妄想SS レイセンルート十六章
倫理
※警告!
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なんか寒くね? そう言ったのは誰だったか。気付けば冬である。
豊穣と紅葉を司る神々が、氷精と雪女にケツを蹴っ飛ばされたのは最近の話。気温は一気に急降下!
迫り来る冬季最強のHNM、冬将軍対策の装備を厳選する人達で市場は賑わう。一部の冒険者は寒さを嫌い、早々に今年の仕事を締め切ってしまう。
吐く息が、空気が、そして景色も白くなる……
「私、冬眠します」
レイセンは真顔で言い切った。この娘マジだ、止めないと本気で土の中に行ってしまいそう。
待て、早まるんじゃない。後兎は冬眠しない。
「知ってますよ兎ですから……それにしたって寒くって。耳とかすごい冷たくなるんですもの」
一目で分かる程分厚いイヤーカバーに包まれてるのにまだ寒いと言うのか。
いやそれよりも……あまりジロジロ見る訳にはいかないが。
そのスカートの下、タイツ一枚だけの太腿周りを何とかすべきではないのだろうか? 具体的に言うとジャージを仕込むとか。
見ていて辛そうでたまらない。
「プライドの問題です……ハニワスタイルは一度やってしまえば二度とは戻れない魔性の服装。
ですが、あれは暖気のために何かを捨てています! 私はそれを捨ててはいけないのです!」
ごう、とレイセンの背中から熱的な何かが立ち上った。熱い決意であった。
すごいと関心はするがどこもおかしくはないな。すごいなーあこがれちゃうなー。
……寒いですよね?
「寒いに決まってるじゃないですか……」
決意で熱は生み出せない。現実は非情であった。
寒波は圧倒的に流石な感じで、居並ぶ者全ての体温を奪い去らんと猛威を振るう。
避難が必要だ……暖かい空間へ逃げ込まなくては。
このままでは二人揃って凍死、は大袈裟だが、気が滅入ってしまう。
「ですよねー……暖房が恋しいです。その辺のコンビニでも何でもいいですから入りましょ?」
そうしましょ。
この辺りだと……そうだ競売場があるじゃないか。あそこなら年中暖かい。
友よ! 今が駆ける時!
「? えーっと……」
通じなかった……悪い事をしてしまったな。
一方的なネタフリは避けるべきだろう。レイセンが対応出来ないと寂しいだけだ。
気を取り直して、行こう。あそこなら暖かい。
付いて来てくれ。
「あっ、はい」
ネ実市・競売場
消耗品から一品物まで、あらゆる物が集まるネ実市の流通の起点の一つ。
掘り出し物や消耗品のまとめ売りを求めて、主に冒険者で年中ごったがえしている。
購入・出品はいつでも誰でも可能。あなたも利用してみてはどうだろう。
「うーわ、人多くないですか」
冒険者だって冬くらいは家で過ごしたいんだ……アイテムを外に取りに行くのが嫌だから競売場で済ませようとする。
ネ実市冬の風物詩の一つだ。
「へぇー。ウチじゃこういうの見ないですね」
そもそもトゥー・リアに冒険者はいるのだろうか。あそこは内部で完結してるイメージが強いが。
「いない事はないですよ。これに比べれば微々たるものですけど」
ネ実市と比べれば大抵の街の冒険者は少ないだろうな。
事実ネ実市からは年間かなりの量の冒険者が誕生している。大体他所の平均値の1.5倍くらいに上がるらしい。
そしてその冒険者の多数を輩出してるのが、他ならぬ我等が陰陽鉄学園。
冒険者を進路に選ぶ者は全体の二割程度だが、母数が多いので二割でも相当な数になるのだ。
「冒険者育成にも力を入れてるって話は本当なんですね」
どの進路を選んでも独学にならない程度には各分野の先生が揃ってる。
いい学校だよ、本当に。冷静に振り返ると良く分かる。
「好きなんですね、学校」
まあ……こんな考えを持つようになったのも、レイセン……いや、月光女学院とちょっとわずかに関わったおかげじゃないかと思う。
別に向こうをけなす訳じゃない。ただ学校ごとの方向性の違いを感じてから、少し引いた目線を持てるようになった。
「なるほど……じゃあ、あなたから見た月女はどういう印象ですか?」
息苦しそう。一本道と言うか、広がりがない感じ。逆に言えばそれだけ大事にされてるって事だろう。
スキルに選民思想が付くだけの事はあるな、と言ったところか。
「ふぅん……息苦しい、ですか。そう見えるんですね、ふむふむ」
何かの参考にされている気がする。
発言の引用は基本的に許可するが、加筆や改変を伴う場合は改変元を明記して欲しい。
「レポートか何かじゃないんですから……む?」
レイセンの視線が唐突に横を向く。見つめるのは競売品一覧だ。
何か掘り出し物でも見つけたのか。
「ギョクトちゃんですよギョクトちゃん! ネ実市でも会えるなんて!」
確かにあれは紛うことなき月光女学院のマスコットキャラクター、ギョクトちゃんだ……
ただ、なんか、おっきい。中の人を感じる大きさだ。
そして会場を闊歩している辺り、売り物ではないようだ。
「あぁ~いいなぁ~あれ欲しいなぁ~……」
着ぐるみが欲しいとは、中々ファンシーな趣味をしている。らしいと言えばらしいが。
「違いますよ、ギョクトちゃんが欲しいんです。ああいう代物は入手が限られてますから」
コレクターとしてか……可愛い一面かと思ったが、いつも通りだった。
しかし本当にギョクトちゃん好きだなあ。
「……」
おや、レイセンの様子が。どうかしたのか?
「可愛いなんて言ったって、何も出ませんからね。もう」
おまえはなにをいっているんだ。
変に意識しないでほしいものである……大体出てるから、可愛さ溢れてるから。
その伏し目がちな視線は自分に大ダメージなのを分かってほしい。今ねだられたら、あの着ぐるみの強奪くらいはしてしまいそうだ。
野郎は今だけ他所向け他所、この可愛さは自分が独占する。
そんな風に悶々としていたから気付かなかった。
着ぐるみが自分達の目の前に来ていた事に。無表情な目がじっとこちらを見つめている事に。
……怖いわ!
「ひゃい!? ななな、何か用ですか?」
『私の事見てましたか?』
「み、見てません!」
『そうですかありがとうギョクトちゃんすごいですね』
「それほどでもないです!」
着ぐるみ越しのくぐもった声……だが、我々はその声を知っている!
いや、そのウサミミと赤い目を知っている! 脱いだッ!!
「ふぅ……ああ、呼吸しやすい。
それにしても、頭外しただけでそんなに興奮するとか……あんた、変態?」
変態ではないし変態と言う名の紳士でもない。そしてそんなに興奮してもいない。
ドーモ、ウドンゲ=サン。
そう、中から出てきたのは鈴仙であった。
ウサミミの中からウサミミが登場とは、ちょっと新しいものを感じる。
ところで、何か用かな?
「『reisenはあなたをじっと見つめた。』なんて3回連続で表示されるから挨拶しに来ただけよ」
れっきとしたマナー違反だ。知り合いじゃなかったら怒られても文句は言えない。
皆も何度も相手を調べるのはやめよう(しきたり)。
貴公……
「ご、ごめんなさい! つい……」
まあ、うどんげだからいいんじゃないかな。
ねーうどんげ。
「気持ち悪い」
「地獄に落ちろ」
ひでえ。
……三人は無言で握手を交わした。
ところでうどんげは何だって着ぐるみなんかに?
まさか防寒具ではないだろう……あったかそうだけど。
「そうそう、これ結構あったかいのよ、って違う。
アルバイトよ。ほら手持ち看板」
「ネ実市でギョクトちゃんの格好をして……ですか?」
最もな疑問だ。
別に着ぐるみと看板で宣伝というのは珍しい事ではないが、場所に合わせた格好というものがあるだろう。TPOだ。
トゥー・リアなら分かるが、ネ実市には合わないのは明らかだ。
「んー? これギョクトちゃんじゃないわよ」
「えっ……いやどう見てもギョクトちゃんですよ」
「ここ(胸の位置)に校章がないでしょ。だから別キャラよ」
「ええー……」
そんなものではこの俺は誤魔化せんぞ!
等と言ってみたりして。しかし他都市の学園のマスコットなんぞよう知らん勢も少なくないだろうし、案外イケるのかも。
ちなみに看板には永遠亭の宣伝文句が……汚いな流石ヤゴコロせんせきたない。
「ところで二人共、随分余裕なのね。今頃は忙しくしてると思ってたわ」
「はい?」
ん? 何か気になることを口にするうどんげ。
詳しく話を聞きたい、どういう事だ。
「いやだって、そろそろ月女のクリパでしょ? 用意とかしなくていいの?」
自分とレイセンは、同時に目をしばたかせ、同時に互いの方を向き、同時にうどんげの方に向き直った。
えっ
そして自分は下を向き、レイセンは上を向いた。
表情は多分同じだっただろう。
やっちまったぁ~!!
「しまったああああ!!」
レイセンルート16章 ~クリスマスは突然に~
わ、ワシらは一体、何をしておったんじゃ……おおお、おおお……
圧倒的な悲しみが二人を襲った。一方は膝から崩れ落ち、もう一方は頭を抱えて伸び上がった。いずれも大きなショックによるものである。
周囲の視線が集まっているがそれどころではない。
説明すると、月光女学院では毎年クリスマスに校舎を会場にしたパーティーが開かれる。恒例行事だ。
もちろん豊姫も依姫も参加する。つまり姉妹のためのプレゼント選びをしたり、一緒にパーティー会場に行く約束を取り付けたり、していなければいけなかったのだ。本当なら!
振り返って今の自分達はどうか!?
「愚かすぎます……死にたい……」
「え、嘘、本当に何の準備もしてないの?」
笑ってくれ、いや笑わないでくれ。
自分達は今日まで何もしてなかった。何もだ……
「うふふふ……豊姫お姉さまも、依姫お姉さまも、もう誰かに誘われちゃった後だよね……うふふふ……」
「あーっと、なに、その……うん。とりあえず師匠に相談してみたら? 何か名案を出してくれるかも」
その一言に自分達は藁にも縋るように飛びついた。
八意先生なら……八意先生ならなんとかしてくれる! 根拠は無いが、このままよりはマシなのだ。
今から行ったら迷惑かな? ダメかな!?
「永遠亭ですよね! やっぱりお邪魔ですか!?」
「いや、今ぐらいなら平気なんじゃないかな……?」
急ごう、時間は待ってはくれない。遅れを取り戻せるかもしれない!
「行きましょう!」
全速力で駈け出す。振り返ることもなく。
今の今まで話していたうどんげの事も一瞬で頭の中から消えてしまったらしい。礼の一言も無しであった。
「……まあ、いいわ」
しかしうどんげは気に留めなかった。
何故ならば、こうなる事は予め想定済みであったからだ……想定したのは彼女ではないが。
『/linkshell HQ、こちら鈴仙。兎の追い込みに成功。繰り返す、兎の追い込みに成功』
『/linkshell こちらHQ了解。以降は客寄せに復帰せよ』
『/linkshell 了解。通常業務に復帰します……それにしても、あの二人』
『/linkshell どうかした? ウドンゲ』
『/linkshell いえ、イチャついてる間に他の事を忘れるとか、傍から見たら既にカップルって奴じゃないですか。
今更豊姫様や依姫様の件を蒸し返す必要はないのでは』
『/linkshell 二人の関係は二人が決める事よ。それに、ここで放置したら面白く……オット!
手伝うと言った手前不義理になるじゃない?』
『/linkshell 今すごく利己的な何かが飛び出しそうになりましたよね?
釈迦に説法だとは思いますけど、二人の前で今のを出さないように気をつけてくださいね師匠』
『/linkshell 大丈夫よ。うっかり洩らすのも相手を選ぶわ』
『/linkshell それはうっかりとは言いません……』
走る走る男が走る。
己の失態を取り返すため、隣の彼女の幸せのため、全速力で男が走る。
走る走る女が走る。
情けなさを振り切るため、忘れていた事を忘れるため、必死になって女が走る。
身を切るような冷気の中を、汗を流して熱波が駆ける!
向かうは永遠亭! そこに好転の鍵はあるのか!
待て次回!!
レイセンルート16章 完
「どうでもいいけど、これってアルバイトより家事手伝いよね。
ウチの薬宣伝してるワケだし、お駄賃も師匠が出すし」
「ま、いっか。とっさに口が回らない事なんて良くあるわよね」
『/linkshell HQよりウドンゲへ。聞こえますか?』
『/linkshell アッハイ、こちら鈴仙』
『/linkshell 指示を送ります。これは優先的に処理すること』
『/linkshell 鈴仙了解。指示をどうぞ』(師匠が真剣だ……一体何が)
『/linkshell 姫様より「お菓子なくなっちゃった」との事です。必ず買って帰る事』
『/linkshell …………はい。鈴仙、通信終、』
『/linkshell あ、待って。せっかくだから一緒に牛乳も買ってきてちょうだい』
『/linkshell てゐちゃんのおやつもよろしく~』
『/linkshell てゐまで……はぁ、分かりましたよ。鈴仙通信終了!』
つづく
あとがき
クリスマスに間に合わせたかった。マニアワナカッタヨ……
前回のコメント返信
>PC、レイセンの指導にまさかここまでついてくるとは…。 大した奴だ。 やはり天才か。
コメントありがとうございます。シカマルの父ちゃん死んじゃった……
>学生と学力テストは切っても切れない関係にある…。立派な成人になるには残当だが。
勉強が楽しくなる魔法! 無いですかそうですかすいません。
>何だかんだで脈ありそうなお二人さん。一緒に勉強といい、天文台といい順調に接近していると感じられれます。
>だからPCよ、欝になるな! 死ぬんじゃない!諦めないでー!
がーんばれーまけーんなーちーからーのかぎーりいーきてーやれー!
>レイセンのスペックはやはり高いなあ。伊達にリーダー張ってるだけあるわ。
>何だかんだ言って勉強教えてくれるし、頼りになった人への恩義を忘れない。
エリートの中のエリート、つまりスーパーエリートということだ……大した奴だ。やはり天才か……
>ホンマ女神様やで。ぐう聖や。
なお試験時間には間に合う模様。
倫理
- 旧コメント
今年最後の学園SS!!読めてうれしい!
レイセンはうっかりカワイイぜ。大事なイベント忘れちまうなんてww
しかしまぁ、クリスマスといえば攻略一大イベントなわけだし、この程度で終わる訳があない…!!と思う。
次回に期待しつつ良いお年をー
肝心のクリスマスイベント先送りとか生殺しか!(楽しみ)
ウサミミの中からウサミミでピンクのクマ(宇宙人)思い出したw
そしてギョクトちゃんすごいですね言ってる時点でそのキグルミがギョクトちゃんなのは確定的にあきらか。 忘れていたことを忘れるため<意味深
でわでわ、よいお年を~