SS/妄想SS レイセンルート十五章

Last-modified: 2013-09-10 (火) 22:04:22

妄想SS レイセンルート十五章
倫理
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文化祭3日目なんてなかった。
レイセンが全く絡まない話をやっても意味が無いじゃないレイセンルートで。
そう思うでしょう? 思わなくても書かないが。
いつか誰かが文化祭SSを上げてくれると筆者は信じています。

 

そんな訳で秋も深まり、紅葉がくっきりと色付くようになった頃。
秋の象徴を自認する姉妹神がドンドコドンドコと軽快なリズムで踊るのが学園の秋の風物詩である。
そんな軽快な、それでいてどこか寂しげな音頭に身を任せながら、自分が考えるのはレイセンの事……ではなく。
もっと恐ろしく、もっと差し迫った問題の事であった。

 

それは強大で、それは容易く。
眼前に立ちふさがる壁のような、或いは己を映す鏡のような。
全ての者の道を平等に阻むもの……試練だ。

 

大袈裟な言い方をしてみたが、要は試験である。テスト。
日頃勉強している人にはどうということはないのだろうが……今回、自分はかなり危ない。
それというのもレイセンに関わって、いや、彼女を言い訳にするとか最低すぎて死ぬべきだ。
毎日会ってた訳でもないし、会っても夜はフリーだったのだから、そこで勉強してなかった自分が悪いのだ。

 

まあ、原因探しはどうだっていい。そんな事より勉強だ。
赤点など取った日には色々とマズイ事になる。補習は勘弁願いたい……内申にも響くだろう。
しかし、こういうのは日々の積み重ねが力になるのであって、付け焼刃は容易くへし折られてしまう。
どうしよう、どうしようか。

 
 
 

「それで私に話を持ってきたって訳?」

 

そうなんですよウドンゲさん。ここはひとつ人助けだと思って力を貸してくれるといいよ!
ほら色々と助けてあげたじゃない!

 

「うわ恩着せがましい。一気にやる気がなくなったわ」

 

そこをなんとか……

 

「あんた、友達少ないの?」

 

致命的な致命傷!
お前……いきなり言って良いことと悪いことがあるでしょう!
大体、どういう流れでそういう考えに至るワケ!?

 

「他にアテがあったら、私に食い下がる必要ないんじゃないの」

 

再び致命的な致命傷!
いやね、ちゃうねん。これレイセンルートやねんな。な? メタな話やけどな。
ほら外に行かなあかんねんよ。したら外でPTメン候補に会うやんな? んで仲間と一緒に冒険するやん?
気付いたらフレリス学園の外の奴ばっかやねん。
どないしょ。

 

「知らないわよ」

 

冷たいわーマジ冷たいわー自分の心も凍えるようだわー。
もう少し優しくしてくれてもバチは当たらないと思うの……

 

「調子に乗せると際限無いって言ってたし、私もバッサリ行く事にしたの」

 

誰だそんな事吹き込んだのは。

 

「レイセン」

 

あの女郎!!

 

「そうだ、あの子に頼んだらいいじゃない。優等生みたいだしさ」

 

いや、いやぁ……流石に後輩に泣きつくと言うのは……
先輩として男として辛いものがありますよ。

 

「赤点取って無様を晒すよりよっぽどマシだと思うわよ」

 

グググ……ググググ……少し、考えさせてくれ。
てか結局ウドンゲは手伝ってくれないのね、この薄情者!

 

「だって、嫉妬とかされたら困るもの」

 

嫉妬? 誰からさ。

 

「こっちの話……あんたの話でもあるけど。分からないならいいんじゃない?」

 

はぐらかしおる……覚えてろよ。
あと、話し聞いてくれてありがとう。

 

「流石にそんな程度の事で礼を言われると罪悪感を覚えるわ……」

 

罪の意識に苦しんでいってね!!!

 

「わざとか!」

 
 
 
 
 

レイセンルート15章 ~テストヘル2012~

 
 
 
 
 

そんな前座を挟みつつ本編に入った訳ですが。
後輩から向けられる目線が冷たすぎて既に死にそうです。誰か助けテ!
バイト姫様! くつろぎ喫茶ベヒんもスの看板娘様! 早く注文を持って来……あいつ露骨にこちらの様子を伺ってやがる!

 

「それで、先輩が、後輩に、勉強を教わりたいと」

 

はい……
この惨めな私めにどうか知恵を授けてください……

 

「あなた、それでいいんですか?」

 

そりゃあその、思うところはありますが。とてもみっともないのは承知の上で……頼む。
頭を下げる。ここまでカッコ悪い姿を見せたのは流石に初めてかもしれない。彼女の前では見栄を張っていたかったのに、泣きそうだ。
それでも、プライドを優先して更に惨めな姿を晒すよりは。いざというときに補習で動けない、なんて事になるよりはマシな筈だ。
はぁ、とレイセンがため息をつくのが聞こえた。

 

「ウチもそろそろテストですし、お姉さまに勉強見てもらおうか、なんて思ってたのになー」

 

うぐっ……

 

「他の人に教えるとなると、時間がなくなっちゃうかなー」

 

うぐぐぐ……

 

「どーしよっかなー」

 

ぐぐぐぐぐぐ……ちくしょうそこまで言われたら自力で!
やってやんよ、と言おうとしたところを遮られる。

 

「まー仕方ないですよねー友達の頼みですからねー」

 

え……いいの? いや、今の話は自分が邪魔をしたらいけない話でしょう?
お姉さまと仲良くしてきなさいよ。自分が間違ってたよ。

 

「いいですよそのくらい。チャンスなんていくらでもありますから。
 むしろ、ここであなたを見捨てる方がダメです。今までいっぱい助けてもらったんですから」

 

いやいやいや、そういうのいいから。大丈夫だから、一瞬の気の迷いだから。自分なんて大したことしてないから。

 

「いやいやいや、そういうのいいですって。遠慮とかいりませんから。大したことしてますから」

 

いやいやいやいや……

 

「いやいやいやいや……」

 
 
 

気付いたら図書館にいました。時間が消し飛んだ気がする。
市立魔法図書館。魔法と銘打っているが、別に魔法書のみ扱っている訳ではない。勉強と言えばここしかないだろう。静かだし、資料もある。その上冷暖房完備だ。
自宅なども候補だが、女の子をお家に呼ぶなんて、そんな大胆な事デキッコナイス。レイセン家も当然無理。選択肢外だ。
レイセンは物珍しげにあちこちに視線を巡らせている……

 

「こっちの図書館ははじめてですから。結構な品揃えで……」

 

トゥー・リアの図書館は見たことがないので比べようがないが、大したものだろう。
ここで本に困ることはあんまりない。下手な本屋をハシゴするくらいなら自分はここに来るだろうな。

 

「うわー……天文台? 天文台なんで?」

 

人の話を聞きなさい。
屋上には天文台が設置されている。この時間に使われることはないので、行っても設備を眺めるくらいしか出来ないが。
この図書館の売りのひとつだな。後で良ければ行ってみるか?

 

「ぜひ!」

 

楽しみなのは分かるが声を抑えていただけませんか^^;

 

「あっ……すいません」

 

分かってくれればいいんです。
司書に白い目で見られながら居座るのは辛いから……

 

「身に覚えがあるんですね」

 

はい。

 

「ううん……ちょっと頭の中で美化しすぎてたかも」

 

何か言った?

 

「いえ、なんでも」

 

そうか、自分の空耳か。ならいいんだ。
よぉしそれじゃあ勉強の始まりだ……嫌っだなぁ……

 

「人を誘っておいてその態度、怒りますよ」

 

すいません先生お許し下さい。心を入れ替えて、真面目に勉強しますから!

 

「先生?」

 

あなた、教える人。教える人、先生。
自分、教わる人。教わる人、生徒。わかる?

 

「わかる」

 

先生、おかしくない。おっけーね?

「おっけーね」

相互理解。

「意思疎通」

……この調子でいこう。

「この調子はどうかと」

 
 
 
 
 

図書館の中で、ペンの擦れる音と、小さな声が響く……

「学年が上でも、意外と分かるものですよ」

こっちとしては流石としか言う他ない。恐るべし優等生。
向こうのが授業内容は先行しているとか、自習とか塾とかあるのかもしれないが、問題なく教われてしまっている。

「無理そうなら最初から引き受けません」

ごもっともにございます……メンツ丸潰れだが、ありがたいのも事実。心中複雑だ。
今しばらく耐えるのだ! 等と脳内で放送されている。そう、今は耐える時……赤点を回避するその日まで!

「日頃から毎日勉強してれば、こんな事にはならなかったんです」

正論はやめてくださいしんでしまいます。
しかしいつもより問題が解きやすい。教え上手とは予想外だった。
教科書とにらめっこしてるのとは効率が段違いだ。

「後輩の勉強を見てあげることもありましたから」

まとめ役はそんな経験も積めるのか……すごいなーあこがれちゃうなー。
ところでこの状況、騒がしそうに見えるだろ? 結構声は抑えてるんだぜ?
声が大きくなると怒られちゃうから、気をつけてるんだぜ?

「そこ、間違ってます」

ほらね。って嘘でしょう? 答えまで導けたのに……

「間違った考えからは間違った答えしか生まれないのです。
 ほらここ、これは二等辺じゃありません。見た目で判断してはいけませんよ」

ウェー……マジっすか……マジっすよ。
彼女の指摘する所を確認してみるとボロが出るわ出るわ。己の脳の出来に涙が出る。
……ところでレイセンさん。

「何か用です?」

何だか生き生きしてません?

「話を逸らそうったって、そうはいきません」

そうだけど、そうじゃなくて、気になって勉強が手に付かないんです先生。方程式より先に解くべき問題があるんです先生。
楽しそうに見える理由を教えて下さい先生!

「先生……えへへ……仕方がありませんね!」

結構おだてに乗りやすいな。チョロいぜ。

「先輩と敬ってきた相手がもがき苦しむ姿を見るのは中々楽しい……」

おい。ちょっと。

「冗談です」

本当か? 今目つきがかなり怪しかったぞ。本当に冗談か?
実はドSが本性なんじゃないのか?

「本当ですってば……本当は、頼られるのが嬉しいんです」

んー? 頼れる姉御的扱いをされたいって事?

「違います。あなたに頼られるのが嬉しいんです」

……更に分からなくなった。 自分に? 何でまた。
申し訳ないが話を少し噛み砕いてもらえると助かる。

「いつも頼りっぱなしですから、私も何かあなたの力になれたらなあ、と。
 恩返しがしたいと言いますか」

そこまで恩があるとは思えないが……
何もしてない訳じゃないが、それでも大袈裟なんじゃないか。謙遜? とんでもない。いくら自分が仕込みをしたからと言っても、行動するのはレイセンなのだ。
そう言えるものなら言いたいが、レイセンが信じきっている顔なので、黙るしかない。
結果、過剰に持ち上げられた上に感情の発散も出来ないため、顔を背けるしか出来ることがなかった。

「あ……もしかして、照れてます?」

照れてねーし。
気になる女の子にここまで言われて悪い気はしないけど照れてねーし。全然だし。
ここは無言を貫くのみだし。

「沈黙は肯定と判断します」

照れてねーし。
それよりこっちの問題が解けたから見てくれ。

「誤魔化され……こっちが主題でしたね。どれどれ……今度は正解です」

やればできるぞ自分。
そうだやればできるからちょっと集中させて。

「むぅ……話の流れを切る気マンマンですが、勉強を盾にされては手が出せません」

これでもう余計な追求をされることはない。
ふふふ、完璧じゃないか。自分の機転が恐ろしいね。

「それじゃあ、集中力が切れてきたら、さっきの話題を蒸し返しますから」

やっぱりドSだよこいつ!?

 
 
 
 
 

秋の日は釣瓶落としと言うように、気付けば外は真っ暗になっていた。どこかの妖怪つるべ落としが太陽を沈めた訳ではない。
凝り固まった筋肉の緊張を解くように、思い切り伸びをする。背筋が伸びて気持ちいい……
ふぅ……いや勉強した。脳が溶けそうだ。

「大した集中力だと関心しました」

誰かさんが尻に火をつけてくれたおかげだよ。
ありがとう、そしてありがとう! 感謝してもしきれないな!

「そんなに褒めなくても……」

皮肉が理解出来ない筈もないのに額面通り受け取りやがった!?
ハイレベルな防御技術だわ……将来が恐ろしい。

「外はもう暗くなってますね」

今度はスルーされた。泣くわこれ。
思わず膝をつく自分を誰も責める事は出来なかった。或いは誰も近寄りたがらなかった。
一方自分を打ちのめしたレイセンはどこかそわそわしている。
トイレか?

「デリカシーがない!」

叩かないでください痛いです。謝るから勘弁してください。
それで一体何があったんだ?

「許すとは言ってませんけど」

それで一体何があったんだ?

「…………まあ、いいです。天文台が気になってて」

天文台。ああ、そんなに気になっていたのか。そう言えば後で行くかと誘ったっけな。
流石のトゥー・リアも図書館に天文台はないと見える。

「天文台自体はありますが……そんな事はどうでもよくて。
 時間も時間ですし、外は暗いですし、使えますよね? ね?」

そんなに星が好きなのか?
質問に対して、レイセンは軽く首を傾げ、一拍置いてから元のはしゃぎように戻った。

「そんな事より天文台を!」

ただの物珍しさかい。
まあ興味の源がどうであれ、確かに暗くなってきてはいるので、案内するにはいいだろう。
流石に勉強見てもらっておいて、案内しないと意地悪で返す程ひねくれてはいない。
市民にとっては見慣れた施設なので、混んでるということもあまりないと思う。

「行きましょう、すぐ行きましょう」

押すな、コケる。

 
 
 
 

図書館内、天文台。
市立魔法図書館の売りであるこの天文台は……何の由来で設置されたか知らないので後でパンフレットでも見てほしい。

「ちょっと」

いや知らんし。案外地元民の方が地元の事を知らないという事は稀によくある。
とにかく夜間になるとここから星を観測することが可能だ。
下の図書館で星座について調べておくと、星座表示のON/OFFが可能になる。

「へぇー」

その他、時期によっては天の川や流星などを見ることが出来る。
見たところで何のボーナスも無いが、一度くらい覗いてみる価値はあるだろう。星が好きなら尚更だ。
あと、ここも図書館の一角なので、静かにすること。

「説明は終わりですね? じゃあちょっと見てきます!」

にわかとかミーハーとか、そういう形容がとても似合う動きで、レイセンは天文台に飛び込んでいった。
やんちゃでもいい、元気でいてくれれば……
ネ実市民としては、物珍しさの欠片もないので困る。トゥー・リア探索でもすれば、自分も似たような事になるだろうか?

「ふわぁ……きれい……」

レイセンは星を見つめている。
『キミの方がキレイだよ(キリッ』とかギャルゲの主人公なら言うべきなのかもしれないが……
言ったが最後羞恥と自己嫌悪で死ぬに違いないので言わない。
大体、好意を隠しているのに……いつまで隠せばいいんだろう。いつまで……

「もしもし?」

はぁ……鬱だ死にたい。
もっと分かりやすい展開が良かった。こんな板挟みの環境なんて、お話の中だけでいいのに。

「もっしもーし」

星はいいよな……星だから何も考えなくていい……
地球意思? そんなのフィクションですよハハハ。

「せいっ☆」

へうっ!?
鼻をつままれる。突然の呼吸困難に思わず声が漏れた。吸える筈の空気が一瞬滞ることで、軽度のパニック状態に陥る。
強制的に思考は中断され、鼻をつまむ手を振り払った後は、呼吸するだけの機械となった。
吸って吐いてを繰り返し、どうにか安定した呼吸を取り戻すと、冷静さが戻ってくる。

ころすきか!?

「大袈裟ですよ。それに話しかけても無視するのが悪いんです」

だからって、だからってなあ! ああもう、この人でなし!

「妖怪ですから!」

知ってた!

“お静かに!”
天文台の中の人に怒られたので静かにする。ごめんなさい。
黙って星を見ることにした。星はいい、心が洗われるようだ……邪な気持ちも浄化され……ない!
ちっともされない! むしろ膨らむ! 進展したーい!!!
心の叫びなので誰にも文句は言われないからセーフ! セーフです! だから思いっきり叫んじゃう!
レイセン好きだーっ!!!

……ふぅ。
描写されないところでは、いつもこんな感じですが何か?
日に日に感情が激しくなっていくので、その内失踪とかすべきかもしれない。
流石に今の生活を捨てられるものではないので、一切の連絡を断つくらいが妥当か?
現実味に欠けるか。気持ちの問題じゃなくて、本気で探しに来られたらすぐ見つかるだろう。うむむ。

「……あの」

何か用かな? (考えを顔に出さないのが執事の醍醐味)

「もし良かったら……良かったらでいいんですけど、無理にじゃなくて。
 良かったら……その、あなたの事を、教えてくれませんか?」

藪から棒とはこの事か。
急すぎて意図がさっぱり分からない。説明をお願いします。

「ええと……ほら、私はあなたの事、全然知らなくて。今回だってあなたの成績が悪い事なんて初めて聞きましたし」

そりゃあ他校生だからそんなものなのでは。
言い返してみるものの、レイセンは全く納得していないようだ。

「でも、あなたは私の事をいっぱい知ってるじゃないですか。
 それがなんだか、悔しい……のかな。良く分からないけど、モヤモヤするんです」

一過性の症状だと思うのは自分だけなのか。
寝て起きたらきっと忘れてる気持ちなのでおうちに帰るといいよ。

「ダメですか」

ダメと言うか、そんなん話すの恥ずかしいし……
口ごもり誤魔化そうとするものの、まっすぐな目線が逃げを許さない。

「どうしても、ダメですか?」

その目で見られると、なんでも許してしまいたくなる。
自分の事を語って聞かせるくらい、特に問題はないのも拍車をかける。
本当に恥ずかしい以上の断る理由がないのだ。どうしよう。
……どうもこうもない、か。

根掘り葉掘りは勘弁な。

「じゃあ!」

お望み通りに。
初めから勝負の見えていた戦いではあったのだ。レイセンに本気で迫られれば断れっこないし、それさえ断れるなら、とうの昔にこんな関係解消している。
惚れた弱みだ。気持ちを自覚する前でも、結果は同じだったろうけれど。
しかしささやかなメッキを自ら剥がすとか、それなんてドM? レイセンがドSだからバランスが取れてるってか。やだね全く。

「えへへ……」

本当に全く、こんな事で嬉しそうな顔するから。
遅くなる前に帰るぞ。もう天文台も十分に堪能しただろう。

「はーい。あ、それじゃあ早速帰り道でインタビューをですね」

今日くらい勘弁してくんね。
しかも自分が帰り道送るの前提で話してるし……送るよ、ええ送りますよ。
思考を読まれててなんか悔しい。
この上自分の身の上まで話せと言うのか。泣けるぜ。

 
 
 
 
 

そうして。
具体的な成績の明言は避けるが、どうにか赤点を免れたことを記載しておく。

 
 
 
 
 

レイセンルート15章 おわり

 

その内につづく

 
 
 
 
 

おまけ 今日のうどんげ

 

大体13章より前の頃の話。

 

結局自分が頑張っても最後は家族とかが支えてあげるのが大事だと思った。
ので、話し合いをしてきなさいとケツを蹴っ飛ばすことにしたのだ。
特に反省も後悔もしていない。何故ならまだ成否報告さえ聞いていないからだ。

「本当に上手くいくのかしら……」

いいから行くんだうどんげ。きっと上手くいくから。
つーか行けオラッ!

「あいたっ!? 本当に蹴り出す奴初めて見たわよ!」

いい経験だろオラッ! 弾みをつけて家帰れオラッ!

「覚えてなさいよね……終わったらあんたも蹴っ飛ばしてやるから!」

上等だオラッ!!
……行ったか。それじゃあ自分なりの仕込みをしよう。やれと言ったからには自分には上手くいかせる義務があるのだと思う。
そのための用意はしてあるのだ。うどんげには内緒で。
聞けばいい顔はしないだろうから……それでは次の方、どうぞ~。

 
 
 

そう簡単にいくものだろうか、鈴仙は不安だった。
そりゃあ師匠や姫様が分かってくれるならそれは素敵な事だが、重い話題を避けられたらどうしよう。
悩んでみても何も始まらないため、まず師匠に話をしてみた……

「そう……そうね」

師匠は暗い表情を浮かべた。

「でも……それでも私には無理よ……私は責任を、」

 
 
 
 

~PAUSE~

 

~LOAD GAME~

 
 
 
 

何が起きたか、お分かりいただけただろうか? 自分には何が起きたか分からない。
今回お呼びしたのは、この方。確率と時間を操る御仁、TASさんです。

「…………」

名前付きなのにモブのドットの使い回しなこの人の力で、うどんげ達の話が上手くいくまでやり直します。
具体的に言うと悪い出目が確定した瞬間直前のセーブからロードします。
良い目が出たらそこでセーブし、次の判定に備えます。
こちらからはいつセーブとロードが起きてるのか観測出来ませんが。

なんかそれなりの回数やり直してるらしい。乱数がどうのこうの言いながら立ったりしゃがんだりしてるし。
自分の役目はMPが減っていたら回復すること。気付いたら凄い減ってたりして正直驚く。
リアル世界でTASるのは楽じゃないと本人も言っている。

「…………!」

TASさんにセリフはない。何喋らせていいのか正直分からない。
だが、仕草などでなんとなく言いたいことは分かる。
今ちょうど拳を握ったので、どうやらいい出目を引いたらしい。

……ところで、読者諸兄には、うどんげの運命を弄ぶようなこの行動を非難する方もいるかもしれない。
だが自分は全く気にしない。
物事には優先順位があって、自分はレイセンが大事なのだ。
もし今後レイセンとうどんげの両方同時に問題が起きたとして、一方を切らねばならないなら、きっとうどんげの方を切って捨てる。
実際にそんな事になった時のために、今の内に別に支えてくれる人達を用意するのだ。
家族のような身近な存在なら一番良い。別に八意先生やら姫様やらてゐやらが以前は冷たかったと言うものでもないのだろうが、より親密になって損はない。
お互いに暗い所を吐き出して、更に絆を深めればいいのだ。そうすれば、自分はお役御免となる、筈。
さあ、今夜はTASさんのMP供給できっと家に帰れないぞ!

 
 
 

「そう……そうね」

師匠は暗い表情を浮かべた。

「でも……いえ。話をするべきなのでしょうね。私の問題でもあるのだから」

永琳には察しがついていた。きっとウドンゲは彼に動かされたのだろう。
それでも、彼女は向き合う道を自分で選んだ。見捨てたに等しい私と、向き合う。
ああ、そうだとも。あの日私はウドンゲに何もしてあげられなかったと言うのに。見殺しにしたと思われても仕方がない私なのに。
ならば私が逃げる事は許されない。いや、もう逃げたくない。話がしたい。今度こそ、この子の力になりたい!

「お茶を淹れてくるわ」

「それは私が」

「いいの……心の準備をさせて」

「師匠……」

きっと永い夜になる。
輝夜も、てゐも、部外者ではいられない。必ずここに来る。
だからお茶は4つ。

 
 
 

~PAUSE~

 

~SAVE GAME~

 
 
 

きっと永い夜になる。
だからタイガーバームを目の下に塗る……カァーッ!!! 痛い痛いヒリヒリするぅ!!
え、MP切れそう? 急げ急げエーテルエーテル目の下いたいよぉ……

 
 
 
 
 

そうして夜が明けて……実際寝不足です。
日付変更前には帰れて本当に良かった……もう二度とあんなことしないよ。
で、結果はどうですかうどんげちゃんよ。

「うどんげ言うなちゃん付けするな……思ったより、上手くいったわ」

良かった。こっちとしては最後の最後で投げっぱなしになって、申し訳ないが。
全部解決とはいかないだろうが、以前よりはマシになったろう。

「そうかな……そうよね。そうだ、師匠があんたに後で話があるって」

えっ。自分、投薬実験は勘弁願いたいんですが……

「違うわよ。お礼が言いたいんですって、直接。
 ……私からも。あんたに蹴っ飛ばされなかったら、あんな話することもなかったろうし」

そんなものだろうか。
いや、分からんでもないな。家族ほど却って深い部分を見せられない気持ちは。
まあ感謝されておこう。これでケツキックもなしやで!

「それはそれ。イヤーッ!」

グワーッ!?
前から蹴られたのにケツが痛い! これが噂のSUK(スーパーうどんキック)って奴なのか……っ!

「これで人を蹴っ飛ばした分はチャラにしてあげるわ」

はいはい。自分はそこまで思いっきり蹴ってないけどな。

 
 
 

これでトラウマの全てが解消したという訳ではないだろう。
それでも、きっと大丈夫。折れてから治った方が硬くなるものもあるのだから。
例え物事が繰り返そうと、もう同じようにはいかないんだ。
もう1人じゃないから。元から1人じゃなかったけど、それに気付けたから。

 

後はもう、ケツを蹴っ飛ばす前に自分から進んでいくだろう。
先生に報告するとしよう……

 
 
 
 
 

”鈴仙・優曇華院・イナバの場合”オールクリアー!

鈴仙を攻略する権利を失った……
あとがき
世界が狭くなってる感。もっとキャラを出したいなあ、と思いつつも出来たのはこんなんでございます。
うどんげは……脳内で二転三転した結果、こんなことに。
ちんたらやってる内に祝一周年(多分)。いや前の投稿所消えたから正確なところが分からなくて……1章は現投稿所に上げる時に更新してしまったし。

 

前回のコメント返信
>レイセン「ふんす!」
コメントありがとうございます。うわああああ! 極限の絶望をくれてやる……だっておwww
>他人の金で買うたい焼きの味は、甘い。
自分の懐が痛まない……なんという甘露か!
>この二人、中々に学園祭をエンジョイしてますな。まぁ、これだけ面白そうなイベントが沢山あれば納得ですが。
>そして楽しそうにしていただけに、最後の別れは辛いぜ…。
あるだけ詰め込んでみた結果がこれだよ!!! オチはまあ……うん。
>しかし、人間の知恵はそんな辛い体験も乗り越えられると信じてますぜ。
>攻略を急ぎ過ぎもしなければ、その難易度に絶望もしちゃいない!
>頑張ッテ!!
すいません、サイコフレームは来月からなんですよ。

 

>学園祭、というか夏と冬にあるお祭りを想起してしまったw
コメントありがとうございます。薄い本が厚くなるな……
>PC側はもちろん、レイセン側の好感度も相当高くなってるわけだけれど
>姉妹への告白イベントまで耐えきれるのだろうか。二人共。
耐える? 耐えるのも苦しむのもPCだけさ!
>次回はテスト前の勉強会?二人で一つ屋根の下?
そう簡単にお家に行けると思ったら大間違いだ!
真面目な話をすると、レイセンは女子寮だし、PC家は描写すると主人公が確定しちゃうし……な訳で、その辺りどうにかなるのを思い付かない限りお家訪問はないかと。
>ギョクトちゃんロボはウサギ型から人型に変形するのだろうか。
>完全変形でDXだと稼動域は狭そう。
>でもダイキャスト製でズッシリ重量感あるロボ玩具は大好きさ!
かたくておおきいおもちゃなのです。しかもうごきます。

 

倫理

 

1.100点2012/09/20 23:00:35削除
PC、レイセンの指導にまさかここまでついてくるとは…。 大した奴だ。 やはり天才か。

 

学生と学力テストは切っても切れない関係にある…。立派な成人になるには残当だが。

 

何だかんだで脈ありそうなお二人さん。一緒に勉強といい、天文台といい順調に接近していると感じられれます。
だからPCよ、欝になるな! 死ぬんじゃない!諦めないでー!
レイセンのスペックはやはり高いなあ。伊達にリーダー張ってるだけあるわ。
何だかんだ言って勉強教えてくれるし、頼りになった人への恩義を忘れない。
ホンマ女神様やで。ぐう聖や。