SS/妄想SS レイセンルート序章

Last-modified: 2013-08-31 (土) 09:16:40

妄想SS レイセンルート序章
倫理
※警告!
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6月―――麗らかな春が過ぎ、五月病も終わる頃。
学生たちも新しい学校に、或いは新しい学年に慣れ、初々しさが取れていく。
多くの者にとって恐怖の壁である中間テストを越えたこと、期末テストはまだ先であることが心にゆとりを生む。
時には中間テストの結果に一喜一憂し、時には部活に心身を注ぎ、時には恋などしてみるような……
陰陽鉄学園はにわかに活気づいていた。

 

テスト明けで浮かれるのは何も陰陽鉄学園ばかりではなく。
紳士学園の紳士は活動が活発になり、崖下学園の青タイツの出現報告も増える。
アトリームの誰かさんは「春が終わるだって? そんなこと、本当にあるのか……」などと迷言を放っていた。
そして、少し離れた月光女学園でも同じように。
少女たちはその小さな胸に大きな想いを詰め込んで、思い切り青春を謳歌する。
学業に、部活に、そして恋にも……そう。おんなのこどうしでも―――

 
 
 
 
 

「どうやったらあなたみたいにお姉さまと仲良くなれますか!?」

 

……なんですって?

 
 
 
 
 

陰陽鉄学園モノ妄想SS ~レイセンルート 序章~

 
 
 
 
 

われわれの喫茶店、くつろぎ喫茶ベヒんもスに衝撃走る―――!
……と思いきや、意外と小声だったらしく、周りは誰も反応していない。
幸運……だったのだろう。今のを聞かれて何かみょんな噂になったら、もうこの憩いの地には近寄れなかったかもしれない。
しかし、まあ。幸運はそれっきりで品切れかもしれない。

 

目の前の少女を見る。
月光女学園指定の制服に身を包み、頭にはウサミミが生えている。小柄でやや童顔、綺麗よりも愛らしいといった表現が似合う少女。
名前は、レイセン……だったと思う。
名前すらおぼつかないのも当然で、自分と彼女はお互いに顔を知っている程度の間柄だ。間違っても突然相談を持ちかけられるような仲良しさんではない。
ああ、それなのに何故。

 

「あの……ダメ……ですか?」

 

何が良くて何がダメなのか。こっちは何故話しかけられたのか分からなくて混乱しているんだ。
人となりは少女の先輩から聞いて少しは知っているが、こんな奇襲を仕掛ける子だとは聞いていないぞ。
しかし……このまま無言でいると勝手に結論を出して帰ってしまいそうだ。
訳がわからないまま帰られたら余計に困る……落ち着いて、話題はなんだったか……確か。
お姉さまと仲良くなりたいと……自分のように?

 

「は、はいっ! どうすればいいか、教えてもらえませんか!」

 

お姉さまと言うのは、恐らく綿月豊姫(わたつきのとよひめ)かその妹の綿月依姫(わたつきのよりひめ)のことだろう。
月光女学園きってのHNM……もとい、人気姉妹。レイセンは二人の後輩で、取り巻きの一人だと聞いている。
取り巻きのまとめ役で、姉妹から信頼されているとも。
確かに綿月姉妹、特に豊姫の方とは少々縁がある。時々会って話をする……レイセンのことも聞かせてくれた……程度だが、そんなに仲が良く見えるのだろうか。
と言うか。他校生、陰陽鉄学園の生徒である自分よりも、同じ月光女学園に通う上に信用される立ち位置である君の方が余程仲が良いのではなかろうか。

 

「それは、そうなんですけど……でも、そうじゃなくって……えっと……」

 

レイセンの返事はまるで要領を得ない。もじもじとするばかりで、口は動くが声にならないと言った風情だ。
二人の間に沈黙が流れ、耳に届かなかった周囲の音が帰ってくる。
注文する者、キーボードを叩く客、いらっしゃいませの声、注文を持っていくウェイトレス……レイセンはまだ喋らない。
客同士の罵声、近づく足音、グラスの中の氷が音を立てる、当店はバリスタ禁止となっております……ゆっくりと、レイセンが息を吸うのが見えた。

 

「あの、私っ!」

 

「何話してるの?」

 

「え……ふぇっ!?」

 

気付けば卓の横には見知った顔が立っていた……噂をすれば影が差す、というやつか。
まあ、元々自分は彼女が来るだろうと思ってこの喫茶店に来ていたのだが……今週は無駄にならなくて良かった。
張っている最中に思わぬ奇襲を受ける羽目になったが、これでイーブンってとこだろうか。
こんにちわ。綿月(姉)さん。

 

「こんにちわ。今日も来てたのね」

 

とんでもない、待ってたんだ。
豊姫は陰陽鉄学園の教師である八意永琳先生と、その被扶養者(?)である蓬莱山輝夜と親しい。
彼女はこの喫茶店でバイトを始めた輝夜と、その仕事ぶりを眺める八意先生を見る。と言う名目で女学園を飛び出し、陰陽鉄学園の縄張りにホイホイ入り込んでくるのだ。
週一ペースでやってくるので、話したい時などはこうして店で待つ。何時頃来るかは情報収集で確認済みである。ストーカーじゃないよ!
呼び出したり待ち合せたりするほど仲良くはなく、しかし顔を合わせれば会話する程度の間柄。
微妙な距離感であった。
……レイセンは、顔色を忙しく変えている。

 

「隣いいかしら?」

 

「ひゃいっ! どど、どうぞっ!」

 

「すいませーん。コーヒーとピーチタルトを」

 

隣の席に豊姫が座った途端、レイセンの顔が真っ赤になった。茹で蛸だってもう少し薄い赤色だろう。
一方の豊姫は至ってマイペースだ。いつもどおりすぎてレイセンの動揺っぷりが際立っている。
それにしても、聞いていた話と随分違う。豊姫の話だと頼れる後輩の筈なのだが、今のレイセンはどう見てもダメだ。いろんな意味で。
そこのところ、どうなっているのか。このポンコツ……もとい動揺ぶりに説明を求めたい。

 

「下級生をまとめてる時はキリッとしてるのよ? でも、たまにこうなっちゃうの」

 

たまに、と。
ひょっとして、いや恐らく、いやいやまず間違いない。
レイセンの『仲良くなれますか』という言葉と豊姫が来てからの反応を見れば大体分かってしまう……仲良くってそういう。
ただ話してるだけなのに、男女ってだけでそんなにキャッキャウフフに見えたんだろうか。

 

しかしこれ、豊姫の方は気付いてないのだろうか。傍から見る限りだとバレバレすぎる。
少し探ってみよう……レイセンが今みたいになるのは、それは例えば、君と一緒の時とか、不意に君が現れた時とか、そういう?

 

「正解。よく分かったわね。この娘ったらあがり症なのかしら」

 

それはそれは……全く気付いた様子がない! 単に鈍いのか、それとも自分のことは分からないものなのだろうか。
一方、豊姫の隣で鋼鉄もかくやといった硬直を見せるレイセン。これは確かにあがり症に見えないこともない。
……なんとかしようとしたのだろう。このままでは想いが届くことはないから。
その結果が冒頭のアレである。

 

「ところで、二人で何の話をしてたの? いえ、それよりいつの間に相席するほど仲良くなったの?」

 

……レイセンは豊姫に見えないように謎のサインを出している。
サインがどんな意味を持つのかは分からないが、言いたいことは大体わかる。
この場をどうにかして誤魔化さなければならない。
残念だが、綿月(姉)さんの思うような話ではない。そもそもお互いに口を聞くのは初めてだ。

 

「でも、初めて話すような人と喫茶店で相席ってそんなにないんじゃない?」

 

ごもっともである。ましてやレイセンは月光女学園所属、陰陽鉄学園の男と茶を飲む性格でもないだろう……
さあ、ここからが本番だ。
あー……そう、彼女から人生相談を受けていたんだ。

 

「……じんせいそうだん?」

 

言うに事欠いて人生相談(笑)。我ながらこれはひどいと言わざるを得ない……しかし、口にしたからには押し通さなければ。
自虐は胸の内にしまいこみ、豊姫を真っ直ぐ見据えて舌を回す。
そうとも人生相談だ。それはとても繊細な内容で、残念ながら他人に話す訳にはいかない。
自分に話したのは……君を通じて知っていたからだそうだ。

 

「そうなの……私を頼ってくれても良かったのに」

 

豊姫が少し悲しそうな顔をする。隣のレイセンはそれを見て顔面蒼白だ。
急ぎフォローを入れなくては。モタモタしてるとまた誤魔化しが面倒になりそうだ。
世の中、身近な相手だからこそ話せない事だってある。
いつか綿月(姉)さんにも話せる日が来ると思う……その時を待っていて欲しい。

 

「……わかったわ」

 

誤魔化せた、のだろうか。
疑ってる風には見えないが、こんな拙い言葉で本当に行けたのか不安になる。
確かめようが無いので、このまま行くしか無いのだが……それにしても、疲れる。
正直もう姉の方には帰って欲しい。元々は姉の方を待っていたというのに、勝手な話である。

 
 
 

少し間が空いた。
いや、注文していたピーチタルトが来た瞬間から、豊姫はそっちに夢中になってしまった。
上品な食べ方ながら瞬きする間に消えていくタルト(速さ)……レイセンはまだ固まっている。

 

「今日はお邪魔しちゃったみたいね。ごめんなさい、レイセン」

 

「お邪魔だなんてそんなっ! そんなことないでひゅ!」

 

久々に口を開いたと思ったら素晴らしい噛みっぷりであるすばらしい。
Reisenちゃんはあがり症なのかな^^; フヒヒ^^; ……これ以上はいけない。崖下を覗けば己も崖下になってしまう。
心の中で必死に崖下を振り払っていると、豊姫が席を立った。

 

「今日はもう帰るわね……ごゆっくり~♪」

 

にこやかな笑顔と共に豊姫は去っていった。
それにしても、なんだろう……酷く不味いフラグが立った気がする。けど面倒臭いから気のせいでいいや……
きっと誤魔化せたに違いない。そうさ何もかも上手く行ったに違いないんだ。

 

「ふわぁ……」

 

レイセンもすっかり気が抜けている。
不意打ちされる側の気分はどうだ、などと言う気にはなれなかった。
この娘なりに必死なのだろう。敵地に等しいところに乗り込んで、碌に口も聞いたことのない男に頼み事。どれほどの勇気がいることか。
助けたいと思う、そう思わせる魅力がある。まして自分を指名するのなら尚更。
しかし、一応聞くことは聞いておかなくては。どうするかは確認が終わってからだ。
君の言う『お姉さま』とは、今しがた出て行った綿月(姉)さんのことでいいのか。

 

「…………あ、はぃ…………」

 

歯切れが悪い。しかし、はいと言うからには合っている筈。
……妙に気になる。奥歯に何か挟まったような返事は。
自分は何か間違ったことを言ったのか。どうなのか。

 

「えと……その……お、怒りませんか?」

 

何について怒れと言うんだ。
ヘイトの向ける先が見えないんじゃあ、おちおち有頂天にもなれやしない。
何かあるなら話してくれ。

 

「実は……依姫お姉さまも……」

 

妹の方も!?
これは予想外です……と言うか、自分は綿月(妹)さんとは姉以上に縁が薄いのだが。
いや、今はそんなことはどうだっていいんだ。重要じゃない……想うだけなら二股じゃない! よし証明終了。以下レスひ不要です。
とにかくお姉さまは分かった。
分かって、どうする。自分はどうする。この娘に協力するか、しないのか。
選択の時だ。

 
 
 
 
 

→『力を貸す』
 『悪いけど、力になれそうもない』

 
 
 
 
 

そう言えば、自分のようにお姉さまと仲良くなりたいんだったか。

 

「はい!」

 

残念ながら、教えられるような何かなんてない。特別なことをした覚えが無いからだ。

 

「え……でも」

 

デモもストも無い。とても君の役に立つ話など出来そうにない。
だから……ごめん。

 

「はぃ……」

 

その代わりと言ってはなんだけど。

 

「はぃ……?」

 

期待に添えない自分だが、君の手伝いがしたい。
碌に口も聞いたことのない男なんぞで良ければ、だけど。
成り行きとはいえ、色々知ってしまったし、放って置けないから。

 

「え……いいんですか?」

 

いいも悪いも君次第だ。いらないならそれでいい。
この手を取るか取らないか、選ぶのは君だ。

 

「…………わかりました。私に、力を貸してください!」

 

そっと小さな手が指をつまむ……いきなり握手はハードルが高かったようだ。こりゃ失礼。
まあともかく、契約成立だ。やってやろうぜ!

 
 
 
 
 

6月某日。とある喫茶店から、ひとつの物語が動き出した……のかも知れない。

 
 
 
 
 

レイセンルート序章 完

 

つづく……のかも知れない。つづかない……のかも知れない。
あとがき
レイセン:百合系女子。なんとかしてあげたくなる、んじゃないかなあ。
姉の方:別に……もとい舞台装置。筆が進まないからカッとなって出した。
自分:プレイヤーキャラ(顔出しNG)。各々イメージしたPCに合わせて脳内でセリフを修正するといいんじゃないかなあ。

 

12/2追記
新うpろだへ移植。特に修正とかはないよ!