があったのか聞き出そうとしたが、どれだけ迫ってもノーコメントで押し通された。

絶賛後悔中。
辿り着いたところで姿を見せることは出来ないという縛りは消えない。その事実に気付いたのはレイセンを見つけてからだった。
おお、おお。自分は何故これほど愚かに生まれたのでしょうか。神、come in! 教えて!
なんて冗談をやっている場合でもない。
無駄足だったが、来てしまったものは仕方がなく。かくなる上はお姉さま方をどうにか引っ張ってこようかとも思ったが、全力疾走する綿月姉妹を見てはそれも無意味。
とにかく見つからないように抜け出さなければならない……徒労感が足を重く……うぐぅ。

やばいインビジ切れるインビジ切れる。

「レイセン!」

「大丈夫なの!?」

スケジュール的に難しいところだったが、どうにか時間を作って駆けつけた控え室。可愛い妹分が不調と聞いては居ても立ってもいられなかった。
それでなくとも学園祭前からレイセンはどうにも私達と距離を置くようになって……今や私達は揃ってレイセン欠乏症なのだから、良い口実でもあった。しかし。

「依姫お姉さま、豊姫お姉さまも」

いつも通りに見えるのは気のせいだろうか。いや、いつもより生き生きしてるような。
話と違う。そこのところどうなのかモブ生徒さん。

「それが、よくわからなくって……」

ではレイセンに直接聞いてみよう。
そう……直接……はぁはぁ、お姉さまとお話しましょう……♪(※綿月姉妹はレイセン欠乏症にかかっているため、内心が若干残念な事になっています!)

「元気を、もらったんです」

誰から?

「私、やります。見ていてください! きっとやりとげて見せますから!」

だから、誰から?
いくらつついてみても、決して口を割ることは無かった。ああっ、これが反抗期っ!!

猛烈な徒労感が自分を襲った。
行って、叩いて、帰るだけ。あれならメールに無理矢理にでもひねり出した文章を載せた方がよかったろう。
一体自分は何をしに行ったのだ……ああ、皆の楽しげなフォークダンスが遠いよ……

『メールですよー! メールが来てますよー!
 メールですよー! 早く出てくださーい!!』

はいはいどちら様っと……おろ?

『Title:明日
 From:レイセン
 
 そっちに行きますので、案内をお願いしますね』

は? え、何で?

レイセンルート13章 完

つづく

おまけ 今日のうどんげ

今日と言いつつ舞台は数日前に遡るッ!!

「で、一体何の呼び出しな訳?」

訓練の時間だ。

「訓練? ってまさか……アレはもう終わったんじゃなかったの!?」

何を言っているのかねキミは。
マネキン一体倒しただけでトラウマが解決するはずないじゃない! 自覚もあるでしょう。

「うっ」

そんなワケで、本日ご用意したのがこちら!

それは月光女学院の制服を身に纏った少女……? だった。
体型は少女のそれだが、顔の部分に何故か覆面をかぶっていて、正体がつかめないのだ。
読者諸兄には罪袋を想像していただければ分かりやすいだろう。あれから罪の時を取れば概ね合っている。

「なに、これ」

月光女学院からお越しいただいたR(仮)ちゃんです。

『ドーモ』

変声機か何かを仕込んでいるようで、妙な声になっている。

「はあ……で、今度はこいつを倒せばいいの?」

いいえ、違います。
今から彼女とお話をしてもらいます。

「へっ?」

時間は5分ね。それじゃあスタート!

「待って、話って、何を、ちょっと!」

「あ、あの……その、趣味は……」

『えーっと……射撃を少々……』

重い空気が漂った……

1分経過

「……いい天気ですね!」

『そ、そうですね!』

微妙な沈黙が流れた……

3分経過

「あー……その、頭のは、何なの?」

『顔が見えない方がいいだろうって』

少し打ち解けてきたようだ……

5分経過

「終わった!」

『なんだか疲れましたー」

驚いた……思ったより普通に話が出来るじゃないか。
3分くらいで限界にきて席を立つかと思ったのに。やるじゃない!

「あんまり舐めないでよねっ! 私は私で色々やってるんだから」

いや大したもんだ。
(八意先生とてゐちゃんから逐一情報を貰ってるのはここだけの秘密だ。
 トラウマ克服のために何か特訓をしているらしいという話を先日聞いている)
R(仮)ちゃんもお疲れ様。

『実は一度話をしてみたかったんですよね』

「あんた……確か、レイセンって名前なのよね」

やはりバレていた! バレない方がおかしかった!

『はい。どうかしましたか?』

「どうってことは……お姉さま方は、元気にしてる?」

『はい。でも、時々貴方のことを懐かしむ事があります』

「嘘」

『本当です。なんなら連絡取りましょうか?』

「いやっ、いやそこまでしなくてもいいから!」

……二人の間には色々縁があるようだ。

"鈴仙・優曇華院・イナバの場合" レベル2クリアー!
レベル3へお進みください。
あとがき
文化祭だと思ってたら学園祭だった。そら優遇されるよね。
もっといっぱいイベントを混ぜたかったけど、無理だったよ……
学園祭は二日目に突入し、多分うどんげは次で完結。

※2012/08/17追記
指摘を受け、一部修正。
たいやき屋の無法松→たいやき屋のアキラに

前回のコメント返信
コメントなんて存在しなかったよ……
倫理
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0.50点簡易評価
1.100点2012/07/08 02:32:04削除

   きた!倫理さんキタ!堕落の道へようこそ!歓迎しよう、盛大にな!
   このSSでもメールが盛んですね。物語が切り替わる切っ掛けな感じですかね。
   ギャグな内容に笑ったり、意外な内容に驚いたりで面白いですww
   学園祭は色々なキャラが出てますね。祭りはやはりこうではなくては!にぎやかなのは良いことだ!
   レイセンは少しずつ脈?と言うかフラグが成立していってる感じなのだろうか。
   何にせよ気になるラストでしたな。
   リーチ…もとい期待せずにはいられないな

2.100点2012/07/16 11:59:20削除

   このSSに今まで気がつかなかった自分の浅はかさが愚かしい。
   私は古代からいるレイセンファンで一押し者の一人。
   有頂天系でというか東方二次界隈全体見ても
   レイセンメインのストーリーは希少種ですので
   倫理様には最大級の敬意と感謝の気持ちを。
   ありがとうございます。
   レイセンの同級生ってベリショとかなのかな。かわいい。
   ベリショとかは鈴仙の同級生だろうから鈴仙と同じクラスのPCとは同学年で…
   あれ、そういえばレイセンとPC って同い年でよかったっけ…?
   次回は一緒に学園祭まわるのかな。絶賛禁断少女な姉妹も着いてきそうだw