SS/妄想SS レイセンルート四章

Last-modified: 2013-11-12 (火) 09:24:29

妄想SS レイセンルート四章
倫理
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夏も盛りの8月。
蝉が思い思いの木々に止まり大合唱をはじめ、その音をBGMに子供たちが力の限りに駆け回る時期。
学生たちが長いようで短い夏休みを謳歌し、社会人も短い休みでどうにか楽しもうとする。
そして、そんな人々が夏を噛み締めるべく集まる場所といえば、そう海である。
照りつける太陽の中、どこからともなく集まる人々……今回のレイセンルートは、この海からはじめよう!

「…………」

……いやぁ、暑いね!
7月に来たときも暑かったけど、あの時よりもっと暑くなってるよ!

「…………」

そ、それなのに人の多いこと!
やっぱり海は大人気だよね! まさに至高の観光スポットといったところかな!?

「…………」

の、の、喉乾いてない!? 水でも買ってこようか!
熱中症になったら大変だものね! たくさん飲まないとね!!

「…………はぁ」

マジごめんなさい……

レイセンルート四章 ~ポロリはない~

開幕早々レイセンに謝っている訳だが、当然それには理由がある。
そう、自分は今正に招かれざる存在。レイセンにとってこの上ないおじゃま虫となっているのだ。
何を隠そう、この海にやってきているのはレイセンと自分だけではない……

「人がいっぱいねー」

「これでは場所を取るだけでも一苦労なのでは……」

綿月豊姫(姉)と綿月依姫(妹)。レイセンのお目当てたる二人も一緒に来ているのだ。
元々は綿月姉妹とレイセンのデートの予定で、自分はこの場にはいない筈だったのだ。ああ、それなのに。
姉の方がレイセンに『男よけが欲しいなー♪(超意訳)』と自分を連れてくるよう頼んだらしい。豊姫に頼まれれば嫌とは言えないのがレイセンである。
哀れレイセンと姉妹のデートの筈が、不要な存在が混じってしまったのだった……

どうしてこうなった。

「そんなの、私が聞きたいですよぅ」

「どうしたのー? 二人共暗い顔しちゃって」

綿月(姉)が朗らかに語りかける。
お前のせいだよ!! とは口が裂けても言えない状況であった。レイセンも同様である。
と言うかレイセンはもうテンションだだ下がりで、反応が遅れている。
このままではいけない。どうにかレイセンを復調させて、この状況をデートに昇華させなければ。
自分に出来ることは……そう、空気になることだ。
『そこにいたのにいなかった』とか言われるような、玉出ししてるのに見向きもされないような、そんな存在にならねば。

俺……やるよ、レイセン。

「え? な、何をですか?」

必ずやり遂げてみせるから!

「何をボサッとしているのです。すぐに場所を確保しなければ」

それにしても、まさか綿月の妹の方まで来るとは思わなかった。
こんな人で混んだ空間なんて、穢れのすくつ(なぜか変換できない)みたいな場所に、後輩の誘いとはいえ……
一夏の思い出でも欲しかったのか、それともレイセンに脈があるということだろうか?
後者であれば喜ばしいのだが、レイセンを見る表情から慕情を読み取ることは出来ない。

「依姫……その気になってくれたのね!」

「逃げられないのなら、やるまでです」

ちなみに依姫は意外にもビキニである。
わずかな布が確かな膨らみを必死に守るものの、それ以外は当然ガラ空き。引き締まっているのに柔らかなボディラインはばっちり衆目に晒されている。
腰にはパレオが装着されているが焼け石に水。いやむしろ、あからさまな露出の中の一点、少女の恥じらいを表すかのような装飾は却っていやらしいとさえ言える。
パレオが揺れる度に僅かに覗く瑞々しい太股は男の視線を惹きつけてやまない……

言うまでもないが依姫の水着は自分で用意したものではなく、豊姫が着せたものである。
こんな恥ずかしい水着を選ぶキャラじゃないのだから(私服のスカートがかなり際どいのは置いておく)。
パレオは豊姫に押し切られた依姫がせめてこれだけはと持ってきたのだ。
以上、姉の方談。

一方、その姉の方はと言えば、これまたビキニタイプ。と言うより依姫のものと色違いの代物である。
依姫が一人ではビキニは着ないと抵抗した結果であるが、豊姫は全く恥じらう様子もなく着こなしているのだった。
妹よりも一部膨らみの大きい体は、ビキニ装備によって更に際立って見える。しかしながら、その羞恥を感じさせない振る舞いが過剰ないやらしさを緩和している。
妹のパレオの代わりだろうか、頭にはZUN帽が乗ったままである。

そしてトリを務めるはレイセン。これまたビキニ……ではなくワンピースである。
フリルなどが付いてやや少女趣味に見えるが、いささか凹凸に欠ける体にはよく似合っている。
細く、それでいて成長を期待したくなる肢体は、フリルと合わさってさながら開花を待つ蕾のようだ。
綿月姉妹が二人共ビキニなので、二人の間に入ると収まりが良いと言うのもレイセンにとっては見逃せない点であろう。
おそらく狙い通りなのだろう、三人並ぶと実にいい塩梅である。

などと、あからさまな視線に気付かれないよう慎重に眺めながら思考を回す。
そう、自分は空気にならなければならない。一方で、男よけとしての役割も果たさなければならない。
中々の難題であろう。存在をアッピルしなければナンパ男が寄ってくる。しかし、それでは空気になれない。
自分はなんとするべきか。

「すごい……考え事してるみたいなのに、的確に場所を確保してパラソルを立ててる……」

レイセン……メイド学はいいぞぉ。

「メイド学、ですか?」

そうメイド学。男の場合は執事学だろうか。奉仕の精神と技術が身につくんだ……
訓練さえ積めば、そう例えば、何か考えながらでも体は自動的に働いてくれるようになる。
それにマスターまでいけば国家資格だ。将来の職にも困らない。

「へー……」

将来云々はエリートコースの女学院生には必要のない話だったか。

「いえ……その、まだ、将来とか考えてなくて」

そうか。実は言ってる本人も碌に将来のことなんて考えてはいないからイーブンってとこかな。
よし、それじゃあ……

「海まで来て重い話をするのねえ」

俺の後ろに立つな! ……もとい、プレイヤーに不意打ちとかやめていただけません?
まあ、置いといて。場所取りは楽に終わりましてん。妹さんの気迫すごいですね。

「依姫のおかげでいい感じにスペースが開いたものねー……でもあの睨みはどうかと思うの」

「で、でもっ! 依姫さますごくかっこよかったですっ!」

「ありがとう。でも、依姫の中ではただスペースを探してキョロキョロしてただけなんだと思うわ」

「え、ええっ!? 私もちょっと怖かったのに……」

レイセンはかなりアガってしまっているようだ。依姫の纏う空気を読み違えるなんて、取り巻き筆頭とは思えぬ……
攻めの時と分かっていても、心はままならないものか。ああ……ひとつやることが増えたな。
つまり自分は空気になりつつ男を近づけずレイセンの緊張をほぐさなければならない。うんそりゃ無理だ。
海に着いて早々だけど、もうゴールしてもいいよね……

よし、それじゃあこれを持って綿月(妹)さんの所に行くといいよ。
姉の方も一緒に。

「ビーチボール? いつの間にふくらませて……」

「あなたは来ないの?」

あつさにやられてしまいました。やすまないとしんでしまいます。
妹さんとは距離感が分からないのもあるし……3人で仲良くしててください。それに、荷物番も必要でしょう?

「そう……仕方ないわね」

「い、いきましょう!」

行ったか。遊んでる内にレイセンの緊張が解けるといいのだけれど。
待てよ、そうか、そうだな。レイセンのテンションさえ上げてしまえば自分がいようといまいと関係ない状態にいける筈。

よし、やることが見えてきた。レイセンをアゲてやることが第一。これが成功すれば自分は放っといても空気になれる。
後は空気のまま、男連れであることをアッピルすべく時々絡むだけでいい! なんだ完璧な作戦じゃないか!
うふふ……自分の才能が怖い(キリッ

そうと決まれば! ……三人が戻ってくるのを待とう。
荷物も心配だからね。仕方ないね。決して静かな場所で水着美少女のキャッキャウフフが見ていたいからじゃない。
あつさにやられたってのも嘘じゃないからね。うんうん。

……あ。レイセンの顔面にビーチボールが。

また顔面トスか。

すげえ、三連続だ……

「結局見てるだけだったわね」

眼福でし、もとい。
今は荷物番ですので、早々持ち場を離れるわけにもいかず。ナンパも近寄りませんでしたしねぇ。
それより綿月(姉妹)さん、ちょっと後輩をお借りします。

「レイセンを?」

「わ、わたしですか?」

……今、さりげなく今日はじめて綿月(妹)さんから声をかけられた気がする。が、まあそれは置いておく。
そう。少し話があるから来てほしい。

「あら? 私達に内緒の話かしら」

綿月(姉)さんに、聞かれたら困ることではあります。妹さんにもですけど。
そんな訳で、構いませんか?

「一向に構わないわ」

「レイセン……何かあれば呼びなさい」

「え? あ、はい」

妹さんからの警戒されっぷりがステキステキー♪
そこまで警戒されるような覚えがない……いや、鉄学園の男ってだけで十分なのか。
今更だけど、姉の方はなんで自分をこの場に招いたのだろう。実の妹にとって不快な環境にする意味とは一体。

「あの、それで、どこに行けば……」

ああ、済まない。付いて来てくれ。

前回の調査で人気の少ない場所を調べておいた甲斐があった。
何せ展開によっては恥ずかしいことを言わなければならないだろうから。一人称が“自分”から“俺”に変わるくらいの。
しかし、それが必要とあらば。

「それで、話って……」

……君は今、ひどく緊張しているんじゃあないかな。

「うっ……はい、お姉さまと一緒だと思うと、頭がフットーしそうで……」

それは傍から見てもよく分かった。
でも、このままじゃいけないとも思っているんだろう。

「はい……こんな機会、滅多に無い……モノにしなきゃって思って、でも焦ると余計に頭が熱くなって……」

怖いか。

「……はい」

自分自身を信じられない?

「…………はい」

そうか……そうだろうな。
俺や八意先生に向かっていったのとは訳が違う。きっと恐ろしくてたまらないのだ。
踏み込もうにも、“失敗したらどうしよう”とか“嫌われたらどうしよう”とか、暗いイメージが全身に絡みついて動けない。
この子は今、恐怖と戦っている。どんなボスよりHNMより恐ろしい、自分の心と戦っているんだ。

なら、俺が今、やることは。

なあ、どうしても自分を信じられないか。

「……無理……です」

そうか。だったら。
俺が信じる。だからレイセン、君は俺を信じろ。

「…………えっ?」

大した時間じゃないけど、俺は君を見てきた。だからよく知ってる。
レイセンは勇気のある子だ。心の強い奴だと。だから、今回だって絶対にやれる!

「そんなの……買いかぶりです」

買いかぶりなものか。間違いなく正当に評価してるとも。
そうさ。俺に話しかけたときも、八意先生と一人で話すと言ったときも、君は勇気を振り絞っていた。
たった二回と言うかもしれない。けれど、その二回を踏み出せる奴がどれだけいるか。
自分自身の弱音の怖さなら、俺だって知ってる。それを跳ね除けることの難しさだって分かる。

君は、間違いなく強い。俺が保証する。

「ぁ……う……」

失敗を恐れる気持ちは痛いほどよく分かる。
けど俺は、そこで終わるレイセンじゃないと知っている。
始まらないまま終わってしまうことを受け入れるレイセンじゃないと信じている!

「で、でも……」

ひとりで無理なら俺が力になる。大したことは出来ないが……だから。
俺が信じる! だから俺を信じろ! お前はやれる! アタックだ!

「あぅあぅあぅあぅ……」

レイセンはひどくこんらんしている!
こっちもこっちで恥ずかしいこと言い過ぎて羞恥で顔真っ赤である。素に戻ったら死ぬしかない。
それでも、止まることはない。今必要なのはブレーキではなくアクセルなのだ。バックギアなどもっての外。
この子に前に進んでほしいと思えば。

止まらない。止まれる気がしない。
レイセンを助ける、守りたいと思う。学業とかレベリングとかアイテム集めとか、やりたいことは沢山あるけれど。
今、俺が一番したいことは、この子の道を切り開くことだ。
……なんでこんなに必死になるのかは、よくわからないのだけど。

「はぁ……ふぅ……はぁぁ……」

どうだい、いける気がしてきたかい?
いけないってんなら、こっちにはもうちょい続ける用意があるんだぜ?

「も、もういいですからぁ! これ以上あんなの聞かされたらっ!」

的外れなことは言ってないつもりなんだけどな。

「あぅ……でも、ありがとうございます。元気、出てきました」

よかった。恥ずかしいこと言った甲斐があるってものよ。
で、元気の出た君の次の行動はいかに!

「……戻ります。お姉さま達のところに。やります! アタックです!」

よっしゃ! 行こうぜお前ならやれる!
ダメでも一人で死なせやしないっぜ!

「はい!」

ん……時間は、そんなに経ってないな。よかった熱中しすぎて一時間くらい過ぎてたらどうしようかと。
さて向こうは……ん? なんだありゃあ。

「え? 何か……あれは!?」

レイセンとPCが何処かへと向かって少し……

「行ったわね……うふふふ、ふたりっきりでどんな話をするのかしら」

「レイセン……何もされなければいいけど」

視界の外でこれから起こるだろう二人のやりとりに思いを馳せる豊姫に対し、依姫の胸の内では不安が渦巻いていた。
果たしてあの男は信用に足るか否か。レイセンを傷つけていやしないだろうかと。

「依姫は心配性ねえ」

「お姉さまが無用心なんです」

依姫がレイセンに近寄る男の存在を知ったのは割と最近のことである。
その報をもたらしたのは自分の姉、豊姫であった。しかも姉は、その男が陰陽鉄学園の生徒であると言う。
最初は何処かのゴシップでも掴まされたのかと取り合わなかった依姫であったが。

「レイセンが信用しているからといって、それは私が彼を信用する理由にはなりません」

「大丈夫よ。どちらかと言えば紳士と言えなくもないわ」

「紳士!? それでどこが大丈夫なんですか!」

豊姫の報を受けてから数日、故あって陰陽鉄学園の近くに来ていた依姫は偶然にも目撃した。
レイセンと微妙な距離を保ちつつ親しげに会話する男子の姿を。
この光景は依姫にとってショックだった。

「こうしてはいられない! すぐにでも排除しないと!」

「待って誤解よ! 紳士と言ってもあの紳士のことじゃないの!」

「じゃあ何だって言うんですか!?」

「紳士は紳士でも真っ当な紳士ってことよ!」

月光女学院の生徒は程度の差こそあれど、陰陽鉄学園には近寄りたがらない。
彼の地が穢れの溜まり場と称されるからだ。最初は真に受けぬ生徒も、女学院の中で何度もその話を聞く内に、いつしか近付かぬようになる。
レイセンもその一人であった。更に彼女は男嫌い、いや軽度の男性恐怖症を併発している感があった。
だというのに。

「……本当でしょうね」

「あのねぇ……私だってレイセンのことは大事に思ってるのよ?」

この場にあの男を呼んだのも、実は豊姫ではなく依姫の発案である。
見定める必要があった。大事な妹分に近付く男。もしもレイセンに害を成したり、利用したりするつもりなら……
今だって本当はレイセンを追いかけて万一に備えたいのだ。

「大体、どうして追いかけるのを止めるんですか」

「邪魔しちゃ悪いじゃない」

レイセンより前から彼と会っていたと言う豊姫が邪魔をする。
姉には姉の目論見があるようだが、こちらにその目論見を教えないのだから、こちらもそんなもの考慮する必要はない。
しかし物理的に通せんぼをされては、無理に突破も出来ない。
仕方なく神降ろしで千里眼状態になり、じっと見守るしかない……

「うまくいってるのかしら……どう、依姫?」

「どう、と言われても。お姉さまは何をもって上手くいくと言うんですか?」

「それは……ねえ?」

「ねえ? じゃ分かりません!」

視界の中で俯くレイセンに何事かを話している男が見える。
一体何を話しているのか、読唇術を身につけていないこの身が悔やまれる。
狼藉を働けば直ちに駆けつけられる距離ではあるが、それでも一息には届かないのがもどかしい。

そのとき、五感のいずれかが違和感を叫んだ。

「―――これは」

「何かしら、これ?」

サメの背ビレ……だろうか。砂浜から背ビレが飛び出している。
それはあたかもサメがヒレを海面に出して泳ぐように、砂の中を自在に動き回っている。
自分と姉を囲むような動きを見せるヒレ。数は3。隠れている気配はない。
ヒレの内のひとつが少し遠ざかったかと思うと、豊姫の方へ回頭。加速をつけて飛び上がった!

「お姉さまっ」

「おっと、危ない危ない」

豊姫、これを危なげなく回避。
躱すだろうと思っていた依姫は、姉ではなくヒレの正体にこそ目を向けていた。
ツートンカラーの全身タイツ、取って付けたヒレ、良く見れば顔にはシュノーケルが。

「崖下ッ! この忙しいときに!」

「依姫! あんまり派手なのは使っちゃダメよ!」

「っ! ええい、もう!!」

この場は至って普通の海岸で、一般客も山ほどいる。依姫が感情に任せて力を振るうのは余りにも危険であった。
一匹一匹砂から引き摺り出して仕留めるしかない。その事実に依姫は苛立った。
―――こうしている間にレイセンがどうなっているか分かったものじゃないのに!

刹那、遠くからの銃声。

「オウフ!?」

一匹の崖下が砂から飛び出した。好機である。

「せいっ!」

「どぅぶれあ!?」

「ナイスパンチ依姫!」

「今の銃声……」

依姫の耳に馴染みのある発砲音であった。月光女学院の制式長銃のものだ。
しかし、脳裏に浮かんだ少女、その気配はまだ遠くにある。それほどの射撃が彼女に出来ただろうか。依姫には確信が持てなかった。

再び銃声。全身タイツが再び跳ね上がる。
首を音の方に向けた。

「お姉さま達が囲まれてる!?」

あれはなんだ……砂鮫? この浜にガレオスが出るなんて話は聞いてないぞ。

「ど、どうしよう! 早くお助けしないと!」

落ち着きたまえ^^; ここで狼狽えても事態は好転しない。
……せっかくだ。この状況、利用させてもらおう。
レイセン、銃!

「え? は、はい!」

よし構えて。そしてこれを食べるんだ。

「これ、お寿司……ですか?」

ブリームスシという。食べればたちまち“あんこく(笑)”から(笑)が取れるとまで言われる、命中を高めるスシだ。
保存に抜かりはないから傷んでないぞ。

「こんなもの、どうして……」

ふっへっへっへ……こんな事もあろうかと! と言うと思ったか? 偶然なんだな、これが。
いやあ、自分で食べるつもりだったんだが……今、君が使う方が意義がありそうだ。
さあ食え! そしてあのヒレの持ち主を射抜くんだ! お姉さまにいいとこ見せちゃいなYO!

「……わかりました! 遠慮無くいただきます!」

狙いは姉妹に近付くときだ。釣り上げて、二人に殴らせる。
ほっといても二人で片を付けるだろうが、そうはいくものか……ここに三人目がいるのだから。
姉妹揃って目ん玉おっぴろげるがいいのさ! 二時方向から一匹が姉妹に接近!

「見える……そこっ!」

命中! かーらーのー? 妹パンチ! 崖下はしぬ。
つーか崖下だったのかアレ。砂鮫ごっことか、暇してんなぁ。
一匹やられて距離を取るつもりだ、引っ張り出してやれ!

「当ったれぇ!」

命中! 更についげきの姉扇子! うわ、きりもみ回転したぞ。
さんびきめーは、こっちに来てるのか? 狙撃手から片そうってか? させる訳ないじゃないの。
俺が釣り上げるから、トドメを!

「スペルカード、セット……いつでもいけます!」

ステキな返事をありがとう!
さあ、来い来い来い来い来い……来た! 来た来た来た来た来た!
そこだ! 見様見真似、しんきゃく!!

「オウフ!?」

今だッ!

「いっっけぇ!」

“銃剣「ガン&ブレード」”

スペルカード発動と同時に、飛び上がった崖下目掛けレイセンが突貫。
空中で銃剣が崖下を捉え、あわれ串刺し(※比喩表現です!)となった崖下。
これだけでも十分なダメージだが、更に攻撃はつづく。レイセンはまだ引き金を引いていない。

「トリガーッ!」

ぼ、とくぐもった発砲音と共に崖下が吹き飛び、反動でレイセンが勢い良く地に向かって降下する。
そしてレイセンが墜落するのを許さないのが俺だ……ナイスキャッチ!

「きゃっ!? あ、ありがとうございます……」

どういたしまして。いや着地さえ成功してれば完璧だったのにな!
つっても、それ以外は文句なしだ。流石だわ。

「あのスシのおかげです……いつもよりずっと集中できて」

効き目があったようで良かった。
さ、向こうに戻ろう。あの二人もレイセンの援護に驚きが鬼なってるに違いないからな。

「はいっ!」

「さっきの射撃はやっぱりレイセンだったのね」

「はい! お姉さまが変なのに囲まれてるのを見て……余計なことをしてしまいましたか?」

「そんな事ないわ。釣り上げる手間が省けたもの」

変態に囲まれていたお姉さまが今度はレイセンを囲んでいる……レイセンはいかにも幸福といった表情だ。
よかったよかった。

「でも、いつの間にあんな正確な射撃を……」

「えと、それは私ひとりの力じゃなくって」

レイセンは聞かれるままに自分のことまで話し始めた。このままだと聞かれたら恥ずかしい部分まで話しそうだ。やめて。
えっと、tellで……『自分のことはいいから海でも行って来なさいな』っと。
……レイセンは身を震わせたかと思うと、一瞬こちらに視線を送った。俺が何か言ったってバレバレじゃないの、今の。

「あ……お、泳ぎましょう! お姉さまも一緒に!」

「そうねぇ……せっかく海に来たんだし」

「私は後から……少しこの者と話がしたいので」

ここで依姫から想定外の指名である。
SEKKYOUでも受けるのかしらん? って、なんでですかー。
レイセンは一瞬戸惑ったが、邪魔すべきでないと判断したのだろうか。そのまま豊姫の手を引いて海へと向かった。

「海で待ってますからー!」

「待ってるわー!」

必死こいて上げたレイセンはともかく、姉の方のテンションたけえ……
いや、今は自分の心配をすべきか。ご用件は?

「レイセンと仲が良いようですね」

ええ、まあ。悪くはない、くらいには自分で言える程度には。

「あの子が男性にあれほど懐くのを見るのは、私達も初めてです」

そりゃあ光栄な話で。
しかしまあ、もう少し男慣れするよう仕向けた方が良かったのでは? 自分に話しかけるのだってイッパイイッパイと言った風情だったし。
女学院の方針なら止めやしませんが。

「今はどうでもいいことです」

……左様で。

「あの子は、とても優しくて、繊細な子です。いい子です」

お二人程ではありませんが、そのように存じております……それが何か?

「もしもあの子を傷つけるようなことがあれば……容赦しない。肝に命じておきなさい」

確かに覚えておきます……が、言わせてもらえばだな。
そりゃあこっちのセリフでもあるぞ、綿月依姫。お前らこそあの子を曇らせてみろ。直ちに報復の用意がある……ッ!

「それは、どういう意味、」

分からないんなら分からないんだろうさ。結構結構。
そら、くぁわいい後輩さんが呼んでる。いつまでも待たせるものじゃないだろう。
自分はここで引き続き荷物番してますよ……あのアクション見てから近寄る男もおらんでしょうし。
さあ行った行った。

「……いいでしょう、今は」

そう、今は。

お姉さまと戯れるレイセンを眺め、思う。
少なくとも依姫の方は、レイセンを大事な後輩以上には見ていない。
しかし、それは悲観することではない。依姫にとってレイセンは大切な存在なのだろう。
であれば、レイセンの魅力をもってすれば、落とせないことはない筈だ。

……もし、百合はよくないとか、気持ちでなく理屈でフりやがったら、タダじゃおかない。
そんな良く分からない決意を固めた。
シリアスなことを考えても、やることは空気との同化であるが……

レイセンルート四章 完

つづく?
あとがき
チンタラ書いてたら中身の割に無駄に長くなってしまった感。とても反省してる。
依姫:誰てめえ感が高まる……溢れる……
豊姫:誰てめえ感が(ry
ポロリ:泳ぐシーンすらなかった。
メイド学:マスターは国家資格=捏造設定。メイドさんいいよね……
うふふ:昔のことを掘り返すのはやめてやるんだぜ!
俺:一人称“自分”に限界を感じる。
崖下:安直な敵役。もっと捻れる自分になりたい。
YO!:ジャニーさん? ジャニーさんじゃないか!
スシ:オススメもさることながら、陰陽鉄で猛威を振るったスシ。こまっちゃんブリームスシないんですか^^;
来い来い(中略)来た! 来た来た(後略):空想科学世界ガリバーボーイ。
しんきゃく:はっきょくけんはにのうちいらずだいっ!
銃剣:本SS初スペカ。

前回のコメント返信
>成せば成る! 主人公は男の子! 海辺紳士なんて屁でもないですな。
コメントありがとうございます。成さねば成らぬとならないよう頑張ります。
>さて、次は水着回ですか?
水着の薄い水着回で申し訳ありません……

>回が増すごとにwktk力が膨れ上がってくるだと……!?
コメントありがとうございます。wktkが増しているかどうかは自分では分かりませんが、今回も増していたなら幸いです。
>それにしてもレイセンが可愛すぎて、レイセンちゃんに嫌々ヨーグルトを食べさせたい^^;
白くてドロリとした体にいい飲み物がヨーグルトだといつから思っていた……?

12/2追記
新うpろだへ移植。特に修正とかはないよ!
前回のコメント返信は前のろだ見ないと意味不明だけど残す。
倫理